Fintechの雄「Square」が進める決済革命−CEOジャック・ドーシーが打つ次の一手

2015.10.26 09:30

今月初旬にTwitterの新CEOに就任したジャック・ドーシー。彼が2009年に創業したもう一つの会社、モバイル決済を扱う「Square」は今月上場申請を行い、年内に株式公開をする予定だ。日本国内での加盟店は10万店舗にのぼり、三井住友カードと連携するなど2013年より本格的に事業参入して事業を加速化している。Apple Pay端末での対応(日本未対応)も本国・アメリカで話題になったばかりだ。 9月28日に虎ノ門ヒルズで行われたプライベート・カンファレンスで、来日したジャック・ドーシーが語ったSquareのビジョンをレポートする。

■ミッションは「決済をシンプルに」−Apple Pay、Google Payにも順次対応予定

9月28日、虎ノ門ヒルズで行われたプライベート・カンファレンス「TOWN SQUARE TOKYO 2015」。冒頭で行われたキーノート「"Make Commerce Easy"Squareが秘めるビジネスの可能性」に同社CEOのジャック・ドーシーが登壇。2009年の創業以来のチャレンジや今後の方向性を語った。

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Twitter、SquareのCEO(最高経営責任者)を兼任するジャック・ドーシー(Jack Dorsey)

2009年、サンフランシスコで創業されたSquareは2010年にアメリカでサービスを開始。専用のカードリーダーをスマートフォンに差し込むだけで、手軽にクレジット決済を行うことができる。日本では三井住友カードと提携し、専用のカードリーダーを使ったモバイルペイメントのほか、レジやレシート、さらにはアナリティクスや請求書など決済に関わる機能を集約して提供している。決済手数料は3.25%と低く設定されており、決済金も最短で翌日に振り込まれる仕組みとなっている。

ドーシー:
加盟店が取り扱わなければならないことは膨大です。紙やシステム、手入力、システムもバラバラで作業が煩雑なのです。テクノロジーの便益を持ち込み、全て電子化することでよりシンプルかつ分かりやすいものにできます。Squareをダウンロードすれば、商売をするのに必要なものが全て手に入る。非常に強力です。タブレットあるいはスマートフォンで全てのことができてしまうのです。
Apple PayとSquareが連携した世界観を表現したイメージムービー。(https://www.youtube.com/watch?v=HZscD_iiK70

今秋、アメリカではApple Pay対応のリーダーを先行発売する予定で、「日本でも早く発売したい」とドーシー氏は言う。さらには、Google PayやSamsung Payなどへの対応も行っていく予定だ。このカンファレンス後、今月1日にはこれまでの磁気型クレジットカードに加えて、EMV(ICカードの国際標準規格)に対応した「Squareリーダー」が発売された(メーカー希望小売価格4980円)。
ちなみにSquareによると、今回の登壇だけではなくドーシー氏はBlue Bottle Coffee清澄白河店・青山店といった日本でのSquare導入店の視察も行ったそうだ。

■地方での利用も増加。インバウンド需要の取り込みも

続いて、日本市場でパートナーとして組む三井住友カードの島田氏(同社取締役会長)が登壇。提携当初は、スマートフォンが決済端末ということもあり不正利用のリスクを懸念していたが、今のところ大きな損害や問題は発生していないという。

島田:
Squareと業務提携以後、日本国内では10万の新規加盟店を獲得することができました。インターネットのみで加盟手続きが行えるという簡便さも手伝い、最近では都市部以外の地方でも利用が増えています。業種でいうと、アパレルなどの小売店を中心に飲食やサービス、さらにはイベント関係での利用も拡大しています。

島田秀男氏(三井住友カード株式会社 取締役会長)

島田氏はクレジットカード利用率が米国27.8%、韓国58%に比べ日本が14.6%に留まっていることにも触れ、市場のポテンシャルはまだまだ高いことを説明。日本政府が掲げる「日本再興戦略」の中で地方の観光地を中心にクレジット決済端末導入を促進していることもあり、Squareの安価で革新的なソリューションの普及の一助となることも島田氏は指摘した。

実際に、Square調べでは外国人によるカード決済件数が多いTop10の市区町村は1位がリゾート地として有名なニセコ町を含む北海道の虹田郡、その他にも沖縄・長野・京都といったところもランクインしている。観光地におけるクレジット/モバイル決済は不可欠なのである。

調査・資料提供:Square

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海外からの来訪者が日本でカード決済を行う額・国別でのTopはシンガポール。 調査・資料提供:Square

さらに島田氏はドーシー氏が禅や侘び寂びといった日本文化にも造詣が深いことを挙げ、日本の商習慣を尊重したサービス開発も強調した。

■企業規模の大小を問わない、様々な導入事例

続いて、同社最高事業責任者のフランソワーズ・ブロッカー氏がSquareが提供する決済以外の取引サポートサービスについても言及した。例えば「Square インボイス」機能を使えば、請求書を送り、受取側はその場でクレジット決済を完遂できる。

フランソワーズ・ブロッカー氏(Square 最高事業責任者)

ブロッカー:
例えば、東京スカイツリーにあるレストランは、団体客が直前になって予約をキャンセルすることに悩まされていました。そこで、予約の時点でまずインボイスを前払いしてもらうことで損失を最小化することができました。

この後、壇上に招かれたのはユニクロにおけるSquare導入を主導したファーストリテイリングの業務情報システム部部長の岡田章二氏。同社取締役会長の柳井正氏直々の提案で2013年より早期の導入に踏み切ったユニクロ。

【左】フランソワーズ・ブロッカー氏(Square 最高事業責任者)【右】岡田章二氏(株式会社ファーストリテイリング 業務システム部 部長)

岡田:
当初は特設コーナーでのみ利用していました。セールではレジの台数を増やしますが、これがSquareを利用するとスピーディーかつ省スペースで実現できるんですね。が、その後徐々に利用範囲を広げ、店舗によっては常設レジとして導入しています。開始当初は決済時のサインをタッチパネルで手書きしてもらう仕組みをお客様に理解していただけるか不安でしたが、実際には楽しんでもらえたようです。

2020年のオリンピックに向け、国際スタンダードの決済手段を国内で浸透させることは急務である。それが同時にこれまでクレジットカードの導入が難しかった、個人事業主からミドル・スモールマーケットのビジネスを支える基盤となれば地方創生の一助にさえなる可能性を秘めている。また一方で、大企業への導入も進んでいる。そんなビジョンを見据えてか、講演の終盤でジャック・ドーシーはカリフォルニアにあるゴールデンゲートブリッジを引き合いに出しながら、Squareが大小問わないビジネスのインフラとなり、"架け橋"となることを誓った。

取材・文:長谷川リョー

1990年生まれ。フリーライター。これまで『週刊プレイボーイ』『GQ JAPAN』WEBなどで執筆。「BOSCA」編集長。東京大学大学院学際情報学府在籍。
Twitter:@_ryh

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