大人が知らない10代の新常識"ティーン向けマーケティング戦略とは?"--中川悠介(アソビシステム)× 森泰輝(VAZ)

2017.08.21 17:30

「ティーンカルチャー」をテーマに行われたSENSORSサロン。ゲストに迎えるのは10代に圧倒的な支持を受ける人気タレントのマネジメントを手がける中川悠介氏(アソビシステム)と森泰輝氏(VAZ)だ。

4回にわたってお届けする第1弾記事ではアソビシステムとVAZの両代表に、10代のトレンドをどのように掴むのか伺った。MCの落合陽一が「従来のマーケティングは通用しない」と語るように、独自のカルチャーを持つ彼らとコミュニケーションを取るのは難しい。両代表が考える「ティーンカルチャーに立脚したビジネスモデル」とはどのようなものなのだろうか?

※本記事の内容は2017年7月に取材したものです

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(右より)中川悠介氏、森泰輝氏(左より)SENSORS MC落合陽一、齋藤精一

まずは、『SENSORS』MCの落合陽一、齋藤精一の二人に、ティーン時代の思い出を語ってもらった。

齋藤精一
(以下、齋藤):
10代の頃の思い出といえば部活動です。バスケ部に所属しており、「脳みそまで筋肉だ」と言われたこともあるほど熱中していました。バスケは趣味であり、楽しい思い出であり、僕のすべてです。そこで得た体育会系の考え方は現在の仕事に活きています。
落合陽一
(以下、落合):
僕はエレキギターに夢中でした。演奏もこなしますが、それよりもギターそのものを作ることが好きだった。音が電気と光で表現される様子をオシロスコープで見た感動が強烈で。オイルコンデンサーに向かい、「君は何でこんなに良い音を出すんだい?」と問いかけるような子どもでした。現在も波動の処理をしているので、当時から現在まで、数式的にやっていることは同じです。

ティーン時代に得た価値観や興味が現在の仕事にもつながっているという二人。齋藤精一が10代だった頃からおよそ20年、落合陽一が10代の頃からは10年が経過している。当時から「ティーンカルチャー」はどのように変化しているのか?

ここから、今回のゲストである中川悠介氏と森泰輝氏を交えて議論が行われた。現在10代に絶大な人気を獲得するタレントたちをマネジメントする、両ゲストの自己紹介から話は始まる。

■従来のマーケティングは通用しない。ティーンカルチャーは「定性的な分析」で紐解く

--まずは自己紹介も兼ねて、お二方がどのような事業を展開されているかお教えいただけますか?

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中川悠介
(以下、中川):
アソビシステムの中川と申します。主な事業として、きゃりーぱみゅぱみゅや中田ヤスタカ、アートディレクターの増田セバスチャンを中心にアーティストやモデルのマネジメントを行っています。

原宿を拠点に横展開することを意識しており、ファッションブランドの立ち上げやリアルイベントの開催もしています。「ブームを作ることよりも、カルチャーを創る。」をテーマに様々な事業する会社です。
森泰輝
(以下、森):
VAZの森泰輝と申します。10代のメディアへの関わり方が変化する時代において、テレビやラジオなどいわゆる4マスに出演したことのない、ネット上だけで有名になった新時代のタレントをマネジメントしています。

--それでは「若者の生態系」というテーマについてお話していきたいと思います。

齋藤:
僕が興味を持つテーマと、30代、20代が面白いと感じる分野はまるで違います。特に10代の傾向を把握するのは難しく、これまでのように世代でクラスタを分けるだけでは彼らの興味対象を把握できなくなっていると感じます。お二人は「若者の生態系」をどのように把握されていますか?
森:
10代と10代より上の人を比較すると、見ているSNSやメディアがまったく違います。10代は主にYouTube、Twitter、Instagramをみていて、ほとんどテレビを見ていません。この3つのSNSで人気になっているタレントをウォッチしてトレンドを定性的に掴むようにしています。
中川:
「若者の生態系を把握すること」は「10代へのマーケティング」に言い換えられると思いますが、アソビシステムのマーケティングは明確には言い切れないのが正直なところです。「YouTubeが好きな子」、「原宿が好きな子」とクラスタが細分化されているので、年代で一括りにするのは難しい。「アソビシステムはITに強い」と言われることも少なくありませんが、感覚論でリサーチすることが多いです。

