『キミも宇宙研究者になれる』池澤あやか×湯村翼が語る 民間宇宙プロジェクト事情

2016.12.07 08:45

『キミも宇宙の研究者になれる!? ~SENSORS presents 宇宙プロジェクト最前線~』
宇宙研究を身近に感じてもらうためのセッションを日本科学未来館「G空間EXPO」イベント内で行った。その様子をレポートする。

ikezawa-san.jpg

『キミも宇宙の研究者になれる!? ~SENSORS presents 宇宙プロジェクト最前線~』ゲスト出演の池澤あやか氏

■テクノロジーの進化により宇宙が身近になる時代

米国NASAは宇宙に関するデータを公開し多くのエンジニアやスタートアップに宇宙ビジネスを促進する機会を提供し、宇宙ビジネス開発に出資する投資家も増えて来ている。 日本の国会ではこの11月に「宇宙活動法」「衛星リモートセンシング法」の2法案が可決され民間企業の宇宙ビジネスへの参入を促進している。 SENSORSでは11月24〜26日に日本科学未来館で開催された『G空間EXPO』にて、より多くの方々が宇宙を身近に感じてもらえるようなイベントを行った。題して『キミも宇宙の研究者になれる!? ~SENSORS presents 宇宙プロジェクト最前線~』。 国立研究開発法人 情報通信研究機構 研究員湯村翼氏を講師に、ゲストにタレント池澤あやか氏をお招きし、SENSORS.jp編集長西村真里子が身近な宇宙プロジェクトを掘下げていった。当記事では最新事例を湯村氏のスライドを中心にお伝えする。

yumura-san.jpg

SpaceApps Tokyo 前事務局長/国立研究開発法人 情報通信研究機構 研究員の湯村翼氏に身近な宇宙事例を紹介してもらった

西村:
本日は湯村さんに先生になっていただき、身近になった宇宙プロジェクトの事例を紹介してもらおうと考えています。湯村さんは東京大学大学院時代にJAXA宇宙科学研究所にて宇宙プラズマ中の電子加速の研究をされておりますし、社会人になった現在も『NASA Space Apps Challenge』の事務局長を務められたりしてらっしゃいます。民間から"誰でも参加できる宇宙プロジェクト"の最新はどのようなものがあるのか?教えていただけますか?
湯村:
私が事務局長を勤めた『SpaceApps Tokyo』はNASAやJAXAが提供したデータをもとに宇宙に興味ある方が誰でも参加できるハッカソンです。米国の「オープンガバメント」という政府のデータを民間に公開して、新たなビジネスを生み出す仕組みの一貫で始まったのですが、2016年には世界161都市 15409人が参加し1300以上のプロジェクトが生まれました。

また、クラウドファンディングで資金を集めて、ロケットの空いているスペースを買い取る"あいのり型"の人工衛星も増えてきています。『ArduSat』はArduinoを使った人工衛星で、クラウドファンディングで1,000万円集めてプロジェクトを成功させました。
ArduSat.jpg

Arduinoベースの人工衛星『ArduSat』。身近な開発テクノロジーで宇宙を目指す。

池澤:
Arduinoは私も触ったことがありますが、身近なツールキットを使って人工衛星が作れるのは驚きです。この人工衛星のデータはどのように回収しているのでしょうか?
湯村:
『ArduSat』には小型カメラが付いていて宇宙や地球を撮影したデータを常に地上に送っています。Arduino自身もオープンソースですが、この『ArduSat』で取得したデータもオープンソースにしており、打ち上げデータや地球周遊データも公開されています。今は人工衛星を作るためのキットもあったり、設計図も公開されているので興味有る方はすぐに宇宙プロジェクトに参加できるようになっています。

■国ではなく企業スポンサーで宇宙をめざす

西村:
宇宙データもオープンソースになっているので、非常に身近に感じますね。他にも事例はあるのでしょうか?
湯村:
『アクセルスペース』という東京大学発のベンチャーがあるのですが、 ウェザーニュースがお客様となって人工衛星を打ち上げています。北極圏の氷を専門にモニタリングする人工衛星です。
20161206174727.jpg

東京大学発のベンチャー『アクセルスペース』。北極圏の氷をモニタリングする人工衛星を飛ばす。

湯村:
あとは堀江貴文さんが設立に携わった『インターステラテクノロジズ』もありますね。ロケットの開発をしています。人工衛星を打ち上げるためのロケットそのものを作ってしまおう、という民間のロケット開発として注目を集めています。
20161206174829.jpg

堀江貴文氏が設立に携わった『インターステラテクノロジズ』。池澤氏いわくとてもコンパクトなロケットだ。

池澤:
以前堀江さんからお話を伺ったことがあるのですが、いままでの国主体のロケット開発ではプロジェクトスピードが遅いのを問題視されていました。時間が掛かるとその分コストも掛かりますし。なので民間主導型でロケット開発することにより日本における宇宙ビジネスも活性化するというミッションで動かれているようです。
湯村:
国の予算でロケットを作っていると民間のビジネスが拡大していかないので、アメリカが先頭に立ち宇宙プロジェクトを民間委託にしているのはビジネス拡大、雇用促進のためなんです。アメリカ他海外は軍事産業と宇宙開発が密接なのでよりビジネス規模は大きいのですが、日本でも面白いプロジェクトが生まれて来ています。

