"クリエイティブ・カンパニー"と"技術のスペシャリスト集団"が手を組み生まれるものとは?「touch.plus」結成秘話

2016.02.08 10:00

株式会社バスキュールとプログレス・テクノロジーズ株式会社は、「コミュニケーションとテクノロジーの視座から既存のヒト・モノ・コトを拡張し、未来にタッチする」ことを目的に、企業の垣根を超えてスペシャリストが集うプロダクトチーム「touch.plus」を発足。本日2月8日(月)、第一弾のプロダクトとしてiPad Pro 専用ロボット「TABO」が発表された。

この「TABO」は「スクリーンの中だけに関心が向いてしまっている子どもたちのまなざしを現実世界に引き戻すために(プレスリリースより)」開発された、iPad Proの上でタッチスクリーンと連動して動く、手のひらサイズのロボットだ。

今後、エンターテイメントや教育の分野で、仮想と現実をつなげた新しい体験を提供。例えばプログラム学習コンテンツでは、スクリーン内だけの仮想の物体の制御のみならず、この実在のロボットの制御を通じてトライアンドエラーを繰り返すことができる。今後、エンジニアを対象としたハッカソンや、子ども向けコンテンツを用意してワークショップを行ったり、 クラウドファンディングによる販売を予定している。

「TABO」コンセプトムービー

「touch.plus」を結成した、デジタル領域を中心としたインタラクティブ・クリエイティブ・カンパニーであるバスキュールと、ものづくりイノベーションをテーマにしたメカ・エレキ・ソフト分野のエンジニアを抱える技術のスペシャリスト集団であるプログレス・テクノロジーズ。実は両社が出会うきっかけは、実は昨年実施のSENSORSのリアルイベント「SENSORS IGNITION 2015」での出展がきっかけだった。さらに今年2月26日(金)の「SENSORS IGNITION 2016」では「TABO」の実機とデモコンテンツをお披露目予定となっている。

そこで、「SENSORS IGNITION 2015」での出会いから結成に至るまで、「TABO」の可能性、今後の構想など、日本テレビ「SENSORS」プロデューサー 加藤友規を聞き手に、株式会社バスキュール クリエイティブディレクター 馬場鑑平氏とプログレス・テクノロジーズ株式会社 取締役 小西享氏にお話を伺った。

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株式会社バスキュール クリエイティブディレクター 馬場鑑平氏(中)、プログレス・テクノロジーズ株式会社 取締役 小西享氏(右)、日本テレビ「SENSORS」プロデューサー 加藤友規

■"コミュニケーション"サイドと"ハードウェア"サイドの課題意識がシンクロ。結成まで時間はかからなかった

--まずは、チーム結成の経緯について伺えますか?

小西:
僕らはハードウェアサイドのことはよく知っていますが、デジタルコンテンツや、製品やサービスによってどんな「体験価値」を生み出せるか?を広げていくことはあまり得意じゃないんです。そういった「体験価値」を増幅してくれるデジタルな人たちと一緒に何かできるといいなと思っていました。
馬場:
僕らはずっとデジタルコミュニケーションを軸にして、主に企業のプロモーションコンテンツを企画・制作してきました。最初はPC画面から始まって、ガラケー、スマホ、デジタルサイネージと、時代の要求に応じてアウトプット先となるスクリーンを変更してきました。そういったスクリーンの中の進化は技術的連続性があるので対応できていたんです。でもそこから飛び出たものを自分たちでつくるとなると、全然別のノウハウが必要になって手が出せませんでした。

バスキュールの企業風土として、将来的に自分たちがやってみたい領域を、まず自分たちで一度作りきってみる、というものがあります。そのチャレンジがうまくいったら、そこで得たコミュニケーションやテクノロジーのノウハウを武器として、各種案件に転用していく。そうやって自分たちでできることの領域を広げてきました。こういう新しい領域へチャレンジするときは、ノウハウを蓄積しないと意味がないので、基本的に社内スタッフで開発します。でも、これがスクリーンの外とつながるようなものを作るとなると、全然異質の技術が必要になって手が出せない。

