支援者と実行者が信頼し合う「コミュニティ」をいかにつくるか ~第5回SENSORS SALON クラウドファンディングの魅力と明日を語る(2/4)~

2015.05.31 01:00

5回目の開催となるSENSORS SALONのテーマは「クラウドファンディング」。前回(#1)は運営者、支援者、実行者それぞれの立場からクラウドファンディングの魅力が語られた。#2ではクラウドファンディングのプロジェクト成功のコツや、クラウドファンディング市場そのものが抱える全体な課題について触れる。

第5回SENSORS SALON #2

「READYFOR?」代表の米良 はるか氏、サイバーエージェント・クラウドファンディング「Makuake」代表の中山 亮太郎氏、「プログレス・テクノロジーズ」取締役の小西 享氏、「ジャパントラディショナルカルチャーラボ」代表の神森 真理子氏の4名で開催。手前はモデレーターを務めるSENSORSクリエイティブディレクターの三枝孝臣。

■「ファン」獲得の成否は"ターゲットを絞った太いメッセージ"

クラウドファンディング成功の可否はそのプロジェクトへの賛同者を得ることだけでなく、実際にいくら資金を投じてくれる支援者の数で決まる。実際に成功する事例と失敗する事例を目の当たりにしてきたクラウドファンディング運営者の二人は、成功のコツをどのように分析しているのか。

三枝:
クラウドファンディングを実施するにあたって一番難しいことってなんだと思いますか?
米良:
ファンをどう巻きこんでいくかということ。1個1個のプロジェクトでファンが集まる仕組みを作っていかないといけない。プロジェクトを載せたら勝手に人が集まくるわけではありません。それぞれのプロジェクトで、その商品や企画を届けたい人たちってどんな層の人たちだろう、届けた人たちがどんな風に喜んでくれるんだろうということところしっかり考えた上でスタートすることが大事です。お金を出す側の人達は、応援する気持ちと、リターンへの期待を込めています。このプロジェクトが自分に関係するものだって感じてもらえるために、掲載側のプロジェクトのオーナー側がしっかりしたターゲットとメッセージが示せているのは良いプロジェクトだなと思います。
中山:
Facebookの「いいね!」の数とプロジェクトの調達額ってまったく比例しないんですよ。共感はするけどお金を出すまでじゃないって層がすごく存在していて、ターゲットをしっかり絞らないと駄目なんだなって。「いいね!」を越えて、顧客やファンになってくるかどうかのハードルが明確に存在するだなとすごい感じますね。クラウドファンディングで成功するには、勇気を持ってターゲットをもう2歩も3歩もきゅっと絞って、そこに向けて太いメッセージを届けていくことが大事。

■「クラウドファンディング」の仕組み自体の認知が進んでいない

プラットフォームの立場からは「ターゲットを絞った太いメッセージ」がクラウドファンディング成功の1つの要因として指摘されたが、実際に資金を集めに成功した当事者はどのように感じているのか。支援者と直接向きあうからこそ浮かび上がるクラウドファンディング全体の問題点への指摘。

三枝:
神森さんはユーザーとして難しいと思ったことはありました?
神森:
クラウドファンディング自体の仕組みがは徐々に世の中に浸透してきていることは感じます。でも、プロジェクトを実施するにあたって、大前提として、クラウドファンディングはどういう物でどういう仕組みで運営されているのかを知らない人も多く、支援していただく前にしっかりとそうした部分を説明し、理解してもらう必要があります。クラウドファンディングの運営会社さんと実行者と支援者が三位一体となって市場を作っているところなのかなと感じます。
中山:
クラウドファンディングという概念が広すぎて、ご協力頂いている方々が「クラウドファンディングとはこうあるべきだ!」ってお互いの主張して、引っ張り合いをしているんではなかと感じています。よく投資型、寄付型、購入型という分類をされることが多いんですけど、果たしてそれが正解なのかも最近では疑問。投資型クラウドファンディングと購入型クラウドファンディングは、マネックス証と券Amazonくらいの違いがあって、それを一色単にして語っていたりするのが現状です。だからクラウドファンディングの定義が生活者に伝わりにくいのかなと思っています。
米良:
実はその投資型、寄付型、購入型って私が大学院の時に論文で書いた定義なんですよ(笑)。ユーザーがお金を渡したときに何がもらえるかっていうことで分類しました。 「READYFOR?」のプロジェクトでもヤフートピックスとかに過去に何回か載ったこともあるので、クラウドファンディングという言葉自体はマスにリーチさせることはできてると思うんですよ。でも、定義が曖昧なままあまりにも色々なものに使われすぎているので、ユーザーが同じクラウドファンディングという仕組みを使っているのかどうか分からないという事になっているのではないでしょうか。

