音楽×リアルの場のトレンドは"フェスのバリュー化"?〜小室哲哉/ユニバーサル ミュージック/AWA/ジェイ・コウガミ が語る音楽業界の未来(6/7)

2015.09.29 13:30

7回目の実施となるSENSORS SALONのテーマは「変貌を遂げる音楽業界2015」。2015年初夏、AWA・LINE MUSIC・Apple Musicと、定額制音楽配信サービスが続々と日本国内でもリリースされた。音楽を聴く環境が今後大きく変化していくと予想される中で、アーティスト(小室哲哉氏)、レーベル(ユニバーサル ミュージック)、サービス(AWA)、音楽ブロガー(ジェイ・コウガミ氏)といったそれぞれの立場から、これからの"音楽業界"についてじっくり語って頂いた。

OA未公開シーンを含め、YouTubeでも公開中

今回のSENSORS SALONは、ミュージシャン・音楽プロデューサー 小室哲哉氏、ユニバーサル ミュージック合同会社 営業統括本部 副社長直轄 イノベーション担当ゼネラルマネージャー 鈴木貴歩氏、AWA 株式会社 取締役/プロデューサー 小野哲太郎氏、音楽ブロガー ジェイ・コウガミ氏というメンバーでお送りする(モデレーターは日本テレビインターネット事業部「SENSORS」クリエイティブディレクターの海野大輔)。SENSORS.jpでは、このSENSORS SALONの模様をほぼノーカットで、全7回の記事としてお届けする。6回目は近年盛り上がりを見せるフェスをはじめ、リアルの場での音楽の楽しみ方について議論していく。

■アーティストのライブもカンファレンスも同じ場で。複合的なフェス

海野:
音楽産業としてはイベントビジネスが大きな柱になっていますよね。海外フェスも盛んですし、それが日本にやって来たりとか、配信でも見れちゃったりとか。ジェイ・コウガミさんは最近、バルセロナのSonar Music Festivalに行ってらっしゃったそうですね。
ジェイ:
バルセロナで開催されたSonar Music Festivalというエレクトロニック系の音楽フェスに行ってきました。夜はThe Chemical Brothers、 Jamie xx、ハドソン・モホークといったエレクトロニック系のアーティストがプレイしていた一方、昼間はなんとテック系のカンファレンスをやっていました。KickstarterのCEOやGoogleの人が来て話していたり、これからのクリエイターのサポートをするためのワークショップとかをやっていたり、音楽のハッカソンをやっていたり、音楽のスタートアップの人たちのコンペをやっていたりとか。ただ音楽を聴くだけというよりも、他の楽しみ方もあるという複合的なフェスでした。今世界中に出てきているEDMのフェスとか、Coachellaみたいな大きなフェスとかも、今までの「ただ音楽を聴く」というよりも、「相手にどうやって楽しんでもらうか」「相手に何を感じてもらうか」が変わってきていると感じるんですよね。
小室:
昔からMIDEM(国際音楽産業見本市)とかね、フェスに近い感覚だったと思うんだよね。行くのはバイヤーの人が基本でしょ。けれど、みんな楽しんでいるというか。ULTRAの原点の、マイアミの...
ジェイ:
Winter Music Conference。
小室:
(Winter Music Conferenceも)20年くらい歴史があるでしょ。エリアの中の全てのライブハウスで小さいものから大きいものまで繰り広げられていて、お客さんは結構プロフェッショナルの人なんだけど、(仕事なのに)結構楽しんで帰って来ちゃってて「いいなー出張!」というようなことを言っている人がいたのを聞いたことがありますからね。
ジェイ:
そうですね、僕もバルセロナでは充実して帰ってきました(笑)。
小野:
昼は、音楽を聴きにきた一般の方も、カンファレンスを見たりしてるんですか?
ジェイ:
入れますけど、パスが違っているんですよね。昼間入れる人もいれば、夜だけの目的の人もいるし。ただ昼間からもすぐ隣で音楽は流しているんですよ。外でDJが大爆音で曲を流している隣で、物静かにみんなでトークセッションをやったりしていましたね。
小野:
すごい空間ですね。
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小室哲哉氏

