"シェア"が解決する過疎、高齢化、人材活用課題-Uber×スペースマーケット対談

2017.07.17 12:00

「シェアリングエコノミーの可能性」をテーマに行われたSENSORSサロン。ゲストに髙橋正巳氏(Uber Japan)と重松大輔氏(スペースマーケット)を迎え、MCの落合陽一×齋藤精一がシェアリングエコノミーの現在と展望をディスカッションした。

4回にわたってお届けする最終回、第4弾記事では、シェアリングエコノミーが挑む地方創生の課題解決や日本における普及の方策が語られた。最後にはシェアの新しい形と未来予測についてディスカッションし、シェアリングエコノミーの最前線でサービスを展開する二人から次の起業家へのアドバイスも頂戴した。

■シェアリングエコノミーが挑む、地方創生と社会の課題解決

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--つづいてのテーマは「地方創生と社会の課題解決」。お二人が展開されているサービスも地方創生につながっているそうですね。

髙橋正巳
(以下、髙橋):
現在、京都府の京丹後市と北海道の中頓別町で弊社の取り組みを使った、マイカーの配車サービスを行っています。両自治体とも人口が減少し、高齢者の割合が約4割の地域で、公共交通機関が非常に不足しているエリアです。どうすれば持続可能な交通の便を確保できるかを議論させていただくなかで、一家に一台あるマイカーを活用できるのではないかとこの取り組みが始まりました。

京丹後市では地元のNPOが運行の主体となり、弊社のプラットフォームに登録しているドライバーが求めに応じて、病院やスーパーまで送る仕組みになっています。中頓別町も同様にボランティアの方が空き時間にドライバーになる。この取り組みを1年ほど行うなかで、ユーザーさんから「スマホやクレジットカードを持っていないけど、どうしよう?」といった様々な声をいただきました。

そうした声に応える形で、スマホを持っていなくとも誰かに電話をすることで代理配車できるような仕組みを導入しました。他にもUberでは例外的な扱いになるのですが、現金決済も始めたんです。代理配車+現金決済によって、テクノロジーに不慣れな高齢者が多いエリアでもサービスを利用していただけるよう、ユーザー目線のサービスを構築しているところです。

--スペースマーケットも地方創生と関わりが?

重松大輔
(以下、重松):
高齢化や少子化が加速していくと、今まで税金で作ってきた箱物(編注:施設、建物など)が稼働しなくなっていきます。さらには、それを閉じるのにお金がかかる。とはいえ、せっかくあるのであれば有効活用したいと自治体さんにご相談いただくことがあるんですね。

一つ事例を紹介しますと、島原市と組んだ島原城に泊まってグランピング体験できるキャンペーン。これはコスプレイベントと一緒にやりました。島原市は交通の便がそれほど良くないのですが、全国から100人以上のコスプレイヤーが集まったんです。
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(写真、左から)髙橋正巳氏(Uber Japan株式会社 執行役員社長)
重松大輔氏(株式会社スペースマーケット 代表取締役)

重松:
島原以外にも茨城の山奥や、奈良の廃校でもコスプレイヤーの方々には使っていただいています。コスプレイヤーの方はお酒を飲むわけでもなく、ただコスプレをして撮影するだけなので、綺麗に使っていただけるんです。「あそこの古民家が最高だった」とレビューも書いてくださるので、それ以外のお客さんも入ってくるようになります。何か観光資源があるわけでもないのに、人が訪れるようになるんです。

その場所を保有している本人たちは魅力に気づいていなくても、東京にいる我々をはじめ、違う人たちからみるととても価値のある場所は多いんですね。そうした出会いを結びつけることができるのがシェアリングサービスに他なりません。どんな物件や場所にも可能性があるということを証明できるのがシェアリングサービスの魅力なのではないかと思います。
落合陽一
(以下、落合):
放っておくと廃墟になりますからね。廃墟になると、資産価値もゼロになってしまう。定期的なメンテナンスは必要ですが、地方はメンテナンスをするにも人が足りない。なので今後はいかに人間ではなくITで管理するのがポイントになるでしょう。10年放置していたら、あっという間に全て廃墟になってしまう。ましてや、人口が減りつつあるので、今やらないといけないことですね。
齋藤精一
(以下、齋藤):
行政は自分たちで頑張ろうとしているじゃないですか。僕はもっと民間に頼るべきだと思うんです。スペースマーケットさんの中に載っかっていれば、「ロケやパーティーができる場所だ」と発見されるかもしれない。それでダメだったら最終的に壊すのか、違う有効活用の仕方があるのか判断できるわけで。地方創生には民間の力が絶対に必要だと思うんですよね。
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(写真、左から)齋藤精一氏(ライゾマティクス代表取締役社長/クリエイティブディレクター)、落合陽一氏(筑波大学学長補佐・助教/メディアアーティスト)

