海外在住の日本人が現地をガイド「TABITICKET」〜大学時代の親友2人がサービスを立ち上げるまで

2015.07.24 08:30

近年、増加傾向の「旅行」に関するスタートアップ。その中でも6月にローンチしたばかりなのが、大学時代の友人2人で立ち上げたという「TABITICKET」。主に海外で暮らす日本人に、その人ならではの旅のプランを案内してもらえるシェアリングエコノミーサービスだ。

■旅好きな大学時代の友人同士が、一緒に仕事をするまで

「TABITICKET」を運営する坂巻渚さんと矢野亜希子さん。東京外国語大学に入学後、一年生の頃同じクラスになって以来親友同士だそう。二人で立ち上げた社名は「Colourful Sea Inc.」といい、「世界各国の様々な国や人、それぞれの色を生かしながら、海のように世界をつなぎたい」という意味が込められている。在学中から一緒に旅をしてきた二人は、卒業後それぞれの道を歩んだ後、一緒にこのサービスを立ち上げた。今回は坂巻さん・矢野さんが出会ってから「TABITICKET」を立ち上げるまでの道のりと、このサービスを発想したルーツを探る。

tabiticket1.jpg

矢野亜希子さん(左)と坂巻渚さん(右)

--最初にお二人で「旅」をした記憶ってありますか?

坂巻:
最初は一年生から二年生になる春休みに、沖縄に弾丸で、しかも無計画で現地の人に助けられる旅をしたんです。
矢野:
当時は向こうみずだったので、トラックの運転手の方に乗せてもらってヒッチハイクしたり...(笑)

--その後、やはり海外にも目を向けるようになったのでしょうか?

坂巻:
その半年後くらい、二年の夏に南仏に短期の留学も兼ねて一ヶ月くらい滞在したんです。
矢野:
寮に滞在していたんですが、そこに来た理由って、人それぞれで面白いんですよ。ドイツの大学に通っていて、夏休みにフランスでちょっと勉強しようとしている人とか、フランスにお菓子の修行をする前に語学留学で来た人とか。
坂巻:
みんなで、どんな人生を送っていきたいかとか、夜中まで話し合ったりしたよね。みんな全然価値観が違って衝撃でした。

--当時は、今のサービスのイメージはありました...?

坂巻:
その時はまだなかったです。ただ、仕事でも海外に関われたらとは思っていました。
tabiticket2.jpg

元々よく一緒に旅をしていたというお二人の、旅先でのスナップショット

--そうして大学卒業後、一旦はそれぞれの道を歩むわけですよね。

矢野:
私は「語学」に興味があって。言葉を習得することでいろんな人と話をして、違う考え方を知ったり、そんな生き方があるんだと知ることが好きだったんです。新卒ではANAでCAをしていました。色んな街に行って色んな人と出会えるので、仕事自体は楽しかったんですが、もっと語学を使いたいな、パリにも住みたいなと思っていて、パリの旅行会社に入りました。そこではいろんな現場での知識...例えばパリに来た日本人の方が何を求めているかなども学べて、今思うと、サービスの立ち上げに役に立ったなと思います。その後帰国して大使館の関連組織で、フランスの音楽の輸出入をサポートする仕事をしていました。例えばアーティストを呼んで日本でコンサートをしたり。
坂巻:
私は、大学4年生でシドニーに留学して広告やPRを学び、この世界が面白いと思ったのと、シドニーの街が大好きになりました。卒業後、いつかシドニーで暮らせるように、まずは世界で通用するビジネス力をつけたいと、サイバーエージェントに入社しました。ソーシャルメディアを中心にWebプロモーションに携わったことが、今のTABITICKETの立ち上げにも大きく助けになったと感じています。その後念願のシドニーで、現地の日本人向けのメディアに転職し営業や企画までやりました。人数も少なかったので、様々な経験をさせてもらえました。その時に「海外にいる日本人の方って、なんて面白い人がいっぱいいるんだ」と驚いたんです。自分でワークショップを開くアクティブな主婦の方とか、学生さんでもいろいろ企画したりとか。

--その後どうやって「起業しよう」という話になったんですか?

