配信サービス・CD・アナログ...音楽の楽しみ方の変化と住み分け〜小室哲哉/ユニバーサル ミュージック/AWA/ジェイ・コウガミ が語る音楽業界の未来(5/7)

2015.09.24 13:30

7回目の実施となるSENSORS SALONのテーマは「変貌を遂げる音楽業界2015」。2015年初夏、AWA・LINE MUSIC・Apple Musicと、定額制音楽配信サービスが続々と日本国内でもリリースされた。音楽を聴く環境が今後大きく変化していくと予想される中で、アーティスト(小室哲哉氏)、レーベル(ユニバーサル ミュージック)、サービス(AWA)、音楽ブロガー(ジェイ・コウガミ氏)といったそれぞれの立場から、これからの"音楽業界"についてじっくり語って頂いた。

OA未公開シーンを含め、YouTubeでも公開中

今回のSENSORS SALONは、ミュージシャン・音楽プロデューサー 小室哲哉氏、ユニバーサル ミュージック合同会社 営業統括本部 副社長直轄 イノベーション担当ゼネラルマネージャー 鈴木貴歩氏、AWA 株式会社 取締役/プロデューサー 小野哲太郎氏、音楽ブロガー ジェイ・コウガミ氏というメンバーでお送りする(モデレーターは日本テレビインターネット事業部「SENSORS」クリエイティブディレクターの海野大輔)。SENSORS.jpでは、このSENSORS SALONの模様をほぼノーカットで、全7回の記事としてお届けする。5回目は定額制音楽配信サービスからさらに話題を広げて、海外も含めた昨今の音楽業界事情について幅広く議論していく。

■日本と世界の音楽業界事情

海野:
ここからは定額制音楽配信サービスに限らず音楽業界全体を、海外事情などをテーマにおさらい出来ればと思います。
ジェイ:
ここ数年、売り上げでいうと世界の音楽市場ってプラスで成長しているんですよね。定額制音楽配信サービスが入ってきて(CDなど)フィジカルが落ちてきている部分を補完して売り上げを伸ばしてくれているという動きが、アメリカ、スウェーデン、ノルウェーなどで顕著に起こっていて、どんどんその流れがプラスになっていくということが今後も予想されるというのが業界の方たちの一般的な意見ですよね。
鈴木:
そうですね、それぞれが一斉にプラスに向かっているかと言ったらそうではないんですが、明るい兆しが見えているのは確かで。フィジカルメディアからデジタルにいって、いろんな人が色んな使い方をしていくようになって、ミレニアル世代と言われるような方々がスマホ経由で定額制音楽配信サービスを使っているということが多く出てきていますね。レコード協会の統計でもデジタルマーケットだけとっても、第一四半期は昨年の5%、第二四半期は4%プラスに転じていて、AWAやLINE MUSICなど定額制音楽配信サービスが出てきて、今後さらにプラスに転じると想定出来るのではと思いますね。 第2四半期の数字ですが、昨対比4%増で出ております。ただし、この4%にはいわゆるガラケー向けのサービス(着うた等)やアラカルトダウンロード(iTunes Store等)が含まれており、このトピックの中に出ているサブスクリプションサービスに限定すると約40%増(前年同期比)となります。
小野:
CDが特に売れやすい国・日本に関しても、ユニバーサルさんとしてはそういう風に捉えられてるってことですよね。
鈴木:
日本は昨年音楽ソフトの約80%がCDの売り上げで、それでガラパゴスだと言われたりするんですけど、実はドイツもCDの売り上げが75%で、フランスも2年前くらいは70%がCDの売り上げだったんですね。なので3カ国を俯瞰でいつも見るようにしているんですけど、これらの国の共通点は国土がそれぞれ小さいことです。小さいということは流通が洗練されていて、それぞれの国にCDショップが結構まだある。また、なんといっても母国語があって、J-POPのような母国語の音楽シーンがあるのが共通点ですね。そういった国では、CDがまだまだ楽しめられる傾向にあるのかなと。ただそういった国でもフランスはさらにデジタル化が進んできていて、フランスでいうとDEEZERというサービスが広がってきていているので、フィジカルの売り上げ比率が60〜65%くらいになってきていると。ドイツでもSpotifyなど定額制音楽配信サービスのメジャーな物はほとんどローンチされているので、そういった国でも多様性が保たれたまま市場が伸びてきていると言えますね。
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小室哲哉氏(左)、ユニバーサル ミュージック鈴木貴歩氏(右)

小室:
UKとかはどうなんですか?
ジェイ:
イギリスもデジタル化は完全に進んでいますね。Spotifyも早い段階から上陸していたので。
鈴木:
確か6年くらい前、私がユニバーサル ミュージックに入った時に初めての海外出張でグローバルの会議に行った時にSpotifyが丁度UKに来るという時でした。
小室:
国自体がね、UK自体がセレクターみたいな国じゃないですか。
鈴木:
今でも覚えているのが、日本でこういった議論をされている事と同じことを当時のイギリス人も議論していたんですよ。DLが売れなくなっちゃうんじゃないかとか、CDがなくなっちゃうんじゃないかとか。でも結果はそうじゃなかったという。
ジェイ:
象徴的だなと思うのが、売り上げがどんどん伸びている国は音楽チャートも変わっているんですよね。今まではフィジカルだけの売り上げ、ダウンロードだけの売り上げで計算していたチャートが、そこにストリーミングが入ってきて、ストリーミングの数も計算して、それでもっとストリーミングで活躍しているアーティスト、ストリーミングで人気の楽曲を知ってもらおうというような新しいチャートのシステムを、そういった国はすぐ打ち出したりもしますよね。
小室:
どこかでコンペティティブじゃないと。やっぱりチャートで上にあったら嬉しかったり、エネルギーが出たりすることってあるので。統合とはちょっと違うかもしれないんですけど、定額制音楽配信サービスの中での基準となるチャートが日本でも出来たら、「みんな(そういうサービスで)どう聴くかわからないし」じゃなく「そこの1位を狙おう」という気持ちにはすごくなれるかなと思う。1位になったんだよと言える喜びのようなものは(アーティストにとっては)ありますよね。
小野:
それがまた新しいユーザーを連れてくる。

