"音楽配信サービスの時代"にアーティストが生き残る術〜小室哲哉/ユニバーサル ミュージック/AWA/ジェイ・コウガミ が語る音楽業界の未来(3/7)

2015.09.09 11:30

7回目の実施となるSENSORS SALONのテーマは「変貌を遂げる音楽業界2015」。2015年初夏、AWA・LINE MUSIC・Apple Musicと、定額制音楽配信サービスが続々と日本国内でもリリースされた。音楽を聴く環境が今後大きく変化していくと予想される中で、アーティスト(小室哲哉氏)、レーベル(ユニバーサル ミュージック)、サービス(AWA)、音楽ブロガー(ジェイ・コウガミ氏)といったそれぞれの立場から、これからの"音楽業界"についてじっくり語って頂いた。

OA未公開シーンを含め、YouTubeでも公開中

今回のSENSORS SALONは、ミュージシャン・音楽プロデューサー 小室哲哉氏、ユニバーサル ミュージック合同会社 営業統括本部 副社長直轄 イノベーション担当ゼネラルマネージャー 鈴木貴歩氏、AWA 株式会社 取締役/プロデューサー 小野哲太郎氏、音楽ブロガー ジェイ・コウガミ氏というメンバーでお送りする(モデレーターは日本テレビインターネット事業部「SENSORS」クリエイティブディレクターの海野大輔)。SENSORS.jpでは、このSENSORS SALONの模様をほぼノーカットで、全7回の記事としてお届けする。3回目は、定額制音楽配信サービスが数々立ち上がる中で、アーティストはどのように生き残っていくべきかという話題だ。

■各アーティストの"ルーム"に全ての情報・機能が集約される?

海野:
今定額制音楽配信サービスが数々立ち上がる中で、これから生まれる新人アーティストやインディーアーティストは、どのように生き残るための戦略を立てていくべきでしょうか?
小室:
僕もどう生き残るかという点はかなり考えていますね。Apple Musicに「Connect」がありますよね。あのサービスのように好きなアーティストのルームみたいなところまで導いてくれると、そこにアーティストの色々なものが、もちろん画像や動画もあるわけじゃないですか。将来きっとGoogle Play Musicだったりとかも参入してくると思うんですけど(収録時)、そうなるとチケットだったり、ライブ会場までの地図だったりとかも含めて全部いっぺんにサービスしてくれる訳だから、一人一人がネットの中にインディーレーベルみたいな自分のマネジメントルーム、プロダクションみたいなことを作れるのかなと思っていて。そこでマーチャンダイズとか、ライブのチケットとか、もしかしたらアナログ版も売ってたりとか、あらゆるアーティストに関して付随するものがそこに蓄積していく。それが浸透していけば...特にライブですね。やっぱり。チケットを取るために、また別のサイトに跨いでまたカード決済してとか、そういうことよりは、一貫してやってもらったほうが、もちろんリスクもあると思うんですけどその方が潤えるというか。そういう機能がもうちょっと発展してほしいなっていうのと、現段階ではそういうのが僕は最終形みたいなことだと思っていて。AWAやLINE MUSICとかでは(そういった機能が生まれる可能性は)どうなのかなって。
鈴木:
LINEさんは発表会でもそういう部分を打ち出されていましたね。こういったものはそれぞれ徐々に出来てくると思いますね。もちろんサイバーエージェントさんでも出来るだろうし、そういった意味では、インディーズのアーティストでも自分たちが持っているユーザーベースをいい形でビジネスに繋げていくという環境が揃うのかなって思いますね。
小室:
今、アーティストがやれる限りのことは、ライブ会場に行けば一番わかると思うんですよね。ショップだったりファンが好きなものが一番揃っているのがライブ会場なので。それらがネット上のサービスの中にあったらすごく助かると思うんですよね。
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小室哲哉氏

小野:
サービス内にアーティストごとのルームが存在していても、導線をちゃんと設計していないと、そのアーティストの部屋に行ったらそのアーティストのことがすごい好きになれるのに、道標がないが故にその部屋に入らずにスルーして結局元から知っている有名なアーティストの部屋に入ってしまうようなことがきっと起こりうるので、サービス側がやるべきは、その人が行くべき部屋をゴリ押しじゃなくて自然に提示してあげる設計ですね。
鈴木:
見つけられるまでのところも大事で、例えばSoundCloudみたいなサービスだとタグ付けできるじゃないですか。この曲はどんなジャンルでどんなインスパイア受けてと、そういったところから探しやすくすることも大事だなと。そういうところが更に定額制音楽配信サービスにも統合されていくと、より発見が広がるのかなと思います。
小室:
ある程度、統合してくれるルールみたいなものがあると新人のアーティストとかは楽になると思うんですよね。確実に聞いてくれる機会が今までよりも増えると思う。

■アーティストやレーベルによる、ユーザーとの密なコミュニケーション

ジェイ:
最近の実体験ですと、小室さんのLINEのアカウントからメッセージと一緒にglobeのLINE MUSICのリンクも一緒に送られてきて、それをクリックしたらLINE MUSICに飛んでglobeのページがあって、小室さんのメッセージがあるので「あ、なんかglobe聴いてみよう」と思いましたね。それを僕はまた知り合いにもLINEでシェアするということがありました。まるでアーティストさんと直接やり取りしているような関係性で、音楽もすぐに聴けるし、そのスピード感・関係性というのも大事だと思いますね。
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音楽ブロガー ジェイ・コウガミ氏

