地方経済を活性化するシェアリングエコノミーの可能性 - Uber×スペースマーケット対談

2017.07.10 12:00

「シェアリングエコノミーの可能性」をテーマに行われたSENSORSサロン。ゲストに髙橋正巳氏(Uber Japan)と重松大輔氏(スペースマーケット)を迎え、MCの落合陽一×齋藤精一がシェアリングエコノミーの現在と展望をディスカッションした。

4回にわたってお届けする第3弾記事では、そもそも日本人にシェアリングエコノミーは向いているのか?文化や歴史を交えてディスカッションが行われた。また、既存産業との向き合い方、地方経済を活性化するそのポテンシャルについても話題は及ぶ。



■日本人にシェアリングエコノミーは向いているのか?

--落合さんから「日本的なシェアリングエコノミー」についての言及がありましたが、そもそも日本人はシェアに向いているのかについてもお話できればと思います。

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(写真、左から)髙橋正巳氏(Uber Japan株式会社 執行役員社長)
重松大輔氏(株式会社スペースマーケット 代表取締役)

髙橋正巳
(以下、髙橋):
まだまだ知らないとか、使ったことがない人が多いと思います。シェアリングエコノミーは使ってみてはじめて良さが分かるサービスも多いんですよね。ただ、日本の歴史や文化を振り返ると、実は昔からシェアしてきた民族だと思うんです。

昔は長屋に住んで、物の貸借りも日常茶飯事で行われていた。「おすそ分け」という概念はその最たる例ですよね。それが近代化されていくなかで、知らない人同士だと不安という価値観が強くなっていきました。それをもう一度テクノロジーによって、透明性を高めながらお互いに安心して共有できるものにしていく。

もう一つは「もったいない」という考え方。この概念は英語には訳せない、日本人に固有の考え方、価値観だと思います。ロスをなくしていく観点でも、日本にはシェアリングエコノミーの素地があるのではないでしょうか。
重松大輔
(以下、重松):
体験の数が圧倒的に足りていないのは事実でしょうね。ミレニアルズたちはシェアハウスに住んでいたり、Uberのようなサービスを普通に使いこなしているのですが、どうしても上の世代はまだまだ使っていません。ただ、初回利用のハードルさえ超えれば、必ず便利さに気づき、広がっていくはずです。

事実、メルカリさんはすごい勢いで伸びています。私の両親も勝手に使っているくらいです。最初はぎこちなくても、使い方に慣れてくると、普通に利用するようになります。我々のサービスもユーザーの反応をみながら、改善を続けてきました。シェアリングエコノミーのサービスは一方向では成り立ちません。「協働消費(collaborative consumption)」という言葉がありますが、共に消費を作り出していく。日本は互いにケアし合う価値観があるので、仕組み自体は向いているのではないかと思っています。
髙橋:
従来のBtoCサービスでは利用者に目が行きがちだったのですが、我々のお客様は二方向です。「貸す人と借りる人」や「提供する側と提供される側」。両者が気持ちよく使える仕組みでないと、思うように普及していきません。
重松:
Uberの場合は、乗る方も評価されるじゃないですか。タクシーに乗ると人格が変わってしまうような人は、乗れないようになっているということですよね。うちのスペースマーケットも同様に、迷惑をかけるような人はサービスを利用できないようにする。そうすることで、お互いが気持ちよく使えるようになります。


■既存産業が先制的に投資することが文化になるべき

--一方で、個人間サービスならではのトラブルも起きますよね?

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重松:
我々の例でいえば、「何かをこぼしてしまった」とか「自分のためにとっておいたワインを飲まれちゃった」といった個人間のトラブルはたしかに起こります。一方で、これまで数万件以上やっているなかで、本当に重大なトラブルは意外と起こっていません。
髙橋:
テクノロジーを介しているので、履歴が残るのは大きいと思います。弊社の場合は平均点も見られるようになっています。トラブルや事故を完全に避けることは難しいですが、何かが起こったときに問題解決はしやすくなります。
齋藤精一
(以下、齋藤):
日本人が自然にシェアしていた風景は、小津安二郎の映画に典型だと思います。テレビや洗濯機を近所でシェアしたり。それが近代になり、東京のような大都市だと、隣に住んでいる人さえ知らないといった状況になる。シェアリングにしても、貸す相手や借りる相手が知らない人だと、どうしても障壁があると思うんです。ここの壁を取り払うことができれば、一気に普及していくと思います。2020年の大きな世界的イベントまでにどこまで習慣や風習まで一般化するかが僕は勝負ではないかと思いますね。
落合陽一
(以下、落合):
あとは我々も含め、既得権益とどう向き合っていくか。最近その解決策が分かりつつあって、要は既得権益の人に株式を注入してもらえれば問題なくなるんです。マーケットのなかで興りつつある新しい企業体やサービスにリスク分散として出資していた方が、大企業のお金の持ち方としていいはずなんです。 既得権益の側が防御体制になるのではなく、先制的に資産を撒くことが文化として根付くべきだと思います。この辺りはどのように向き合っていますか?
重松:
世界的にみても、不動産業界がシェアリングの概念を取り込んでいく流れは強まっていると思います。コワーキングスペースを手がけるWeWorkもものすごいバリュエーション(企業価値評価額)になっていますし、不動産周りだけでもシェアに関するあらゆるカテゴリーができています。それを取り込んでいかないことにはグロースも見込めないので、不動産業界の方々もアレルギーというよりは興味を持たれている方が多い印象がありますね。
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齋藤精一氏(ライゾマティクス代表取締役社長/クリエイティブディレクター)

