ゲームの世界に入り込む感覚、最先端「赤外線銃」サバゲー!

2015.07.07 09:00

日本においても若者の間で盛り上がりをみせるサバイバルゲーム、通称"サバゲー"。今回、SENSORSが注目したのはオーソドックスなBB弾を使ったものではなく、赤外線銃を用いたサバゲーだ。ゲーム経験者なら馴染みのあるヒットポイント(HP)制度で競い、最大射程が200m以上にも及ぶという高スペックの赤外線銃を使用。安全性も非常に高く、大人と子供が一緒に楽しむことができる。この赤外線銃を利用したサバゲーを運営するHotSprings株式会社代表永井氏は自衛隊への奉職経歴を持つ本格派だ。IoTトレンドも視野に入れつつ技術立国日本の誇りを胸にハードウェアに強いこだわりを持ち開発に臨んでいる。街をジャックして行う"マッシブゲーム"とは?彼が最終ゴールとする"世界征服"のカタチとは?永井氏が壮大なビジョンを語ってくれた。

■リアリティを追求する"赤外線銃"を使ったサバゲーとは

HotSprings株式会社代表・永井宏樹氏

迷彩服に身を包み、ゴーグルを付け、BB弾を装填した銃で打ち合うサバゲーが男女を問わず、若者の間でブームとなっている。通常このゲームを行うためには都心を離れ、安全性を担保できる広い場所で行う必要がある。対して、①場所を選ばず、②取り扱いが簡単、③余計なゴミを出さずに、④安全管理も容易だというのが今回紹介する「赤外線銃」を使ったサバゲーだ。
赤外線銃と聞くと、1984年に任天堂から発売されたファコミン上で行うガンシューティングゲーム「光線銃シリーズ」のようなものを想起する人もいるかもしれない。HotSprings社が開発した赤外線銃はより高スペックで本格的なものだ。

HotSpringsP90型試作赤外線銃には光学式屈折レンズが使用されており、最大射程は200m以上にもなる。ヘルメットの受光部に命中するとヒットポイント(HP)が減っていく仕組みになっている。

「P90」というエアガンをモデルにしているので本格感が際立つ。通常のBB弾の射程距離が30〜40mくらいのところ、この銃では約5倍の200m以上に及ぶ。赤いボタンを押すことでリロードすることも可能で、残りのHPを確認することもできる。リアルな世界観を再現するために、ヘルメットの側頭部にはスピーカーが埋め込まれており、臨場感のあるプレイが可能となっている。プレイヤーにはパルスコードが割り振られており、メモリに記憶されたデータを元に演算され、HPが徐々に減っていく。
HPはゲームごとに設定可能だが、一発ダメージを食らうと10減り、100を失ったところでゲームオーバーというのが通常だ。

■自衛隊を辞め、赤外線銃サバゲーの会社を立ち上げるまで

HotSprings社を立ち上げる以前、陸上自衛隊に三年間奉職していたという異色の経歴を持つ永井氏。自衛隊を辞めた後は、静岡大学文学部に入学した。大学入学後も、自衛官・学生・ビジネスマンと三足のわらじ生活を送っていたという。独自のキャリアを歩む氏は、なぜ赤外線銃を使ったサバゲーの会社を立ち上げるに至ったのだろうか。

永井:
ずっと起業がしたいと思っていました。僕の夢は宇宙旅行会社を作ることなんですね。ただ、学力がなかったので、まずは勉強しようと大学に入ることにしました。卒業後、どんなビジネスをやろうかと考えたときに、やはり自分のバックグラウンドでもある自衛隊関連のビジネスをやろうと決めました。装備品を作る会社「HEDS」を立ち上げたのが一番初めです。そこから色んな可能性を探っていくのですが、一つ大きな課題として浮かび上がったのが自衛隊員の未婚率の高さでした。

もちろん出会いが少ないという特殊な職場環境も一因ではあるだろうが、永井氏によれば結婚できない隊員に共通して言えることは「口下手」な性格らしい。これを解決するために考えたアイデアが「サバゲー」だった。

永井:
「僕なんか国防の礎として独身でもいい。国のために身を捧げる」というような生粋の昭和人みたいな人が四割くらいいます。彼らがどうすれば喋れるようになるかを考えて始めたのがエアガンを使った「サバイバル・ゲーム」でした。彼らは銃を持つと喋れるようになるのですが、参加した女性陣からは不評でした。化粧をしたのに汗で落ちちゃうし、痛い、「なんなのこれ」と(笑)

こうした不満を解消するために閃いたのが「赤外線」だった。開発に明るい友人を誘い、約二ヶ月でプロトタイプを完成させたという。本来は婚活の一環で使用するはずだったのものだが、あまりのクオリティの高さにこのプロダクトで起業することを決意した。

