"eSports元年"三度目の正直なるか?ライゾマ齊藤・落合陽一が知恵を絞り出し、再興戦略を語る

2018.05.23 18:00

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SENSORSリニューアル後、第一弾となるサロン。歌謡エレクトロユニットSatellite Youngを主宰する草野絵美を新アシスタントに迎え、Season4の収録が行われた。今回のゲストは『東大卒プロゲーマー』として世間から注目度の高い格闘ゲームプロゲーマー・ときど氏。

全5回の第3弾となる今回は、プロゲーマー・ときど氏に加え、プレーヤー、そして経営者としてeSports業界の発展に寄与するTOPANGA(トパンガ)代表・豊田風祐氏を迎えた。

本記事では、MC二人とゲストが現在までの業界の変遷を辿り、さらなる飛躍を目指したブレインストーミングを行った様子をお届けする。「工場で格ゲーする」「ウォーターボーイズに寄せてドラマを放送する」など、印象的な意見が飛び交った。

今回のセッションより新たに豊田風祐氏をゲストに迎え、eSports業界の動きについて議論が加速していく。豊田氏は、格闘ゲームプレイヤー「にゃん師」としても活躍し、さらに、ロゲーマーのマネジメント及びゲームイベント主催を展開するTOPANGAの代表取締役としても活動している。

"プレイヤー"と"経営者"、異なる二つのレイヤーから業界を見てきた豊田氏と共に、eSportsの未来を見据えたディスカッションが始まった。

■「昇竜拳」がストファイを盛り上げた。業界振興にはロングランのゲームタイトルが必要不可欠

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(左より)豊田風祐氏、ときど氏

--まず、「eSportsの今とこれから」というキーワードについて取り上げていきたいと思います。今年2月、日本を代表する3つのeSports団体が合併し、「日本eSports連盟」が立ち上がりました。連盟設立によってeSports業界にどのような変化が起こると考えられるでしょうか?

豊田風祐
(以下、豊田):
まずは、日本国内におけるeSports業界の、これまでの動向についてお話しします。大きな課題として捉えられていたのは「賞金の捻出」です。スポンサーがお金を出すか、もしくは参加者自身が大会への参加費を募る、といった方法が海外の一般的ですが、この形式は日本だと法律の規制対象だと考えられていました。

そこへ最近、消費者庁が見解を発表しました。大会イベントで賞金を出すことが、法律の規制対象ではなくなるとの解釈が正式に伝えられたのです。連盟設立によって、eSports業界は大きく動き出しました。

先日は、経産省の世耕大臣が国会にて連盟にも言及しながら「国としてeSports活性化を支援していきたい」と発言されました。まさに、国全体がeSports業界を盛り上げようとしています。国からの後押しを得て、今後は日本国内でも高額な賞金を伴う大会開催の実現が可能となると思います。国内でプロゲーマーが活動できる下地が整ってきたのを感じますね。

3年ほど前から"eSports元年"と呼ばれ続けていましたが、今年は3度目の正直として真の"eSports元年"となるのではないかと期待しています。
ときど:
プロゲーマーとして活動している僕も「今年はこれまでとは違うな」と明確に感じます。海外との違いを目の当たりにしてきたので、「ついに日本のeSports業界も動き始めたのか」と感慨深さを感じます。

--海外と日本の間でeSports産業にはどのような違いがありますか?

豊田:
賞金の獲得額が全く違います。たとえばアメリカでは、毎週大会が開催されます。いわば「賞金稼ぎ」ができる世界です。また海外では、スポンサー獲得がしやすい。

家庭用ゲーム機が主流の日本に比べ、海外ではPCゲームが人気です。PCは付属品がたくさんあるため、スポンサーが獲得が容易なんです。格闘ゲームは使う機材が決まっているので、スポンサー対象の企業も範囲が狭い。
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(左より)齋藤精一、落合陽一

落合陽一
(以下、落合):
たしかに、GPU(画像処理特化した演算装置)とかCPU(コンピュータの中心的な処理装置)のスポンサーが付くだけでも、PCゲームにはかなりお金が集まりますよね。格闘ゲームにディープラーニングを活用したら、GPUのスポンサーを獲得できるかもしれません。

--行政以外の動きも活発です。eSports専門学校、芸能事務所eSports部門など新しい機関が次々と立ち上がっています。投資金がeSports業界へ集まってきているのではないでしょうか?

齋藤精一
(以下、齋藤):
eSportsはオリンピック正式種目候補にもピックアップされていますよね。スポーツとして取り扱われる大きな大会が生まれると、アスリートのヒエラルキーを創出できます。

サッカーや野球のように小さなリーグがどんどん生まれ、試合数も増えていくでしょう。かつてゲームセンターで開催されたゲーム大会からゲーマーが輩出されたのと同じように、市場が新たな盛り上がりを迎えるきっかけになるかもしれません。
ときど:
業界全体が盛り上がりを見せているのやはり嬉しいです。しかし、同時に危機感を持っています。何事も中身が伴わなければ、熱はすぐに冷めてしまう。eSports業界の"中身"は、僕たちプレイヤーが貢献すべき領域です。他ジャンルのスポーツ選手と同様に、納得感のある発言ができるプレイヤーが増えると、世間からの信頼を確固たるものにできると思います。
落合:
今後のeSports業界活性化のためには、ロングランのゲームタイトルの存在が必要だと思っています。僕たちがゲームを見て盛り上がれる背景には、ゲームと共に過ごした青春時代があるからです。ストリートファイターも長年の歴史があるから面白い。

いつになっても「昇竜拳」があるから、年齢に関係なく盛り上がれる。世代を越えて愛されるゲームタイトルを増やせるかーー。これが、今後のeSports業界の命運を握っていると思います。

■ゲームのイメージを覆し、魅力を再定義する"ウォーターボーイズ作戦"とは?