小室:
そうですね、特にLINEの場合は、ワンバイワンな感じをすごく大切にしていて「ついつい返信してしまいます」っていうのを逆に755とかで書いてくる人もいるんですよ(笑)。そのぐらい近い、フレンドリーな感じになれるっていうことは間違いないんだよね。昔は、CDショップでインストアライブとかやらない限りは、アーティストの近くに触れる機会はないわけですからね。
鈴木:
今はライブ配信のテクノロジーもどんどん出てきているので、そういうところとの組み合わせも今後大事になっていきますね。
小室:
統合とまではいかなくてもいいので、皆さんがちょっとした同じルールで動いてくれると、すごく助かりますね。もちろん各サービスごとの売りがあっていいと思うんですけどね。どうなんだろうな、ユニバーサルさんは特に海外のアーティストの人たちがそのへんの使い方はわかってるから。
鈴木:
そうですね、Web担当に限らずマネジメントも含めても積極的に、意識的に活用していますね。うちのアーティストではないですけど、LINKIN PARKのビジネスなどは新しいテクノロジーを使って意識的にどんどん仕掛けていると思いますよ。
小野:
今までは音楽の検索の仕方って、アーティスト名か曲名かで検索してAmazonで買うとか、iTunesで買うとか、そういったことが多かったと思うのですが、定額制音楽配信サービスの場合は、テーマとかムードみたいなところから探すことが結構世界的に一般化していますよね。例えば、「夏」「花火」「しっとり」といったキーワードで曲を検索で引っ張ってきてくれるので、社会的なモメンタムが働いているような事象に向けてアーティストさんが曲を作るような流れも出て来やすいのかなとすごく感じますね。
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AWA 小野哲太郎氏

小室:
たぶん、アーティストにとっても自然とやっていたことはあると思うんですよ。例えば春に「桜」っていう言葉を使ったりとか。より検索してくれると分かったら、一層その季節や時期に向けての曲の作り方が出来るかもしれないですね。今までは、レーベルも会社なので決算日とかもありますし(笑)。「とにかく今期まで」とか、そういうリリースの事もなくはないですからね。調べて頂ければ分かるけど(globeの1stアルバム「globe」など)僕も3月31日とかのリリース多いですよ(笑)。
海野:
マネジメントやレーベル側も、定額制音楽配信サービスが生まれることでプロモーションの仕方も変わってくるのではないかと思うんですが。
ジェイ:
今までだと、CDのリリース日をピークに持ってくるという売り方だったと思うんですが、これからはどうやって継続的に聴かれるかですよね。どんな人のプレイリストに入って、それを今日も明日も来週も聴いてもらえるかが重要になってくると思うんですよね。そうなってくるとプロモーションの考え方も、よりロングタームで長期的に考える見方になってくるんじゃないかと。
鈴木:
まさにユニバーサル ミュージックの海外で取り組んでいるのが、「uDiscover」というサービスです。所属アーティストがいっぱいいるものですから、「uDiscover」のFacebookをlikeしておくと毎日、例えば、今日は「Creedence Clearwater Revivalが何何をリリースした日」とか、明日は、「クリス・コーネルが生まれた日」みたいな、そういう情報が継続的に流れてきます。リリース日だけじゃない、毎日何かしらのひっかけでどんどん(過去の)情報を出しています。また、サイト上では例えば「Ten Classic Brian May Solos」としてブライアン・メイのソロワーク、あらゆるテーマでSpotifyのプレイリストを作って紹介しています。これの再生回数に応じて、Spotify経由の売り上げに繋がっていくという形です。レコード会社が音楽フリーペーパーを作って、そこからプレイリストを再生させるようなイメージですね。
小野:
フリーペーパー(のようなコンテンツ)から誘導してSpotify上でマネタイズしているということですよね。
鈴木:
再生するサービスもSpotifyだけじゃなくて、RdioとかDeezerなど、自分のお好みに合わせて選べます。
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ユニバーサル ミュージック 鈴木貴歩氏

小野:
このサイト自体の集客はどのようにされているんですか?
鈴木:
Facebookとサーチエンジンマーケティングですね。
小室:
CSで音楽チャンネルがいくつかある、いわばそれのネット版ですね。
鈴木:
ネット版を、レコード会社が自らやる時代になっているんだろうなと思います。
小室:
でも、これを見るとレコード会社ってまだ必要だなと思うよね。レコード会社はいらないんじゃないかみたいな論調もありますけど、こういう風に積極的にゲートを作ってもらえると、聴き方も広がるよね。
鈴木:
さらに最終的にはSpotifyなどのプレイリストだけではなくて、豪華版のボックスやアナログが買えるストアに繋いでいって、好きな方に買って頂くと。

これからの時代のアーティストやレーベルが考えるべきプロモーション施策について様々なアイデア・事例が語られた今回。さらに次回は「定額制音楽配信サービスなど音楽の楽しみ方が変わる中、ヒット曲は生まれるか?」という話題に進んでゆく。

構成:市來孝人

SENSORS WEBエディター
PR会社勤務の後独立。福岡やシンガポールのラジオDJ、東京でのMC・ナレーター、ライターとして等の活動を経て、メディアプランナー・プロデューサーとして活動中。


写真:延原優樹

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