海野:
鈴木さんもそこを目指して、「THE BIG PARADE」というイベントを昨年実施されたんですよね。
鈴木:
まさに「音楽を学べて楽しめる場」が、もっと日本にあってもいいんじゃないかなと。小室さんにもジェイさんにも出て頂いて、そういう場の取っ掛かりには出来たのではと思っていますね。
小室:
まずネーミングが良かったですよね。なんかすごく大きいフェスみたいな。
鈴木:
将来的にはWinter Music ConferenceやULTRAのような存在を目指して...20年くらいかかると思いますが(笑)。
小野:
サービス事業者としてもそのような機会があると嬉しいです。ユーザーさんは、そのサービスが公式なものなのか違法なものなのかかよく分からずに使っているので、その裏側を僕たちではなくて、第三者が説明をして頂ける機会があると、何が良くて何がダメかが浸透しやすいと思います。
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ユニバーサル ミュージック 鈴木貴歩氏

■フェスの名称が、アーティストの名前並のバリューに

ジェイ:
小室さんはライブ活動の中で、これまでと最近の変化で気付かれたことはありますか?
小室:
フェスというものは、例えばですけど、(周りでも)ULTRAのVIPが取れた知人がみんなから羨望の眼差しを得るようになっている。フェスの神格化までは言わないけど、外国人のDJたちが集まってきてくれるフェスが一番上にきてるなという変化はあるかな。一方で各アーティストのライブも、ついこの間もセカオワ(SEKAI NO OWARI)を見てきたんですけど、2日間で14万人動員と考えたら...DJが10〜20人でも日本で14万人集めるのって大変じゃないですか。と考えると、(フェスとライブの二極に)二極化しているところもあるし。フェスというものの神格化、ゴージャス感は、EDC(Electric Daisy Carnival)なのかどこが作り出したかわからないけど、DJが何をやってるのかが見れるということでVIP席が凄い高いわけじゃん。
小野:
ULTRAとかも尋常じゃないですよね。
小室:
ラスベガスとかだとありえない金額のシャンパンを頼まなくちゃいけなかったりとか、当然(VIP席があると)何もかも値段が上がっていく訳なので、そうすると気持ちがくすぐられるんでしょうね。そういうフェスと、(一方で)そういったお金のにおいがしないというか、非常にフレンドリーな、ショッピングモール帰りに観に来れちゃったみたいな(ものもある)。お子さん連れの家族が多かったり、皆さんフレンドリーで、写真も全員OKだったんですよ。何百人からスマホ向けられるって凄いなって。あの場のお客さんたちは(大規模な)フェスの方にはきっと行かないだろうなって思って。邦楽洋楽だったり、ダンスミュージック(などのジャンル)とかで分かれると思うんですけど、それがより近年はハッキリ(細分化して)分かれちゃってる気がしなくもないかな。もうちょっと僕らの頃は分かりやすくて。メディアがシンプルだったっていうのもあるんですけどね。「なにがいいの?」というものにほぼみんなが行きやすかった。 今はフェスにも出て何万人の中でもやる一方、ライブハウスとかで自分たちだけでやると「あれ、お客さん来ないな」みたいなことも有り得るかもしれない。アーティストも「フェスで何万人の前でやれててあんなに盛り上がってんのに、もしかしたらフェス(自体)の方が人気あるんじゃないかな」って思う時もあるんじゃないかな。フェスの力というか、フェスにアイコンになってるかもしれないね。アーティストバリューも、当然すごくある方もいるんだけど、スタジアムクラス・アリーナクラスを単独で出来るアーティストは10〜20組くらいかな?邦楽で言うと。
鈴木:
大事なのはそれが新陳代謝していくことなのかなとも思っていて。セカオワはすごく良い例で、彼らみたいな新世代のアーティストが14万人集められていることは、とても良いことじゃないかなと思いますね。
小室:
僕もすごく良いことだなって思っていて、avexで言ったらAAAとか新しい子たちがどんどん出てきて、頑張っていって欲しいなとは思いますね。プラス、大御所もドカーンと入って欲しいですよね。今やフェス名の方が、アーティスト名、ビッグアーティストのバリューと同じ感じになっているかなという気もするので。
小野:
「ULTRA行きたい!で、誰が来るの」みたいな反応ですよね。逆になっちゃてる。
鈴木:
そういう意味では、イベンターさんも場をいかに良くするかって言うことに心を砕いて、新しいことにチャレンジしていますよね。
小室:
当然ホスピタリティーとか、スマホの楽しい遊びみたいなところも絡めていろいろ考えていかなくちゃいけない時期だと思います。フェスとかじゃなくてもクラブレベルの単位でもそうだと思いますね。ただ来て音楽を聴いてって訳じゃなくてね。エンターテイメント、プラスαがないと。
鈴木:
いろんなところで言われますけど、体験をどのように組み立てるかってことですよね。
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AWA 小野哲太郎氏

