「STYLER」CEOが語る、ファッション×テクノロジー="ファッシュテック"市場の概況

2016.01.28 15:30

近年注目されるテクノロジー×ファッション領域。この領域を俯瞰的に見つめるべく「ファッションテックマップ(Fashion Tech Map)」を定期的に発表しているスタイラー CEO小関翼氏に、テクノロジー×ファッション="ファッシュテック"市場の現状・展望についてお話を伺った。

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スタイラーは「つながりでファッションを楽しくする」をコンセプトに、ショップとユーザーのコミュニケーションを介し、実店舗への送客を行うO2Oアプリ、「STYLER(スタイラー)」を運営している。そんなスタイラーのCEOがファッシュテック市場で注目する "コミュニケーション領域" とは?

-- ファッシュテック市場とはどういった市場を定義している言葉なのでしょうか?

小関:
まずファッシュテック(Fashtech)という言葉が、ファッション(Fashion)とテクノロジー(Technology)を合わせた造語です。もともとファッションはテクノロジーが介入しづらい市場と揶揄されていましたが、近年はファッション市場にテクノロジーを活用して参入するサービスや企業がだんだんと増えています。例えば、「airCloset」や「メルカリ」もファッシュテック市場の重要なプレイヤーと言えます。

--ファッシュテックという言葉は、どのような経緯で知り、使うようになったのですか?

小関:
もともと自分は金融機関やAmazonで働いていました。なので、STYLERのプロジェクトを始める際もマーケットをしっかりリサーチしました。日本のファッシュテックは、IT(情報技術)関連全般に見られる傾向と同様、アメリカで生まれたサービスが1、2年遅れで日本市場で応用・展開されるケースが多いです。さらに海外では、事業者たちの存在はもとより、ファッシュテックを周囲で盛り上げる人・団体・活動が盛んなんです。そのうちの1つがFash Techです。2014年にAlex Semensatoがロンドンで設立しました。

_DSC4741.jpgスタイラー CEO小関翼氏

-その市場を概観できる「ファッションテックマップ」とはどういったものですか?

小関:
近年拡大傾向にある、ファッシュテック市場のサービスや商品を俯瞰的に見ることのできる見取り図として作っています。それぞれのサービスはジャンル別に整理して掲載されています。今後も定期的に更新予定で、新しいサービスが非常に早いスパンで立ち上がる市場に対応し、ファッシュテック市場の統合的な理解につながればと考えております。

--日本のファッシュテック市場の現状について教えてください。

小関:
まず日本は19兆円ものファッション市場を抱えています。アメリカの63兆円と比べると気づきにくいかもしれませんが、一国だけでこれだけのマーケットを形成しているのは強みです。また、特筆すべきなのは市場に占めるアッパーミドル市場の厚みで、日本では、多くの人が1〜3万円のミドル価格帯のものを楽しむ傾向にあり、そういった、ファッションリテラシーが高く、消費行動に積極的な分厚い中間層に支えられています。

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45a7633f048b497e645e33b0ee22fe3c.jpg経済産業省「日本ファッション産業の海外展開戦略に関する調査」2014から

--確かに、日本人はオシャレすることが総じて好きですし、消費に対しても積極的です。

小関:
はい。新しいマテリアルを開発するなど高度な生産技術もありますし、日本にはファッシュテックのハブとしての潜在能力があると考えています。しかし、特徴的な市場が生成された一方で、ファッシュテック企業間の横のつながりが軽薄である印象を受けます。例えば、Decoded Fashionや、先ほどのFashTechなどのイベント事業者がファッシュテック企業同士をつなげたり、イベントを開いたりしながら、自国のファッシュテック市場を盛り上げるべく活動されていますが、日本では、まだまだそのような機会は多くはありません。日本がファッシュテックのハブとなるにはこの点が課題だという意識があり、「ファッションテックマップ」を作りました。

