落合陽一が「シーグラフアジア2015」をナビゲート〜最注目は"触覚デバイス"

2015.11.26 13:00

1974年にアメリカでスタートした世界最大規模のコンピューターグラフィックスの祭典「ACM SIGGRAPH」。そのアジア版となる「シーグラフアジア」が今月2〜5日に開催された。デジタルアート、スポーツ、サイエンス、エンターテイメント、さらには教育や医療分野など、およそ150もの最新インタラクティブ技術を体験することができる。今月20日にWorld Technology Award 2015でIT hardware部門を受賞するなど、SENSORSでもその活躍を追いかけてきた現代の魔法使い・落合陽一氏が「未来のエンターテイメントを変える作品」をキュレーションしながら、シーグラフをナビゲートする。

最先端の研究論文が発表され、また、インタラクティブ・テクノロジーに触れられる「シーグラフアジア」は、研究者の意見交換や最新展示の体験・ビジネスチャンスの場として、50を超える62の国と地域から関係者が集結。

メディアアーティスト。筑波大学助教・デジタルネイチャー研究室主宰。Pixie Dust Technologies CEO。World Technology Award 2015 IT hardware部門受賞。他にも受賞多数。11月27日には初の単著となる『魔法の世紀』(PLANETS)が発売予定。

Featured Sessionsにて、パネリストの一人として登壇したのは、筑波大学助教の落合陽一氏。あらゆるテクノロジーを使いこなす"現代の魔法使い"に"未来のエンターテイメントを変える作品"を体験してもらい、気になった作品について特徴別に幾つかキュレーション、ナビゲートしていただいた。(最新作"Fairy Lights in Femtoseconds"や落合氏のテクノロジー観に迫ったインタビューはコチラ)

■︎Futuristic(未来的)賞:インタラクティブ・ボリューメトリック・フォグ・ディスプレイ

まず初めに落合氏が「Futuristic(未来的)賞」として未来を感じたプロダクトに挙げたのがインタラクティブ・ボリューメトリック・フォグ・ディスプレイ。空中に自由にグラフィックスを描くことができ、霧の噴射によって、空中に3Dスクリーンを生成する。

出展者は香港港市大学のYAOZHUN HUANG氏。

空間内の物体と手の動きをキネクトで検知し、リアルタイムで霧にグラフィックを投影。創造的なインタラクションを実現している。

落合:
これならばゲームセンターにも置けますよね。それくらいのサイズ感で霧スクリーンが作られているのが良くて、音ゲーのように空中に音符を置いていったり、空中に手を置いたときにフィードバックがあったら面白い。
画面よりこっち側に情報を出せるともっと臨場感のあるゲームができたり、綺麗な映像を体験できたり、射撃したらゾンビの手が出てくるとか。そういう面白いことができるんじゃないでしょうか。

■︎︎Olympic賞:ジャックイン・ヘッド

続いて「Olympic賞」として落合氏が選んだのが、自身もかつて所属していた東京大学・暦本研究室の展示。

アスリート目線でのスポーツ観戦を可能にするウェアラブル・デバイス「ジャックイン・ヘッド」は装着した人が見ている景色を他の人がリアルタイムで見ることができる。

資料提供:SonyCSL、東京大学 暦本研

例えば、旅をしているAさんが眺めている360度の景色を独自のスタビライズ技術で滑らかにし、別の場所にいるBさんへリアルタイムに伝送。まるで一緒に旅をしているような感覚になるという。

以前、同様の研究をしていたこともあるという落合氏は使用用途としてのスポーツに注目。とりわけ、その追従速度、安定性、画質にリアリティがあることに適合性があるという。

落合:
例えば、サッカーで審判の視点に入って360度見ること出来たら、コート駆け回っている選手の真横で見られる。今の時点でも相当な完成度なので、未来のオペラグスみたいな使い方ができるかもしれない。例えば来年やろうと思ったらすぐにできるくらいのレベルで、製品レベルでも美しい映像が撮れる。これは非常に面白い。

■︎Sense to Shine賞:Twech(トュウィッチ)

過去最大数の出展数があった中、最も競争の激しい分野が「触覚」。そんな触覚デバイスの中でとりわけ落合氏の心を掴んだのが「Twech(トュウィッチ)」だ。

Twechはスマホに簡単に取り付けられ、モノの触り心地を体感できるデバイス。先端にあるマイクでモノに触れた際の音を取得し、その音声データをモーターにより振動に変換。記録した動画を再生することで、触覚を体感できる。

資料提供:慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科

例えばペットの犬や猫に触れた感覚もSNS上にアップロードし、他人と共有することが可能に。近い将来、ファッションなどよりリアルなネットショッピングへの活用も期待されている。

特にセンスが光る展示として落合氏が注目した触覚記録デバイス「Twech」。旧来までペン型やツールキットのようなモノはあったが、デバイスがスマホに変わったことで収集できるデータに幅が出たという。
さらに、これまでのシーグラフではディスプレイやグラフィックスの研究が多かったのに対し、今回はいかに触覚デバイスを安価で作ったり、普及させるのかを意識した研究が多かった。落合氏によればこれは非常に意義が大きいという。

落合:
触覚の研究は40〜50年行われてきたのにも関わらず、我々の手元に触覚デバイスは普及していません。特殊な触覚を実現するためのハードウェアのコストが高いという問題があったのですが、例えばiPadやスマホにつけて様々なモノに触れる試みがなされていきている。触覚を社会にどうやって出していくのかという窓口を開くような、社会実装に目を向けた新しい方向性の研究が非常に多かったと思います。

多くの研究がすぐにでもKickstarterで売れそうなモノばかりで、再来年にはiPadに入れて実用実験できそうなものが多かったという。「インタラクティブにデジタルデータや人間の世界をどう感じていくのか」というのは研究者にとって一つの課題だという落合氏だが、今回の展示では触覚という面でそれが色濃く現れていた。我々の日常生活に触覚デバイスが浸透する日も遠くないのかもしれない。

構成:長谷川リョー

SENSORS Senior Editor
1990年生まれ。フリーライター。これまで『週刊プレイボーイ』『GQ JAPAN』WEBなどで執筆。「BOSCA」編集長。東京大学大学院学際情報学府在籍。最近の関心領域は「人工知能」。将来の夢は馬主になることです。
Twitter:@_ryh

最新記事