音楽の楽しみ方が変わることで、新たなヒットは生まれるか〜小室哲哉/ユニバーサル ミュージック/AWA/ジェイ・コウガミ が語る音楽業界の未来(4/7)

2015.09.11 10:00

7回目の実施となるSENSORS SALONのテーマは「変貌を遂げる音楽業界2015」。2015年初夏、AWA・LINE MUSIC・Apple Musicと、定額制音楽配信サービスが続々と日本国内でもリリースされた。音楽を聴く環境が今後大きく変化していくと予想される中で、アーティスト(小室哲哉氏)、レーベル(ユニバーサル ミュージック)、サービス(AWA)、音楽ブロガー(ジェイ・コウガミ氏)といったそれぞれの立場から、これからの"音楽業界"についてじっくり語って頂いた。

OA未公開シーンを含め、YouTubeでも公開中

今回のSENSORS SALONは、ミュージシャン・音楽プロデューサー 小室哲哉氏、ユニバーサル ミュージック合同会社 営業統括本部 副社長直轄 イノベーション担当ゼネラルマネージャー 鈴木貴歩氏、AWA 株式会社 取締役/プロデューサー 小野哲太郎氏、音楽ブロガー ジェイ・コウガミ氏というメンバーでお送りする(モデレーターは日本テレビインターネット事業部「SENSORS」クリエイティブディレクターの海野大輔)。SENSORS.jpでは、このSENSORS SALONの模様をほぼノーカットで、全7回の記事としてお届けする。4回目の当記事は「定額制音楽配信サービスなど音楽の楽しみ方が変わる中、ヒット曲は生まれるか?」という話題だ。