小室:
僕らのアーティスト側の答えとしては、全体的に行くか一つのジャンルでのトップを目指すか、アーティストなのかバンドなのか、などといった方向性をしっかりと見極めていかないと(出演する機会の数が増えているので)忙しくて(笑)。定額制音楽配信サービスは僕たちにまだ還元というところまで来ていないのは(立ち上がったばかりで)当然で、それで潤えるかと言ったらまだ実感は無いと思うんですよね。その分ライブ活動、足で稼ぐということは間違いないですから。DJの人だと年間200本って人もいますからね。
海野:
小室さん自身もクラブに登場してDJ活動を。
小室:
僕ね...DJ活動では無いんですけどね(笑)。DJはド下手なので。ホールのような場所自体がなくなってきてしまっているのと、ダンスミュージックが今のメインロードなので、どんなポップミュージックもダンスミュージックの素養があるじゃないですか。となると、ああいったクラブのような場所がみんなを楽しませる場所になってきてはいますよね。地方に行って直接触れてあげたいなとか、来て欲しいとなると(ホールではなく自ずと)クラブになりますね。ネットにちゃんと密着してくれているのもクラブだったりするのでね。
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音楽ブロガー ジェイ・コウガミ氏

海野:
新陳代謝の話もありましたけれども、小室さんはご自分の音楽を常々にアップデートして熱心に研究されて実践されていて、やはり最前線を走っていく志でやってらっしゃるんですか?
小室:
志とまではいかないですけど、シンセサイザー、いわゆるデスクトップミュージックであったりとかの年長組でいうと僕ら世代なので。で、第2世代があって、僕が思うに第3世代っていうのが中田ヤスタカくんらへんなんですよね、今度第4世代が出て来ていてtofubeatsくんとかもかな。そこらへんまで来ているので、(年長者で)目立つという意味では第1世代がちゃんと存続していないと、という意味で頑張っています。今は軽くひょいっと第4世代の人たちが、さらっとコラボしませんか?みたいな感じで来てくれるというか、来ちゃう。そこは欧米と変わらない感じのいいことですよね。あの世代はWindows95がDTMにとってはデカかったんだよねって話をしてたんですけど。そういう若い子たちのためにも(現役で)いなきゃいけないなっていうとこはありますね。志というより、「頑張らせて頂いています」というところですね。
鈴木:
小室さんはDTMという制作方法だけではなく、ライブの演出だったりとか、テクノロジーの使い方も常にどんどんイノベイティブな事をやられていて、まさに今ゲームや映画で「体験」のような言葉が使われているんですけど、過去小室さんが手がけられた事ってまさにそういう事を意識されていたんだろうなと思います。
小野:
MVもそうですよね。小室さんの作品は本当にセンセーショナルで。
鈴木:
「THE BIG PARADE」でもそんな話をさせて頂いたんですが、小室さんは志とイノベイティブなマインドを両立されているアーティストですよね。
小室:
さらにメロディーであったりとか、本質的な音楽の部分でも何か役に立てたらいいなと思いますね。

音楽業界のこれからについて語り尽くす今回のSENSORS SALONも、次がいよいよ最終回。最後に、このメンバーで一緒に何か仕掛けるならどんなことが出来るか?というアイデアを出し合うことに。その模様は次回記事でお届けする。

構成:市來孝人

SENSORS WEBエディター
PR会社勤務の後独立。福岡やシンガポールのラジオDJ、東京でのMC・ナレーター、ライターとして等の活動を経て、メディアプランナー・プロデューサーとして活動中。


写真:延原優樹

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