「スクリーンの外とつながる」というのは、もはや遅すぎるくらいすぐにやらなければと考えていたのですが、発注・受注という関係ではなく、一緒になって未来を企んでくれるひと、リスクを取って作りきることに付き合ってくれるひとを探していました。
小西:
その思いをお互いにぶつけた時に、「そうですよね」と課題意識がシンクロしたんです。そこからは「お互いそう思っていたならすぐにやるべきなんじゃないか?」と、時間はかかりませんでした。チームとどういう座組をしたらというよりは、何か形にしながら考えませんかという空気が出来ていきました。

--お互いと組むことで、新たに気づいたことはありますか?

小西:
技術の種がそこにあると、その種を様々なアイデアで広げてくれるんですよね。それはやり過ぎって思うくらい(笑)!ユーザーにとっての体験価値を最大化するまでのプロセスは、そういう意味ですごく勉強になっています。
馬場:
つくり方のフローですね。Web、つまりスクリーンの中だと公開してから直せる前提で話すことが多いのですが、ハードウェアだとそうはいかない。時間もよりきっちり進められる印象があるので、そういったフローで生み出すんだと発見がありました。
小西:
ハードウェアを作るのに、後半になってから重要な部分を変更!なんて言われるとエライことになるのですが、デジタル的にスクリーンの中で完結するモデルを作る場合は、だんだんとあっためて後からあれもこれも修正という感じがあって、文化の違いを感じました。でも、具体的に話を進めながら日々すり合わせしていたら、自然とお互いの間合いが見えてきたと思います。
馬場:
まだ具体的にお知らせできないのですが、実は既にいくつかのプロジェクトが走り出しています。この半年くらいで、プログレステクノロジーズさんと出会ったからこそ制作に踏み切れる案件がいくつか生まれました。touch.plusという名前が与えられるよりも先に、機能しているチームができていた、というのが実際のところです。そういったチームが形づくられてきたのであれば世間にこのチームをちゃんと認知してもらい、本気で頑張ったほうがいいのかなと。これがtouch.plusというチーム名が生まれた経緯です。
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--touch.plusのネーミングに込めた思いを教えてください。

馬場:
デジタルのスクリーンから現実の世界に触れたいというか、デジタルの力がリアルにタッチすることで新たな体験価値が生まれる、その拡張された未来にタッチしたい、といった思いを込めています。まあ、プラスについては、ドメインが空いてたというのが一番大きな理由ですが(笑)。

--メンバーは何人くらいいるのでしょうか?

馬場:
このチームで一通り、やりたいと思ったことを全て出来る体制にしたいと思いました。エンジニアも、デザイナーも、映像も作れる人も...と足していくと30名弱になりました。
小西:
これだけのメンバーがいる、という点に我々の本気度を込めています。
馬場:
我々2社が中心になりながらもいつも一緒にやっている仲間である外部のメンバーもいるので、「がっちり課題を受け止めて、やりきれます!」という意思表明だと思ってもらえれば。

--これだけのメンバーがいれば様々な領域にチャレンジ出来そうですが、どんな領域にチャレンジしてみたいですか?

小西:
決めた領域というよりも、すでに存在する製品やサービスで、テクノロジーによって体験価値を上げられるものがまだまだあると思っているので、そういった部分に力を入れて取り組んでいきたいですね。

例えば、お寿司屋さんにテクノロジー(回転、タブレット、自動握り)を入れると回転寿司屋さんになる!というような。テクノロジーによって、さまざまな人の体験価値があがっていくポイントが、たくさんあると思います。
馬場:
僕らが想像できる課題は、様々な業種の現場を知らない分たかが知れていると思っていて、きっといろんな課題はいろんな現場にあるはずです。僕らの知らない世界で、一緒に課題を探すところからお手伝いできたらいいな、と思います。そういう方々とどうやったら出会えるのか、やり方を考えていかないといけないですね。
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"ものづくり"感のあふれる、プログレス・テクノロジーズ株式会社 オフィスにて

■スクリーンと現実を橋渡しできるプロダクト「TABO」

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--第一弾となる「TABO」はどんなプロダクトですか?

