日本初のユニコーン企業、メルカリ・山田進太郎が描く世界戦略とシェアリングエコノミーの行方

2017.01.07 19:30

設立からわずか3年半で、日米合計6,000万ダウンロードを達成したCtoCフリマアプリ「メルカリ」。日本初のユニコーン企業(未上場ながら評価額が10億ドルを超える企業)として、その成長ぶりに国内外から熱い視線が注がれている。今回、SENSORSではメルカリ創業者の山田進太郎氏に独占インタビューを敢行。シリアルアントレプレナーとしても知られる山田氏に、起業家としてのこれまで、メルカリ急成長の秘訣、経営のこだわり、そして今後の世界戦略について伺った。

2013年のサービス開始以来、メルカリのミッションとして掲げられてきた言葉が「新たな価値を生みだす世界的なマーケットプレイスを創る」だ。その言葉に従うように、わずか3年半の間で日米合計6,000万ダウンロードを達成し、売上高は約123億円にのぼる(2016年6月期決算)。創業者の山田進太郎氏は、『Forbes』誌が選ぶ「日本の起業家ランキング」に3年連続で1位に選出されている。

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社員とフラットな社長席にて。胸には、メルカリのコアバリューの1つGo Bold(大胆にいこう!)の文字が

■1社目の売却直後、世界一周の旅へ

草創期の楽天で内定者インターンを行いながら、ゼロイチで新規事業を立ち上げる経験を積み、インターネットビジネスのいろはを学んだという山田氏。「若気の至りで」と内定を辞退し、自ら事業を興す道を選んだ。2005年に一社目となるウノウを起業するまではフリーランスで、都度デザイナーやエンジニアと組みながら企業のウェブサイト制作などの受注を行っていたのだとか。

山田:
当時はまだインターネットが一般の人に浸透する前のタイミングだったので、作れる人自体がそれほどいませんでした。例えば、「コマースのサイトを作りましょう」といっても、みんなどう作ればいいのか分からなかった。こうした案件を僕が個人で請けて、フリーのデザイナーさんやエンジニアさんと4〜5人でチームを組んで、半年くらいかけて作って、納品。それから改善も含めた保守を行っていました。

2005年にウノウを立ち上げ、ガラケーの上で行うソーシャルゲームが大ヒット。2010年に「FarmVille」などの世界的ヒットタイトルで知られるアメリカの会社Zyngaにウノウを売却。当時からミッションに「世界で使われるサービスを作る」ことを置いていた山田氏は、Zynga Japanの立ち上げに参画することになった。それからさらに1年半後、Zyngaを去る山田氏は世界一周への旅へ出る。

山田:
Zyngaは海外に何億人というユーザーがいる会社でした。僕自身はその海外のネットワークを使って、日本から作ったものをPRすることを考えていたのですが、なかなかできる状態にならなかったのです。そこで1年半後には一旦辞めて、もう一度新たな会社を作ろうと思ったのですが、その前に旅に出ることにしました。僕自身旅行が好きで、アジアはほとんど行ったことがありましたが、アフリカや南米といった遠い国に行く機会が今までありませんでした。「この機会を逃したらもう二度とないかもしれない」と思い、世界旅行に出かけることにしたのです。

--旅を通じて得たもの、感じたものはその後の仕事に何かつながりましたか?

山田:
途上国のインターネットは細いというか、遅いんです。旅行している最中もけっこう忙しく、「明日なに食べよう」とか「どこに行こう」といったことを調べるだけでかなり時間がかかってしまいます。日本に帰ってきたときには、ほとんど浦島状態でした。

正直、インターネットの仕事という意味では(この経験は)それほど役に立たなかったかもしれません。それでも極力飛行機を使わずに移動したり、意識的に現地の人と会うようにしていたので、「こういう国があって、こういう人たちが、こういう生活をしているのか」ということを肌感をもって実感することはできました。また、「ここからここまでがどれくらい離れているのか」という地理感も経験としては大きいかもしれません。

■インターネットが個人間の関係性に与える革命的なインパクト

1996年大学一年生のときに初めてインターネットに触ってから、楽天での内定者インターン、ウノウ、そしてメルカリまで一貫してインターネットサービスに携わってきた山田氏。インターネットのどの部分に山田氏は可能性を見出したのだろうか。

