定額制音楽配信サービスにおける"プレイリスト"の役割とは?〜小室哲哉/ユニバーサル ミュージック/AWA/ジェイ・コウガミ が語る音楽業界の未来(2/7)

2015.09.04 19:00

7回目の実施となるSENSORS SALONのテーマは「変貌を遂げる音楽業界2015」。2015年初夏、AWA・LINE MUSIC・Apple Musicと、定額制音楽配信サービスが続々と日本国内でもリリースされた。音楽を聴く環境が今後大きく変化していくと予想される中で、アーティスト(小室哲哉氏)、レーベル(ユニバーサル ミュージック)、サービス(AWA)、音楽ブロガー(ジェイ・コウガミ氏)といったそれぞれの立場から、これからの"音楽業界"についてじっくり語って頂いた。

OA未公開シーンを含め、YouTubeでも公開中

今回のSENSORS SALONは、ミュージシャン・音楽プロデューサー 小室哲哉氏、ユニバーサル ミュージック合同会社 営業統括本部 副社長直轄 イノベーション担当ゼネラルマネージャー 鈴木貴歩氏、AWA 株式会社 取締役/プロデューサー 小野哲太郎氏、音楽ブロガー ジェイ・コウガミ氏というメンバーでお送りする(モデレーターは日本テレビインターネット事業部「SENSORS」クリエイティブディレクターの海野大輔)。SENSORS.jpでは、このSENSORS SALONの模様をほぼノーカットで、全7回の記事としてお届けする。2回目の当記事は、定額制音楽配信サービスにおける「プレイリスト」の役割について。

■プレイリストを通して広がる、音楽との出会いの可能性

小室:
昔のプレイリストと21世紀のプレイリストって、意味合いが違いますよね。こないだも、そこを教えてあげてほしいというようなツイートをしたんですよ。そうしたら、何人か「君達が見せればいいんだよ」「教えなくてもみんな分かってるよ。簡単なんだから。とにかく有名なあなたたちが見せればいいんだよ」みたいな感じで返してくれた人もいて。そのときは、いわゆる21世紀のプレイリストを、定額制音楽配信サービスの人たちが教えてあげたら、見せてあげたらいいんじゃないかな、って書いたんですよ。みんな(プレイリストの役割の違いについては)認知してますか?
小野:
おっしゃる通りで、プレイリストのタイトルを見ていると明白です。「朝」とか「電車で聞く」といったタイトルのものは、今までのプレイリストの概念で作られていて、自分で聴く用に作られているものです。一方、他の人に聴いてほしい人は「失恋した日の夜に聞いて下さい」とか、「雨の日の日曜日に聴いて下さい」とか、21世紀型だと感じますね。
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小室:
完全に向こうにいる人というか、見えない人に向けてのプレイリストということですよね。
小野:
アーティストさんとかDJさんの並びに自分がいるくらいの、「私がセレクトして提供しています」という感覚を持たれている方もいますね。
小室:
さらに、その認識の上で、一方、アーティストがプレイリストではない自分のアルバムの曲順を作りますよね。その大変さとか頑張りとか、プレイリストの並びの順番との差別化・認識をしてくれるかなーというところもあって。ゴッチャになっちゃうと、僕たちミュージシャンも「どうせバラバラだったら曲順どうでもいいや」「聴いてくれそうなものから並べればいいや」って感じになっちゃうので(笑)。どれくらいでその違いもみんな理解してくれるかなって。半年くらいでなりますか?
小野:
なるように頑張ります(笑)。
小室:
年内くらいで皆が分かってくれれば、僕たちも今まで通り出来る気がするので。
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■"プレイリスター"の影響力が高まる時代が来る?

