"スマホネイティブ"の空間共有、恋愛観とは?--中川悠介(アソビシステム)× 森泰輝(VAZ)

2017.08.28 17:00

「ティーンカルチャー」をテーマに行われたSENSORSサロン。中川悠介氏(アソビシステム)と森泰輝氏(VAZ)を迎え、MCの落合陽一×齋藤精一がティーンカルチャーの現在と展望をディスカッションした。

4回にわたってお届けする第2弾記事では、ゲストとMCが関心を寄せる「空間共有」について掘り下げる。コミュニケーション方法が多様化する中で、「デジタルですべて済ませてしまう」ガラパゴス化した10代独自の恋愛観にも注目だ。

※本記事の内容は2017年7月に取材したものです

■ リアル/デジタルの二項対立では捉えきれない、ティーンにとっての「空間」

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(左より)森泰輝氏、中川悠介氏

--続いてのテーマ「空間・クラブ」についてお話できればと思います。

中川悠介
(以下、中川):
10代の子たちをみていると、空間のあり方が複雑化していると感じています。僕や齋藤さん、もしくは落合さんや森さんの世代も"人が集まる空間"を大事にしていたと思うんです。空間に足を運ぶことで出会いがあり、出会いがきっかけでビジネスが始まることも少なくなかったはず。ただ今の若い子たちはSNS上でコミュニティを作るので、わざわざリアルな空間を共有しなくてもつながれるんです。それに代わるものがYouTubeであり、Twitterであり、Instagramで、かつてはSNSさえあれば全てが完結してしまうのではないかとも思っていました。

しかし、リアルなイベントを開催すると、そこにはスマホネイティブの子たちが大勢やってきます。そうした光景を見ると「リアルかデジタルか」という二項対立で考えること自体が間違っているのではないかとも思うんです。
森泰輝
(以下、森):
スマホネイティブの子たちは家で映画を観ることは少ないですが、映画館にはみんなで足を運ぶんです。一人で観ることに興味はないけれど、誰かと共有することは楽しいと感じている。
齋藤精一
(以下、齋藤):
今後はデジタルなコミュニケーションとリアルのコミュニケーションの乖離がなくなる未来も想像できます。振り返ってみると、僕がティーンだった23年前から様々な変化がありました。主たる連絡手段だったポケベルがスマホに進化し、テレビは薄くなり、パソコンも小さくなり、インターネットが高速になった。より便利さを求める社会の中で、次は人間として本当に必要なものが最適化されるのではないかと思っています。「空間」はその一つでしょう。

■スマホは10年後、現在のポケベルになる。次は"スマートグラスネイティブ"が誕生?

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(左より)落合陽一氏、齋藤精一氏

落合陽一
(以下、落合):
スマホネイティブの次は"スマートグラスネイティブ"が生まれるのではないでしょうか。スマートグラスは、現実空間にデジタルな情報を表示するAR(拡張現実)を用いたウェアラブルデバイスで、家にいながら外にいる人と同じ空間を共有できるようになります。つまり、実際に対面していなくとも会話ができる。そういった世界観が実現したときの空間共有、コミュニケーションは興味深いですよね。

--空間共有の手段が増えても、リアルな空間に足を運ぶ文化はなくならないと思いますか?

森:
変わらないと思います。スマホ一台あれば誰とでもつながれる時代でも、スマホを持ってまでリアルイベントに参加している事実がその証拠です。
中川:
今となっては珍しい光景ではありませんが、若者がライブの途中でスマホを操作しているのを見て「つまらないのかな?」と不安に思ったことがあります。ただ、実はライブ中にツイートして楽しさをシェアしているのであって、スマホを操作している人ほど熱心なユーザーだったんです。スマートグラスがスマホにとって代われば、演者を見ながら熱狂をシェアできるようになるかもしれないですね。
落合:
今はスマホを持って下を向きながらでしか情報を共有できませんが、きっとその光景は10年後、僕らがポケベルに抱いているのと同じように振り返られると思います。「みなさん、本当にそんなことしていたんですか?演者と目が合わないじゃないですか!」なんて言われているはずです。僕も空間に関わる仕事をしていて、そうしたシーンを目の当たりにすると、現在は空間共有やコミュニケーション方法の過渡期にあるのだと感じます。

■ デジタルがティーンの恋愛観に与える影響とは?

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--コミュニケーション方法も多様化していくことが予想されますが、10代の子たちと接していて気になったことなどはありますか?

齋藤:
厳密に10代ではありませんが、以前、21歳の子たち4人と話す機会がありました。そのうち3人がこれまでに一度も恋愛をしたことがなかったんです。「恋愛を含む性的な感情もすべてネット上で完結させているので問題ない」と言うのですが、おじさんの私には理解できません。

物理的に手を繋ぐとか、そうした空間共有観、恋愛観も変わりつつあるのではないかと気になりました。
中川:
弊社に所属する17歳の男の子が、以前、「まだ男女どちらが好きか分からない」とテレビで喋っていたんです。中学生で告白することや女性と手を繋ぐなど、自分が常識だと思っていたことが常識ではなかったのだと驚きました。
森:
過去には価値観の違いから肩身の狭い思いをしてきた人もいたでしょうが、自己否定をせずとも生きられる世界に変わりつつあると感じます。「俺はデジタルが好きだから」で済ませられるようになっているんです。ただ、そうした子たちとよくよく話をすると、普通に恋愛したい子が多いんですよね。
齋藤:
お話を聞いていて、若い子たちは頭が良いんだろうと思いました。将棋でいうと十手先まで読める子たちなんです。今は簡単に情報が拡散されてしまう時代。僕らの世代ではナンパすることは特段珍しいことではありませんでしたが、「声をかけると写真を撮られ、ツイートされ、人生が台無しになる」というところまでリスクを先読みしているのではないかと。
落合:
結論がみえる社会になっている気はしています。たとえば「食事に誘ってご馳走しても、付き合えなかったらコストパフォーマンスが悪い」といったように。確率分布が明らかな場合、リスクを犯さない人はたしかに増えますよね。

続く『「ネット上で売れるタレント」の素質とは?』では、ネット上で売れるタレントの特徴について議論が行われた。ゲスト二人が「タレントを束縛しないことがクリエイティビティを育む」と共通の意見を語り、MC落合陽一は父・落合信彦氏のエピソードを交えてゲストの意見に賛同した。また、ネット発の人気タレントがマスメディアへ軸足を移す方法にまで議論は及ぶ。

構成:オバラミツフミ

秋田県湯沢市出身。趣味は商店街を歩くことと喫茶店を巡ること。
Twitter:@ObaraMitsufumi
Mail: obaramitsufumi[アット]gmail.com


編集:長谷川リョー

SENSORS Senior Editor
1990年生まれ。修士(東京大学 学際情報学)。
Twitter:@_ryh
Mail: ry.h0508[アット]gmail.com

カメラマン︰松平伊織

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