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--続いてのテーマ「日本とゲーム」についてディスカッションをお願いします。

齋藤:
日本における「ゲームの立ち位置」の特異性に関心があります。日本では"ゲーム=悪"の考え方が根強いと考えています。一方で、eSportsとして競技になると肯定的に捉えられる。この"ゲーム"と"スポーツ"のギャップが不思議に感じています。

また、"ゲーム=悪"の文化が根付いていたにも関わらず、格闘ゲームなど、多くのゲームは日本発祥です。ゲームの総本山として、eSportsも独自の発展ができるのではないかと思っています。
豊田:
"ゲーム=悪"の考えをすぐに覆すのは、難しいと感じています。もちろんeSportsの誕生によりゲームの印象は徐々に向上しつつあります。しかし、世の中全体に認めてもらうには努力と時間が必要です。

プロゲーマーの活躍が認知される、イベントに来てもらう、など地道な工程を経て、少しずつエンターテイメントとして世間に認められていくことが大事だと思っています。

--海外ドラマの中には、eSportsの部活を題材にしたとした青春物語があります。『ウォーターボーイズ』のように、部活をテーマにしてeSportsを題材にすれば、日本でも流行りそうです。

落合:
流行るでしょうね。ゲームを本気でやってる様子をみると、通常のスポーツの練習と何一つ変わらないですから。しかもゲームは設計上、比較的ゾーン状態に入りやすいと思います。ゾーン状態に入るくらい集中状態に入る経験は、人生においてすごく貴重です。人生の楽しみ方が変わるとさえ思っています。

ゾーン状態を経験し、その経験を言語化しながら技巧を凝らしていくゲームの練習は、まさに健全な文化醸成のプロセスだと思うんです。これは、点数を取ることが目的とされる「日本的な学校教育過程」ではなかなか得られない経験です。なので、なぜゲームが悪として捉えられがちなのか僕はあまり理解できません。
齋藤:
ときどさんがプレイしているストリートファイターは、日本発祥のゲームですよね。日本発祥の柔道は、日本人が勝ちたいと言われることが多いのと同じように、日本発祥のゲームだから勝ちたい、日本人の存在感を強めたいという想いはお持ちですか?
ときど:
やはり「日本のゲームだから勝ちたい」気持ちは強いですね。特に格闘以外のジャンルは海外勢が強いので、せめて格闘ゲーム界は存在感を見せつけられるように頑張りたいと思っています。

■ライゾマティクス齊藤なら「工場で格ゲーする」ーー異業種視点で考える"eSports再興戦略"

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草野絵美

続いて、eSports業界に新しい視点を入れるためMC二人に10分間のブレインストーミングを実施してもらった。テーマは「どうしたらリアルイベントで盛り上がるか」。豊田氏によると、eSportsはオンライン配信と相性が良い一方、リアルイベントに人を集めるのが難しいのだという。その状況を打破するべく、eSports業界とは異なる領域で活躍するMC二人からは次々と斬新なアイデアが寄せられた。

落合:
場所を工夫するのはいい考えですね。あと、"上質なお客さん"をもっと増やす施策があるといいですよね。今のゲームイベントは玄人ばかりが集まるので、素人があまり楽しめないように思います。

ゲームは、見方がわからないと楽しめません。なので、ゲーム鑑賞を楽しむためのレクチャーを1時間くらいしてもらえる場があると良いと思います。そうやってお客さんを素人から玄人に進化させれば、ゲーム文化における非常に大きな資産が生まれるのではないでしょうか。
齋藤:
「対象の人をいかに増やすか」はイベントですごく大事な視点です。たとえば、eSportsの象徴となるアンバサダーを誰かに任命するといいかもしれないですね。

--お二人ともありがとうございました。豊田さん、ときどさんはブレインストーミングを聞いてみた感想はいかがでしたか?

ときど:
短時間でこんなに多くの意見をいただけて驚いています。新しい視点をいただけてありがたいです。特に、落合さんが出してくださった"レクチャーをする"という案が印象に残っています。

ゲームのプレイ方法を教えるのは難しいかもしれないですが、楽しみ方はそこまで苦労なく教えられるのではないかと感じました。ゲームに馴染みのない人に楽しんでもらう必要性は日頃から強く感じているので、早速実践していきたいと思います。
豊田:
"場所を変えてみる"は今までにないアイデアだったので、検討していきたいです。想像以上に色々な場所のアイデアがありそうなので、齋藤さんにお話を聞きつつ、視野を広げた新しい発想を考えてみたくなりました。
齋藤:
特に最近は、従来では借りることが不可能だった場所も貸し出し許可を得られることがあるんです。僕も仕事で狙っている場所がいくつかあります。そういう意味では今がチャンスだと思いますよ。

続いてお届けする第4弾記事「「ときど VS 落合陽一」大人もハマるeSportsの最前線」では、eときど氏、TOPANGA(トパンガ)代表・豊田風祐氏がMC2人と格闘ゲームバトルを繰り広げた様子をお届けする。ハイレベル対決、素人対決、東大対決、社長対決ーー。一瞬たりとも目の離せない、手に汗握るバトルが繰り広げられた。

↓↓↓OAフル尺ver.は下記よりご覧いただけます。↓↓↓

(東大卒プロゲーマー」ときどに、SENSORSで落合陽一が迫る!)

構成:伊集院実穂

Twitter:@iju_miho



編集:オバラミツフミ

1994年生まれ、ライター・編集者。ビジネス領域を中心に、複数媒体で執筆中。
Twitter:@obaramitsufumi

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