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SENSORSパープル・笹崎里菜がメルカリ設立のきっかけから、今後の世界戦略までを伺った。

山田:
やはりインターネットを通じて個人対個人がつながれることが面白いと思っています。今までは例えばテレビや雑誌も含めて、誰かが発信して受け取るという形でした。インターネットならば誰でも掲示板やブログから発信をすることができます。文明ができていく過程はほとんど人と人との関わり合いの中でできてきたと思っているんです。その関わり方が根本的に変わるということがインターネットの革命的なところだと思っています。

まさに今「メルカリ」でやっている物の売り買いや、物だけではないサービスの売り買いもできるようにしたいのですが、インターネットが出現したことでこうした可能性が格段に広がったと思うんです。インターネット自体が生まれてきたことによって、人類の進歩のスピードが上がっている中で、自分としてもできることがあるのではないかと思ったことがきっかけにあります。

--インターネットが秘める可能性、とりわけ個人間の関係性を変えるという点が直接メルカリにつながっているんですね。

山田:
「個人間」という点は昔からすごく興味を持っていたのですが、やはりスマートフォンが出てきたことも大きい。スマートフォンの普及はインターネットの革命的な部分をさらにドライブするというか、真の意味で個人がインターネット端末を手にいれるということです。パソコンは「パーソナルコンピューター」と言われていますが、実は一台を家族で使っていたり、全然パーソナルではなかったんです。スマホは一人が一台を持っていて、人と人がダイレクトにつながるので、これによって様々なサービスが生まれました。その流れで、個人間で取引できることにフォーカスしたのがメルカリです。

--その中で、メルカリがここまで急速に成長できた理由はどこにあると思いますか?

山田:
根本的には、みんな求めていたけれど今までそういうものがなかった、ということだと思います。例えば国内ならヤフオク!さん、海外ならeBayなどのいわゆるオークションサイトと言われているものがあります。しかし、これらはスマートフォンに最適化されているわけではなかったので、それほど使い勝手が良くなかった。そこで、将来的には個人間で物のやりとりができるプラットフォームが絶対に必要になると思いました。そこにフィットするものが出せたということだと思います。

--CtoCビジネスの今後をどう占いますか?山田さんが考えている未来像を教えてください。

山田:
AirbnbやUberを筆頭に、シェアリングエコノミーが注目を浴びています。先進国の人たちと同じ暮らしを新興国の全員が同じようにすることは資源の観点から不可能なことは明白です。だとすれば、新品を買って要らなくなったら捨てるという社会ではなく、要らなくなったら誰かに使ってもらうし、自分も良いものであれば中古の物を使っていくという社会になっていくと思います。こうした意味で、市場という意味でもすごく広がりがあります。

僕らとしては、すべてを自分たちでやろうとするのではなく、良いサービスがあるなら積極的に提携をしていく。独占したいというよりも、シェアリングエコノミーというもの自体を広げていきたいという思いが強いです。すべてを自前で独占してやるとは考えていません。

■メルカリの世界戦略と日本のスタートアップ・エコシステムのこれから

世界一周を経てメルカリを新たに創業した山田氏は、当初から世界を視野に入れていた。昨年7月には米国のiOSアプリランキングで3位に浮上したことが話題になった。今年以降はヨーロッパでの展開も加速させていくという。山田氏はなぜ当初からアメリカを焦点にサービスを展開することにしたのだろうか。

山田:
先ほど日本のヤフオクに当たるものが、米国ではebayであるとお話しましたが、ebayはヤフオクに比べて流通量が10倍にものぼります。彼らはアメリカとヨーロッパ、それから韓国などいくつかの国でサービスを展開しています。市場規模でみたときに、欧米を抑えることができれば、こうした数字が見えてくる。だとすれば、日本だけでやるのではなく、海外で成功したいと思っています。成功できれば、ものすごく大きな流通が生み出せると思います。

アメリカにおいて2,000万ダウンロードを超えたといっても、アメリカは広いですし、世界の縮図のようなところがあります。人種的にも色んな国から集まってきていますし、国土も広い。例えばハリウッド映画を例にとると、アメリカで成功すれば世界中で成功する傾向にある。音楽も同様です。インターネットサービスにしても、GoogleやFacebookをみても分かるように、アメリカで成功すれば世界で成功できる確率が飛躍的に高まると思っているんです。

--それでも今まで日本初で、世界で成功したスタートアップがいないなかで、不安はありませんでしたか?