齋藤:
あとは、地方にいるとても優秀な人たちの人的資源も利用するべきだと思います。もともと外資系で働いていたけど、旦那さんの赴任に合わせて地方にいった、英語やフランス語が堪能な方っていますよね。それこそ海外ではCraigslistのようなサービスで、そういう人たちのスキルをシェアするのかもしれません。人的資源も含めてもう少しちゃんとデータベース化するというか、リスト化してアップデートし続けることで、地方創生は必ずうまくいくと思います。
落合:
僕も地方の大学教員ですが、秘書を公募するとそれこそハイスペックな人から応募がたくさん来ます。地方はまず手弁当で頑張ることをやめることが重要。最初にバン(車)を買うんじゃなくて、まずあるものを使うスタンスに変えていく。そのあとにお金は回っていくはずなので、そのあたりから変えていくことが大切ですよね。

■日本での普及には、"ソフトウェア的発想"が必要

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--続いてのテーマ「シェアリングエコノミーの普及で日本はどう変わる?」についてお話できればと思います。

落合:
中国と比べてもまだ、日本は現金主義が根強く、電子決済が普及していないこともシェアリングエコノミーの浸透を妨げている側面があると思います。
重松:
現金主義の問題の一つは、クレジットヒストリー(決済の履歴)が残らないこと。安心安全を追求していくのであれば、日本人も本来は電子側にシフトしていくべきなんですけどね。
齋藤:
前回のFinTechの回にも話したのですが、日本には国民総生産に乗っかってこない物々交換が多い説があるんですよね。近所の子供さんが幼稚園で採ったみかんを近所の人にあげると、大根5本になるといったことです。全体として使われていない人材やスキル、場所や車をトラッキングできる状態にするとシェアリングエコノミーが大きく変わっていくと思います。

落合:
一度プラットフォームを作ることで全員の利便性を獲得できることを「ソフトウェア的発想」と僕は呼んでいるのですが、よっぽど最後の一押しまで行かない限り難しいですね。もうちょっとだとは思うのですが...。
重松:
Uberにせよ、スペースマーケットにせよ、メルカリにせよ、ユーザーのクレジットヒストリーというか評価の積み上げが有機的に繋がっていくと、信頼の見える化がなされて、新しいビジネスが生まれてくるはずですよね。老若男女を問わず信頼が価値になっていく。そんな時代になっていくと思います。
髙橋:
違った意味でのソーシャルネットワークと言いますか、非常に透明性を高めることによって初めて実現できる、新しい人と人との関わり方っていうのが可能になってきますよね。

■シェアの未来予測

--それでは最後のテーマ「将来の新しいシェアの形」についてお話できればと思います。シェアリングエコノミーの市場規模が、2013年の約150億ドルから2025年には3350億ドル規模に成長すると見込まれています。今後はどのような新しいサービスが成長していくと予想されますか?

髙橋:
移動の分野に関しては、今後5〜10年の間に激変があると思います。まずは日本でも話題になることが多い自動運転。自動運転が普及すると、一家に一台所有するというより、必要なときにボタン一つで呼ぶ方が当たり前になる。将来的にはバスに乗るような感覚で、必要なときに迎えに来てくれて、自分の空間だけで移動できるようになるかもしれません。実は我々はすでにそういった実験をスタートしています。アメリカのピッツバーグやアリゾナでUber Xを呼ぶと、自動走行の車が来てくれるんです。

--重松さんはいかがでしょうか?

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重松:
世界でも動き出していますが、オフィスのあり方が変わっていくと思っています。ベンチャー企業の場合、人が増える度にオフィスを移転しなければいけないのは経営者にとってはストレスですし、コストがかかります。一方、世界で台頭しつつあるWeWorkは先日ソフトバンクが出資したことでも話題になりましたが、現在ではバリュエーションが2兆円近くになっているとも言われています。日本ではまだまだこれからですが、オフィスの概念そのものが変わってきている印象があります。

オフィスのみならず生活、つまり家もコラボレティブ・ハウスじゃないですが、近所の人同士でシェア可能だと思います。子育てを含めて、家事全般ですね。それに応じて働き方や遊び方、ひいては生き方も変わっていくと思います。
落合:
日本には数多くの余剰資産があるので、まずはそれをどう自動化もしくは無人化していくか。一方で我々がまず意識すべきことは、今あるものを使ってやってみること。一方で日本は市場経済ベースで、特に地方は役所を中心に回っているので、そこのマインドをいかにディスラプティブ(破壊的)に変えるかはまず重要です。

--斎藤さんはいかがですか?

