「ネット上で売れるタレント」の素質とは?--中川悠介(アソビシステム) × 森泰輝(VAZ)

2017.09.12 00:00

    「ティーンカルチャー」をテーマに行われたSENSORSサロン。中川悠介 氏(アソビシステム)と森泰輝 氏(VAZ)を迎え、MCの落合陽一×齋藤精一がティーンカルチャーの現在と展望をディスカッションした。

    4回にわたってお届けする第3弾記事では、ネット上で売れるタレントの特徴について議論が行われた。ゲスト二人が「タレントを束縛しないことがクリエイティビティを育む」と共通の意見を語り、MC落合陽一は父・落合信彦氏のエピソードを交えて賛同した。また、ネット発の人気タレントがマスメディアへ軸足を移す方法にまで議論は及ぶ。

    ※本記事の内容は2017年7月に取材したものです

    ■ティーンカルチャーのタレントは"ボトムアップ型"で人気を得る

    --続いてのテーマ「売れるタレント」に移ります。10代のコミュニケーション方法が多様化しているというお話がありましたが、売れるタレントたちはファンとどのようなコミュニケーションをとっているのでしょうか?

    nettalent.jpg

    森泰輝氏

    森泰輝
    (以下、森):
    ネット上で有名になるタレントの多くは、テレビや雑誌などのマスメディアに出演して有名になる"トップダウン型"ではなく、自らファンを作っていく"ボトムアップ型"です。例として弊社のタレント「ねお」を紹介させてください。

    ねお は弊社に所属した当初、8,000人ほどしかTwitterのフォロワーがいませんでした。ただ、ファンからのリプライに必ず返事をしていたんです。そうやって関係が密になればなるほど、ファンは ねお が好きになり、積極的に投稿を拡散するようになります。すると、リツイートされた先で ねお のファンになる人が出てくる。その繰り返しで今では18万人を超えるフォロワーがいます。そして現在も、リプライに返事をするスタンスは一切変わっていません。
    落合陽一
    (以下、落合):
    究極のファンサービスですね。アソビシステムさんのタレントも同じようにファンを獲得していますか?
    中川悠介
    (以下、中川):
    もちろん人によって違いますが、同じようにリプライに返事をし続けることでファンを獲得した子もいます。また、雑誌に出ているモデルの子はInstagramで人気ですが、返事はしません。Twitter=交流する場、Instagram=写真を共有する場と、SNSごとに親和性があり、頭の良い子はそれぞれ使い分けています。SNSによってファンの属性が違うことを理解しているのです。
    落合:
    ファンの方もInstagramでは返事が来ないものだと思っているのでしょうか?
    森:
    同じようにファンもSNSごとに異なる特性を理解しているのだと思います。Instagramにしか写真を掲載しないモデルをフォローする目的は「彼女が美しいから」であり、交流する必要性を感じていないのです。

    ■売れるタレントは"黄金パターン"を持っている

    --フォロワーが多いタレント、つまり売れるタレントには何か他にも共通点がありますか?

    中川:
    そもそも論ですが、弊社はセルフブランディングが上手な子を中心にマネジメントしています。衣装を自分で選び、メイクすら自分でやってしまう子たちです。「作られた人」よりも「作り出している人」というイメージを持たれていて、自ら作り出した世界観が成立している子たちが売れているのではないでしょうか。当時「インフルエンサー」という言葉はありませんでしたが、結果としてそうしたタレントたちが今でいうインフルエンサーになっています。
    森:
    中川さんと同感で、ねお のようにスタイルを確立していて、"人気獲得の黄金パターン"を自分で見つけた子は強いですね。所属後に何かアドバイスをするにしても、自分なりのスタイルを保ってもらうために事務所の方針を強制することはしません。なので、タレントたちも「企画が思い浮かばない」と相談に来るくらいです。相談に来たら一緒に考えますが、僕たちとしても「プロデュースします」といったサポートはしないようにしています。
    中川:
    "お互いに引っ張り合う"イメージですよね。タレント自身が持っている才能を引き出すことに専念して、僕らがコンテンツ作り込まないのは本当に大切だと思います。もっと言えば、事務所に彼らの世界観を作り込む力もない。そうであれば、その子の才能を引き出し、タレントも事務所を頼るような、一緒に高め合う"パートナー意識"を持った方が良いんです。
    齋藤精一
    (以下、齋藤):
    話を聞いていて、大人たちが若者の生態系を知ろうとしすぎないことが大事だと感じました。やはり大人は、どうしても若者たちをコントロールしようとしてしまうんですよ。コンテンツの作り方などを教え込もうとしがち。

