ストリーミングサービスが音楽業界に与えるインパクトとは--AWA、LINE MUSIC、KKBOX三社が語る市場の現在地

2017.01.31 16:30

2015年、日本国内で複数のサービスが立ち上がり話題に。 さらには2016年には、Spotifyの日本参入というトピックがあったストリーミングサービス。「音楽市場全体を盛り上げたい」という同じ目標に向かい、サービス向上、拡大を続けるAWA、LINE MUSIC、KKBOXの三社に「TOKYO DANCE MUSIC EVENT」にて現在の市場動向や今後の展望について伺った。 TOKYO DANCE MUSIC EVENTとは、2016年12月に開催された日本初のダンスミュージックに焦点を当てた音楽カンファレンス&イベント。 世界中から音楽業界で活躍するビジネスパーソンやアーティストが集った。

今回このイベントの中で行われたセッション「SENSORS presents 日本/アジアのストリーミングサービスの可能性」を取り上げる。 スピーカーはAWA株式会社 取締役 小野哲太郎氏、LINE MUSIC株式会社 取締役 高橋明彦氏、KKBOX Japan合同会社代表 八木達雄氏。 モデレーターはParadeAll株式会社 代表取締役 エンターテック・アクセラレーター 鈴木貴歩氏、SENSORS.jp副編集長 市來孝人。(写真:成瀬正規、前田学)

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■︎ストリーミングサービス 海外の動向を踏まえた3つの予測

まずは鈴木氏から、海外での動きを踏まえた、日本でも予測される今後のストリーミングサービス動向が語られた。

鈴木:
現在の日本の音楽市場ではオーディオとビデオの売り上げが下がっている分をストリーミングサービスで補う構図が生まれつつあります。 音楽市場に確実にインパクトを与えつつあるストリーミングサービスの長所をお伝えします。

まず一つ目はアクセシブルであること。スマートフォンが普及し、音楽をその場でストリーミングサービスを通して聴く、という楽しみ方が出てきました。 もう一つは、これは元々海外でストリーミングサービスが立ち上がった一つの大きな要因でもある、違法ダウンロードの防止効果があることです。一説によると、4〜5年程前は、音楽を聴いている人のうち合法で楽曲を買っている人たちが全体の1割、残りの9割の人はお金を払わずに違法ダウンロードしているというほどになっていたそうです。 そこに対して使いやすいサービスを提供することで、違法を阻止するという役割です。 最後にもう一つ、大事なのは、そこから新しいアーティストが生まれてくるということです。例えば、LPレコードができたころは、片面に30分くらい収録ができました。するとその30分という枠を活かして表現することが得意なアーティストが出てきたりする。日本でいうと、着うたをきっかけにGReeeeNや西野カナのように、45秒で人の心をぐっとつかむアーティストが現れます。 海外そして日本でも今後、ストリーミングサービスを活用して新しいスタイルを生み出していくアーティストが出てくることで音楽業界全体が面白くなると思います。
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ParadeAll株式会社 代表取締役 エンターテック・アクセラレーター 鈴木貴歩氏

■プレイリスト機能とダンスミュージックの相性--AWA

ここからは登壇各社によるプレゼンテーション。まずは2015年に提供開始となったAWA。サービスとダンスミュージックの相性という面が中心に語られた。

小野:
AWAは2016年11月から、ひと月20時間まで無料で利用できるようになりました。このフリープランではおおよそ90秒程度の尺にはなりますが、クロスフェードでなめらかに聴いていただけます。実際、このプランを開始してからの再生数の推移はおおよそ20倍近くまで伸びています。 移動中・仕事中・勉強中など、何かをしながら音楽を聴くことを日常化してほしいという思いがありました。 音楽との出会いが広がると好きになる曲が増えてくる。そうすると、フルで聴きたいなと思うようになり、AWAの有料会員になったり、CDを買ったり、DLしたり、ライブに行ってみたりと、様々な音楽への関心や行動が出てくると思っています。

