プロゲーマーは"ワークアズライフ"な職業。娯楽を職業にしたゲーマーの私生活

2018.05.17 18:20

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SENSORSリニューアル後、第一弾となるサロン。歌謡エレクトロユニットSatellite Youngを始め多岐にわたる活動をする草野絵美を新アシスタントとして迎え、Season4の収録が行われた。ゲストは『東大卒プロゲーマー』として世間から注目度の高い格闘ゲームプロゲーマー・ときど氏。 。

全5回の第2弾となる今回は、キーワード「プロゲーマーの日常」から始まり、"eSports"という名称がプロゲーマー生活にもたらした影響やコンピューターを利用したゲーム対戦の是非について議論された。最後にはときど氏のプロとしての熱い想いが語られる。

プロゲーマー・ときど氏の生活はまさに"ワーク・アズ・ライフ"。日夜ゲームに向き合うその姿は、まさにアスリートであった。

■体を鍛え、稽古に励み、世界を飛び回る。プロゲーマーの"ワークアズライフ"な日常

MC落合が投げかけたテーマ「娯楽からプロフェッショナルへ」に続き、SENSORSアシスタント草野から「プロゲーマーの日常」というキーワードが提案された。

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(左より)ときど氏、齋藤精一、落合陽一、草野絵美

--プロゲーマーさんの日常に関してお聞きしたいです。普段はどのような生活をされているのでしょうか

ときど:
大会シーズンとオフシーズンでそれぞれ違います。僕が主に行う『ストリートファイター』は世界中で大会を開催するんです。なので、シーズン中は世界中飛び回ってます。先週までは30日間連続で海外に行かせてもらいましたね。

逆にオフシーズンは、ずっと練習してます。僕は体を動かさないと集中状態に入れないと思っているので、朝は毎日ジムで体を動かしていますね。ジムから帰ってきた後は、出稽古に行くことも多々あります。
落合陽一
(以下、落合):
出稽古!?出稽古ってどこでやるんですか?
ときど:
最近は「出稽古場所」みたいな練習所が少なくないんです。
齋藤精一
(以下、齋藤):
それはゲームセンターとは違うんですよね?
ときど:
『ストリートファイター』は、ゲームセンターでは扱われなくなってきているんです。だから、みんなで集まって練習するようになりました。そのための拠点が、東京都内だと5〜6箇所あるんです。日時を決めて仲間で集まり、夜まで一緒にいます。

出稽古場所にはおよそ8時間くらい滞在しているのですが、実際にゲームをしているのはそのうちの3時間だけです。ゲームの練習には、想像以上の集中力を要します。僕はゲーマーの中でも比較的年齢が高いので、ぶっ続けで集中状態を維持すると、20分〜30分くらいが限度です。集中状態でプレイに臨めるよう、十分な休憩を取ることを心がけています。
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齋藤:
休憩時は、他のプレーヤーを見てイメージトレーニングをしたりするのでしょうか?たとえば、「こういったシチュエーションなら、僕はこうするな」とか。

僕は若い頃、一時期『グラディウス』をやっていたことがあります。その当時、「この人は一生『グラディウス』をプレイしているんじゃないか」というくらいに熟練のプレイヤーがいたんですね。あまりの熟達さに見てることしかできなかったのですが、それだけでもいいトレーニングになったのを覚えています。
ときど:
イメージトレーニングに近いことをする機会もあります。休憩時間は、休みつつも新しい発想をもらえるチャンスでもあるんです。みんなが集まる場所で練習する魅力でもあります。
落合:
逆に言うと、オンライン対戦で練習はあまりしないですか?
ときど:
オンライン対戦もできなくはないのですが、オンラインになると人の対戦を能動的に見なければならないんですよね。検索して、わざわざその試合を探し出してから見る必要がある。一方オフラインの場では、自然とコミュニケーションが生まれます。プレイを見ていてわからないことがあったらすぐに聞けるので、そういった意味で、オフラインで対戦できる場所があるのはすごくいいことだなと思っています。

■ゲームをスポーツに昇華した『eSports』というブランディング

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さらに、MC齋藤が挙げたキーワード「ゲームというスポーツ」より、"eSports"という名称がもたらしたゲーム業界の変化に話が及んだ。

齋藤:
今までのお話を聞いていて、勝ちにこだわる、集中状態に入ってプレイするなど、プロゲーマーは比較的アスリートに近い印象があります。とはいえ、なぜeSportsは「ゲーム」なのに「スポーツ」と表現されるようになったのでしょうか?
ときど:
個人の感覚ですが、あまりスポーツをやっている感覚はないんですよね。気づいたら"eSports"という名称が付いていただけで。

ずっと昔からやってきたことが、最近スポーツと呼ばれ流ようになり、周囲にもスポーツだと認識されるようになったんです。
齋藤:
"eSports"という言葉が上手にブランドを築き上げましたよね。世界大会がここまで盛り上がるようになったのも、そういった言葉が与える印象が大きい気がします。

"ゲーム"だと子供の教育に良くないといった悪い印象がありますが、"eSports"と表現すれば、全く新しい文脈になります。
ときど:
たしかにそうですね。"eSports"と呼ばれるようになってから、世間からの見方が優しくなったように感じます。僕のおばさんくらいの世代にも受け入れてもらいやすくなった。そういう意味で、"eSports"という概念を作ってもらったことへの感謝はあります。
落合:
ちなみに、カードゲームやボードゲームなどターン制のゲームも"eSports"と呼ぶんですか?時間制限が決まっていて、人間が入力しなければいけないものはスポーツに似ている気がします。
ときど:
そうした類もひっくるめて"eSports"と呼ぶ流れがあると思います。