--「ファッションテックマップ」には様々なジャンルがありますが、あまり馴染みのないジャンルもありますね。

小関:
まず目的がファッシュテックとして、それぞれの事業者の議論の土台を作るところに置いたのでなるべく多くのジャンルを設けました。ただし、ファッションに特化させるために、総合的なサービスは省きました。例えば、ECやフルフィルメントを提供しているAmazonはファッション以外の比重が圧倒的に高いので省いています。
「ファッションテックマップ」は、まず全体が大きく、B2BとB2Cに分けており、MediaやECなどの非常にポピュラーなジャンルから、デジタルファブリケーション(Digital Fablication)やバーチャルスタイリスト(Virtual Stylist)などファッシュテック市場特有のジャンルがあります。例えば、「airCloset」や「SUSTINA」などがサービスを展開するクロージングスブスクリプション(Clothing Subscription)の領域は定額制で、服や靴をレンタルできるサービスなどが含まれています。この領域は海外で始まり、シェリングエコノミーというワードが注目を集めるようになってから日本でも新規参入が激しいですが、レンタル商品は主に古着で一点物のため、人気アイテムが他のユーザーに着用されてしまい在庫の問題を抱えがちです。また、レンタルで全ての衣服を賄う人が少ないことから、サービスの対価をどのように設定するかが難しいかもしれませんね。

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--「ファッションテックマップ」の中で、小関さんが一番注目されているジャンルはどこですか?

小関:
自らがやっているからというわけではないですが、コミュニケーションプラットフォーム(Communication Platform)の領域かなと思います。世界的潮流として、コミュニケーションの要素が強いサービスがどんどん勃興しつつあります。例えば、中国のアリババグループが運営するマーケットプレイス「タオバオ(淘宝網)」などはチャット必須で、ユーザーと店舗側がチャット上で、値段交渉や商品相談を行います。さらに東南アジアだとFacebookなどのコミュニケーションアプリの上で物を売り買いすることもあるんですよ。また、ファッシュテックに限らず、「Airbnb」や「メルカリ」もユーザー同士が直接交渉を行うなど、コミュニケーション色の強いサービスが勃興しつつあります。そういった潮流を鑑みれば、直接やりとりしたり、評価しあったりといった、コミュニケーションの波がファッシュテックにも押し寄せるのではと関心を寄せています。B向けに従業員間のコミュニケーションツールが登場し、シフト管理の煩わしさなどを解決する、要種別など、専門性の高いサービスが出てきても面白いかもしれません。我々のサービスもライフスタイル分野のコミュニケーションプラットフォームを目指し、日夜奔走しています。

--STYLERは今後ファッシュテックに対してどのようなアプローチをしていくのですか?

小関:
まず、2016年にファッシュテックの事業者らによる大きなイベントを予定しています。それを成功させて、ファッシュテック市場を盛り上げるための起爆剤にする。我々はそれを、コミュニティとしてもっと拡大させる。そして、ゆくゆくは東京を、そして日本をファッシュテックスタートアップのハブにするお手伝いができたらなと思います。

取材を通して聞こえたのは小関さんの「日本をファッシュッテックのハブにしたい」という熱い思い。アッパーミドル層の厚みや、ものづくりの土壌など、好条件が揃う日本の中で、世界をリードするプロダクトやサービスがファッシュテック領域から登場する日もそう遠くない。「ファッションテックマップ」はそんなファッシュテック市場の羅針盤となりえよう。後編では、スタイラーのサービスを深堀り。「コミュニケーションプラットフォーム」と位置付けた、自身のサービスの内容と今後の展望とは?(近日公開予定)

取材・文:岡本孔佑

フリーライター。慶應義塾大学文学部3年在籍。編集者を志し、複数の媒体で執筆、編集を経験。「KEIO CREATORS MAGAZINE」の編集長兼エンジニアも務める。最近読んで面白かった本は「花森安治の仕事」。
Facebook:www.facebook.com/kohsuke.okamot

写真:小幡真帆

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