自転車も冷蔵庫も。シェアリングサービス海外動向 - Uber×スペースマーケット対談

2017.07.03 18:05

「シェアリングエコノミーの可能性」をテーマに行われたSENSORSサロン。ゲストに髙橋正巳氏(Uber Japan)と重松大輔氏(スペースマーケット)を迎え、MCの落合陽一×齋藤精一がシェアリングエコノミーの現在と展望をディスカッションした。

4回にわたってお届けする第2弾記事では二人が「シェアリングエコノミー」に携わるようになったきっかけ、海外のシェアリングエコノミー事情と注目すべきサービスについて語っていただいた。

■二人が「シェアリングエコノミー」サービスに携わるようになった理由

--改めて、「シェア」に力点を置いたサービスを二人が日本で始められたきっかけについてお伺いしてもよろしいですか?

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(写真、左から)髙橋正巳氏(Uber Japan株式会社 執行役員社長)
重松大輔氏(株式会社スペースマーケット 代表取締役)

髙橋正巳
(以下、髙橋):
私は前職、2014年までサンフランシスコに住んでいました。その当時、サンフランシスコ市内の公園で行われていた音楽の野外フェスに行くことがあったんです。何万人も来場するような大きなフェスだったのですが、帰るための交通手段がありませんでした。そのときに友達が、「面白いサービスがあるから、それを使ってみよう」と呼んでくれたのがUberだったんです。

はじめは何をしているのかよく分からなくて、スマホでボタンを押したら、いきなり黒塗りの車がドンと来た。それに乗り込んで彼の家に行ったのですが、降りるときに「みんなで割り勘しよう」と言ったら、「いやいや、大丈夫だから」と、勝手に決済されていたんですね。

--それがUberとの初めての出会いだったと。

髙橋:
それから自分もユーザーとして使うようになって、ゲーム感覚でリアルな配車をお願いできるのは面白いなと、頻繁に使うようになっていきました。この便利なサービスを日本でやると、どういう使われ方をするだろうかということを個人的に考えるようになったんです。日本は高齢者の人口が多いので、今後病院に行くときや買い物にいくときにバス停まで歩くのは大変。そこでUberのようなサービスがあれば便利ではないかと考えていました。そんな折に、日本代表を探していたUberから声がかかり、帰国して入社することになったんです。

--つづいて重松さんのきっかけもお聞かせいただけますか?

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重松大輔
(以下、重松):
私は前職、イベント写真のビジネスをやっていました。ウェディング写真をインターネットで販売する新規事業を立ち上げるなかで、日本中の結婚式場に営業に行っていたんですが、日本中の立派な結婚式場が平日だとどこもガラガラだということに気づきました。聞けば、支配人や経営者の方も「平日を稼働させたい」とおっしゃっている。一方で、自分たちの会社のセミナールームも土日は空いていたんですね。そこで他の会社のセミナーや新卒採用説明会向けに貸し出したりもしていました。

4年ほど前に起業しようと思ったとき、ちょうどAirbnbが伸び始めていた時期で、「シェアリング」というキーワードに注目していたんです。今述べた空きスペースの現状を、シェアリングエコノミーという概念でマッチングすることができれば、絶対に商売になると思いました。
落合陽一
(以下、落合):
結婚式場は特に空いてますよね。ビデオを投影するプロジェクターを完備していたり、あらゆるインフラが揃っているのに空いているのはもったいない。

■ 海外のシェアリングエコノミー事情

--皆さんと話していきたい一つ目のテーマは、「海外のシェアリングエコノミー事情」です。

髙橋:
海外ではシェアというか、個人同士で繋がることが日常茶飯事で行われています。私がサンフランシスコに居たときも、家を見つけたのは不動産業者ではなく、Craigslistというインターネットの掲示板です。「空いています」「欲しいです」が中間業者抜きで、個人同士でマッチングされる。シェアリングエコノミーの根底にあるのは、個人同士が安心して取引できるということ。海外では服やハンドバック、場合によっては家のトイレを貸すようなサービスさえあります。
齋藤精一
(以下、齋藤):
僕もニューヨークにいたときに使いました。Craigslistは州ごとに情報が集約されていて、何でも売っていますよね。
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(写真、左から)齋藤精一氏(ライゾマティクス代表取締役社長/クリエイティブディレクター)
落合陽一氏(筑波大学学長補佐・助教/メディアアーティスト)


落合:
今必要なものが明日取りに行ける距離で、何でも安い値段で売ってます。見た目は95年のウェブでダサいんですけど、本当にすぐ売れる。

--日本よりも海外の方がかなり進んでいますか?