■フォーマットが変わるたび、新たなサービスが生まれるたびに変化してきた音楽の楽しみ方

小野:
マーケティングと物作りの中間くらいの話かもしれないんですが、スマホで定額制音楽配信サービスが流行ってくるとジャケットの画像が小さいページも多いので、その点を踏まえてアーティストさん側でジャケットへの考え方を変える・変えないってあったりするんですか?
小室:
(新たな音楽フォーマットが生まれる)その度その度に考えていますね。どんどん小さくなっちゃいますから(笑)。元々最初はアナログ盤だったので、表1表4の広げたりもできたり、見開きの横一の大きな絵柄も書けたので。その時の大きさから考えたらね。iTunesが出てきた時も、(画面上で)レコメンドのバナーくらいの大きさで目立つものを比較対象として見ながら、グラフィックのチームと話したりというのはもうつい最近までやってましたから。(ジャケットの絵柄を)ちょっと細かくしちゃダメというのは基本ですね。いわゆるアイコンみたいにしっかりしてなければダメだよねとか。
海野:
globeはアイコン的なジャケットが多いですよね。
小室:
もちろんアイコンみたいなのがあった方が良かったりとか、女性でビジュアルに自信がある人だったら顔だけを大きく見せるとか、小さい画面ながらいろいろ考えますよね。
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小野:
CDで3,000円となるとジャケ買いしてみようとはなかなかいかないですが、定額制音楽配信サービスだと、ジャケ買い的にとりあえず聴いてみようという機会がCDより多いと思います。
小室:
ジャケットを広げて見られたりとか、そういったサービスはすぐ出来るんじゃないですか。デザインのチームも僕たちも「広げてこのくらいでも見られるんだよ」というところまで考えてグラフィックも作ることは想定出来るようになったらいいですよね。今のところエンドユーザーの人たちにとって「小さいよね」で終わっちゃうと思うので。
小野:
そういう意味で、(サービスを)アーティストの方と対話をしながら作っていかないといけません。例えばサービス側がさらにジャケットの表示を小さくしちゃったからまた小さくしなきゃいけない、という形になってしまうと良くないので。アーティストさんとサービス側が一緒に支え合って違法な音楽サービスを使っている人を有料の公式のものに連れてくるということをやらないといけないなと。
鈴木:
スマホならではの遊び、特性があってもいいのかもしれないですよね。昔のアナログ、例えばPink Floyd(「狂気」)のジャケットでは開くとピラミッドがつながる。CDになると、中にブックレットを入れられるのでブックレットがどんどん豪華になる。そういった遊びが定額制音楽配信サービスにはまだ無いのかなと思う。遊びをつくると、アーティストがそれを活用してクリエイティブの可能性が広がるところもあると思いますね。
小室:
タブレット自体の遊び方がなんとなくみんな分かってきた頃かもしれない。でもまだ定額制音楽配信サービス上ではそういう遊び方はまだまだ分からない。(そういう機能が浸透することで、アーティストの)「かわいいじゃん」「イケメンじゃん」ということ(ビジュアル面での魅力)が分かりやすくなってくれるので、僕たちも考えがいがあるというか、深く考えられるというか。今、タイトルでさえ、ギリギリですからね。アルファベットを長く並べていると検索で難しくなっちゃうんで。タイトルもシンプルにしなきゃな、っていう考えにはなってました。
小野:
難しい英単語を使うことで、誤字脱字があると検索しても出てこないもありますからね。
小室:
日本語の邦題にしても、長すぎると2段になっちゃうからとか。2段になっちゃうと見え方が格好悪くなってしまうんですよね。そういうことを気にするようにはなりましたね。
海野:
LINE MUSICさんのスタンプ代わりに音楽をシェアしましょうとか、一種の新しい遊び方だと思うんですよね。今までと違う聴き方・遊び方って、新しい定額制音楽配信サービスのひとつのポイントかなと思いますが、いかがですか?
小室:
ちょうど2、3日前にミュージシャンと話していて、1曲作る労力とかエネルギーとかってどんどん減っていくんだろうな、そういう大変さってわかってもらえなくなるんだろうなっていう話もあったんですけど、でも、LINEとかで見ていると、スタンプ作る人だって相当のエネルギーを持って考えるんだろうなってところに行き着いて。そんなことを言ったらゲームのクリエイターの人もそうだし、アニメーターの人もそうだし、決して音楽だけが低価格になっちゃってその労力と見合わないみたいなことでもなくて。みんな結構大変なんだけど、楽しんでもらうというか遊び心の道具になっているという中で思うのは「僕たち(ミュージシャン)だけが大変な訳ではないな」って(笑)。
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鈴木:
送り手が意図していなかった遊び方も許容して、それが広がるっていう側面もありますよね。
小室:
その新たな動きから何かサプライズみたいなことが一個でも起きてくれると、ミュージシャンのやる気がまた変わってくるんじゃないかって気がしているんですよね。そういったユーザーの遊び心で楽曲が有名になっちゃったりとか、そういうことが起こってくれないかな〜ってすごく思いますね。
鈴木:
LINEの中だったりとかで、歌詞を手書きして絵とかスタンプを押した画像を恋人に贈るようなことがあって、歌詞スタンプも偶発的に流行っていたり、そこからその曲が好きになるとか、MixChannelのようなサービスの中でカップル達が自分たちのキスしている動画にラブソングをミックスしてアップロードしてそれがバイラルしていくみたいな。そんな、送り手側が予想していなかった遊びがどんどん生まれてきていると思うんですよね。そこが今のある意味現実というか。ユーザーの遊び方を見据えたクリエイティブというのも、当然ながらあるんじゃないかなと思う。
小野:
送りやすい曲作りとかもあるかもしれないですね。
小室:
シェアされやすいものっていうね。基本的にはラブソングは定番で送りやすい、使いやすい。
小野:
クマムシさんなんかもすごく送られてるんじゃないんですかね?
鈴木:
送られてますね(笑)。
小室:
話題、旬なものも。
鈴木:
まさにシェアされやすいというところでいうと、うちのアーティストでハジ→というアーティストがいるんですが、彼のラブソングをCouplesというカップル同士が使うクローズドのソーシャルネットワークのアプリに先行解禁したんですね。そうしたらカップルのいつもの思いにグサッと刺さったみたいで、めちゃめちゃバイラルしてiTunesもレコチョクも1位を取りました。アプリからヒットを生むという新しいことが出来たかなということも思います。
小室:
それも、すごいアイデアだよね。
鈴木:
楽曲のエモーショナルなところを結びつける先は、ソーシャルだったりアプリだったりゲームだったりどんどん進化するじゃないですか。そこと音楽をうまくどういう風にリンクさせていくかということがとても大事な時代なんじゃないかなと思います。

