定額制音楽配信サービスの出現で、音楽はどのように聴かれるのか〜小室哲哉/ユニバーサル ミュージック/AWA/ジェイ・コウガミ が語る音楽業界の未来(1/7)

2015.08.29 17:00

7回目の実施となるSENSORS SALONのテーマは「変貌を遂げる音楽業界2015」。2015年初夏、AWA・LINE MUSIC・Apple Musicと、定額制音楽配信サービスが続々と日本国内でもリリースされた。音楽を聴く環境が今後大きく変化していくと予想される中で、アーティスト(小室哲哉氏)、レーベル(ユニバーサル ミュージック)、サービス(AWA)、音楽ブロガー(ジェイ・コウガミ氏)といったそれぞれの立場から、これからの"音楽業界"についてじっくり語って頂いた。

OA未公開シーンを含め、YouTubeでも公開中

今回のSENSORS SALONは、ミュージシャン・音楽プロデューサー 小室哲哉氏、ユニバーサル ミュージック合同会社 営業統括本部 副社長直轄 イノベーション担当ゼネラルマネージャー 鈴木貴歩氏、AWA 株式会社 取締役/プロデューサー 小野哲太郎氏、音楽ブロガー ジェイ・コウガミ氏というメンバーでお送りする(モデレーターは日本テレビインターネット事業部「SENSORS」クリエイティブディレクターの海野大輔)。SENSORS.jpでは、このSENSORS SALONの模様をほぼノーカットで、全7回の記事としてお届けする。

salon7_1_1

左よりジェイ・コウガミ氏、小野哲太郎氏、小室哲哉氏、鈴木貴歩氏、海野大輔

■AWA、LINE MUSIC、Apple Music...ほぼ時期を同じくして登場

海野:
お集まり頂きまして、ありがとうございます。今回は「変貌を遂げる音楽業界2015」と題しまして...定額制音楽配信サービスがどんどんローンチして世間の注目を集めている段階で、今後音楽業界はどうなっていくのか。小室さんはアーティスト、鈴木さんはレーベル(ユニバーサル ミュージック)、小野さんはサービス(AWA)、ジェイさんは音楽ブロガーと、様々な立場から集まって頂きましたし、それぞれの立場からの議論が出来ればと。
ジェイ:
AWA、LINE MUSIC、Apple Musicと、定額制音楽配信サービスが始まりましたね。
小室:
通信事業で、最初に三つ出てきた時みたいですよね。
小野:
狙ったり、一緒に出そうという話もしているわけではないんですけどね(笑)。
小室:
Spotifyは随分前から聞いてますけど、なかなかオープンしない状態ですよね。そんな中「AWAなんだ!」って、僕もavexなんでビックリしましたけど(笑)。動きが早かったので。
小野:
小室さんにはプレイリストも作って頂いているので、ありがたいですね。
鈴木:
サイバーエージェントさんやLINEさんのようなテクノロジーの会社と音楽ビジネスをご一緒させて頂くというのは、僕ら業界にとって良いことだと思っています。
小室:
avexとサイバーエージェントという、日本のユーザー・音楽マーケットが分かってるチームだなと思いますよね。
鈴木:
一方UI,UXを見ると海外のサービスを研究し尽くされている印象もあります。
小野:
avexの松浦勝人さんとサイバーエージェントの藤田晋、音楽業界のプロデューサーとネット業界のプロデューサー2人が見ているサービスなので面白いんですよ。いつものネットだけの物作りではなくて、音楽を作る人として、音楽を聴く場所だったらこうしてほしいという観点から松浦さんが意見をおっしゃってくれるので、面白い物作りになりました。
小室:
(AWAを)パッと開いたときに、「かっこいいな」と思ったのでビックリしちゃったんですよ。もっと日本向けの可愛いわかりやすい感じかなと思っていたら、もちろん分かりやすいんだけど、とにかく「かっこいいな」って。
salon_7_1_2.jpg

小室哲哉氏(左)、ユニバーサル ミュージック鈴木貴歩氏(右)

小野:
AWAを作るときは音楽に没入できるといいますか、音楽の体験を邪魔されないようなサービスにしたいと考えていました。サービスがダサいだけで、聴いている音楽までダサく感じる、ノッてこない...オシャレなレストランでご飯を食べると気分が乗ってくるけど、イケてないところだとノってこないことってありますよね。そういう、空間としての価値を僕らは作りたかったんです。
小室:
まず、入り口からですよね。今日は(各社の定額制音楽配信サービスのうち)AWAさんだけでもこの場に来て頂いて良かったと思います。もちろん疑問もあるから、問いかけたいことたくさんあるんでね。 でも、実際ユニバーサルさんは(配信される)コンテンツだらけじゃない?もはやビートルズまでユニバーサル、EMIまでユニバーサル、すごい数じゃないですか。実際、楽曲数も相当提供されている訳ですよね。何か変化ありました?
鈴木:
まさに、ユニバーサル ミュージックの豊富なカタログが、この定額制音楽配信サービスでは非常に活きてきます。過去の名作をお預かりしている会社なので、再生しやすいプレイリストとか、ソーシャルを通じて色々な楽曲に触れて頂くというのが、定額制音楽配信サービスの醍醐味なので、そういう意味では、様々なコンテンツがある会社にはとても良いですね。
小野:
実際、6月の再生数のランキングでもユニバーサルさんの楽曲は強かったです。僕らも意外だったのが、上位29位まで全部洋楽だったんですよ。Maroon 5さんの「Sugar」が圧倒的な再生数で1位でした。
鈴木:
そのランキングも、サービスごとに特色が出てくるところですよね。LINEさんだとまた違う傾向が出てくる。
小室:
AWAの方が、洋楽っぽく見えるのかな。ユーザーの方から。
鈴木:
EDMのプレイリストが、最初に目に触れることが多いかもしれないですね。うちのZeddとか、その辺がすごく反応良かったですね。
小室:
夏フェスがこの時期はしばらく続くので、EDMも含めて、洋楽が上位を占めているんじゃないかな。いきなりアプリを開けた途端に、ユニバーサルさんのアーティストが並んでいますからね。洋楽のところっていう意味ではApple Musicの印象が強いですけど、実はかえって邦楽というか、J-POPが多いかもしれないですね。なので、ユニバーサルさんはどうなのかなって思ったんですけど。やっぱり効果はあるんですね。
鈴木:
ありますね。
salon_7_1_3.jpg

