「個人に寄り添うテレビの実現」参加型の波がテレビの将来像を変える

2016.01.03 02:55

テレビ、リアルイベント、スポーツ、ニュースメディアを舞台にユーザー参加型コンテツを牽引するクリエイター達が語る「参加型エンターテインメントの未来」。第9回を迎えるSENSORS SALONは、佐々木紀彦氏(NewsPicks編集長)をモデレーターに迎え、朴正義氏(バスキュール代表、HAROiD CCO)、澤田智洋氏(世界ゆるスポーツ協会代表)、加藤隆生氏(SCRAP代表、リアル脱出ゲーム生みの親)が熱く語りあった。レポート最終回の第4弾では、「参加型×テレビの未来」を取り上げる。

第3弾レポートでは、参加型エンターテイメントを手掛けるクリエイター達の思考法にフォーカスした。

最終回である今回は、「参加型コンテンツ×テレビの未来」。テレビがプラットフォームになり多くの人々をつなぐ存在になることを目指すHAROiD。そんなHAROiDの取り組みと参加型エンターテインメントのトップランナー達がテレビの未来をどのように考えるか?掘り下げる。

■「︎参加型×テレビ」の発展系

佐々木:
これまでほとんど双方向的ではなかったテレビですが、HAROiDの登場などによって進むであろう「参加型×テレビの未来」についてどう思いますか?

朴正義氏(バスキュール代表、HAROiD CCO)

朴:
たくさんの人が同時に集まり、双方向に繋がれる場所はテレビだろうがインターネットだろうがどこかにあるべきだと以前から思っています。そしてその仕組みをテレビで作っているのがHAROiDです。かつてと違い、現在のテレビはみんなで一緒に観ている感覚や世の中と繋がっている感覚を提供しきれていません。スマホ、ソーシャルメディアがその役割を担っていっています。しかしテレビには、家庭の中心にある強みや世の中の時間軸を作っている強みもあるので、今後は視聴者からの発信情報を吸い上げたり、個人にフィードバックを返してくれる存在になったらいいなと思います。
佐々木:
澤田さんはテレビについてどう思いますか?
澤田:
テレビのいいところは、視聴率1%でも約120万人見ていると言われているその数の多さだと思います。言い換えてみれば、100万人規模の"パーティー"に電源ボタン一個で参加できるということなので、その非日常性が強みかと。さらにインターネットにコネクトすることで、会ったことない人やリアルタイムであったらつかみ合うような人でも同じ時間にテレビをつければ仲間意識が芽生え分かり合えるかもしれない点にあるのかなと。

澤田智洋氏(世界ゆるスポーツ協会代表)

世界ゆるスポーツ協会での経験値を元にテレビの未来を語る澤田氏。ゆるスポ体験会を開くと属性がバラバラな人が集まるのだが「スポーツを楽しむ」という体験を共有することで、たった数分で属性の壁は除かれるという。さらに自分と属性が遠い人とその心理的距離が縮まれば縮まるほど得られる喜びは大きいそうだ。それを実現できる究極がテレビだと澤田氏は語る。

佐々木:
朴さんがおっしゃっていたように、繋がるための手段がないので、実際は繋がる可能性があるのに放置されているということですよね。

日常生活では繋がり得ない人同士が同時に視聴しているテレビ。その視聴体験を一体感や高揚感の共有に変換し、インタラクティブな関係をつくる。テレビの先にいる視聴者の多さを利用したこの新しいコミュニケーションこそ、HAROiDの『TOVY』のようなサービスが牽引してくれるように感じる。

佐々木:
加藤さんは、テレビの可能性についてはどうお考えですか?
加藤:
「参加」の形にも何種類かあると思うんですよ。テレビがこれまで担ってきたものが、みんなで同じものを見るという、"パーティー"への参加の高揚感だったんですよね。ただ僕らリアル脱出ゲームが提供する"参加型"というのは、一瞬の高揚感を生みたいんじゃなくて、「今こんな気持ちなのって俺だけなんじゃないか」「今触れている物語は僕だけのものなんじゃないか」と思わせるということも、別の意味の"参加型"かなと。

なので、テレビのようなマスメディアが個人に寄り添ったらすごいと思うんですよね。ドラマを見ていて「◯◯ちゃんかわいいな〜」って言ったら、画面の向こうの女の子が振り返って自分の名前を呼んで「ありがとう!」となったらびっくりするじゃないですか。その時に初めてテレビがインタラクティブになったらなって思うんですよね。テレビにおける"参加型"がパーティーを目指しすぎるのではなくて、いかに個人を見つめるかということはキーワードになってくるかと。

加藤隆生氏(SCRAP代表、リアル脱出ゲーム生みの親)

佐々木:
"パーソナライズ化"ということですよね。そうなるとテクノロジーの力がないとできないですよね。そこは朴さんみたいな方と組んでやるんですかね。
朴:
そうですね。それでいうと『Join Town』という事例では、テレビをベースに徳島の限界集落に対してメッセージを送るという実験を2〜3年前からやっています。テレビから個人に対する情報を出せるというものです。地震が起きたときにただ単に「逃げろ!」じゃなくてパーソナライズされた「◯◯さん逃げて下さい!」というメッセージを提供することが出来て、おじいちゃんおばあちゃんも実際にこれを見て避難できるというものです。でもまだまだ表現力が足りないので、加藤さんがいってくれたところまではいかないんですけど、いつかはやれるかもしれないですね。

