"高校生の起業体験"から大人が学ぶべき潜在能力~「StartupBase-U18」参加高校生 インタビュー

2015.09.01 10:00

高校生・高専生を対象に、2日間の起業体験を通じてアントレプレナーシップ実践の場を提供する「StartupBase-U18」。実際の起業のように、企画の立案、チームビルディング、プロトタイプの制作、価値の検証を行い、その成果を競い合う。前回記事では当イベントを運営・主催する、株式会社まつりば代表の森 真悠子さんにお話を伺った。続いては、実際に参加した高校生にインタビューを実施。彼らはこの起業体験を通して、何を感じたのだろうか。

■正直なところ「起業」にはあまり興味が無い

現役高校生の吉村卓也さん(左)、田村大輔さん

実際に参加した現役高校生、吉村卓也(高2)と田村大輔(高2)さんにお話を伺ってみた。2人とも当日に初めて知り合い、違うチームで活動していた。彼らはなぜ「起業体験」に興味を持ち、世の中にどのような問題意識を持っているのだろうか。

--「起業体験」に参加したきっかけはなんですか?

田村:
僕は3年前、事故にあって頭を強打しながらも本当に奇跡的に生還しました。その時から受身で生きてるだけじゃなくて「何かやりたい」という強い思いが芽生え始めました。高校生の国際交流を促進する活動だったり、学校外での活動にも取り組んでいた時に森さんと出会ったんです。その時にStartupBase-U18に誘われました。正直「起業」にはあまり興味がなかったんですけど、面白そうだから、という理由で参加しました。
吉村:
商品開発や新しい企画を考えるが好きで、将来はシンクタンクに勤めたいと思っているんです。でも、学校の同級生は将来の夢が決まってない人がほとんど。学校は楽しいんですけど、共感してくれる人が少なくて、自分のやりたいことができる環境を学校の外で探すようになったんです。そこで、Facebookを使ってイベントを探していたら、StartupBase-U18を発見しました。他のイベントと違って2日間で「実行」まで移すのがすごい良いなって。あと、自分以外の志の高い人が世の中をどのように捉えているか、ということにすごく興味があったんです。

--吉村さんは「企画だけじゃ物足りない」と思うことがこれまであったのですか?

吉村:
例えば、学校で「職業」について自分で調べて発表をする機会がありました。みんなWEBや書籍で調べたことを発表するんですけど、当たり障りのない内容で...。正直、自分でその職業を経験してみないとわからないじゃないですか。予定調和というのか、そういうのが嫌なんです。偶然の中で、思ってもいなかったことが起きて、それを楽しむというのを大事にしたいです。
森:
田村くんは何回か参加しているけど、なんで何回も来てくれるの?
田村:
初めに参加したときは正直わけわからなかったんですよね。でもわからないなり一歩踏み出してみることがすごく大事なんだっていう気付きがあったんです。自分のチームのプランが優勝できなかったのが悔しかったというのもあります。プレゼンでも、寸劇を取り入れてみたり、服装にもこだわって見栄えの印象をよくしてみたり、足りないところを改善していくその過程ってすごく楽しいんですよね。

田村さん、吉村さんともに「起業」に興味があるわけではない。「なにかやりたい」「志の高い仲間が欲しい」そんな思いから一歩を踏み出すためのきっかけがStartupBase-U18だったようだ。

■選挙の「質」向上、グローバルマンション。高校生が考えるアイデアとは

--田村さん、吉村さんはそれぞれどのような企画を提案したのですか?

田村:
最終的は選挙における「投票の質」を向上するアプリを提案しました。2日間のプログラムの初めに「1分間ピッチ」といって自分のアイデアを発表してチームをつくる時間があるのですけど、そこでは日本の政治を「間接民主制」から「直接民主制」に移行するためのアイデアを発表しました。僕の他に選挙の投票率を上げようというアイデアを発表している人がいたので、その人とチームを組むことになりました。

--投票の「質」とはなんでしょうか?

