資金だけじゃないクラウドファンディングを通じて得られるモノ ~第5回SENSORS SALON クラウドファンディングの魅力と明日を語る(1/4)~

2015.05.23 12:00

5回目の開催となるSENSORS SALONのテーマは「クラウドファンディング」。2011年頃から日本に普及しはじめたWEBを通じて資金を集める仕組みは多くの人々の想いを形にしてきた。#1では、運営者、支援者、実行者がそれぞれの取組み紹介しながら、クラウドファンディングの魅力を語る。

第5回SENSORS SALON

今回は、「READYFOR?」代表の米良 はるか氏、サイバーエージェント・クラウドファンディング「Makuake」代表の中山 亮太郎氏、「プログレス・テクノロジーズ」取締役の小西 享氏、「ジャパントラディショナルカルチャーラボ」代表の神森 真理子氏の4名で開催。手前はモデレーターを務めるSENSORSクリエイティブディレクターの三枝孝臣。

第5回SENSORSサロンメンバー

まず、クラウドファンディングの魅力を語るのは「READYFOR?」を手掛ける米良はるか氏。「READYFOR?」は米良氏がまだ大学院生だった2011年に立ち上け、日本で最初のクラウドファンディングサイトとされている。WEBを通じて資金を集める仕組みには早くから注目していた米良氏が考えるその魅力と立ち上げの経緯とは。

■READYFOR?とパラリンピック スキーチーム荒井監督の出会い

米良はるか氏

米良:
もともと「READYFOR?」をやる前は、投げ銭みたいな仕組みをやっていました。その経緯が、インターネットが出来て、色んな人たちのアイデアや想いがあるけど、それに小口でいろんな人たちが繋がっていけば、想いを形にするような世の中をつくることできるんじゃないかって思ったんです。その構想を2009年とか2010年とかに考えていていました。当時はまだTwitterとかFacebookが日本で普及してなかったので、どういう風に実現していくかと考えていたのですが、ちょうどその時にパラリンピックのスキーチームの荒井監督にお会いしました。彼のチームはパラリンピックで何度も優勝をしているような強いチームだったんですけど、資金難で海外に勝っていくことが難しいと聞ききました。でも、すごく熱い想いがあって、その話に胸を打たれて、私も何か協力したいと思ったんです。そこで、一人が負担するんじゃなくて、この話に胸を打たれた多くの人が、10円でも100円でも出し合えば、日本を代表するような人達を世界に送ることが出来るのではないかと思って、投げ銭的な仕組みをやっていました。

ロンギヌスの槍プロジェクト

READYFORが立ち上がった背景には、米良氏を突き動かすほど強い想いもった荒井監督の存在があった。立ち上げ当初は、東北復興支援に関するプロジェクトが多数掲載されていたが、今ではそれに加えて数々のユニークなプロジェクトも掲載されている。

米良:
「READYFOR?」のミッションとして、誰もがやりたいことを実行するっていうことを提言しています。実は具体的にどういうものかが言いにくくて、ただ一つ言えることは、"想いを形にする"というのを大事にしているのが私たちのフォーカスポイントです。だから、色んなプロジェクトがあって、これまで2300件以上の資金の手伝いをやってきていて、1400件くらいのプロジェクトが実際に資金を集めて何かの活動を開始している状況になっています。

例えば、ゼロ戦を皆の力でお金を集めてもう一度飛ばすっていう。これも、自分でやりたい事を実現していて、結構ファンの人たちが集まってきて、2300万円集まりました。

あるいは、これは失敗してしまったですが、エヴァンゲリオンの映画のプロジェクトで、作品の中にロンギヌスという槍を月にさすシーンがあって、それをリアルで再現しようという夢を描いた人たちが居て、1億円を集める大きな夢だったんですけど、最終的に5400万円で終わってしまったんですが、この金額は、日本国内のクラウドファンディングの中では圧倒的な数字でした。

少しずつ色んなチャレンジが出てきていて、規模もどんどん上がってきているので、こんなことをやってみたかったなっていう人がクラウドファンディングのプラットホームに提案していただけたら、本当に実現していただけるのかなとワクワクしています。

■ジャンルや分野を絞ったプロジェクト掲載の傾向

中山亮太郎氏

「READY FOR」を始点に2011年から現在に至るまで多くのクラウドファンディングサイトが立ち上がってきている。その中でも成長著しいのサイバーエージェント・クラウドファンディング社が手掛ける「Makuake」だ。クラウドファンディングはそれぞれのプラットフォームでジャンルを横断したプロジェクトが掲載されているが、「Makuake」では特定の分野にフォーカスし始めているという。