例えば、エヴァンゲリオンの「ロンギヌスの槍プロジェクト」は未達成ながら5500万円位集まり、色んなメディアさんに多く取り上げられたので、多くに人たちにこういう方法で面白いことをやっても良いんだっていうのが伝わったと思うんです。一般化していく中で、こんなことにも使えるんだ!っていうの沢山の人たちに広めていけるプロジェクトをどれだけ世の中に出せるかが大事なのかなとも思います。一つの切り口にから、何かを応援するって楽しいなっていう体験をしてもらうと次のプロジェクトにも繋がっていく。

クラウドファンディング自体はまだ完成系と思っていないので、変化していくものだと思いますし、クラウドファンディングって括られてているものが全然違うプロダクトになって変わっていくんではないでしょうか。クラウドファンディングで支援する人にはどんな恩恵があるのかを1つ1つの事例で世の中に示していくことが大事です。

pebble watch(https://www.kickstarter.com/projects/597507018/pebble-e-paper-watch-for-iphone-and-android)

三枝:
小西さんはどう課題を感じてますか?
小西:
「スケール感」です。アメリカとか見ると分かると思うんですが、Kickstarterのpebble watchプロジェクトでは20数億円が集りました。スタートアップなら1年間分の売り上げに匹敵する資金を獲得できる夢のような話が実際にあるわけで、日本国内はまだそこまでのスケール感がないんですよ。だんだん数千万単位調達実績まで増えてきてはいますけど。早くメディアとのタイアップも含めて色んな人たちに知れ渡って、この仕組みどれだけ素晴らしいかを知ってもらうかというのが今後の一つの課題だと思います。

■実行者と支援者とのマメなコミュニケーションは必須

目標金額を期間内に調達できた先のステップとして、支援者へのリターンやプロジェクト自体をしっかりと実現させることが求められる。支援者へのこまめな報告・連絡の重要性も語られた。

三枝:
やっている途中の課題は何かありますか?
神森:
プロジェクト実施期間中は、開始直後と終了間近のタイミングが特に盛り上がる傾向にあります。中盤の期間に、いかにプロジェクトへの注目を集めるかが大切で、イベントの開催や、情報発信を意識的に行う必要があります。
中山:
クラウドファンディングに限らず、ファンや支援してくれる人に対して、こまめに連絡・報告をすると応援したいなって気持ちがさらに増してきます。期間だけ一生懸命お願いをしていて、無事達成したけど半年間だけ全然連絡がない状態があったら応援していた気持ちも真逆に傾いてしまいますよ。こまめに「今日はデザインのミーティングです」とか「今日は工場の視察に行っています」とか、その場の写真を撮って皆に送るだけでも進捗状況がわかるので、ますますファンの応援心を駆り立てていくことができるのではないでしょうか。プロジェクトが達成した後のコミュニケーションが本当に重要ですね。
米良:
自分ひとりで始めた活動だけど、お金を出してくれた人も「仲間」だって信じ込めるかが大事。ただのお金を出してくれる人だって思った瞬間に、その人たちに「完成したらモノを送ればいいや」みたいな雑な扱いになってしまう。そうなるクラウドファンディングのようなプラットフォームとの相性はあまりよくないと思います。

ターゲットを限定して太いメッセージを発信すること。そのメッセージに賛同したファンとプロジェクト実行者が密なコミュニケーションを取続けるということ、すなわち「コミュニティ」として機能させることがクラウドファンディング成功の鍵といえそうだ。仕組み自体にシェアラブルな要素が多く含まれているため、クラウドファンディングそのものの認知の問題は時間が解決してくれるのだろうか。今後の認知拡大のキーワードとなる「メディア連携」とは。(#3に続く)

文:石塚たけろう

石塚たけろう:ベンチャーキャピタルやデジタルマーケティング企業複数社での業務を経験後、EIR(=客員起業家)として複数の大手企業、スタートアップの新規プロジェクトに参画。Webデベロッパー。@takerou_ishi

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