メディアビジネスとジャーナリズムを変革する可能性 ~第5回SENSORS SALON クラウドファンディングの魅力と明日を語る(4/4)~

2015.06.18 11:00

5回目の開催となるSENSORS SALONのテーマは「クラウドファンディング」。前回(#3) 日本でクラウドファンディングという仕組みをそのものを根付かせていくための具体策が議論された。最終回となる#4ではスケールアップの鍵となるメディアと連携の可能性を模索する。

第5回SENSORS SALON

■映像コンテンツのビジネスモデルはどう変わるか

クラウドファンディングではアニメや映画といった映像コンテンツの製作プロジェクトも掲載されることも多い。いまでこそ個人単位で行われているものであるが、今後クラウドファンディングは映像コンテンツのあり方を大きく変えるのだろうか?

神森:
新聞社さんとかテレビ局とかがクラウドファンディングに参入してきていいるところで、今後メディアの強みを生かして、どう展開していくのかが気になりますね。
中山:
僕が期待しているのはアニメです。実際にやってみて、世界からお金を集められると感じたんですよね。日本のアニメは世界で一番。ディズニーと比べても勝負出来るくらいのクオリティーですし、世界で尊敬をされている日本のクリエイターも多いですし、会社も多いです。監督も外国の賞ではその監督の名前になっているものもあったりするので、アニメに関しては、世界中から資金を集めてこれる可能性があるなって思います。深夜アニメといわれているものとは別の切り口なんですが、Makuakeに「この世界の片隅に」っていうプロジェクトがあって。それは「作ってほしい!」っていう純粋な消費者の気持ちで作品が生まれてくるというか、日本だけではなくて世界から集められるなって。映画業界やアニメ業界の方とそういうお話をすると、「製作委員会」と「スポンサー」を無くして、作りたいものが作れる世の中が生まれるんじゃないかという期待感がすごく多い。このようにクラウドファンディングのような形で、個人の応援で成り立ってくるコンテンツや映画が出てきているので、どんどん規模が拡大していくことで、映像コンテンツの作られ方が変わってくるなっていう可能性は非常に感じていますね。
神森:
作られ方として、今までのエンターテイメント・コンテンツでもエンドロールに名前が載るっていうのは一般的だったんですけど、支援額に応じてストーリーを変えていったりとか、新しいキャラクターを生んだりとか、名前をつけたりとか、今後はクラウドファンディングを使う事によってコンテンツ自体の中身を変わってくる。支援者と一緒に作り上げるコンテンツっていうのが、今後増えていくのかなと思っていてすごく期待しています。
米良:
アニメとかコンテンツではないんですけど、お金を集めている最中にプロジェクトの中の「名前」を募集して、A案、B案、C案を提示してどれが一番いいかっ言ってくださいっていうのがありました。制作の途中にファンの声を入れて、それに応じて変更していくっていう例がたくさんあって、確かにみんなが求める物の方が良いものになると思います。逆に名前付けた人にとっては、とっても大切な体験になってくると思います。一生のファンですよね。
小西:
映画の製作委員会では、リスク分散して2億で作品を作ろうよってなったら、ロットが大きすぎて、4社で各500万円でねっていう話になります。それをやっていた人たちが、クラウドファンディングを知ると乗り換えざるを得ないと思うんですよ。ファンそのものを一撃で捉えるところから始められるわけですから。

■ジャーナリズム・報道のあり方にも変化

クラウドファンディングでは「取材」自体がプロジェクトになることがある。記者が、資金的に普通のメディアでは行けないようなところにいって取材してきた内容を支援者に伝えるというものだ。その可能性についても論じられた。

