東大卒プロゲーマー・ときどが語る"職業化する娯楽"の全貌

2018.05.10 10:05

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SENSORSリニューアル後、第一弾となるサロン。歌謡エレクトロユニットSatellite Youngを主宰する草野絵美を新アシスタントに迎え、Season4の収録が行われた。今回のゲストは『東大卒プロゲーマー』として世間から注目度の高い格闘ゲームプロゲーマー・ときど氏。

全5回の第1弾となる今回は、プロゲーマーの働き方についてMCとゲストが意見を交わす様子をお届けする。議論は、落合が投げかけたキーワード「娯楽からプロフェッショナルへ」からスタートした。

かつては"遊び"と認識されていたゲームだが、今では"新しい職業"として注目を浴びている。"職業化する娯楽"の変遷と苦悩を、現役プロゲーマーに聞いた。

まず、プライベートでもゲームをすることが多いという『SENSORS』MCの二人に、今回のテーマ「eSports」をどう捉えているかを尋ねてみた。

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(左より)齋藤精一、落合陽一、草野絵美

--今回のテーマは『eSports』です。お二人はeSportsにはどのような印象をお持ちですか?

齋藤精一
(以下、齋藤):
率直に申し上げますと、日本ではまだあまり普及していない印象です。ここ数年は毎年「eSports元年」と呼ばれていたものの、今ひとつ盛り上がりに欠けていたのではないでしょうか。今年になり日本eSports連盟が設立されるなど、さまざまな動きがみられたため、ようやく本格的な盛り上がりがみられるのではないかと期待しています。
落合陽一
(以下、落合):
2000年くらいだったと記憶していますが、かつてテレビで格闘ゲームの中継を放送していたと思います。おそらくゲームのハードウェアが「スーパーファミコン」か「プレイステーション」だった頃です。

当時とは違い、最近はゲームのグラフィックがかなり綺麗になりました。ハードウェアの変化に伴い、従来とは違うコンテクストが生まれてきたのではないかと考えています。そのコンテクストから、"ゲーム"ではなく"スポーツ"として扱われるようになったのではないでしょうか。

MC二人の期待も高まるなか、今回のゲストであるときど氏を迎えてディスカッションが始まった。ときど氏は東京大学を卒業し、同大学の大学院へと進学したものの、大学院を中退しプロゲーマーの道を選んだ異色の経歴の持ち主だ。

昨年、世界最大級の格闘ゲーム大会「EVO2017」で優勝し、『東大卒プロゲーマー』と名高い。彼は自身のプロゲーマーとしてのキャリアやeSports業界の今後について何を思っているのだろうか。

■ゲーム好きの少年が、世界の頂点に君臨。東京大学卒業の秀才が「ゲームで飯を食う」理由

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ときど氏

最初のトークテーマは「娯楽からプロフェッショナルへ」。ときど氏が劇的な展開で優勝を飾った世界大会の話に始まり、東京大学を卒業後、プロの道を歩むに至った経緯を紐解いていく。

--ときどさんは去年ラスベガスで行われた格闘ゲームの祭典「EVO2017」にて、ストリートファイターⅤ部門で見事優勝されました。大会には約63カ国から6,800人もの選手が出場し、視聴者数が500万人に昇ったとお伺いしています。

ときど:
そんなに多くの方が見ていてくださったのは知りませんでした。ただ昨年か今年からは、アメリカのテレビ局で大会の様子eSportsを放映していただくこともあったんです。プロゲーマーという職業すら確立されていなかった数年前からは、考えられないほど世界大会の規模も大きくなっています。注目度が高まっていると感じますね。
落合:
プロゲーマーの方は、おそらく「純粋にゲームを楽しんでいたら、いつのまにかゲームが仕事になっていた」パターンが多いのではないかと思います。ただ純粋に楽しんでいた時代から、プロとして活動するようになるタイミングをお聞きしたいです。
ときど:
落合さんのおっしゃる通り、僕自身、最初は本当にただ楽しくてゲームをしていました。しかし、ゲームに対する世の中の風当たりはいいものだとは言えません。親からも「いつまでやっているんだ」と怒られてしまうので、誤魔化すために勉強を頑張っていたくらいです。

そうやって日々を過ごしていたとき、あるプレイヤーが「スポンサーをつけ、ゲーム一本で稼いでいく」宣言をしました。僕には、それが許せなかったんですよね。その時はおこがましくも、自分が一番すごいプレイヤーだと思っていたので(笑)。

このまま挑戦をしなければ、すごく不愉快な思いをすると思い、自身もプロの道へチャレンジすることにしました。

--ときどさんは当時大学院生でしたが、研究の道に進む、もしくは就職をするなどの選択肢と悩むことはなかったのですか?

