起業家をロックスターのように!「SLUSH ASIA」

2015.05.11 12:00

レーザービーム、スモーク、DJブース、お酒、屋台。これは音楽フェスではない、スタートアップの祭典なのだ。4月末にお台場で開催され、これまでのイベントとは様相がまったく異なる「SLUSH ASIA」に訪問した。

「SLUSH ASIA」キーノートステージby Petri Artturi Asikainen

「バンド感覚で起業しよう!」
東アジアでシリコンバレーのようなイノベーションの生態系を築く活動の中心にいる孫泰蔵(そん たいぞう)氏は、予てからバンド感覚で起業することを推奨してきた。今の日本のイノベーションシーンを盛り上げるには若い人達の起業は不可欠。いくらリスクマネーの供給が増えたところで、起業家を志す人や、起業家が生き残ることができる仕組みをつくらなくては仕方がない。まずはロックバンドを組むように、気のあう仲間をみつけて会社をつくること。それも、平日は会社に勤めて週末だけ起業家になるというカジュアルなものでもいい。軽い思いつきからはじめた事業が大きく成功した例は多く存在してきたという。

そんな孫泰蔵氏らが中心となり、自らの想いをアウトプットするかのように、スタートアップの祭典「SLUSH ASIA 2015」が4月24日に開催された。

■会場はまさに音楽フェス。お酒とピザとネットワーキング。

「SLUSH ASIA」の会場。ホワイトロック。by Masahiro Takechi

SLUSHはお台場に特設された5つのドーム型テント「ホワイトロック」を中心に催された。当日は天候にも恵まれ、多くの来場者が訪れた。著名な経営者や投資家、大手企業の重役達を会場内の至るところで散見し、日本のスタートアップシーンを牽引するオールスター達が集結していた。

フィンランド名物のサウナを模した洒落たMTGスペース。「SLUSH ASIA」by Jussi Hellsten

国内外からの起業家・専門家によるトークセッション、キーノート。起業家達によるプレゼンバトル、プロダクト・サービスの展示が主なSLUSHのコンテンツ。SLUSH自体はもともとフィンランドで開催されている。前回ヘルシンキで開催されたSLUSHには世界中から1万3000人ものスタートアップ関係者が集結した。政府要人も出席するなど盛り上がりを見せているコミュニティだ。今回はアジアでの初開催となる。

「SLUSH ASIA」に出店するケータリングカー達。by Jussi Hellsten

会場内では、アルコール飲料や屋台による料理も販売されていた。電源&WiFi完備のミーティングスペースも数多く用意されており、来場者同士がビールを片手に活発なディスカッションを交わす様子が見てとれた。まだ日本のスタートアップ業界はそこまで大きくはない。VCが主催するイベントに顔出すなどを1年ほど続けていれば、自然とキーマンの知り合いが増えてくる。SLUSHでも5分に一度は顔見知りと再会し、アルコールを片手にお互いの知人を紹介し合うといった、カジュアルなネットワーキングの場として機能していたように思う。また、日本以外からの来場者も多く、隣の席に座った外国人達と、ピザをつまみながら談笑し、お互いのプロジェクトやプロダクトをフィードバックし合うといったこれまでに日本のスタートアップイベントではなかった体験を得られた。

■ロックスターのような登壇者達

ステージの様子 「SLUSH ASIA」by Eisuke NAKANISHI

テントの中では、著名人によるキーノートや起業家達によるピッチコンテストが行われていたが、その演出の豪華さに驚く。鳴り響く重低音、巨大なスクリーン、レーザービーム、全天周プロジェクションマッピング、感情を高ぶらせる照明演出。まさに、ロックバンドのステージだ。登壇者達がとてもかっこよく見える。ステージには元JUDY AND MARYのギタリスト TAKUYA氏や、宮本亜門氏など、ミュージシャンや演出家らがスピーカーとして登壇するというシーンも。

チームVMFive 「SLUSH ASIA」by Jussi Hellsten

ピッチコンテストには国内外から50社が登壇。クラウド/マーケットプレイス、エンタメ、教育、ツール、ハードウェアの5つの部門に10社ずつか登壇し、それぞれの部門で勝ち残った1社による、計5社で決勝プレゼンが行われる。クラウド/マーケットプレイスではディープラーニングプラットフォームの「AlpacaDB」(サンフランシスコ)。エンタメからは、動画や画像ではないプレイアブルな広告を配信する「VMFive」(台湾)。教育からは、持ち運び可能なDNA解析機「Bento Works」(イギリス)。ツールからは、コードを書くことなくスマホアプリを誰でも開発できるプラットフォーム「Yappli」(日本)。ハードウェアからは、SENSORSでもおなじみのアイトラッキング機能を持つHMD「FOVE」(日本)。最優秀賞は「VMFive」が受賞した。 授賞式もスモークが噴き出す演出など豪勢に催された。

■これからは英語のイベントがあたりまえに

「SLUSH ASIA」テント外の懇親エリア by Naoki Yamashita

SLUSHは全てのキーノート、セッション、ピッチが英語で行われた。会場には日本人が多かったが、話を内容を理解するのに苦しんでいたり、登壇者にしても適切な表現をすることができず困惑しているシーンも垣間見た。

しかしながら、もう日本のすべてのスタートアップイベントは英語のみで開催してよいのではないのだろうか。会場で懇親をしていると、韓国やシンガポールの投資家と出会うことができた。彼らと交流している時、日本国内の市場だけでなく、アジア、世界全体のことを自然に考えてディスカッションしていることに気付く。そして共通言語を英語にするだけで、インプットの質も視点の角度も変わってくる。

■「スタートアップは最高にかっこいい!」

TAKUYAらによる商店街バンド「SLUSH ASIA」by Petri Artturi Asikainen

かつてビートルズが世界を席巻したように、スタートアップもテクノロジーという楽器を手に世の中を熱くさせてくれる。新しいビジネスを立ち上げ、成長させていくことは決して容易なことではないが、起業家と呼ばれる人達が、ロックバンドのように応援される存在となり、成功を収めればスターとして憧れの的になる。スタートアップをはじめることを最高に「かっこいい!」ことにしたい。SLUSHからは主催者のそんな思いを強く感じ取れた。

取材:石塚たけろう

ベンチャーキャピタルやデジタルマーケティング企業複数社での業務を経験後、大手企業とスタートアップの共同事業開発支援や、VR領域のスタートアップに参画。Webデベロッパー。@takerou_ishi

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