■新たな音楽の楽しみ方を、どう広く知ってもらうか

小室:
今のようなお話が、本当に一般的なところに伝染していかないとアーティストも「あ、そうなんだ」と思えなかったりするので。せっかく面白い、こうしたバズがあるわけじゃないですか。ちゃんと知らせていかないといけないのかなと。そういう(バズが起こっていくことを知らせていく)役目は今どこに一番あるんですかね?
小野:
やっぱりレーベルさんですかね?サービス事業者とアーティストを繋げる架け橋ですもんね。
小室:
(レーベルもサービス事業者もアーティストも)みんなかもしれないですね。メディアもありますよね。
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鈴木:
まさに昨年開催させて頂いた、小室さんとジェイさんにも登壇頂いた「THE BIG PARADE」のようなリアルイベントもそういった役割の1つを担えればなと思っていますね。
小室:
(「THE BIG PARADE」の記事を)今もTwitterに貼り付けてきてくれる人もいますからね。
鈴木:
やっぱり、小室さんのような第一線をずっと走られているアーティストがああやって直接話す機会ってなかなか無かったですよね。それがあれだけの長時間、しかも貴重な話。それがさらに未来に繋がるということが希有な機会だったなと思いますね。
小室:
僕も最初お話を頂いた時「何かな?」と思ったんですけどね(笑)。結果的にはすごくてね。今年もやらないんですか?
鈴木:
「THE BIG PARADE」に限らずいろいろ計画中です。海外だと「SXSW」があって、そこにはニール・ヤングとか、今年はスヌープ・ドッグが出てましたけど、すごいキャスティングのアーティストの考えを直接知れることも面白いし、勉強になるなと。
小室:
ニール・ヤングとか話聞いてみたいもんね。なんで自分で(高音質の音楽プレイヤー「PonoPlayer」を)やろうと思ったのか。聞きました?
鈴木:
実際には聞けなかったんですけど。
小室:
至る経緯を知りたいですよね。
鈴木:
MP3に対する音の不満を彼はずっと持っていて、自分でソリューションするっていう意識ですね。
小野:
日本だと無いんですかね?小室さんがやられるとか。
小室:
ソニーさんが頑張って、ハイレゾってことで頑張ってやったんだけども、一つのレコード会社での動きなので。みんなで頑張らないと、なかなか動かないんですよね。僕も昔(2005年)「HD Sound Lab.」というプロジェクトで、ビット数の高い楽曲の推奨をやったりしたんですけども、みんながやってくれないと難しかったりするので。
小野:
機器にもかなり左右されますもんね。
小室:
あと、全体的にiTunesサウンドに耳が慣れちゃってることもあるんですよ。
鈴木:
私も(ジェイ・Z による高音質の定額制音楽配信サービス)TIDALを使い始めて、CDクオリティーで聴けるというので、また改めて色んな曲を聴いてみて、それをまたBeatsのヘッドホンで聴いたりすると「なんかちょっと情報量が多いな」って思っちゃうんですよね。ちょっと最初のうちは耳が疲れちゃって。これだけの情報量があったんだっていうことを、こういった仕事をしてる身でも改めて思うというのが新鮮でしたね。もともと(Beatsの共同経営者)ジミー・アイオヴィンがユニバーサルにいて、ソニー側ではリック・ルービン、音楽プロデューサーの彼らがずっと「音が良くない、これはなんとかしないといけない」と言っていたという話を聞いたことがありますね。
小室:
ヘッドホンは、最後の最後にデジタルのデータがアナログになる瞬間じゃないですか。アウトプットの最後なので。そこに目を付けたこともすごく大事ですよね。
小野:
マーケティングも素晴らしいですよね。
小室:
アスリートの人とかね。試合前にバスからヘッドホンつけて出てきたら「そうなんだ」って思っちゃうよね。
小野:
しかもデザインをカスタマイズできるとか。
小室:
マーケティングうまいなってよりは、「やられたな、羨ましいな」って思いますよね(笑)。 AWAも是非日本人アーティストを世界に送ってほしいですよね。
小野:
今サービス自体は国内でしかまだ出来ていないので、サービス自体が海外に出ていって、一緒にアーティストも出ていくということはやりたいです。海外はさらに群雄割拠で、厳しい環境なので相当頑張らないと。日本も最近かなり厳しくなってきてますが、もとから海外はそういう環境ですからね。

サロンは徐々に海外に関する話題へ。次回以降は、定額制音楽配信サービスのみに限らず、「アナログ」「フェス」などといった音楽を取り巻く様々な話題を軸に、海外の最新音楽事情について幅広く議論していく。

構成:市來孝人

SENSORS WEBエディター
PR会社勤務の後独立。福岡やシンガポールのラジオDJ、東京でのMC・ナレーター、ライターとして等の活動を経て、メディアプランナー・プロデューサーとして活動中。


写真:延原優樹

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