■クリエイター達の描く「参加型×テレビ」の将来像とHAROiDへの期待

人々にとってテレビとは、そのタッチポイントや利用シーンは多様ではあるものの、日常的に触れ日々影響を受ける存在。現在は、スポーツやリアルイベント、ニュースメディアなどその活躍の場が異なるクリエイター達が、「テレビがこんな参加型の形になってくれたら」というテレビの未来へのアイディアやHAROiDへの期待を視聴者目線とクリエイター目線で語った。

【左から時計回り】加藤隆生氏(SCRAP代表、リアル脱出ゲーム生みの親)、朴正義氏(バスキュール代表、HAROiD CCO)、澤田智洋氏(世界ゆるスポーツ協会代表)、モデレーター・佐々木紀彦氏(NewsPicks編集長)

佐々木:
もしみなさんがテレビのリソースを使って、面白い「参加型×テレビ」の企画を提案してくれと言われたら何を提案されますか?
朴:
僕はニュースをやりたいですね。世の中にインパクトがあるから。完全に開かれたニュース番組をやりたいです。今はコンプライアンス上の問題などで言える・言えないがあったりしますが、それを公正に開けば、言える・言えないに関係ないオープンな状態が作れないかなって。
佐々木:
ユーザー参加型のニュース番組ということですね。澤田さんは、なにかアイデアありますか?
澤田:
HAROiDを使ってスポーツが出来るとみんなが健康になっていいなと思います。どうしてもスポーツをやろうとすると、東京だと場が無いことと対戦相手がいないという2大問題みたいなものがあって。それが家でできて、スポーツの相手をテレビがやってくれるなら最高だなと。例えば早朝に、家にいながらスポーツが出来ますという番組です。画面の中でアイドルが100人寝ていて、何らかの形でベッドと視聴者のスマホが連動していて、振ると音が鳴ったり震えたりして起こせるというような。1人のアイドルに100人ついて、合計10,000人でアイドルを起こすみたいなものは面白そうだなと。
佐々木:
加藤さんはいかがですか?
加藤:
先ほどの話のように、テレビが「個人的な体験」を提供してくれたら面白いなと思います。私のためだけの物語だったり、この地域のためだけの物語だったり、このコミュニティのためだけの物語だったりを僕も考えてみたいです。今のクイズ番組のような4択での参加ではなく、文字を入力することでインタラクティブに物語が変わっていったり、答えを知っている人だけがドラマの本当の意味が分かるとかにしたら面白いですよね。物語の中に視聴者が没入し、自分も参加者でこのドラマを作っている一人になったり、登場人物の一人であるという体験をテレビが作れたらいいですね。
澤田:
それでいうとスポーツも一人一人に合わせて作っているんですよ。例えば、この人は四十肩で肩が上がらないから他の部位でできるスポーツをつくろうとか、結構1to1で作ってます。これは良質なコンテンツの共通点だと思います。この番組はこの人のために作りました、みたいに一人一人の属性に合わせて、ニッチにやっていくと結果的にそこに熱量がこもるので、みんなが見てくれる面白いものになるのかなと。
佐々木:
例えばクラウドファンディングとか出来ないんですかね。複数のコンテンツが載っている企画書を出して、一番投票やお金が集まったものを制作するとか。

モデレーター・佐々木紀彦氏(NewsPicks編集長)

朴:
そうですね。テレビはテレビの中の人しか作れなかったので、テレビの外の才能や人達とクラウドファンディングなどを利用して作っていけたらいいですね。

「参加型×テレビの未来」。視聴者が参加できる体験はパーティー体験とパーソナル体験、その2つの可能性が今回の対談で見えて来た。現在可視化されていない「一緒に見ている視聴者同士」を見える化しつなげるにはどのようなエンターテインメントが必要で、結果どのような体験を視聴者に提供できるのか?同時に一人一人に対して最適化されたコンテンツや情報を提供し、パーソナライズ体験を提供するインタラクティブな関係はどのように実現できるのか?今後HAROiDがこの両軸を満たすようなコンテンツやサービスを提供し「テレビの参加型エンターテインメント」の未来を切り開いていけるのか、楽しみだ。

【左から】加藤隆生氏(SCRAP代表、リアル脱出ゲーム生みの親)、朴正義氏(バスキュール代表、HAROiD CCO)、モデレーター・佐々木紀彦氏(NewsPicks編集長)、澤田智洋氏(世界ゆるスポーツ協会代表)

以上4回にわたり「参加型エンターテイメントの未来」をテーマとしたトップランナー対談の模様をお届けした。「参加型エンターテイメント」、その参加の形はリアルやインターネット、テレビなど様々だが、共通項は、いままで分断されていたり、出会えなかった人間関係をつなぐという新しいコミュニティ施策であり、社会にインパクトを与えるエンジンになりうる可能性を秘めていること。新しい時代のエンジンとして「参加型エンターテインメント」に今後も注目していきたい。

文:長谷川輝波

フリーライター、慶應義塾大学法学部4年在籍。高校時代はファッションデザイナーを志し、大学入学後はサロンモデルやファッションライターとしての活動を経験。現在は複数企業・協会でのライター・マーケティングに携わる。大学ではサービスプランニングを専攻。https://www.facebook.com/kinami.hasegawa

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