三枝:
Makuakeでは特に注力している「分野」はあるんですか?
中山:
最初は何もかもだったんですけど、最近特に注力しているものは、フィジカルな「モノ」です。Makuakeはコンテンツだったり、面白いプロダクトだったり、お店だったりがどんどん生まれてくるクラウドファンディングで、最近増えて生きているのが、「IoT」関連です。

スマートロックQrio

例えば、SONYとWiLが合同で作った会社「Qrio」が手掛けるスマートロック。スマホで開けられる鍵がIoTのプロダクトとして話題になりました。

あとは、電子ペーパーの技術を使って、おしゃれのファッション時計を作るというプロジェクト。これは、SONYが持っている電子ペーパーの技術を利用したプロダクトです。実はサイトに掲載する時に、SONYという名前は一切使わず、アイデアだけで市場に受け入れられるのか試しています。AppleとかSONYとかの名前があるだけで、ユーザーは飛びつくんですが、そういうのを一切使わなかったとしても、真の価値があるのかを問い掛け、反響があれば価値のあるものだとジャッジすることが出来ます。

草野球に特化した鞄を作るなんていうプロジェクトもあります。非常に誰もが思いつきそうなアイデアだったけど「そこ盲点だったね」っていうアイデアを実現しています。

「赤ずきん」をコンセプトのしたアイシャドウも人気のプロジェクトでした。非常に切り口が面白い。10代後半から20代前半の女の子に支持を受けたという意味で"珍しい"プロジェクトでしたね。

■つくる過程もオープンにすることで信頼性を担保する

小西亨氏

プログレステクノロジーズ社は、数百人のエンジニアを抱える日本有数のテクノロジーカンパニー。彼らは、クラウドファンディングを通じてひろがるモノづくりのためのコミュニティを組成し、プロジェクトを支援していくための数々の施策を展開している。

三枝:
小西さんはどのようなことやられているのですか?
小西:
新しいモノづくりのかたち「tsumikii」をやっています。簡単にいうとモノづくりのフローを再定義し、新たに構築していこうかと考えています。一般的にモノづくりの形って、完成品がドンって出てきて、皆さんどうですかって感じですよね。その過程っていうのはもちろん見えないですし、クローズな環境の中で開発会議が行われています。僕らは、作ろうとしているものをフルオープンにして、一般の人たちがそれに参加できるような過程にしています。

tsumikiiプロジェクト

何でまわりくどいことをやっているかというと、クラウドファンディングがモノづくりの上で、とてもベネフィットがあると思っていて、マーケティングの機能とか、色んなプロモーションの機能とか、ソーシングの機能が自然に働いてくれます。でも、クラウドファンディングを通じて、早い段階でつくっているモノのニーズは確認できるのですが、僕らみたいなインディースメーカーがプロジェクトを掲載したときに、海のものとも山のものとも分からないモノにお金を1000万くださいって言っても信用を得られない。成果物がない中でお金をもらう以上は何としても成果を出さない、それが結構難しい。僕らは出来るんですよってどんなに言っても2次元的な画面では伝わらない。だから、プロジェクトが掲載されるまでの過程をすべて見せていくっていうことを大事にしてます。僕たちこんな苦労をしてきて、こんな風に頑張ってきたんですよって延々と見せていって、最後に皆さんどうですかって。こうすればクラウドファンディングに出した時の信頼性の得られ方って変わるんじゃないですか。

アイドルではないんですが、若い時から応援して育てて最後に俺たちが応援をしているんだから頑張れよってファンディングのところに送り出していく。そんなところがディープなクラウドファンディングだなと自分たちで思っています。

B2Cで勝負した時に、クラウドファンディング上でREADYFOR?さんとかMakuakeさんとかを頼らざる終えない部分もあり、彼らも目利きした上で載せてくれているのですが、それは掲載側の立場であって、僕らのようなつくる側としての責任は僕らなりに果たしていかないといけない、証明していかないといけない。そうするためのサービスをやっています。

