【Suchmosインタビュー】「MINT CONDITION」リリース--"横浜・湘南"発だからこその空気感と、抱く野心

2016.07.01 13:00

3rd E.P.「MINT CONDITION」の発売(7月6日予定)を控え、Suchmosへインタビュー。2013年1月結成、ロック、アシッドジャズやヒップホップなどブラックミュージックをルーツに持つ6人グループ。メンバー全員が神奈川育ちだ。

Suchmosは2015年にシングル「ESSENCE」でデビュー。2015年注目の新人としてApple Music年間BEST ARTISTにも選ばれ、アーティスト間でも「よく聴いている」という声がしばし挙がる、今注目すべきバンドだ(SENSORSの過去取材でも、livetune+ボーカル・やのあんなが「凄く気になっています」と語っていた
彼らはYONCE(Vo)、HSU(Ba)、OK(Dr)、TAIKING(Gt)、KCEE(Dj)、TAIHEI(Key)というメンバー構成。今回はYONCE(以下「Y」)とOK(以下「O」)に、活動のルーツ、今後の野望について語って頂いた。

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左よりTAIKING(Gt)、OK(Dr)、YONCE(Vo)、KCEE(Dj)、TAIHEI(Key)、HSU(Ba)

■横浜エリアや湘南エリアを基盤にしているからこその空気感

彼らの特徴の一つは、歌詞や曲名・アートワークなどから横浜エリアや湘南エリアの雰囲気を感じさせる要素が多いことだろう。
1stアルバム「THE BAY」収録の『YMM』は、横浜みなとみらいの略。『GAGA』には"Chigasaki(茅ヶ崎)"が登場。2nd E.P. 「LOVE&VICE」のジャケット写真は京浜工業地帯。今作「MINT CONDITION」収録の『JET COAST』にも"環状1号沿い"という歌詞が登場する。まずは、そのエリアへのこだわりについて尋ねた。

『YMM』ミュージックビデオ

--横浜エリアや湘南エリアへの思いですとか、そういったエリアだからこそ創作活動に影響がある部分もありますか?

Y:
横浜や茅ヶ崎など、リリックで名前の出てくる場所は自分たちがスイッチオフできる場所・くつろげる場所ですね。そこであれば、自分のペースで音楽が出来ます。頑張って東京でやっていると、きっとみんながやっているような音楽にならなかったり、俺たちらしくない感じになるのではと思います。そうならずに済んでいるのは地元で音楽をやっているからだと思うし、そういった考えを共有した6人でやっているからですね。サウンドに明確にそのエリアのカルチャーが影響を与えているかというと無意識なのでわからないですが、「やりたいと思っている音楽をやれている」という面では、関係しているのかなと思います。

--音楽面のルーツについても聞かせていただけますか?

Y:
中学二年生の時に初めて聴いた、ニルヴァーナの影響がとても大きいです。3rdアルバム『In Utero』一曲目『Serve the Servants』を聴いた時に、どういう気持ちになっていいかわからない爆発のような衝撃を感じました。そこから掘り下げていくと、歌唱やサウンドメイクの部分にも関心が深まって、"バンド音楽"を大好きにしてくれました。

--Suchmosの楽曲はブラックミュージックの印象も強いので、意外な印象です。

Y:
最初のブラックミュージック体験と言えばオーティス・レディングなどのルーツソウルだったのですが、いわゆるネオソウルと呼ばれている、エリカ・バドゥやディアンジェロ、ビラルといったところをメンバーが教えてくれて「これはとんでもねぇな」と。そこから80-90年代のブラックミュージックをきちんと聴くようになりました。
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YONCE(Vo)
4月23日「TOUR LOVE & VICE」東京公演@渋谷CLUB QUATTRO
Photo by Shun Komiyama

--OKさんはやはりブラックミュージック好きだったのですか?

O:
そうですね。ディアンジェロの『Voodoo』という2000年に出たアルバムを聴いて、自分は音楽でどう表現したいのかという感性を与えてもらった感覚がありました。あと、ずっと好きなのはロイ・エアーズで、特に『Vibrations』というアルバムをずっと聴いていました。70年代のアルバムで「なんで好きなんだろう」と思ったら、そこから時間を早送りしていくとやはりディアンジェロとかにたどり着くという系譜だと知り、やはりそういう匂いのする音楽が好きなんだな、と思いました。

--なるほど、確かにロイ・エアーズは湘南の雰囲気にも合いそうな曲も多くてなんだか納得がいきました(笑)。そんなメンバーが集まって、色々な音楽を共有していた、ということでしょうか。

O:
毎日のように日夜問わず電話したり、うち(実家)に集まって、YouTubeなどを見ながら踊っていましたね。
Y:
こうして、トレンドや価値観の共有をしていました。

■横浜スタジアム、そして2020年の東京オリンピックでパフォーマンスをしたい

--今と当時で変わらない面・変わった点などはありますか?