米良:
ジャーナリズムとクラウドファンディングの関係が気になっています。クラウドファンディング以上にいろんなメディアの形がどんどん出てきています。ツイッターで書かれた一言が、ある日記事化されてメディアの記事の一つになることもあって、今後読む側の人にとってメディアがカスタマイズされていくような形になっていくのだと思います。その中で大手メディアが抱えていた記者さん達が生きていくようなあり方が難しくなっていく。海外のクラウドファンディングでは、「こういうところに取材に行くためにこのお金が必要だから、皆にお金が欲しい!」って資金を集めて、実際に取材に行って、支援してくれた人たちにレポーティングするということも起こったりしています。READY FOR?の中でも、「シリコンバレーで色んなスタートアップを見に行って報告します!」っていうプロジェクトがありました。もう一人一人が記者なんですよね。ここにいる皆さんも今日体験したことを発信するのは、一部の人によってはバリューのある情報だったりするので、今までの広告モデルみたいなメディアの在り方ではなくて、欲しい情報を欲しい人たちに届けるビジネスモデルの在り方。どれだけスケールするかわからないですけど、一つの在り方としてクラウドファンディングが使われていったりするのかなと。
三枝:
その情報が欲しい人に配信することにお金がついてくる?
米良:
今、朝にテレビを見てから出掛ける人って減ってますよね。それよりもFacebookに流れてくるタイムラインの情報って自分に近い感覚を持っている人がリコメントしている記事なんですよ。情報の取り方も、検索したりしているうちに、欲しい情報を作ってくれる人、リッチな情報を知っている人に行き着くんです。そういう人が、知りたい情報を取りに行ってくれて、そのために自分がお金を出すことって、今後たくさん出てくると思うんですよ。
中山:
ジャーナリズムに特化したクラウドファンディングも立ちあがっていて、消費者は「知りたい欲求」っていうものを本能的に持っていてあるだなと。Makuakeでもシリコンバレーに取材に行きます系のプロジェクトがいくつかあるんですけど、かなり人気なんです。その理由の一つはシリコンバレーの情報が知りたい人でクラウドファンディングを使っている方は、アーリーアダプターの人が多いから。そういう人たちはシリコンバレーの最新情報を知りたがっているので、知りたい情報と知りたい人たちがマッチしている。それをアーリーアダプターだけではなく、例えばアフリカのケニアの子供たちってどんな給食とか教育環境に興味を持っている人たちとか、10人10色のマッチングが生まれてくるんではないかと。
米良:
すごいニッチ過ぎるとマスメディアではさすがに取り上げられないってことになるんですよ。でも、特定の地域の特定の問題を伝えるっていうのは確かに大事で、その情報を知りたい人を世界中から集めれば以外に何千人・何万人って規模になるかもしれない。

■人気テレビ番組とクラウドファンディングの連携

~日本が誇る食材を一杯のどんぶりに~世界一うまいラーメンをつくれるか!?( http://www.ntv.co.jp/dash/contents/ramen/ )

クラウドファンディングの運営者ならば誰もが一度は考えたことがある「人気テレビ番組」との連携。その話題にも切り込む。

小西:
メディアとクラウドファンディングが連携していくとスケールしやすいって思っています。日本テレビさんがやっているような「ザ!鉄腕!DASH!!」の「世界一うまいラーメンをつくれるか」とは相性いいと思うんですよね。ラーメンは完成してないんですよ。でも、究極のラーメンを求めて麺を選んだりとかスープを選んでいる過程を見せて、ストーリ仕立てになっているわけですよね。それをメディアで見せていて、そのラーメンが実際に食べることができるっていうのをクラウドファンディングに出していくとすると、とんでもないことが起きるんじゃないでしょうか。そういう事をやるとクライドファンディングって何?っていう人、マジョリティーの人たちが「なんだそれ」ってなって、皆が気付き始めたらクラウドファンディングが世間に浸透するのは早いと思うんですよ。メディアとの連携がそのレベルでやると、面白いモデルになるんじゃないかなとか。
三枝:
放送法上ギリギリですけどね(笑)
小西:
後は、プロダクトっていう意味でいうなら、テレビショッピングとかやっているじゃないですか。来る前に調べたら5000億円くらいのマーケットがあるみたいです。テレビショッピングは完成品を売っているわけですけど、完成品だけではなくて、完成までのストーリーを含めて見せることができるのもメディアの強いところでもあるので、そこまでできたらすごいスケールになりませんか。