永井:
内部プロトコルにはじまり全て完璧に書かれたソースコードを読んで、「これはすごい。面白い!」と思いました。それが二年前なんですが、その頃からARやVRの潮流が来ていましたので、研究に注力しました。ようやく株式会社化したのは今年の1月です。

■ハードウェア起点のモノづくり発想

多額の資本を要しないことから、ITベンチャーを学生時分から創業する人も少なくない昨今。とりわけアプリケーション開発を中心としたソフトウェア関連の起業が目立つ。こういった流れに反し、永井氏はあくまでもハードウェアであるデバイスにこだわりたかったという。

永井:
Microsoft XboxやSONY PlayStationといったコンシューマーゲームの流れを見ても、どんどんリアルに近づいていってますよね。リアルの頂点に達したときにどういったデバイスが欲されるのか。例えば『コール オブ デューティ』(戦争をテーマにしたシューティング・ゲーム)があります。これは非常にリアルなゲームではあるんですが、これを実際のエアガンを揃えてゲームできないか。電子的なウェブとのつながりができるようなデバイスを我々が提供できないかと考えたんですね。ウェブアプリケーションのゲーム会社を作るよりも、実際に人間の手の持って遊べる感覚を重視したのが"赤外線"なんですよ。

コントローラーを操作しながら画面上のキャラクターを操作するのではなく、自分自身が現実空間でゲームをプレイする、徹底的なリアルさを追求しているという永井氏。これまで計10回静岡県の公共施設でも赤外線銃を用いたサバゲーを行ってきた。

静岡県の公共施設でサバゲーを行った際の様子。(写真:次世代赤外線銃をどうかする研究所より)

永井:
赤外線銃は非常に安全性も高いので、例えば渋谷とか赤坂、千代田区とか熱海市とかをジャックしてゲームできないか。今までのような描かれた世界の中ではなく、本当にリアルな世界でゲームを体験できないかと考えています。逆説的ですが、とにかくリアルな世界にリアルなモノを持って行って仮想空間で遊ぶ、これをやりたいんですよ。

「ハードウェアを起点にしたモノづくりアプローチの方が、人間の心理的に受け入れやすい」

永井:
今まではソフトウェア起点のアプローチが主流でしたが、今後5年は逆のアプローチが大勢になっていくと考えています。そのためのプラットフォームがArduinoとかRaspberry Piだったりするわけで、こうしたデバイスをウェブとドッキングさせる。まさに今、IoTが流行っていますよね。日本がIoT先進国になるために、まずは我々がその急先鋒になるべく、まずはハードウェアを作りました。ベンチャー企業の一つの実績が日本の国家戦略の一つとして捉えてもらえるのでは?と考え、あえてハードウェアアプローチで開発しました。

--開発で最も難しかったポイントはどこでしょう?

永井:
一番難しかったのは「レンズ」です。安定して100m、200m先に届かせる技術は難しい。この技術は日本の企業はもちろん、世界的にもなかなか珍しく。この技術を応用してニコニコ超会議で披露したのが「ねぎライフル」です。

■事業の最終ゴールは"思い出作り"

永井氏が赤外線銃サバゲーに事業性を見出したポイントが、「大人と子供が一緒になって楽しめる」という点だ。

永井:
子供は大人が持っているもので遊びたいという願望を強く持っています。なので外観の本格感は大事です。あと、サバゲーが流行っている理由はなんといっても"非日常性"ですよね。撃つか、撃たれるかの緊張感。それこそ今だと、遊園地のジェットコースターやおばけ屋敷に行かないと体感できないような。それに対して赤外線銃は場所を選ばずにできますからね。

この事業の最終的なゴールは「思い出作り以外のなにものでもない」と言い切る永井氏。現在の試作機もこれから次々と改良が加えられていくように、モノは常に変化し続けるが、思い出は消えることがない。

モノとインターネットがつながるIoTの流れは、ゲームの世界にリアリティを持ち込もうとしている。画面の中ではなく、現実空間の中で自分自身がプレイヤー=キャラクターになるのだ。永井氏の話から、IoTを利用したゲームの多くが大人も子供も楽しめるものになるのではないかと予想する。
拡張現実技術を応用したGoogleのIngressのようなゲームが文字通り現実空間でプレイされる日はもう間近だ。

取材・文:長谷川リョー

1990年生まれ。フリーライター。これまで『週刊プレイボーイ』『GQ JAPAN』WEBなどで執筆。「BOSCA」編集長。東京大学大学院学際情報学府在籍。@_ryh

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