メディアアートのど真ん中「STRP 2015」を真鍋大度はこう見た

2015.03.30 12:10

オランダで3月20〜29日に開催されたヨーロッパ最大級のメディアアート・フェスティバル「STRP 2015」。ライゾマティクスの真鍋大度、石橋素両氏の「RATE」は日本から参加した唯一のチームだった。世界中から選び抜かれたテクノロジーとアートの交差点で、真鍋大度が見聞き、感じたものとは。

■「STRP 2015」が「SCREEN ON|NO SCREEN」というテーマの下、目指した世界観

STRP Festival 2015 HPトップページより Vertical Cinnemahttp://strp.nl/en/

「STRP」は二年に一度、オランダで開催されるヨーロッパ最大級のメディアアートの祭典で、今年は3月20日から29日まで行われた。会期中にはライブ、パフォーマンス、カンファレンス、ワークショップ、展示など多彩なプログラムが組まれており体験を通じて、メディアアートに触れることができる。
(STRP自体については前記事ヨーロッパ最大級 メディアアートの祭典「STRP 2015」 リアルとバーチャルを媒介するスクリーンの未来とはをご覧頂きたい)

「STRP」への参加は自身二度目となった真鍋大度氏に今年の模様や雰囲気、特に目を引かれた展示作品、さらに今後の展望を伺った。

STRP会場入り口(真鍋氏Instagramより:@daitomanabe

--「STRP 2015」に参加されている方はどういった人が多いのでしょうか。

真鍋:
多く見受けられるのはアーティスト、ミュージシャン、リサーチャーです。フェスティバルにやってくる人は市民が多いですが、ヨーロッパの著名なメディアアーティストなんかも足を運びます。たとえば、Memo Akten君(イスタンブール出身のメディアアーティスト)がフラッと遊びに来てたりします。旅行がてら情報交換もできて、気軽に楽しめるフェスティバルといった感じですね。

--会場の雰囲気はいかがでしたか。

真鍋:
フィリップスの研究所の跡地で開催されているためか、天井がかなり高く大きなスペースで、開放感があります。
Eyeo Festival(6月1〜4日にアメリカ・ミネアポリスで開催)やResonate Festival(4月13〜18日にセルビア・ベルグラードで開催)にも同様のことが言えるのですが、作品を集めて展示するだけではなく、クリエーター同士がコミュニケーションを取れるようなイベントが数多く催されます。アートコミュニティ活性化への貢献の意識が窺えます。

STRP参加アーティストとのグループ写真(真鍋氏Instagramより:@daitomanabe

--今回のフェスティバルのテーマである「SCREEN ON|NO SCREEN」とはどういった概念なんでしょうか。

真鍋:
超端的に言うと、単純にEye Candy的な作品に対するアンチテーゼといったところでしょうか。日本国内でメディアアートのインスタレーションというと、華やかな映像やゲームのようなものを想像するかもしれませんが、その正反対を行くと言っていいと思います。"映像テクノロジーを使って作品を作る"というよりは、"映像テクノロジーについて考えるための作品を作る"といったところですね。

■真鍋氏が挙げた注目の展示二作品:「Light Barrier」「BLPRNT」

--真鍋さんが特に目を引かれた作品はありますか。

真鍋:
生で見れて良かったなと思ったのは、Kimch And Chipsの"LIGHT BARRIER"です。

Kimchi and Chips - Light Barrier IIhttp://strp.nl/en/


真鍋:
これはプロジェクターと大量の凸面レンズを使って立体映像を作っています。これも平面的な映像表現ではないものを追求している作品です。
もう一つは、元AntiVJのJoannie Lemerceirの"BLPRNT"。

Joanie Lemercier & James Ginzburg - BLPRNThttps://vine.co/v/OYbDrKjaqZV


真鍋:
これはプロジェクターのカラーホイールを外して、フレームレートを上げた特殊なプロジェクターを使った映像作品を上映しています。 確か180fpsだったと思いますが、60fpsの映像とは異なる映像の制作方法や上映方法などを研究し、新たな体験を提供しています。

■真鍋氏、石橋氏出展「RATE」肉眼では捉えられない色彩

--ご自身の出展作「RATE」への来場者のリアクションはいかがでしたか。

Daito Manabe & Motoi Ishibashi - RATEhttp://strp.nl/en/

真鍋:
石橋素氏と共に10個の光る提灯を作品「RATE」として展示しました。解説を見ないと単なる照明だと思われてしまうかもしれません。これはカメラのシャッターを切るスピードに合わせて光を点滅させることで、カメラ越しにライトを覗くと模様が見えるというものです。
通常、美術館ではカメラで作品を撮影するのはNGですが、この作品はカメラで撮影しないと体験できないので、来場者は面白がって撮影してくれました。