O:
変わったことは今も昔もないですね。「これがかっこいい」という価値観の共有さえ出来れば、あとは何が出来るかを考えるのみなので。
Y:
今も「誰に聴いて欲しいか」といったことを考えたことはなくて、「聴いて欲しくない人」も特にいません。音楽は全員聴けるものだから、いいじゃんという気持ちです。ライブは世代を問わずいろんな層の方が来られて、親子で来られる方もいます。それを見ると自分たちの音楽が、正しい形でいろんな人にリーチしているなと感じます。ただ、俺らはそれを「誰に聴いてもらうか」と狙ってやっていたわけではなく、自分たちがやりたいと思った音楽をひたすら出し続けていたら、いいと思った人がリアクションを起こしてくれると思うので、とてもうれしいです。
最初にアルバムを出すまでは色々考えましたが、そういった根拠のない自信は、ライブに来てくれた方の顔を見ていく中で確信に変わっていきました。やはり、作りたいものを作るということ。そのスタンスは結成したときから変わっていないです。

--今後もそのスタンスは変わらず、というところでしょうか。

O:
自分たちのスタンスが、日本におけるスタンダードになればいいなと思っています。最近はちょっとしたタグに引っかかって、ちょっと注目されて満足してしまいがちです。自分たちのルーツを隠してしまっては信じて聴けないなと思っていますし、「こういうものが好きだ」と主張して、やりたいことのど真ん中を目指してやっていけたらと思います。
俺らはいいものだと思っていることをやっているし、俺らを好きだと選んでくれた人には、選んだことに対して誇りを持って色んな人に薦めてほしいと思うし、そのために活動をどんどん広くしていきたい、という思いはありますね。
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OK(Dr)
4月23日「TOUR LOVE & VICE」東京公演@渋谷CLUB QUATTRO
Photo by Shun Komiyama

--MVやジャケットなどの世界観も統一感がありますが、 世界観に対するこだわりなどもあるのでしょうか?

O:
基本は監督さん任せなんですが、一つ言えるなら、今の生活から地続きになっているものから遠ざかってしまうことはしないということです。脚色してしまうと自分に嘘をついていることになってしまうし、自然体でいることが、俺らが憧れてきたアーティストの姿だったので。
Y:
今の時代は全部DIYで、MVも全部自分で作ると言うことを売りにすることも出来ます。ただ僕らはそれぞれのプロが、それぞれのベストの仕事を尽くすから、より良いものが出来るものだと考えています。自分たちのパフォーマンスを見て意見を投げてくれるプロと出会いたいですね。1から10まで思いついてやるというわけではなくて、携わる全ての人がプロとしてベストの仕事をするというチームを作っていきたいと考えています。
3rd E.P.「MINT CONDITION」収録『MINT』ミュージックビデオ

--今後の目標についても聞かせてください。

Y:
2020年の東京オリンピックでパフォーマンスをしたいです。その前には地元のハマスタ(横浜スタジアム)。そこまで場を積んでいって最終的に日本を代表するバンドになりたいですね。
最近、スタジアムでのライブ演出についてのビデオをよく観るんです。もっとそういうものを観て知識をつけたい。でも、演出過多になってしまうのは、世界観やパフォーマンスの本来の味を損ねてしまう。そのせめぎ合いですが、ライブがさらによく見えるもの、いい調味料になるもの、として演出面についても学んでいきたいですね。

今年、これからの活動について伺うと、これから出演を控えるFUJI ROCK FESTIVAL'16(Suchmosの出演は7月22日)を"音楽界でいうトヨタカップ"、つまり今年の活動における大きな動きとして捉えているそう。その他にも数々のフェスに出演予定。この夏の彼らの動きからは目が離せない。
そして今の彼らの空気感・野心を詰め込んだ3rd E.P.「MINT CONDITION」は全4曲入り・7月6日発売予定だ。

取材:市來孝人

SENSORS Web副編集長
PR会社勤務を経てフリーランスのWebエディター・PRプランナー・ナレーターなどとして活動中。「音楽×テクノロジー」の分野は特に関心あり。1985年生まれ。
Twitter:@takato_ichiki / Instagram:@takatoichiki

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