坂巻:
サイバーエージェントでの経験や本の影響でいつかは起業したいと思っていました。シドニー行きが決まってからは、帰国したら始めたいなと。そんな時に矢野と二人でご飯に行く機会があり「一緒に起業したら面白そうじゃない?」という話で盛り上がっていました。まだその時はビジネスモデルも何も決まっていなかったんですが(笑)。
矢野:
シドニーにいる間はスカイプでやり取りしたりとか。お互い色々アイデアを出していった中で、私たちのベースにあるのは海外の面白さだなと思いました。特に海外での人との関わり。そういうのをもっと知ってもらいたいなと、TABITICKETの骨格が見えてきました。
坂巻:
海外の日本人同士が交流するサイトって面白い情報が沢山あるんですよね。そういった面白い現地の人・現地の情報を、日本にいる人にももっと知ってもらえるような仕組みが作れたらいいなと思ったんです。

■現地でガイドしてくれる方の面白さを、最大の魅力に

「TABITICKET」には価格帯からエリア・体験まで様々な内容の体験がリストアップされている。現地での体験や滞在先などを画面上で気軽に選ぶ事が出来る、というサービスは近年増えているが、興味深いと思ったのは「現地の日本人によるガイド」に特化している点だ。というのも、筆者も過去、それまでは海外経験は旅行のみで、留学や長期滞在などの経験もないままいきなり海外に住んでみたことがあった。その時に「現地にいる日本人の方」は様々な情報をくれ、かつ、ホッと安心をくれるとても有難い存在だった。それだけにこのサービスの目のつけどころは面白いと感じたのだ。

tabiticket3.png

「TABITICKET」トップページ

--使って欲しい層のイメージとしては。

坂巻:
特に、年に1回くらい海外に行っている方で、旅先でもっとユニークな体験もしてみたい、普段会えない人と会ってみたいと思っている人です。また、留学などで現地に引っ越したばかりの人が「日本人の知り合いがいるといいなあ」と思った時に使ってもらえるといいですね。

--旅行系のスタートアップが増えている中で、差別化していく点としては?

坂巻:
「ホストの魅力」を最も重要な点と考えています。普通のツアーではなかなか出会えないプロフェッショナルな職業の方、何かマニアックな知識を持っている方、現地の魅力を発信している方などに、ホストとして積極的にお声がけしています。それに加え、日本人が安心して使えるように、日本人同士のサービスにしている点です。

--ホストの方はどうやって見つけてこられたんですか?

坂巻:
現地の情報をブログで発信されている方を探したり、実際に会いにも行っています。
矢野:
先々月もハワイに行ってきたんですが、素敵な方に紹介して頂く方ってやっぱり素敵な人が多くて、色んな方を繋ぎ繋ぎで紹介してもらったりしました。TABITICKETは誰でもホストになれるシステムではあるんですが、魅力的なホスト・体験を増やせるように、私たちからも積極的にお声掛けさせてもらってます。同時に、パスポートなどの本人確認書類を出して下さった方にはマークをつけるなど、安心感も高めています。「この人に案内してもらうんだ!」と旅行に行く前からワクワクできる、暖かみのあるサービスにしていきたいですね。
tabiticket4.png

様々な地域の、様々な人による体験を探す事が出来る

--今後の展開は。

坂巻:
まずは現地で受け入れてくれるホストを増やしていくことです。今後は日本国内の体験も増やして行きたいです。私たちも旅が好きなので、私たち自身、旅を楽しみながらホストの方を探していけたらと思います。「案内してくれる人から選ぶ旅」という新しい旅のスタイルを提案していきたいです。今後はホストや(サービスを広めて頂ける)アンバサダーの方々の情報もキュレーションしていくような、読み物コンテンツも増やしていこうと思っています。

--ちなみに話は変わるんですが...二人での意思決定って、どのようにされているんですか?

矢野:
話し合う中で、詳しい方は自然に、という形が今のところ出来ています。Webサービスを作って広めていく経験は坂巻がこれまでもあるので。
坂巻:
制作のところは矢野ですね。デザインのセンスがすごくいいので。お互い得意分野は信頼して任せている感じです。

--じゃあ二人で遊んでいても、ついつい仕事の話になったり...(笑)

矢野:
「今日はタビチケなしね」っていう話もするんですけど、ついつい(笑)。
坂巻:
全然違う話をする時も、いつの間にかサービスの話になっちゃったりはしますね。
矢野:
ただ一緒に仕事をするようになって、お互いの強い所・弱い所、お互いにより分かるようになりました。友達同士で仕事をすることって結構反対されるんですけど、ならば良い事例になろうと。また、IT業界ってまだまだ女性が少ないので、女性らしい働き方も提案していけたらと思います。

「旅が好き」「旅先で出会う体験・人が人生を変えてくれる」という共通点で繋がった、長年の親友である坂巻さんと矢野さん。それぞれのキャリアを積んだ後に一緒に「TABITICKET」を立ち上げたまさに今お話を伺ったが、あくまで等身大に・やりたいことに正直に向き合っている空気感が印象的だった。 お二人の人柄がそのまま現れたような「TABITICKET」の提供する旅の世界観を楽しんでみてはいかがだろうか。

取材・文:市來孝人

SENSORS.jpエディター
PR会社勤務を経て、東京を拠点に「SENSORS」等のWebメディアでのライター・エディターとして、また、MC・ナレーターとしても活動。福岡でラジオDJとしても活動中。

最新記事