    もっとどっしり腰を据えて、若い子たちの考えをすべて受け止めるくらいの度量が必要なのかもしれませんね。それができれば、勝てるビジネスができるのではないかなと思いました。
    nettalent2.jpg

    中川悠介氏

    落合:
    父の落合信彦が、アップルの共同創業者ステファン・ゲーリー・ウォズニアックにインタビューをした際に「優れたソフトウェアを作るには若者を自由にしないといけないのに、日本は不自由すぎる」と説教されたそうです。少子高齢化が進む日本は、若い世代が活気付いていかないと未来がない。そういう意味で若者に任せるのは間違いないと思います。
    中川:
    もう一点あるとすれば、必ずしも全員ではないですが、売れるタレントは"しっかりとしている子"です。 ねおちゃんもそうですが、ファンのことを大事に思える人ですよね。収録の際にスタッフの方に対して「ありがとうございました」と言えることも大切で、感謝の心なしに売れる子はいないのではないかと感じています。

    カメラマンさんがいて、音声さんがいて、照明さんがいて、司会の方がいて。たくさんの方の協力があって、初めて自分が舞台に立てていることを理解することも大切な要素です。
    齋藤:
    いわゆる芸能プロダクションのマネジメントとは方法が全然違いますね。
    中川:
    マスメディアの場合は1億2,000万人の不特定多数に向かって情報発信しますよね。さらに、新聞の発売時間に合わせてニュースが出たり、そこからワイドショーで拾っていったり、構造が複雑です。ただ、それよりもタレントのたった一回のツイートの方が拡散力がある場合もあります。メディアのあり方も、カルチャーの変化に合わせてスタイルを改める必要があると感じる機会も少なくないですね。

    ■ネット発のインフルエンサーは、マスメディアに出られるのか?

    --それでは続いてのテーマ「マスモデルじゃなくてコミュニティモデル」についてお話できればと思います。

    nettalent3.jpg

    (左より)SENSORS MC落合陽一、齋藤精一

    落合:
    マスメディアは最大公約数的なメディアなので、SNSのようなコミュニティモデルで人気になったタレントをテレビにアサインするには、何かコツがあるのか気になりました。

    というのも、絶対にキャラが合わないと思うからです。テレビでも独自の世界観を発揮したいのに、テレビのご意見番に振る舞いを指摘されたりしたら、きっとその子のファンは怒るはず。出演させること自体が困難に感じます。
    森:
    僕らの中では、「タレントをテレビに出すべきか」という答えはまだ出ていません。本人の希望があればオファーするようにしています。たとえばYouTuberのなかには、テレビに出たいがためにYouTubeで人気を集めている子もいます。そういう子に関しては、その人気をネタに僕らが営業することはあります。
    中川:
    弊社に所属するきゃりーぱみゅぱみゅは、YouTubeで世界中の人が観てくれたことで人気になりました。ただ、テレビに出られるほどの影響力があったわけではありません。それでも、ただ単に「こういう子です」と伝えるのではなく、「こんなことをしていて、こんなことを頑張っていて、性格はこういう子なんですよ」としっかり説明したことにより、マスメディアとコミュニティメディアの垣根を超えられました。今になって思うのは、そうやってしっかりと伝えた上で、なおかつ素質があればテレビに出られるということ。フォロワーの数は絶対条件ではなく、人気がある前提で、なおかつテレビに対応できる才能を持っている子は双方で存在感を発揮すると思います。


    続く「"スマホネイティブ"のインスピレーションで広がるテレビの可能性」では、「テレビ離れ」が叫ばれるティーンにとって今後テレビがどのような存在になっていくのか、ティーンに求められるメディアであり続けるためのアイデアが語られた。
    最後にティーンカルチャーに精通するゲスト二人から、テレビがティーンに求められるメディアであるためにはどうしたら良いのか、また、次世代の起業家へのアドバイスも語られた。

    【ティーンカルチャー--中川悠介×森泰輝対談】
    大人が知らない10代の新常識"ティーン向けマーケティング戦略とは?"
    "スマホネイティブ"の空間共有、恋愛観とは?
    「ネット上で売れるタレント」の素質とは?
    "スマホネイティブ"のインスピレーションで広がるテレビの可能性

    構成:オバラミツフミ

    秋田県湯沢市出身。趣味は商店街を歩くことと喫茶店を巡ること。
    Twitter:@ObaraMitsufumi
    Mail: obaramitsufumi[アット]gmail.com


    編集:長谷川リョー

    SENSORS Senior Editor
    1990年生まれ。修士(東京大学 学際情報学)。
    Twitter:@_ryh
    Mail: ry.h0508[アット]gmail.com

    カメラマン︰松平伊織

最新記事