落合:
他人が使ったものは嫌だという日本人は少なくないですが、海外だともうちょっと合理的に考える人が多い気がします。
髙橋:
そこも徐々に変わりつつあるとは思います。車を例にとると、70〜80年代までは所有することに価値があって、1家に1台が当たり前だったわけですよね。ただ、所有するためには駐車場を借りなければいけないですし、保険にも入らないといけない。車を所有しても、1日の96%の時間は眠ってしまいます。ロスが多い資産だということにみんなが気づき始めて、所有から利用へ価値のパラダイムシフトが起こり始めているのが現状だと思います。
齋藤:
特に「uberPOOL」ですが、Uberさんが伸びた理由として法律の存在も大きいのではないでしょうか。他の国でも同じではないかと思いますが、アメリカやメキシコではある曜日は複数人でなければ朝の通勤ラッシュに高速に乗ってはいけない決まりがある。法律なのか条例なのかは分からないのですが、この取り決めによって新しい経済が見つかった感はありますよね。
髙橋:
実は、「カープーリング(carpooling)」という概念自体は昔からありました。知らない人同士はネット上の掲示板で繋がって、相乗りをする。ただ、一緒に乗ると無駄話はしない暗黙のルールがあるんですね。それをテクノロジーによってより便利にすることで、リアルタイムで行きたい場所に行けるようになったのが「uberPOOL」です。

■自転車?冷蔵庫?海外で注目のシェアリングエコノミー・サービス

--重松さんが注目している海外のシェアリングエコノミー・サービスは何でしょうか?

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重松:
中国のシェアサイクリングですね。創業からまだ1年ちょっとのMobikeという会社が急速に伸びていて、1日に2000万回以上利用されているそうなんです。上海なんかに行くと、そこら中に自転車が置いてあり、みんなスマホでその自転車を使っています。料金も1回10円程度。たとえば、赤坂見附から渋谷まで乗ったら、そのまま乗り捨てられる。しかも中国は電子決済が非常に進んでいるので、気軽にみんな使えるんですね。

もう一つ衣食住のところで、食のシェアがブレークしつつあると聞いています。誰でもレストランが開けるようになる「回家吃飯」というサービス。近所の料理が得意なおばちゃんが知らない人を呼んで、料理を振舞ったりするそうです。食事は誰もが毎日するものなので、ここが仕組み化され、CtoCで繋がっていくようになれば、レストランや居酒屋といった枠組みが本当に変わっていく気がします。
落合:
冷蔵庫もタンス預金と同様に、余剰資産の塊ですよね。作りきってしまえば経済合理性があるものに変わるはずなのに、残しておいて結局廃棄されるだけなので。
重松:
スペインの村でもシェア冷蔵庫が始まっているそうですね。街の真ん中に自治体が冷蔵庫を一個置いておき、スーパーの見切り品をオーナーが入れたり、家で作り過ぎてしまった料理をおばあちゃんが入れたり、逆にそこの食材を使って料理をしてまた入れたり。この取り組みが今、韓国や中国、さらにはニュージーランドにまで広がっているそうです。日本の場合は「食あたりが起きたら、誰が責任を取るんだ」といった議論にすぐなると思うので難しいかもしれませんが、わりと世界中で行われているそうです。
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齋藤:
僕も昔、冷蔵庫のAPI化をしたら面白いのではないかと考えたことがあります。たとえば行きつけのお店の冷蔵庫が可視化されていれば、「今日スズキが入ってるから、スズキで料理作ってよ」みたいなことができたら面白いなと。
落合:
僕の行きつけのバーがあって、昔は日本酒とかを持ち込むと、「持ち込み代」とかを取られていたんですけど、最近では「余ったやつはお客に提供して良いよ」といって、持ち込み代を0円にしてくれるんです。僕らとしたら持ち込んだ方が絶対に安いし、お店の人も僕が来てくれた方が儲かる。余剰資産を有価で販売する仕組みが増えると、経済活動は活発になります。考えてみればコンビニも究極のシェア冷蔵庫ですよね。歩いて2〜3分のところに冷蔵庫があるような状態で、それをどうやってもう少しシェアに寄せていくのかが日本的だと最近思います。

続く「地方経済を活性化するシェアリングエコノミーの可能性」ではそもそも日本人にシェアリングエコノミーは向いているのか?文化や歴史を交えてディスカッションが行われた。また、既存産業との向き合い方、地方経済を活性化するそのポテンシャルについても話題は及ぶ。

【シェアリングエコノミーの可能性】
「先進国こそ"シェア"を活性化せよ!」
自転車も冷蔵庫も。シェアリングサービス海外動向
地方経済を活性化するシェアリングエコノミーの可能性
シェア"が解決する過疎、高齢化、人材活用課題

構成:長谷川リョー

SENSORS Senior Editor
1990年生まれ。修士(東京大学 学際情報学)。リクルートホールディングスを経て、独立。複数媒体で編集・ライティング、構成、企画、メディアプロデュースなど。『WHITE MEDIA』企画顧問。『木曜解放区』レギュラー出演中。夢は馬主になることです。

Twitter:@_ryh
Mail: ry.h0508[アット]gmail.com
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カメラマン︰松平伊織

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