ダンスミュージックという点では、2015年、2016年と、ULTRA JAPANのオフィシャルスポンサーをさせていただきました。 ダンスミュージックが好きな方やフェスが好きな方にもAWAを知っていただきたいなという思いで取り組んでいます。 定額制音楽配信のいいところは世界中の音楽が聴けるということですが、ほとんどのユーザーさんはお気に入りのものだけを聴いてしまいせっかくの定額制サービスの奥行きを堪能しきれていないという課題があります。 そういった面で、リコメンドなどのサービス内での磨き上げとは別に、様々なジャンルに特化したイベントでAWAを知ってもらい、そういった方が作る専門性の高いプレイリストが増えることで、他ユーザーの音楽の幅を広げる機会につながったらと考え、協賛しております。
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AWA株式会社 取締役 小野哲太郎氏

--AWAさんの特徴として、プレイリスト機能を売りにされている面もありますが、プレイリストダンスミュージックの相性というのはいかがでしょうか?

小野:
ユーザーさんが作ったプレイリストを別のユーザーさんにリコメンドを通して届けられるので、ポップス寄りのアーティストを聴いている人にも、ポップスとダンスミュージック寄りのプレイリストが届くようになります。リコメンドを通したジャンルの幅の広がりは狙っていますね。特にダンスミュージックはプレイリスト化しやすいジャンルで、DJ気分でプレイリストを作りたいという方も多いので親和性は高いのではないかと思います。

■︎ 日常のコミュニケーションの中に音楽を--LINE MUSIC

続いては、こちらも2015年サービス開始のLINE MUSIC。 LINEという日常に溶け込むサービスの中で、どのように音楽を溶け込ませていくのかという点が語られた。

高橋:
LINEミュージックは「この曲いいな」と思ったらトークのなかで音楽を送り、シェアすることが出来ます。 ただ、皆さんFacebookなども利用していて感じている方も多いかと思うのですが、実は「音楽をシェアしている」人ってとても少ないんです。ソーシャルを通して音楽を送る・シェアするということは実は日本ではハードルが高いということがこの(サービス開始後の)1年半を通してわかりました。 そのため、ユーザーが送りやすい・シェアしやすいと思える仕掛けが用意される必要があると思っています。
我々が考えた一つ目の仕掛けは、LINEの「プロフィールBGM設定」です。自分のLINEアカウントのトップページに自分が好きな曲を一曲設定出来ます。実はこの機能が予想以上に若者を中心に受け入れられていまして、リリースしてから数ヶ月経った現在、約500万ほど設定されています。Twitterで検索してみても「今月LINE MUSIC 何にしようかな」とか「〜の新曲が出たからLINEのBGMに設定した!」などといった反響を見る事が出来ました。この機能によって、「あの人、こういう曲好きなんだ」という会話が生まれます。新しいソーシャル×ミュージックの一つの形として確立されつつあるこの機能の良さは、押し付けがましさが無いところです。自分をデコる、自己主張の一つとして若者を中心に上手く使って頂いています。

また、先日はボットをリリースしました。これはとってもシンプルなものでして、歌詞の一部、例えば「愛してる」と打つと、「愛してる」という単語を使っている曲をボットがピックアップして教えてくれます。 これをどんどん開発し、心理的なアプローチから音楽を楽しんでもらおうとも努めています。
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LINE MUSIC株式会社 取締役 高橋明彦氏

--LINEのプロフィールBGM機能、これはある意味控えめな主張と言えますが、日本だからこそ受け入れられやすい機能でもあるのでしょうか?