--具体的にはどういった作品になっているのでしょうか。

真鍋:
この作品では数千fps〜数十万fpsというスピードで光を点滅させています。肉眼では真っ白に見えますが、赤・青・緑・水色・黄色・紫という順番で光らせているため、カメラで覗くとその順番で縞模様が出ます。 肉眼では捉えきれない光の変化をiPhoneなどのスマートフォンに搭載されているカメラのシャッターの仕組みを使うことで捉えることができる、というのが面白い点でしょうか。

https://www.youtube.com/watch?v=tEPBFjzrnzM


真鍋:
普段はフレーム単位で映像を処理しますが、この作品ではマイクロセカンド単位(1/1000000秒)でパターンを作り、同じビジュアルでも全く違うタイムフレームで作成するので、面白いですね。今回は光の点滅データを音に変換していますが、現状は音の処理も1秒間に384000回で処理するのが最大となり、それ以上の制作環境を持ち合わせていないため、音と光のタイムフレームは若干異なっているため、正確なシンクは出来ていません。

■世界のテクノロジー動向はどこに向かっているのか

Underworld - dubnobasswithmyheadman(http://strp.nl/en/

--4/13から開催される「RESONATE」との関連性や明確な違いとはいかなるところにあるのでしょうか。

真鍋:
なによりも「STRP」は夜のクラブイベントのラインナップが充実していますね。The Gaslamp Killer、Underworld、Pinch & Mumdance 、Monolake、2562などなど。この辺の音楽は日頃よく聴いているので、たまらないものがあります。
「RESONATE」は、よりアーティストインレジデンスやカンファレンスの比重が大きいです。ただ、どちらもアーティスト向けの食事会や夜のクラブイベントなどは充実している印象です。

--今後注目のテーマはありますか。

真鍋:
やはりドローンの話題が多いですね。「作品のタイトルに"ドローン"と付くと、社会的なメッセージが出てしまう可能性があるから"空飛ぶガジェット"と呼ぼう」と提案するアーティストなんかもいましたが。
フェスティバルに来ていた方々の興味はドローンの社会的な展開というよりも、ソフトと組み合わせて三次元空間上に自由にオブジェクトを配置できるというところかと思います。外部のセンサーに頼らず自律的に飛行するドローンの研究が流行っているようでした。

--「ドローン」以外だとどういったテクノロジーが俎上にあがるでしょうか。

真鍋:
ベタにはなりますが、やはりディープラーニングなど機械学習系の技術でしょうか。今回の滞在中の制作でもその辺りを中心にKyle Mcdonald君と一緒にテストしています。処理が遅かったり、データが大量に必要だったりするため、リアルタイム処理が必要なパフォーマンスでは既存の仕組みを使った方が早いケースが多くイマイチ使いこなせていないのですが、良い機会なので勉強も兼ねてテストを続けています。

真鍋氏が指摘するように、日本ではメディアアートの表層的な部分が注目されることが多い。プロモーションのための華美なインスタレーションや躍動的なプロジェクションマッピングが一過的な注目を浴びることがあるが、アートコミュニティは未成熟のままだ。ヨーロッパでは「STRP」をはじめとしたメディアアートの祭典が数多く開催されるのに比して、日本ではこの規模のイベントはあまり見られない。

真鍋氏は過去に来日しているクリエーター、プログラマー、ハッカーにプレゼンテーションしてもらうイベント「Flying Tokyo」を主催しており、一緒に盛り上げてくれる方を募集中とのことだ。

2012年にアドビシステムが行ったグローバルな調査で、世界で一番クリエイティブな都市として挙げられた「東京」で、これからメディアアートがさらに盛り上がっていくことを期待したい。

取材・文:長谷川リョー

SENSORS Senior Editor
1990年生まれ。『SENSORS』や『WIRED.jp』などで編集者/ライター。これまで『週刊プレイボーイ』『GQ JAPAN』WEBなどで執筆。東京大学大学院学際情報学府にてメディア論を研究。最近は「人工知能」にアンテナを張っています。将来の夢は馬主になることです。
Twitter:@_ryh

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