ときど:
本当に悩みました。最後の最後でプロゲーマーになろうと決意できたのは、既にプロゲーマーとして活躍している人の存在があったからです。当時から僕と切磋琢磨していた人たちがプロの道に進み、第一線で死闘を繰り広げている。

その姿を"普通の社会人"としてただ見ているのは、本当にやりきれないだろうなと感じました。「絶対に後悔したくない」という気持ちが、プロの道へ進む決め手になりましたね。

--プロゲーマーになった際、親御さんなど周囲からの反応はどうでしたか?

ときど:
両親は理解を示してくれました。実は親もミュージシャンになりたくて断念した経験があるらしくて。悩みながらも、プロゲーマーに挑戦しようとする僕の決意を理解してくれたのかもしれません。身近なところに理解者がいてくれたのは本当にありがたかったです。

ただ、反対も少なくありませんでした。プロになった当初は「いつまでそんなことやってるの?」と親戚に言われることもありましたね。ただ、こうしてテレビなどのメディアに取り上げられるようになったら「ずっと頑張ってたもんね」と言われるようになりました(笑)。
落合:
いわゆる「手のひら返し」ですね。
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齋藤:
そういうことを経て、世の中にプロとして認められてきたのでしょうね。初めは自分が楽しくやっていたことに、だんだん時代がついてきたというか。

ちなみに、僕も似たようなこと経験したことあります。建築学科を卒業したのに、映像作品を出したり、街をピカピカ光らせたり、「君は一体何をしているんだ?」と。ところが、僕もメディアに取り上げられはじめた途端に「あのとき俺が言った通りだ」とか得意げになります(笑)。
落合:
僕は親が作家なのもあり、「好き放題やってればいい」と自由にさせてくれましたね。ただ単純に、作品に対しての率直な感想をくれます。ただ、妻の親戚からは僕のやっていることは理解されていませんね。
齋藤:
「旦那さんは一体何をやってるんだ」と言われるわけですね(笑)。
落合:
そうですね。「難しそうなことをやってるけど、一ミリもわからない」といった感じだと思います。

■「ゲームが好き」では不十分。娯楽を職業にする"バランス感覚"とは?

ときど:
もともと娯楽だったものを仕事にすると、弊害もあります。娯楽とプロフェッショナルの間には、少なからずギャップがあるのです。昔の僕たちは、勝つことよりも「こういう動きをしてみたら面白いのではないか」と新しい遊び方を見せることが目的でした。しかし時代が変わり、勝利至上主義を求められるようになりました。そのギャップに戸惑うプレイヤーも少なくありません。

--「ゲームが好き」以外にはどのようなタイプの人がプロゲーマーに向いているのでしょうか?

ときど:
バランス感覚がしっかりしている人だと思います。稼ぐ為には、スポンサーなど多くの人を巻き込む必要があるので、ある程度の妥協が必要になってくるんです。

自分がゲームで表現したいことを主軸に置きながらも、好き勝手やるのではなく、スポンサーやファンから求められることを叶える。こういったことができる人に、プロゲーマーは向いていると思います。
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落合:
身体能力は関係ありますか?たとえば、「60フレームの間を見ることができる」とか。
ときど:
動体視力などを考えると、若い方が有利になります。ただ、僕は格闘ゲームは"総合力が問われる戦い"だと思っています。反射神経だけでなく、練習を重ねて得る操作技術も求められる。

また、本当に極限まで追い詰められたときに、ぐっと堪えて一瞬の隙を突き、反撃をする場面が多々あります。そういったシーンに対応するためのメンタルトレーニングも大切だと思っています。

続いてお届けする第2弾記事「プロゲーマーは"ワークアズライフ"な職業。娯楽を職業にしたゲーマーの私生活」では、キーワード「プロゲーマーの日常」から始まり、"eSports"という名称がプロゲーマー生活にもたらした影響やコンピューターを利用したゲーム対戦の是非について議論された。記事の最後にはときど氏のプロとしての熱い想いが語られる。

↓↓↓OAフル尺ver.は下記よりご覧いただけます。↓↓↓

(東大卒プロゲーマー」ときどに、SENSORSで落合陽一が迫る!)

構成:伊集院実穂

Twitter:@iju_miho



編集:オバラミツフミ

1994年生まれ、ライター・編集者。ビジネス領域を中心に、複数媒体で執筆中。
Twitter:@obaramitsufumi

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