■定額制音楽配信サービスが開始されたことで生まれる意義とは

海野:
定額制音楽配信サービスの狙いとしては、CDを習慣的に買ってきた人ではない層を取り込みたいという点もありますか?
小野:
そうですね、日本は特にCDが売れている国で、新しく定額制音楽配信サービスを始める事業者がCDを買っている人の市場を取ってきても何も良い事が起きないので。僕らがやるべきは、違法なサービスを使って音楽を聴いている人(への対策)。違法のサービスが昨今増えてきていると思うんですけど、それによってアーティストさん、レーベルさんにしかるべき収入が入らずに、次の音楽を作るという原資が回らずに音楽の創造のサイクルが崩れていく...ということを何としても止めたいというのは、AWAの大きなモチベーションになっていますね。まずは定額制で払ってもらって、そこで新しい音楽や新しいアーティストに出会ってもらって、そこからCDを買ったり、ライブに行ったりというステップを踏んでもらいたいという狙いは、サービス設計にもかなり影響しています。
鈴木:
世界で定額制音楽配信サービスをいろんなアーティストやレーベルが推しているのもまさにそこですよね。Spotifyもサービスが始まった北欧が、ハードディスクを丸ごと交換するような違法のサービスがはびこっている、そんな中でSpotifyが生まれて。以来、音楽市場がプラスに転じたというところから始まっていて、日本でもスマホが普及するにつれ、違法な音楽ソースから引っ張って来たりとか、聴けちゃうサービスがどうしてもはびこってきているのは事実なので、そういったところからアーティストに還元できるようなサービスをサポートするということは、ずっと変わっていないことですよね。
小野:
その点に関連してAWAのUIを見て頂くと、検索がないんです。検索って、基本的にはサービスの一番上にあると思うんですが、好きなアーティストを探して(検索して)聴いてもらうならCDを買ってもらった方がいいので。AWAはあくまでも新しい音楽に出会ってもらうためにレコメンドが出てくることを主軸にしていて、検索はもう一個ボタン押さないと出てこないというUIにしています。
海野:
フィジカルメディアが消えていくとは限らないですね。アナログも注目されるようになったりしていますもんね。
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AWA 小野哲太郎氏(右)、音楽ブロガー ジェイ・コウガミ氏(中)、日本テレビ 海野大輔(右)

ジェイ:
RECORD STORE DAYという、この日はレコードストアを皆で楽しもうという、お祝いする日があるんですね。この日になると皆がレコードストアに行って、その日にしか買えない限定版のアナログを買うとか、インストのイベントを皆で見に行くとか、アメリカ、イギリスを中心に世界中で広がっていて結構な年数を毎年やっている日です。アーティストもサポートしていて、ジャック・ホワイトとかFoo Fightersのデイヴ・グロールとかも実際にストアにきてライブをやってくれたり。アーティストも積極的にアナログを限定で作って販売する形ができているので、音楽をもう一回フィジカルメディアとして楽しむという文化がだんだんと広がってきているかなと思います。
小室:
ロンドンに行ったりしても、レコード屋に若い子たちがどんどん入って来ているんだよね。グリニッジにもアナログ屋さんがあって、店の中には若者がお父さんと一緒にいたり、すごい混んでましたね。ピカデリーの近くにもまだお店がありますね。まだ、先かもしれないですけど、いずれは3Dプリンターでアナログ盤が作っちゃうようなことも。昔、作る機械もあったんですよね。
鈴木:
作った方の話によると、音質がまだ良くないみたいですね。
小室:
センサーで拾うようなところ技術さえ、針じゃなくてデータで取るような感じになったりすると...という未来に期待しちゃう。聴く形はいろいろ自分の好みでというか。(聴く形の一つとして)CDも、もっとやりやすいと思うので。
鈴木:
定額制音楽配信サービスで音楽に触れる機会が増えて、(CD最盛期の)90年代の音楽も見直せるような動きが、小室さん周辺の音楽も交えてあると思うんですが、CDはブックレットを含めて、アート作品のような作品が多かったじゃないですか。CDは今"時代遅れ"のような感覚もありますが、実は新たなに出会った方からしたら「こんな豪華な音楽商品があったのか」という再発見もあるんじゃないかなと思っています。その辺りを僕らも注目して動いていますね。

定額制音楽配信サービスが続々生まれる中で、一方でのフィジカルメディアへの回帰。さらに近年はフェスの盛り上がりも注目されつつある。そんなフェスやライブ事情に関するトークを次回の記事ではお届けする。

構成:市來孝人

SENSORS WEBエディター
PR会社勤務の後独立。福岡やシンガポールのラジオDJ、東京でのMC・ナレーター、ライターとして等の活動を経て、メディアプランナー・プロデューサーとして活動中。


写真:延原優樹

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