馬場:
スクリーンの中でやっていた人間とリアルな場所でやっていた人間が一緒にやる意義として、それぞれを繋げられるものを最初に作りたいなと。タッチスクリーンの上で動くロボットはあまり見たことがないですし、リアルなロボットとスクリーンの中のコンテンツが密に連動しながら新しい体験を作れるのではないかと思い開発しました。

一方で個人的には、自分の子どもがYouTubeなどのスクリーンコンテンツばかり見ていることに「それだけでも良くないな」とも思っていましたし、スクリーンと現実を橋渡しできるものが出来たら素敵だなと思っていました。

以前、コマンドを積み上げていくとものが動かせる「プログラミン」というプログラミングを学べるコンテンツを文部科学省のプロモーションで作ったことがあるのですが、それを現実世界と繋げてみよう、という発想から始まっています。

技術的には、Bluetooth LEという通信規格で「TABO」とiPad Proが通信をしています。それだけだと普通のラジコンと変わらないんですが、底部に3つのタッチポイントを持っていて、常にiPad Proに自分の位置情報を伝えています。 するとiPad Pro側のプログラムが計算上の位置と実際の位置のズレを感知して、リアルタイムに自己補正しながら動く。それによって、スクリーンの中のコンテンツと、現実世界のTABOを完全に同期させることが可能になっています。
小西:
カラーセンサーで色を認識させながらロボットを制御するモデルは昨今よく見受けられますが、「TABO」は色を認識せずに自分の位置と方角を感知出来るので、アプリケーションはより創造的なものが作れるなと。
タブレット上で「TABO」と対戦出来るピンポンゲーム「TABO PONG」デモ

--TABOは、どういったシチュエーションに活きていきそうですか?

馬場:
エンタテインメントの領域はもちろん、教育の現場ですね。プログラミングを学ぶにも、画面の中のモノが動くのと、現実世界のモノ(「TABO」)を実際に動かすのは実感の度合いが違うと思いますので。

とはいえ、「TABO」はまだ、スクリーンのコミュニケーションを拡張する枠組みできた段階で、具体的なコンテンツまでは辿りつけていません。「TABO」のコンテンツは、swift言語で用意しているSDKを使って、誰でも開発できるようになりますが、今回のSENSORS IGNITIONの展示に向けて、「TABO」のポテンシャルが感じられる3つのデモを用意しようと今まさに頑張っています。

一つ目は、「TABO」を現実の遊び相手として捉えられるようなもの。「TABO」と人間が、エアホッケーゲームのようなアプリを一緒になって対戦します(上記の「TABO PONG」)。
2つ目は、ゲームを通じて、プログラミングの概念を楽しく学べる、エデュテイメント系列のもの。
そして3つ目は、ポップユニット□□□(読み:クチロロ)の三浦康嗣さんと一緒に考えている作品的要素の強いもの。□□□の名曲「00:00:00」のトラックに合わせて「TABO」が世界のニュースをいろんな言語で語り続ける、終わらない音楽的作品をもくろんでいます。
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上述の通り、2月26日(金)に虎ノ門ヒルズで開催の「SENSORS IGNITION 2016」展示ブースにてお披露目される「TABO」。まずは会場で、このロボットの持つ可能性を体感してみてはいかがだろうか。

取材・文:市來孝人

SENSORS Managing Editor
PR会社勤務ののち、かねてより旅行でよく訪れていたロサンゼルスに在住。帰国後、福岡やシンガポールのラジオDJ、東京でのMC・ナレーター、ライターとして等の活動を経てメディアプランナーとして活動中。また、タレント・企業トップなど個人に特化したPR・ブランディングにも携わっている。

Twitter:@takato_ichiki
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