高橋:
クラシックな感じがしますね。LINEのプロフィールページが若者にとってみると、mixiのマイミクページやFacebookのプロフィールページのようなものだったりするんです。 LINEが彼らの一つの玄関口になると考えたら、ここをデコるのは当然、するとBGMを設定するというのも自然なことだったようです。

■ストリーミングサービスを起点にした広がりを--KKBOX

続いては2013年に日本でのサービスを開始したKKBOX。まず最初にサービスを開始した台湾でどのようにサービスを拡大してきたかという点が語られた。

八木:
KKBOXは2004年に台湾でスタートしています。台湾でもインターネットの普及で違法ダウンロードが当たり前になってしまいCDの売り上げが壊滅的になってしまい、それを改善するためにレーベルさんやアーティストさんの協力で徐々に会員数を増やしていったサービスです。 結果全世界で1,000万人、有料では200万人ユーザーがいて、3,000万曲を配信しています。

また、KKBOX MUSIC AWARDというイベントを、サービス開始翌年の2005年から開始しました。 日本のアーティストさんもこれまでMay J.、Perfumeなどが出演しています。KKBOXの会員の中から抽選で選び電子チケットを購入していただき、台北アリーナで開催、ブロードキャストもされ、7カ国で一斉に1,000万人ほどの方に見てもらっています。 このように我々のサービスは、日本のストリーミングサービスとは違った成長をしています。チケットを買って、ライブも観て、ライブ配信もされていて、と、音楽を聴くだけではない体験を、KKBOXを通して届けています。
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KKBOX Japan合同会社代表 八木達雄氏

--このような台湾でのサービス発展の動きに似たことは、日本の音楽市場でもあり得るのでしょうか?

八木:
アーティストとファンをつなげるという役割は、サブスクリプションサービスではあり得るだろうなって思いますね。 特にサブスクリプションサービスの良さは、音楽の体験データをもとに新たな出会いに遭遇出来ることです。 そのあとのマネタイズのチャンスについても、アーティストに提供していけるということも、サブスクリプションサービスの一つの大きな可能性なんじゃないかなと思います。

■プレイヤーが増える事で市場の認知、拡大を

--各社の現在の取り組みを伺いましたが、日本のサブスクリプションサービス市場は、どのような動きが想定されますか?

鈴木:
例としてドイツを挙げますと、Spotifyが2、3年前からドイツに参入していたにも関わらず、2015年にやっとストリーミングサービス市場が伸びたそうなんです。それはApple MusicやGoogle Playといった大きなプレイヤーが各自の強みを活かしたサービスで参入してきたことでストリーミングサービス自体の認知度や便利さが浸透してきたのです。 日本も、まさに三社独自の切り口で様々なターゲットにアプローチすることで、今後マーケットが拡大していくと思います。

--皆さんは、ストリーミングサービス市場全体への考え方はいかがでしょうか?

小野:
まだまだ日本での市場は小さいので、音楽を聴くために課金することが当たり前になるまでの時間をどれだけ短縮できるかっていうのは、我々プレイヤー次第だと思っています。なので、Spotifyさんの参入も歓迎していますね。
高橋:
そうですね、2015年にもサプスクリプションサービスが数々立ち上がってニュースになりましたが、そのような過程は日本には必要なプロセスだったなと思っています。 次の段階として実際にサービスを使ってみるか、どのサービスを選ぶか、その段階まで成長すべきだと思っています。
八木:
実は2013年にKKBOXを日本でスタートした当初はすごく孤独だったんです(笑)。今は、ここに集まっているように(市場の)仲間が増えたので、皆さんと一緒に市場全体を盛り上げていけたらと思います。

登壇した各社ともに、今はサービス同士でしのぎを削るというよりは、サービスが増えていく事でまずは市場自体の認知を広げていきたいという思いを持っているようだ。 2016年の日本におけるストリーミングサービスの今がわかるセッションとなったが、一年後このセッションが行われたとき、またどのような市場の発展があり、どのような会話が交わされるかが楽しみだ。

構成:見﨑梨子(みさきりこ)

1993年生まれのフリーライター。青山学院大学総合文化政策学部に在籍。『SENSORS』をはじめ複数の媒体で記事の執筆・編集に携わる。DJとしての一面もあり、東京都内の様々なクラブで活動中。
Facebook:https://www.facebook.com/riko.misaki

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