山田:
「成功は難しい」とよく言われますが、僕自身はそれほど世界と差があるとは思っていません。野球をイメージしてもらえれば分かりやすと思うのですが、昔、野茂英雄投手が成功するまでは、誰もが日本人が大リーグで活躍することは無理だと諦めていました。今では多くの日本人が大リーグで活躍しています。サッカー日本代表でも多くの海外組が活躍していますよね。そう考えると、日本人が作ったインターネットサービスが世界で使われない理由はないと思うんです。だから、まずはそこに先鞭をつけたいですね。

--その話に関連するかもしれませんが、日本から世界へ飛び立つスタートアップがなかなか出てこない中で、メルカリの躍進に勇気付けられている日本のスタートアップも少なくないと思います。日本のスタートアップが真のエコシステムとなるためには何が必要になると考えていますか?

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山田:
今メルカリがこういう状態にあるのも、結局はやる人がいなかったからだけだと思っているんです。まさに今野球を例にして説明した通り、誰か一人が成功すれば「俺も、俺も」となっていくと思っているので、その事例さえあればノウハウも蓄積されていくと思いますし、成功する企業も増えていくと思います。

もう一点付け加えるとすれば、日本はマーケットサイズが大きいので、すでに豊かという側面もあります。日本である程度成功すれば当然上場もできるし、ある程度稼ぐことができます。だからあえて海外に行こうというモチベーションが今は高くないのかもしれません。それでもアメリカをはじめとする海外で成功する会社が出てくれば構図は一気に変わるのではないかと思います。やはり野球を例にとると、国内ではこれくらいの年俸が限界でも、海外に行けば桁が違う数字の年俸を稼げることがすぐに分かります。そうすれば後続する人たちが出てきても何ら不思議はありません。

--お話を聞いていると、日米合計6,000万ダウンロードを達成した今も、まだまだ目標には程遠いという山田さんの意気込みを感じます。来年はどういった事業運営を考えていますか?

山田:
僕自身、危機感は強いです。3年半サービスを展開してきましたが、まだ自分の中では全然納得できていません。来年は背水の陣で臨みたいと思っていて、そのためにドラスティックなことも断行しようと思っています。サービスをガラッと変えることも含めて、やれることは全部やり切りたいと思っています。

--今後のメルカリの展望を教えてください。

山田:
今までの話の繰り返しになりますが、とにかく欧米で成功することです。加えて、日本でもCtoCと呼ばれる個人間取引の可能性を拡張しながらサービスを展開したいです。そこから新興国にも事業を広げていき、最終的には全部つなげたいと思っています。

昨年末、採用活動の一環としてアメリカ全州に学生を派遣するインターンシップ「BOLD INTERNSHIP in USA」を行うことを発表したメルカリ。さらには大人気漫画『宇宙兄弟』とタッグを組み、メルカリ上で『宇宙兄弟』の二次創作グッズの販売を行う取り組みを始めた。日本初のユニコーンとしてその動向が注目されるメルカリは、USに注力しながら事業を展開してきたが、国内におけるユニークな動向にも注目だ。2017年は日米を飛び出し、ヨーロッパを皮切りとして、世界へ歩を進めていく。メルカリの経済圏が世界を席巻していく様から今後も目が離せない。

取材・文:長谷川リョー

SENSORS Senior Editor
1990年生まれ。リクルートホールディングスを経て、独立。『SENSORS』や『WIRED.jp』などで編集/ライティング。『PLANETS』や『HIP』では構成を行う。これまで『週刊プレイボーイ』『GQ JAPAN』WEBなどで執筆。修士(学際情報学)。将来の夢は馬主になることです。
Twitter:@_ryh
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カメラマン︰松平伊織

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