ジェイ:
そういう(プレイリストから音楽を聴く)やり方が広まってくると、小室さんがおっしゃっていたようにiTunesストアにバナーが並んでいる中で探したような聴き方が生まれた時のように、音楽の探し方が大分変わってきますよね。プレイリストから音楽を探すっていう探し方って今までなかったような気がするんですよね。
小室:
CDショップのコーナーで店員さんが頑張って手書きでオススメのレコメンドをしてくれたり、ああいったはっきりした区分けに導かれてショップに入ってコーナーに行くのは、悪くはないことだと思うんですよね。iTunesのようなでっかいストア、1000万曲もあるストアに入ったら、困っちゃいますからね。ある程度導いていってあげないと。
鈴木:
定額制音楽配信サービスも会員数も増えていってスケールが大きくなってくると、ストアのPOPだったり、ラジオのパワープレイのような形になっていくと思います。海外はすでにそうなっていて、Spotifyでもフォロワー数が多いプレイリストを持っている人にはレーベルから、それは結構インディーズが多いらしいんですが、ダイレクトメッセージが来て「うちのこのアーティストの新譜を上の方に載せて下さい」というようなメールが来るみたいです。いわば、昔のストリートチームみたいな。プレイリストマーケティングチームみたいなポジションも出来ているようですね。
小室:
ずいぶん前の話で、Spotifyの話ですけど、SpotifyでリコメンドしてくれないとiTunesで買ってもらえないから、ColdplayだったりみんながとにかくSpotifyでリコメンドしてもらってっていう道順がロードマップとして、そこから購入してもらうようなシステムになってるという話を聞いたんですよね。そこ(Spotify)で認めてもらわないと全然ダメなんだよねっていう。いくら宣伝しても。そういうことでしょ?
鈴木:
そうですね。まさにそういったサービスが、ラジオや有線のような機能もあるってことですよね。そういった意味では(定額制音楽配信サービスでも)Apple MusicにBBCの有名DJ、ゼイン・ロウが移籍したりとか。
小室:
そういうのって公表してるんですか?
鈴木:
公表していますね。象徴的な動きだと思いますね。
小室:
(日本に例えて置き換えるなら)小林克也さんがAWAに転職してプレイリストのチームに、みたいなことですよね、
小野:
(初代Facebook CEO)ショーン・パーカーが作ったプレイリストの中にLordeが入っていて大ヒットしたように、プレイリスターに人気が集まってそこに入る新人アーティストやインディーの方が脚光浴びるという動きが面白いですよね。
鈴木:
まさに、うちのLordeの例は象徴的ですよね。ショーン・パーカーは"Facebookの人"で、音楽業界の人ではないのですが、社会的に大きな影響を持つ人が、Spotifyにもフォロワー数がいて、その中にLordeっていう新人の女の子が出てきて、耳に触れる機会を作った。それが今の時代の象徴的な所ですよね。
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小室:
「プレイリスター」...面白い。新しい職種になるかもしれない言葉で、僕も今初めて聞いた言葉ですけどね。まだまだ日本は全然浸透していないと思うけれど、そこで人気者になれたりとか、職業になれたりとか、面白いですね。確かに。ちょっと前のセレクターみたいなことだったりとか、もっと言えばDJがやってくれていることですよね。そうなんだね、そういう人が出てくるっていう可能性もあるのか...。
鈴木:
極端に言えば音楽的なセンスや素養が無い方でも、社会への影響力を持っている方がヒットアーティストを生み出すっていう、そういう時代があるかもしれないですね。
小野:
ただ、ブログって一般の方でもすごく有名な方がいらっしゃって、ブログのように文才、表現でアウトプットに出やすい場合は一般の方でも人気が出やすいですが、(プレイリスターの場合は)一般の良いセンスしてる方でも、まだ再生数としてはプロの方に比べると出てこないんです。もっとそういう方にもフォーカス出来たらいいなと思っています。
小室:
そういう現象があるよということを、もっと皆が知るようなアナウンスメントができるような場があるといいなって思いますね。DJのセレブリティとしての影響力というのはもう歴然としてるんですけど、下手したら将来プレイリスターみたいな人が、相当なところまでのすごい影響力を持つ可能性もあるってことですよね。そうすると僕たちはもちろんエンドユーザーを見ながらも、そういったレコメンダーみたいな人たちにひっかかってもらわないとダメなんだなってところに行きついちゃいますよね。まず、レコメンドしてくれるプレイリスターの人たちが「いいな」って思ってくれるものをプレゼンテーションしていかないとと、ちょっと意識しちゃいますよね。ついついね。
小野:
有名なプレイリスターが出てきたら、先行でその人にだけ聴いてもらって、発売日に合わせてプレイリストに入れてもらえたらいいなみたいなことも起こるかもしれないですよね。
小室:
昔でいう白盤配っちゃうみたいなことだよね。リリースパーティーも呼んじゃってとか。やっぱり(アーティストとしては)なるべく身近なところに自分の楽曲が出てた方がいいに決まっているので。まずは、聴いてもらう。知ってもらうところで、そこらへんはちょっと考えちゃいますよね。エンドユーザーも大事なんだけど、選んでくれるプレイリスターも大事だなぁって。
小野:
エンドユーザーも、「そのプレイリスターの良いって言ったものは良い」という感覚にもなっていきそうですもんね。
小室:
それは間違いないですね。これだけの情報過多の中では、究極の音楽マニアじゃないと全てを聴き込んで選びに選んでの10曲選ぶのとかって、難しいですよ。それもアルバム単位じゃなくて、1曲単位で選ぶとかだったらさらに難しいですよね。アルバムの12曲、14曲の中の5、6曲目くらいにすごい良い曲があるかもしれないじゃないですか。サラッとアーティストが歌ったり書いてみた曲がもしかしたらめちゃくちゃ良い曲かもしれない。ただ、なかなかそこまで(の曲に知ってもらう)には行き着けないので、今は。僕らもアルバム作りの時に、真ん中らへんの曲ってすごく考えちゃうんですよね。1、2曲目はまず「このアルバム、こんな感じね」というのが来て、さらにその次ってところが。つい最近、globeで過去の楽曲をリプロダクトしたアルバム(「Remode 1」)を出したんですけど、ついついiTunesでの楽曲の人気度のグラフ、「あ、これ人気あったんだ」って振り返ってみる時に見ちゃいましたからね。「だったら(「Remode 1」では)こういう感じに並べようかな」って。

次回の記事では、定額制音楽配信サービスが数々立ち上がる中で、これから生まれる新人アーティストやインディーアーティストはどのように生き残っていくべきか、という問題に一同は踏み込んでいく。

構成:市來孝人

SENSORS WEBエディター
PR会社勤務の後独立。福岡やシンガポールのラジオDJ、東京でのMC・ナレーター、ライターとして等の活動を経て、メディアプランナー・プロデューサーとして活動中。


写真:延原優樹

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