田村:
有権者の人たちって「選挙ポスターの印象」とかで投票しちゃう人が多いと思うんです。そうじゃなくて、しっかりマニュフェストを読み込んで、自分の意見を持って投票するべきだと思うんです。 それが投票の「質」です。1日目に実際に投票所に行って出口調査のようなインタビューを実施したんですけど、投票してはいるものの腹に落ちていない感じで「投票の満足度」が低いことがわかったんです。2日目にちょうど埼玉県知事選がやっていたので有権者にインタビューしにいったりして。その結果「質」をあげるアプリの方向が固まったんです。

インタビューの過程でTwitterとの差別化も課題に上がり、炎上が起きない工夫も盛り込み、NewsPicksのように特定のオピニオンに対してユーザー同士で議論ができるアプリをつくった。室内の議論だけでなく、実際のユーザーの声からそのアイデアに到達というプロセスは評価に値するだろう。

吉村:
正直、僕は失敗したな‥。日本人が英語をもっと喋れるようになるべきだと思って1分間ピッチのとき「インターナショナルマンション」を提案したんです。僕のアイデアに賛同してくれる人たちとチームを作って詳細を詰めていったんですけど、「シェアハウスとの差別化は?」「マンションだと交流するスペースがない」「じゃあイベントを開こう!」と、本来目的であるはずの英会話からどんどん離れてしまって...。実際に街に出て歩いている人66人にインタビューをしたんです。なかなか足を止めてくれなくて心が折れそうでしたけどね。詳細が詰められてないままインタビューをしたので、有力な回答が返ってこなくて‥。最後までいい案が出なかったです。

--吉村さんは次出るとしたらどんなことを改善しますか?

吉村:
ちゃんとカスタマーの視点にたって考えること。目的の軸をぶらさないでシンプルなアイデアにまとめること。この2つです。

決められた時間割で、決められた教材で、決められた場所で勉強をする。日々制約の中で活動する高校生たちにとってみればStartupBase-U18の2日間はとても刺激的だったようだ。初日に自分で参加を決めたチームでも相性が悪いことがわかればチームを変えることができる。現地調査に行くためにプログラムの会場に顔出さなくても良いと言われた。自分たちが思い込んでいるだけの「ルール」をいとも簡単に突破できることが新鮮だった。

そして、しがらみを突破できることがわかれば、そこから彼の行動は驚くほど突き抜けたものになる。普通に考えれば、見ず知らずの人を対象に、選挙の出口調査をやったり、街中で66人にインタビューをしたり、大人なら躊躇ってしまうものだろう。アンケートを取ろうとしてもオンラインで済ませてしまうのではないか。そこを軽々と乗り超え、行動するところに高校生ならではの素直さと潜在的な強さを感じる。ちなみに彼らが参加したプログラムでの優勝アイデアは「電車内限定の匿名チャットアプリ」だそうだ。

--2日間を通じて学んだことはなんでしょうか?

田村:
とりあえず一歩踏み出すことの大切さです。アイデアを誰かに話す、仲間を集める、小さいことからでも行動を起こしていくことが大事なんだと思いました。
吉村:
自分の視野の狭さです。StartupBase-U18のような活動は学校ではできないので、起業体験をもっと広めていきたいし、増やしていきたい。

■高校生が社会人のメンターになる

StartupBase-U18に参加する高校生の姿から学びを得る社会人も多くいるという。

森:
起業家や経営者の方が彼らの姿をみてびっくりするんです。初対面同士なんであんなすぐに仲良くなれるか、見ず知らずの他人に突撃インタビューする力とか。「リバースメンター」という言葉がありますけど、高校生が学ぶための場じゃなくて、大人が学べる場でもあると思うんです。

あらゆる経験を経て「大人」になる過程で失うものもある。素直さ、好奇心、挑戦する心...。高校生を見ていると自らが奮い立つような気分になるのだ。そして高校生に質問されることに、真剣に応えるうちに自分も原点に立ちもどることもある。

今回お話を伺った田村さん吉村さんは実に活動的だが、決して「スーパー高校生」というわけではない。しかし、彼らの話を伺っていると、未来を担う全ての若者が秘めているはずの潜在的なパワーを感じるのだ。与えられたレールの上だけではその力は芽を出さない。「アントレプレナーシップ」は若い才能を大木に育て上げるために必要な不可欠だ。

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取材:石塚たけろう

ベンチャーキャピタルやデジタルマーケティング企業複数社での業務を経験後、EIR(=客員起業家)として複数の大手企業、スタートアップの新規プロジェクトに参画。Webデベロッパー。@takerou_ishi

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