■クラウドファンディングは得られるの「資金」だけじゃない

神森 真理子氏

運営者、支援者がそれぞれの想いでクラウドファンディングに向き合う中、実際の実行者はどのような魅力を感じているのだろうか。ジャパントラディショナルカルチャーラボの神森氏は、世界中の人がいつでもどこでも日本文化を学ぶことかができるWEBスクール「nippon labo」の海外版の立ち上げにクラウドファンディングを利用し、228万2千円の支援を集めた。そんな神森氏はプロジェクトを実行してみた感想を次のように語る。

nippon labo

三枝:
神森さんはクラウドファンディングをやってみてよかったと思うことはありますか?
神森:
意識してなかったところからの支援が得られることとか、お金以外にも得られる副産物が多いと思います。メディアで取材をして頂けるとか、実現するにあたってサポートをしてくれる人を紹介してくれるとか。私はWEBスクールの立ち上げのためにクラウドファンディングを使ったんですけど、WEBを通じて日本文化の裾野を広げるという理念に共感をされる方がとても多いと感じる一方で、自分ごとではないのにクラウドファンディングで支援をしてくれる方はかなり密度の濃いファンになってくれる。一緒に作り上げたものということで、支援者自身が広告塔になってくれるというか、フィードバックがあったり、クラウドファンディングに挑戦することで、普通に広告を出すっていうこととはまったく違う物が得られていると思います。波及効果が当初予想していたものよりかなりありました。

神森氏がクラウドファンディングを通じて得たものは、資金だけではなく、プロジェクトに賛同してくれる「仲間」だった。

米良:
プロジェクトをやりたいとか何か作りたいと思う人たちにとって、資金調達はクラウドファンディングで得られるものの中の1つですよね。支援している人はお金を出すだけじゃなくて、そのプロジェクトがどうなっていくか、参加していきたいという気持ちも大きいなって思います。お金も出したけど、もしイベントに出たら応援に行くよとか。READYFORでやった本の出版のプロジェクトでお金を出した人がカメラマンだったらしくて、「興味があるからカメラを担当させてくれ!」って、その本の写真がそのカメラマンが撮った写真になったりとか。実際にお金を出すという行為を通じて、そのプロジェクトの仲間になっていくというか。そういうのを提供できるかなと思っていますね。

■モノづくりの仕組み自体を変える可能性

さらに小西氏は、クラウドファンディングという仕組み自体が日本のモノづくり産業の構造を変化させてしまう可能性にも言及している。

三枝:
マーケティングやPRなど、クラウドファンディングに出すことで、さまざまな副産物が得られるイメージは小西さんにはありますか?
小西:
そうですね。副産物はどんどん得られると思っています。プロモーションとかマーケティングとかのスケール感っていうのがあって、大きくなってくると副産物どころではなくて、「主流」になるってことにもありえるんですよ。モノづくりの話でいうと予約販売をするための仕組みとして必要不可欠なパーツになってくると思うんですよね。クラウドファンディングがモノづくりのフロー上で必ず使われる仕組みになっていて、当たり前に大手メーカーさんとかが「使わないとしょうがないだろう」って当たり前に発想してくれるようになる。
三枝:
そうすると世の中自体が変わりますね。
小西:
絶対に変わると思いますね。明らかにイノベーションが起きますよね。最適化が行われて、ニーズの高いモノが効率良くつくれたり、無駄なモノがない世界観が生まれやすくなる。大手メーカーもハズレくじを引くのではなくて、試すことだけは安くできるので、何度も試せるわけですよ。名前出さないで、大手メーカーがバシバシとクラウドファンディングに出してきて、当たった時だけグオーって力を入れていけば、ニーズの高い製品が生まれやすなるとか。
三枝:
これまで、日本のメーカーはクローズドソーシングで、自社の研究所の中だけで研究開発をてやってきて、いざ製品を出すともう市場が無いみたいなこれまでの構造をクラウドファンディングが変える可能性はありますね。

クラウドファンディングで得ることができのは資金だけではない。その想いに共感する仲間やマーケティングやPRといった成長機会。それに、日本のモノづくり産業の仕組みを大きく変えることができるポテンシャルを秘めている。

そんなクラウドファンディングが全体として抱える課題やプロジェクトを成功させるコツはなんなのだろうか。メディアとクラウドファンディングの新しい関係とは? (#2に続く)

文:石塚たけろう

石塚たけろう: ベンチャーキャピタルやデジタルマーケティング企業複数社での業務を経験後、EIR(=客員起業家)として複数の大手企業、スタートアップの新規プロジェクトに参画。Webデベロッパー。@takerou_ishi

最新記事