■クラウドファンディングが大衆化された先にある世界

「クラウドファンディングが当たり前になった世界」が今回のSALONメンバー達には既に見えているようだ。

三枝:
テレビ番組連携はスケールアップのためには重要なことだと?
小西:
ものすごい重要だと思うんですよね。国内のマジョリティーの人たちにクラウドファンディングを利用してもうらうには、利用のハードルをどんどん下げないといけない。大手メーカー勤務で結婚して子供が居る方がいて、起業したいけど、奥さんに「そんな夢みたいにこと見てるんじゃないよ!と言われてしまうんですね。だけど、その夢を「俺はクラウドファンディングで1000万円集めたんだぞ!」っていえばチャレンジさせてくれるみたいな。そんな世界がつくれると思うんですよ。
米良:
そうですよね。証明になりますよ!自分のやりたいことをこんなに求めている人たちがいるんだからこのチャンスを逃すと損するぞ!ぐらいの。
小西:
そうすると味方に付いてくれると思うんですよね。昨日までは「そんな夢を見てるんじゃないよ」っていってたのに「すごいね!」って言ってくれて。
三枝:
スピンオフ、スピンアウト、カーブアウトするような人が増えてくるとマーケット自体も増えるし、より産業が活性化するイメージですか?
中山:
日本みたいに、これだけ多くの世界的超ハードウェアメーカーがある国って歴史上どこもなかったはずなんですよ。最近、自分たちが研究開発した技術を社外のベンチャーとコラボレーションをして、新しいブランドや新しい商品を作っていく動きが今年に入って目に見えて活性化し始めているんですよ。そういった動きが、今年の後半とか来年にかけてアウトプットとして出てくるんじゃないかなと。日本ならではの新しい物を生み出す仕組みの進化の仕方だなって期待しています。
米良:
ハードウェアって話だけじゃなくて、自分たちの生き方自体も関係することかなと思ういます。今までだったら大きな組織が発信力も強かったし、今まさに自分が作りたい物を作ったところで、それを多くに人に広める手段もなかった。でも今は、ツイッターとかで作ってみたってつぶやくと急にフォロワーが増えたとか、それを運営してみると今までの給料よりも急に収入が増えちゃうみたいな体験がどんな人でも出来るようになったんですよね。そう言う意味でインターネットって個人の力を高める上で良いことだとは思うんですよね。それによって私と同じくらいの年代の人たちも、このまま大企業が40年、50年有り続けるかっていう事にすごく不安がっているし、一方で自分で勝負したい時に、簡単に勝負できるようになった。会社を興すのにもそんなにたくさんの資本が必要ではなくなったんだし、その中でクラウドファンディングとか使って、現状は会社にいるんだけども、トライアルとして挑戦してみる。READYFOR?の実行者の方はほとんどの方が大企業で勤めてらっしゃって、大企業で勤める同士で集まって任意団体を作ってプロジェクトを始めたとかってすごく多いんですよね。本当に1歩を踏み出す場としてクラウドファンディングがあるので、私たち一人一人の生き方が、本当に大きく変わっていって、まさにリーンじゃないですけど、トライアルしやすい世の中になっているので、ワクワクしています。

映像コンテンツのビジネスモデルの変革、報道のあり方の変革、人気テレビ番組との連携...。様々な角度から「メディア」とクラウドファンディングとの関係が語られた。いずれにしてもクラウドファンディングが可能にするのは、お金を出すという行為を通じて誰もが「当事者」になれるということだ。日本ではまだまだマーケットのサイズは大きいとは言えないが、今後どのような拡大を見せるだろうか。

文:石塚たけろう

石塚たけろう:ベンチャーキャピタルやデジタルマーケティング企業複数社での業務を経験後、EIR(=客員起業家)として複数の大手企業、スタートアップの新規プロジェクトに参画。Webデベロッパー。@takerou_ishi

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