【SXSW 2016】スタンフォードのフューチャリストによる「人工知能と仕事」

2016.03.13 18:15

スタンフォード大学フェローであり起業家、そしてフューチャリストであるジェリー・カプランが人工知能やロボットが進化した先の人間の職業について語るセッションにSENSORS.jp編集部が参加。SENSORS.jpではこれまでも人工知能について掘り下げてきましたが、ここでは「未来の働き方」に注目しながら掘り下げていきます。

■SXSW 2016 レポート
#1【SXSW 2016】オバマ大統領らが語った "21世紀型の生き方"

machine is not human2.jpg

「マシーンは人間ではない」

◼︎人工知能の擬人化神話

当セッションは「マシーンは考えるのか?」「人工知能と仕事」を中心に進められました。ジェリーはIBM Watsonがアメリカのクイズ番組『Jeopardy!』で人間相手に勝った「2011年」が人工知能、機械が真に人間レベルで考えることが出来たタイミングと言います。「マシーンが人間を超えた」と聞くとターミネーターのような人間を敵とみなすマシーンが現れる世界を想像する人や、人間の職を奪うのではないか?と恐れる人が現れます。そのような不安を覚える人々に向けてジェリーは「一つ一つのタスク自体は機械に置き換えられるかもしれないが、人間が行う仕事自体は無くならない」と壇上から来場者に訴えかけます。それは何故なのでしょうか?

job task.jpg

「タスクはマシーンが自動化する。仕事は自動化されない。」

例としてあげられたのが看護師の仕事。マシーンはルーチンワークはこなせますが、看護師の仕事のように患者一人一人によって対応する内容が変わる複雑な仕事や、タスクだけではなく「優しさ」「ぬくもり」のような感情に訴えかけるような態度も求められる仕事なので、人間の患者がいる以上人間が看護師の仕事をすることになるでしょうと言います。

nurse.jpg

左が看護師の仕事。列挙された仕事内容の中には「エモーショナルなサポートも必要」と含められている。マシーンには、患者の感情を即座に考え対応できるスキルはつくのでしょうか?答えはNOでしょう。

◼︎人工知能と仕事

次に、アメリカの1800年〜現在までの農業に従事する方のグラフを見せてくれました。「1800年に農業に従事している人の数は、アメリカ人口の90%もいました。人々は食べるために働いていたのです。ただ、農業のオートメーション化、単純な作業をマシーンに置き換えていくことにより現在では1.7%の農業従事者がアメリカの食を支えているのです。90%を占めていた1800年の農業に従事していた人から見ると、現在は農業就業人口約2%しかおらず、『職が無くなった』ことになります。ただ現実はどうでしょうか?我々は農業以外の仕事に就き、しかも1800年当初より豊かな生活をしているのです。我々は時代にあった仕事を作っていくので、人工知能が普及した世界でも仕事が完全に無くなるということは無いのです。」

1980-2000_2.jpg

1800年のアメリカでは農業に従事している労働者は人口の90%、現在は1.7%で全米農産を養っている。テクノロジーの進化が可能にした数字です。

ジェリーの子供達は10年前には存在しなかった仕事に就いています。娘はレストランのソーシャルメディアプロモーションに従事し、息子はオンライン教育の現場で働いているそうです。新しいムーブメント、トレンドは普及するのに時間が掛かるが人工知能が促進し、新しい仕事を作ってくれるともジェリーは言います。

packman_2.jpg

弁護士、医者などの今までの仕事は人工知能が取って代わり、その代わり人工知能ではこなせ切れないブロガーやオンライン評価マネージャーなどの仕事が生まれています。

それでは未来の仕事は、どんなものが出来てくるのでしょうか?ジェリーは「ゲームスキルを競うeSportsプレイヤー」「etsyやMakersのような大量生産ではないモノ作り」「綺麗に毎日花を咲かせる人(毎日綺麗な花を咲かせるのも仕事だ!!)」「スポーツプレイヤー」「人々を楽しませる企画が考えられる人」を例としてあげていました。全てに共通するのは、自分のスキルを人前で見せるような仕事と言います。バックオフィスの仕事ではなく、一人一人が自分のスキルを活かして仕事をするのが未来の仕事になると言います。

tomorrow jobs.jpg自分の好きから始まるスキルを活かす仕事が明日を作る仕事ではないか?とフューチャリストは語ります。

ai new frontier.jpg

人工知能のエキスパート達。彼らが新しい仕事、未来を作る近道を作ってくれそうです。

ジェリーのセッションはポジティブに人工知能と生きる未来が明るく描ける世界を感じるものでした。未来の仕事---「自分の好き」で進んでいける嬉しさと、「組織に属すれば安泰」という時代にはもう戻れない恐ろしさも感じます。どのような仕事をしていようが「自分には何ができるのか?」「自分は何に情熱を投じて生きていけるのか?」を考えながら進むことが未来の仕事を作っていくことになりそうです。

jerry.jpg

シンギュラリティは怖いものではなく、ポジティブに受け止められるものであることを教えてくれたジェリー・カプラン氏に感謝を伝えたい。

取材・文:西村 真里子

SENSORS.jp 編集長
国際基督教大学(ICU)卒。IBMでエンジニア、Adobeにてマーケティングマネージャー、デジタルクリエイティブカンパニー(株)バスキュールにてプロデューサー従事後、2014年に株式会社HEART CATCH設立。 テクノロジー×クリエイティブ×マーケティングを強みにプロデュース業や執筆活動を行う。スタートアップ向けのデザイン&マーケティングアクセラレーションプログラム「HEART CATCH 2015」総合プロデューサー。 http://events.heartcatch.me/

最新記事