例を一つ挙げれば、きゃりーぱみゅぱみゅがデビューした当時、彼女とは「年齢層が高い青山一丁目を自由に歩けなくなるまで有名になったら勝ちだね」と話をしていました。
落合:
これまでのマーケティングは、「どこのライフスタイルに、どのようにアプローチするのか」という市場調査がベースでした。しかし、お二人がお話ししてくれたように、今は「人に刺していく」マーケティングがメインです。これまでのような理系脳のマーケティングが通用しなくなりつつあります。現代の若者はキャラクターに反応する人が多いので、「人に対してどう反応したのか」をベースに考えると分かりやすいかもしれません。
森:
おっしゃる通りです。たとえば有名な女の子がツイートをしたとします。そのツイートに反応している人のプロフィールや投稿の傾向をつぶさにチェックするなど、定性的な分析をしなければ細分化したクラスタは紐解けません。

■「人気と認知は違う」10代はテレビの代わりにYouTubeを観ている

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--定量的なマーケティングでは不十分であると?

中川:
数字のロジックは通用しなくなりつつあります。フォロワーが多ければいいということはなくて、フォロワーの先のアクティブユーザーのエンゲージメントを可視化しなければ本質的なマーケティングはできません。
落合:
面白いですね。そういえば、リーチしている層をリアルで感じる場面も少なくありません。僕が街を歩いていても、話しかけられることはそう多くないのですが、新幹線の改札前やグリーン車内だとよく声をかけてもらいます。
齋藤:
僕は細分化したクラスタを「部族」と表現しているのですが、その部族をどれくらい取り込めるかがビジネス視点でいうと勝負なのかなと思いました。
落合:
共演するタレントさんの話を職場でしても誰も知らないことがありますが、学生さんは知っていたりします。世代によって大きなギャップがありますが、そのギャップはビジネスのポイントになりますよね。
中川:
僕らの世代(81年生まれ)では知名度のある方が人気になることが通例でしたが、今の若い子は知名度を意識していません。たとえ有名ではなくとも、自分が好きだと思った人にアプローチしています。
森:
認知度と人気は、もうまったく別の指標だと思ってもらっていいと思います。今の10代はテレビの代わりにYouTubeを見ているので、大人が認知していないタレントをマークしているので。
落合:
テレビに代表されるオールドメディアがみてほしいコンテンツと、10代がみたいコンテンツの乖離がどんどん大きくなってきているのは感じますね。

■"デジタルネイティブ"と"スマホネイティブ"の違い

--続いてのテーマ「デジタルネイティブへのマーケティング戦略」に移ります。10代のマーケティングで意識すべきポイントはありますか?

森:
現在の10代はデジタルネイティブではなく、初めて持つ携帯電話がスマートフォンの"スマホネイティブ"なんです。物心がつく頃にインターネットやパソコンなどが普及していた"デジタルネイティブ"との間に大きなギャップがあることは意識すべきだと思います。
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中川:
アソビシステムの所属タレントは、自己発信能力が強く、セルフプロデュースできる子たちが中心。いわゆるスマホネイティブ、もしくはそれに近い世代なので、僕たちとは文化が違います。なので、会社としての戦略を彼らに押し付けることはしていません。ファンも同様にスマホネイティブであり、同じ文化を共有し合う彼ら同士にしか分からないコミュニケーションによってファンを獲得しているように感じます。
森:
VAZもYouTube上でどうやってリスナーを獲得するかという戦略的なマーケティングはほとんどしていないです。表現に関しては彼らのほうがプロなので任せています。「邪魔をしない」くらいです。
中川:
そういう意味で、自由にやらせてあげることが戦略だと捉えられるかもしれません。

続く「"スマホネイティブ"の空間共有、恋愛観とは?」では、多様化するティーン独自の空間共有や恋愛観にフォーカスを当てる。複雑化するティーンカルチャーについてゲスト二人による現状共有を経て、MC二人は現在を「空間共有やコミュニケーション方法の過渡期」ではないかと仮説を立てる。人と人とのつながりの話から、ポスト・スマホの話へとティーンカルチャーの話題は尽きない。

構成:オバラミツフミ

秋田県湯沢市出身。趣味は商店街を歩くことと喫茶店を巡ること。
Twitter:@ObaraMitsufumi
Mail: obaramitsufumi[アット]gmail.com


編集:長谷川リョー

SENSORS Senior Editor
1990年生まれ。修士(東京大学 学際情報学)。
Twitter:@_ryh
Mail: ry.h0508[アット]gmail.com

カメラマン︰松平伊織

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