AWA 小野哲太郎氏(右)、音楽ブロガー ジェイ・コウガミ氏(中)、日本テレビ 海野大輔(左)

■各社サービスにおけるJ-POPの存在感は?

小室:
僕はこの場に邦楽アーティスト代表で来ているとしたら聞いてみたいのが...J-POPで1〜10位まで全部占めることがあるかどうか?この後どうですかね?
小野:
一時期、ローンチ後一気にユーザーが増えだしたときに、トップランキングに邦楽が増えたタイミングがあったんですけど、不思議とその後、会員数が上がっている中で洋楽が増えてきたっていうのが意外な発見でしたね。
ジェイ:
鈴木さんがおっしゃっているように、ユニバーサルさんみたいに膨大なカタログを持っているレーベルがどんどん楽曲を提供して、新たにアーティストを発見する場でもあって、かつ懐かしい曲を発見する場という意味でも、今までこういった場所は音楽サービスの中には存在しえなかったと思います。
小室:
iTunesも一時期洋楽推しはしてたじゃない。けど僕もお陰様でチャートで1位をとらせて頂いたこともあったけれど、J-POPの方がチャートで上の時はあったよね。なので、iTunesは日本の一般のユーザーにも根づいたのかなと思っていたんですよ。と、思いきやの、このタイミングでの大きな動きですよね。
鈴木:
OTAって僕らは呼んでいたんですけど、Over The Air...つまり携帯回線でiTunesで音楽を買えてダウンロード出来るようになったのが4〜5年前ですかね?それから、着うたとか着うたフルがチャートと似通った傾向になったというのをリアルタイムで見ていました。 iTunesはストアの並びからユーザーが好きな物を発見したり、好きな物を買うというスタイルだと思うのですが、定額制音楽配信サービスはプレイリストをシェアしたり、お気に入りのプレイリストをフォローしたり、ユーザーの方の好みありきの側面があるなと。 あと、一つ似てるなって思ったのがShazamという音楽をスマートフォンに聞かせると曲名を検索してくれるアプリですね。Shazamにもチャートがあって、もしかしたらAWAと似通っているのかなという印象がありますね。これも「あの曲いいな、なんだろう」ということがカギになるのかなと。
小野:
AWAで面白い傾向がありまして、最初はJ-POPの有名なアーティストさんの曲を入れたプレイリストが最初の1〜2週間増えたんですが、徐々にプレイリストのタイトルを見ていると、明らかに「他者に聴いてほしい」「見つけたったぜ、この曲!」といったプレイリストが増えてきて、その時に洋楽が流通し出したなと感じました。
小室:
SoundCloudかBeatportとか、ああいうの(海外の音楽サービス)に慣れている人もいるんじゃないですかね?
小野:
プレイリストをハードに作られている方は、かなり詳しい方が多いですね。 有名なJ-POPの方の曲じゃなくて、「これ聴いたことあるでしょ?でも、知らないでしょ?」と曲を入れたり。
鈴木:
各社のサービスを見ていると、プレイリストの名前のつけ方にも特徴がありますよね。AWAは、例えばEDMでも「美メロEDM」みたいな、若者にウケる名前で。けど中身はちゃんとした曲がキュレーションされているという。LINE MUSICの場合は、割とすっきりとした日本語のプレイリストが多いように思いますね。Apple Musicは、PitchforkとかTopspinみたいなメディアの編集者を転職させて、彼らがプレイリスト作っているので、それこそ「はじめての小室哲哉」とか「はじめてのEMINEM」とか、ディープ且つちょっとオシャレに聴かせようというプレイリストの名前が多い印象ですね。

話題は、定額制音楽配信サービスにおける「プレイリスト」へ。これからの時代に「プレイリスト」が担う役割とは?その内容は次回記事にてお届けする。

構成:市來孝人

SENSORS WEBエディター
PR会社勤務の後独立。福岡やシンガポールのラジオDJ、東京でのMC・ナレーター、ライターとして等の活動を経て、メディアプランナー・プロデューサーとして活動中。


写真:延原優樹

最新記事