民間主導の際にはF1のようにスポンサーを集めるプロジェクトがあります。『インターステラ』も機体にDMM.makeのロゴが出ていますが、Googleが月面走行ロボットに賞金30億円を出す『Google Lunar XPRIZE』に参戦している日本チーム『HAKUTO』も機体側面にスポンサーロゴが付いています。賞金30億円って凄いと思うかもしれないですが、開発費や打上げ費などを考えるとあまり潤沢な金額ではないんですよね。
hakuto.jpg

『Google Lunar XPRIZE』に参戦している日本チーム『HAKUTO』、賞金は30億円だ。

池澤:
宇宙にはロマンがありますよね。
湯村:
ロマンがあるプロジェクトが多いです。
学生時代に宇宙研究をされていた岡島礼奈さんは人工の流れ星を降らせるプロジェクトを作られています。現在オリンピックでの演出を目指して流れ星の開発をしているとお聞きしています。このプロジェクトは地域の町おこしとしても活用できそうですよね。
ale.jpg

流れ星を作るプロジェクト『Ale』。オリンピックや地方創生での利用を目指す。

湯村:
そして、「宇宙葬」として遺灰を宇宙に打上げるプロジェクトもあります。 一人30万円くらいから参加できます。打上げ後に軌道を周る際には、遺灰がどこに飛んでいるのか?スマホから確認することも可能です。最終的には月に送るプランもあるようです。
20161206180047.jpg

遺灰を宇宙に、「宇宙葬」。スマホでトラッキングもできるそうだ。

池澤:
ベンチャーが気軽にロケットに同乗させてもらうのって意外とできるものなのですか?
湯村:
日本だとまだ難しいのですがお金さえ払えば乗せてくれる国が多いので こういうビジネスが増えてきているんですよね。

最後に「宇宙×アート」のプロジェクトもご紹介します。
20161206180105.jpg

宇宙のアートプロジェクト『ARTSAT』は多摩美術大学の久保田晃弘教授が手掛けている

湯村:
『ARTSAT』は多摩美術大学の久保田晃弘教授を中心に進められている、世界初の芸術衛星です。これはアート作品を宇宙に飛ばすことに意義があるプロジェクトなのですが、初号機「INVADER」(写真左)は形としては一般的ですが、打上げデータをweb APIで公開しており、そのデータを使ってアート作品を作るというプロジェクトでした。二号機「DESPATCH」(写真右)は見た目自体もユニークですよね。貝の形をしています。こちらはJAXAが行った相乗り衛星のコンペティションで選ばれました。審査する際にJAXA内でも賛否両論おきたようなのですが、そのような議論が起きること自体あたらしく価値あるものだと考えております。
池澤:
宇宙データをオープンにして行うハッカソンは見かけますが、そのデータを使ってアート作品を作るハッカソン、アイデアソンというのも面白いですよね。

■「宇宙って実は身近なものなんだ」

西村:
最後に宇宙プロジェクトに参加する方を増やすため、お二人からコメントをいただきたいと思います。
湯村:
『NASA Space Apps Challenge』ハッカソンは2016年、東京、会津、福井、つくば、相模原、宇部、熊本、と日本各地で開催しました。興味があったらスグ参加できる環境が出来てきています。宇宙に興味あるけど、宇宙開発は自分には縁遠いなぁと感じている方に、是非ハッカソンに参加してもらいたいと思います。参加することにより「宇宙って実は身近なものなんだ」ということを感じてもらいたいです。
池澤:
宇宙データが沢山公開されていることを知り、私もハッカソンなどに挑戦したくなりました。しかも日本全国で開催しているので参加しやすいのが良いですよね。 いままで、宇宙との関わり方は研究者になるか宇宙飛行士になるか、という少ない選択肢しかなかったですが、宇宙好きな人は多いとおもうので、宇宙と関わっていける道が広がっていくのを見るのはとてもうれしいです。そして、子供も宇宙は大好きだとおもうので、子供向けのプロジェクトも実施していただきたいです。ロマンあるプロジェクトに多くの方々が参加できることを、わたしも伝えて行きたいと思っています。
西村:
池澤さん、湯村さん、ありがとうございました!

いままでは国や専門機関でしか関われなかった宇宙開発がハッカソンや身近なプロジェクトで急速に手の届くものとなっている。世界も宇宙開発に注目している。興味関心があれば遠慮せずに進んで良い時代なので、宇宙開発に興味有る方は是非「身近な宇宙プロジェクト」に参加し、夢を宇宙にぶつけるのはいかがだろうか?


■関連記事︰
■全世界同時開催!宇宙×ハッカソン「NASA Space Apps Challenge 2016」に潜入
■"宇宙葬"を行うエリジウムスペース・金本成生に聞く「死後は星になりたい」は実現できる?
■「都会でも明るく輝く」"人工流れ星"は、どのように生み出される? 宇宙・天文×エンターテインメントの可能性
■宇宙飛行士・山崎直子に聞く--宇宙での任務中に大切にしたことと、試験・訓練での心構え
■宇宙飛行士を目指すタレント・黒田有彩--私が宇宙に惹かれる理由

ライター:西村真里子

SENSORS.jp 編集長 国際基督教大学(ICU)卒。エンジニアとしてキャリアをスタートし、その後外資系企業のフィールドマーケティングマネージャー、デジタルクリエイティブ会社のプロデューサーを経て2014年株式会社HEART CATCH設立。 テクノロジー×デザイン×マーケティングを強みにプロデュース業や編集、ベンチャー向けのメンターを行う。Mistletoe株式会社フェロー。

最新記事