--ゲームも種類によってはチーム戦だったり戦う長さが違うなど、さまざまなものがありますよね。それもすごく競技に似ています。

落合:
オリンピックでも射撃と100m走は全然キャラクターが違いますもんね。
ときど:
そうですね。eSportsも、それぞれの競技の中に入ったらやはり別物です。僕たちがプレイする格闘ゲームも、ファイティングゲームコミュニティとしての独自の歴史があります。"eSports"という概念はありつつも、そういった独自のカルチャーは理解してもらえるように活動したいですね。

■ドーピングは可能?人間はCOMに勝てる?白熱するeSportsの未来予測

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eSportsをテーマとしたディスカッションが盛り上がるなか、仕事でプログラム開発にも携わるMC落合は、「eSportsでもプログラムを活かせないか」と語り出す。

落合:
僕、実は格ゲーに興味があるんですよ。自分でやるのではなく、うちのパソコンのプログラムに対戦させたいと思っています。今って格ゲーだと、コンピューターと人間が戦ったらどっちが勝ちますか?
ときど:
コンピューターゲームに格ゲーが出てきた当初から、人間はコンピューターに勝てませんでした。コンピューターは人間の反応スピードを優に超えることができてしまうので、ゲームにすらなりません。
落合:
そうなんですね。逆にいうと、コンピューター対人間やコンピューター対コンピューターの戦いを見るのはそんなに面白くないんですか?
ときど:
そうですね。格闘ゲームの面白さは、勝ち負けよりも、それをプレイする人間にあります。「こいつとこいつは今まですごい接戦をしてきた。こいつは他の大会を全て捨て、この日に賭けて練習してきた。さあ、どうなる!」ーーこうした熱いストーリーがあるから、観客が湧くのです。

なので、コンピューター対コンピューターの場合はそういったストーリーが少し見えづらくなるのではないかと思います。コードを書いた人たちの熱い戦いが見えてきたら、もしかしたら面白くなるかもしれませんね。
落合:
なるほど、実現したい。僕は反射が鈍いけど、コードを書くのは早いので、いい戦いができる気がします。
齋藤:
それはアリかもしれないですね。あと、僕のパートナーの真鍋(ライゾマティクス・ 真鍋大度)が「腕の筋肉を動かそうとする際の反応スピードが一番遅く、コンマ3秒ほどある」と言っていました。もし腕の筋肉に電流を流すなどして、感覚をハックすることができれば、スーパーマリオもジャンプがすごく早くなるらしいです。

ライゾマティクスはJINSさんのお手伝いをしていて、集中力を高めるためのセンサーが入った眼鏡を一緒に作っています。いわゆる"ゾーン状態"に入るために必要な要素は、ある程度科学的なことにリンクしていると思うので、ドーピングに近いこともできそうです。

--スポーツだとドーピングが禁止されていますが、eSportsはどうなっているのでしょうか?

ときど:
今の大会はみんなの善意で成り立っているところがあり、そうした規約は無いんです。もともとはゲームが好きな人たちの大会でしたし、ビジネスとして成立してから日も浅いので、「セコい真似はみんなしないよね?」と暗黙の了解で成り立っているのが現状です。

ただ賞金も億単位になってきたり、オリンピック競技の候補に挙げられている状況をみると、今後レギュレーションは厳密にしていかざるを得ないと思います。

■「eSports界のイチローになりたい」ーー現役ナンバーワンにこだわるプロの姿勢

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セッションの終わりに、プロゲーマーとしての今後のビジョンについてときど氏に話してもらった。

ときど:
今僕はあくまでもプレイヤーとして100%やり切りたいので、それ以外のことはあまり考えたくないのが正直なところです。

去年すごく大きな大会で優勝させていただいたのですが、それでも僕は自分自身がナンバーワンだとは思えていません。僕よりももっと存在感や影響力が強い人たちはまだまだたくさんいる。なので、その人たちにどうやって追いつき、追い抜くか。それ以外は頭にありません。本当は人材の育成なども考えるべきなのでしょうが...。

--サッカーのカズ選手や野球のイチロー選手みたいに、「現役にこだわって、なるべく長くプレイヤーでいたい」ということなんですね。

ときど:
そうですね。カズ選手やイチロー選手は本当にサッカーや野球が好きなんだなって思います。肉体的に厳しくなってくるなかでも、現役にこだわって続けている姿を見ると、本当にその競技が好きで、プレーすること自体が目的なんだということが伝わってきます。

コミュニティの育成なども必要なことだとは思っています。けれど、僕が今一番やりたいのは、「ナンバーワン」のプレイヤーになること。そこに向けてしばらくはわがままを言わせていただきたいと思っています。

続いてお届けする第3弾記事「"eSports元年"三度目の正直なるか?ライゾマ齊藤・落合陽一が知恵を絞り出し、再興戦略を語る」では、プロゲーマー・ときど氏に加え、プレーヤー、そして経営者としてeSports業界の発展に寄与するTOPANGA(トパンガ)代表・豊田風祐氏を迎えた。MC二人とゲストが現在までの業界の変遷を辿り、さらなる飛躍を目指したブレインストーミングを行った様子をお届けする。「工場で格ゲーする」「ウォーターボーイズに寄せてドラマを放送する」など、印象的な意見が飛び交った。

↓↓↓OAフル尺ver.は下記よりご覧いただけます。↓↓↓

(東大卒プロゲーマー」ときどに、SENSORSで落合陽一が迫る!)

構成:伊集院実穂

Twitter:@iju_miho



編集:オバラミツフミ

1994年生まれ、ライター・編集者。ビジネス領域を中心に、複数媒体で執筆中。
Twitter:@obaramitsufumi

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