齋藤:
今日の話を聞いていて思ったのは、与える方がマインドチェンジをしなければいけないということ。日本人は何かを企画するときに、特に行政の人ですが、文字がパンパンのプレゼンテーションを作る傾向があるじゃないですか。そうではなく、どんどんやってみて、ダメなものは改善して、良かったものは積極的に伸ばしていくべきだと思うんです。

それをやるためには、一箇所に「うちはこれが余っています」とか「僕はこんなスキルを持っていて、この時間が余っています」といった情報がまとまっているプラットフォームがあった方がいい。そうなるとエネルギーも車も、スキルもシェアできる無限大の可能性があると思うんです。
重松:
本当にやってみなければ分からないですよ。僕もこのビジネスを立ち上げるまでは、山奥の廃校にコスプレイヤーが毎週末に集まるなんて夢にも思いませんでした。一歩を踏み出して、ハードルを越えてみるのは、特にシェアのサービスでこそ大切だと思います。
髙橋:
Uberもスペースマーケットもオンラインのサービスなので、デジタルな世界なのかと思いきや、それを支えているのは人と人のリアルな接点や対話のようなアナログなものなんですよね。そうした観点に加えて重要なのが、生産性の向上。日本では人口がどんどん減少していくので、無駄を省きながら生産性を向上させることが、経済全体にとっても重要になっていきます。
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--最後に、これからビジネスを始めようとしている若者にゲストのお二方からヒントや心構えをお聞かせいただけますか?

髙橋:
本日は「シェアリングエコノミー」をテーマにお話させていただきましたが、弊社のサービスもたまたまシェアリングエコノミーに行き着いた手段なんです。シェアリングサービスを作ろうと思って始めたわけではない。あくまでも利便性や安全性を高めようと努めるなかで行き着いたのがシェアリングサービスという一つの形なだけです。重要なのはどういった課題を解決したいのかを初めに考えることです。
重松:
私も起業から3年しか経っていないですが、時代がものすごい勢いで変わっているのを感じています。今皆さんが思っているような常識も、一瞬で陳腐化する可能性があるということです。 具体的なアドバイスとしては、海外でそれなりに普及しそうな種をまず見つける。その本質を自分なりに解釈し、ブラッシュアップして仮説検証を早く回す。小さく生んで、大きく育てていってほしいと思います。

「破壊的(disruptive)」という形容詞とともに、海外の最先端サービスとして紹介されることの多かったUberやAirbnb。今ではミレニアルズ世代を中心に、生活になくてはならないサービスとして日常に根付きつつある。
髙橋氏(Uber Japan)と重松氏(スペースマーケット)を招いて行われた今回の座談会では、「地方創生」が一つの主題として浮かび上がった。これは"シェアリングエコノミー"という概念が一般化し、利便性の追求から社会課題の解決へフェーズが深化したことの証左であろう。

1日2000万回以上利用されているというシェアリングサイクル「Mobike」を筆頭に、とりわけ2017年は中国発のシェアサービスが注目を浴びている。一方で少子高齢化や地方の過疎化など、「課題先進国」とされる日本だからこそいち早く生み出せるシェアリングエコノミーの種は数多くあるはずだ。
今回登場いただいたゲストお二方とMC落合陽一氏×齋藤精一氏のディスカッションからも、そのヒントが伺えたのではないだろうか。

【シェアリングエコノミーの可能性】
「先進国こそ"シェア"を活性化せよ!」
自転車も冷蔵庫も。シェアリングサービス海外動向
地方経済を活性化するシェアリングエコノミーの可能性
シェア"が解決する過疎、高齢化、人材活用課題

構成:長谷川リョー

SENSORS Senior Editor
1990年生まれ。修士(東京大学 学際情報学)。リクルートホールディングスを経て、独立。複数媒体で編集・ライティング、構成、企画、メディアプロデュースなど。『WHITE MEDIA』企画顧問。『木曜解放区』レギュラー出演中。夢は馬主になることです。

Twitter:@_ryh
Mail: ry.h0508[アット]gmail.com
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カメラマン︰松平伊織

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