齋藤:
不動産会社さんが主催する会議に出させていただくと、必ずルームシェアや民泊の話が出てきます。そこで話題になるのは不整備の体制やオペレーション、もしくはすでに住んでいる方には規約更新するのが難しいという話。そこの部分を法改正なり、何かしらの「ここからスタート!」という口火が切れれば、一気に変わっていくとは思います。
髙橋:
既存のルールやインフラは何十年も前に作られたものが少なくありません。その当時からすれば、現在のインターネットやモバイル、クラウドで繋がる世界は想像すらできなかったはずです。明らかに前提が変わっているので、改めて見直す良いきっかけなのではないかと思います。


■シェアリングエコノミーは、地方経済を活性化する

齋藤:
大量消費の経済やモノづくりが終わり、次は今あるものをどれだけ運用していくのかが問われます。もしくは先ほどUberさんの例であったように、タクシーのサービスなど今まで作ってきたもののクオリティを上げていく。モノづくりでみても、平行線をたどりながら良いものを作っていくところもあるけれど、一気に価格破壊して少し悪くなってしまったものをもう一度盛り返すチャンスのような気もするんです。
落合:
シェアしたら売り上げが下がるのではないかと思うのが普通の発想ですが、実はそれは間違い。使用回数が上がれば上がるほど、ブランドイメージは向上します。つまり、中古だとしても市場価値を保っている状態がブランド価値につながる。そうすると、製品の価格が下がらないで済むため、明らかに二次使用が多い方がブランドイメージの向上には繋がるんですよね。
髙橋:
Uberが非常に普及している地域が世界にはあるのですが、そうしたところの交通市場をみると、何倍にもなっているんです。Uberを使って簡単に外出できるのであれば、行ってみようと外出の機会が増えることで市場が拡大。つまり、移動の利便性が増すことに伴って、地域経済そのものが活性化するんです。
齋藤:
1人のユーザーとして思うのは、1つの業界のなかで離れてしまった企業Aさんと企業Bさんがシェアリングエコノミーによって統合されるということ。それこそ地方の経済も上がっていきますし、もしくは余剰だったものがオプションとして使える状態になると思うんです。要は業界を一つに束ねたり、一つのプロトコルというか共通言語でつないでいくのが日本は不得意じゃないですか。ここがクリアされるとまた日本が飛躍する契機になるのではないかと思います。
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落合陽一氏(筑波大学学長補佐・助教/メディアアーティスト)

落合:
歴史上、西欧は個人の人権意識というか獲得意識が強いので、自分個人が持っている資産と相手の持っている資産、もしくはお互いの権利を使って交換してきたんですよね。対して、日本人はその意識がものすごく低い。江戸から急に明治になったり、戦後明治体制から急に昭和体制になったりしたことで、獲得意識が薄いのが一因だと思います。シェアに関して自分の権利を他人に渡したり、他人の権利を綺麗に使おうとすると、この辺りの意識が強くないと上手くいかないと思うんです。

日本語の言葉で、「旅の恥はかき捨て」がありますが、そんなわけないし、最低な言葉だと思うんです(笑)。あと英語にないものでいえば、「頑張る」という言葉。「制約条件のなかで、難しいけれどやってみる」といった意味合いだと思いますが、我々の言語体系のなかで条件出しみたいなものがうまく結びついていないのは一つあるかもしれません。一方で先ほど髙橋さんもおっしゃっていたように、「もったいない」も日本語に特有の言葉。良いところだけを残しながら、アダプトしていくべきだと思いますね。

翌週公開予定の「"シェア"が解決する過疎、高齢化、人材活用課題」では、シェアリングエコノミーが挑む地方創生の課題解決や日本における普及の方策が語られた。最後にはシェアの新しい形と未来予測についてディスカッションし、シェアリングエコノミーの最前線でサービスを展開する二人から次の起業家へのアドバイスも頂戴した。

【シェアリングエコノミーの可能性】
「先進国こそ"シェア"を活性化せよ!」
自転車も冷蔵庫も。シェアリングサービス海外動向
地方経済を活性化するシェアリングエコノミーの可能性
シェア"が解決する過疎、高齢化、人材活用課題

構成:長谷川リョー

SENSORS Senior Editor
1990年生まれ。修士(東京大学 学際情報学)。リクルートホールディングスを経て、独立。複数媒体で編集・ライティング、構成、企画、メディアプロデュースなど。『WHITE MEDIA』企画顧問。『木曜解放区』レギュラー出演中。夢は馬主になることです。

Twitter:@_ryh
Mail: ry.h0508[アット]gmail.com
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カメラマン︰松平伊織

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