漫画・アニメが日本の地方にもたらす魔法とは?「ふらいんぐうぃっち」スタッフインタビュー

2016.06.23 21:15

毎週土曜深夜の「SENSORS」後に放送されている「ふらいんぐうぃっち」というアニメをご存知だろうか?青森県弘前市を舞台に主人公の魔女・木幡真琴が修行を行うアニメだ。漫画をアニメにする際に気をつけていること、実在の舞台を漫画・アニメに登場させる"聖地巡礼"について考えることを講談社 川窪慎太郎氏、VAP 奈良駿介氏、青森放送 佐々木渉氏に伺った。
各局での放送時間等はTVアニメ「ふらいんぐうぃっち」公式サイトにて。

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(C)石塚千尋・講談社/「ふらいんぐうぃっち」製作委員会

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「ふらいんぐうぃっち」スタッフ
講談社 川窪氏(右)、青森放送 佐々木氏(中央)、VAP 奈良氏(左)

■"聖地巡礼"という漫画・アニメの新しい楽しみ方

--「ふらいんぐうぃっち」の原作は講談社「別冊少年マガジン」連載の漫画ですが、"漫画をアニメ化する"際にどのようなプロセスで進めているのか教えてください。

奈良:
原作を読ませていただき、アニメ化して面白そうなものを選びます。ただ、作品によってアニメに向いている要素がバラバラなので、アニメに向いている漫画作品を選ぶ必勝法みたいのは無いです。ただ、時勢的な流れを意識することがあります。「ふらいんぐうぃっち」はゆるいアニメが好きな方に好んでみて頂いている作品だと思います。

--原作者の石塚千尋氏が青森県在住ということもありますが、アニメの中に青森県弘前市の風景がそのまま出てきています。アニメの舞台になった場所をめぐる「聖地巡礼」というトレンドがあるなかで、アニメ化する際にも「青森県弘前市」を意識されましたか?

佐々木:
アニメの聖地巡礼はここ10年くらいトレンドで、例えば『らき☆すた』で埼玉県の鷹宮神社や『ガールズ&パンツァー』で茨城県大洗に訪れる人が増えた事例などが有名です。 昔は架空の町を舞台にアニメが作られていましたが、今はリアルな所在地と舞台が一緒になるケースが増えてきています。その中で「ふらいんぐうぃっち」は青森が舞台ということで青森の放送局としてアニメ放送を決定させていただきました。

課題として「青森」は知っているけど、行ったことがない人が多いというのがあります。青森県の場所が日本地図のどこに位置するのか知っていても実際に足を踏み入れた人が少ないという課題に対してまずは青森を知ってもらうことが第一歩だと考えております。その意味においても青森・弘前を舞台にしたアニメというのは我々としては一緒に取り組むべきコンテンツだと感じて青森放送も手を挙げて放送しています。
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(C)石塚千尋・講談社/「ふらいんぐうぃっち」製作委員会

--原作の中でも青森・弘前は出てきますが、これは編集方針で決まったことなのでしょうか?

川窪:
いえ、これは原作者の石塚さんから出てきた舞台設定です。ただ「ふらいんぐうぃっち」の前身となる読み切りの時点では弘前は舞台として描かれていませんでした。

編集としてはテーマが「魔女」なので、魔女が本当にこの世界に居るかもしれない、という読者の空想力を大切にするためにはどういう興味要素を入れた方がいいか?というお話はさせていただきました。そのような話を作家と続ける上で、作家の方から実在する場所「青森弘前×魔女」というテーマが出てきました。

そして嬉しいことに、舞台の弘前市は青森県でも一番歴史があり観光にチカラを入れているので、原作漫画のタイミングから観光コンベンションの方が漫画と一緒に弘前を盛り上げたいというリクエストを頂いておりました。その流れはアニメになってからも続いています。

■地方自治体とアニメの関係

--具体的にどのようなコラボレーションが弘前市と行われているのでしょうか?

奈良:
ご当地巡りのための弘前観光マップを作って頂いたり、「ふらいんぐうぃっち」ラッピングバスやバスのアナウンスも主人公の真琴によるものにしていただいていたりします。そして「弘前さくらまつり」や弘南鉄道記念乗車券なども発行していただいています。

夏には弘前四大祭りのひとつ「ねぷたまつり」にて「ふらいんぐうぃっち」キャラクターねぷたコンテストも開催をしていただきます。実はアニメ放送は6月末で終了なのですが、その後も漫画は続きますし、DVD/ブルーレイでファンとつながり続ける上で、弘前のイベントで「ふらいんぐうぃっち」がコラボさせてもらえることはとてもありがたいです。
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(C)石塚千尋・講談社/「ふらいんぐうぃっち」製作委員会

--リアルな場所×魔女というアニメについて、視聴者の反応はいかがでしょうか?

奈良:
ソーシャルメディアなど拝見すると、ゴールデンウィークに「ふらいんぐうぃっち」の聖地弘前に行って来たというコメントがあがっていたり、「弘前さくらまつり」に行きましたというコメントもあったり。ファンの方も楽しんでアニメと弘前観光を楽しまれている様子を拝見し、とても嬉しいですね。
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--聖地巡礼とアニメ・漫画というコンテンツのバランスを取る上で気をつけていることがあれば教えてください。

川窪:
舞台巡りはとても嬉しいことですが、作家も編集部も青森推しを積極的にしていません。原作者石塚千尋先生は、わざとらしくなることを大変気にしており、「自然な感じで漫画・アニメを通して弘前がいいなあと思ってもらいたい」と常に気をつけております。その結果が自然な形で視聴者を弘前に向かわせているのかもしれません。
佐々木:
青森県民の気質としてはあまりぐいぐいしてないというのもありますね(笑)
奈良:
弘前という場所に作品にそぐわない設定は入れていません。大切にしているのは原作が大事にしていることからはみ出さないことです。

■市民権を得た漫画・アニメがビジネスにも進出

--漫画・アニメと地域や企業コラボというのは増えてきていますか?またその理由は何故でしょうか?

川窪:
コラボは確実に増えてきています。「ふらいんぐうぃっち」はもちろん、僕が担当している「進撃の巨人」も民間企業のコラボの話が絶えないですし、官庁や協会からもお声がけを頂くことが多いです。

背景としては、漫画・アニメを見て育った人が大人になりビジネス現場に出てきていることがあります。漫画やアニメが市民権を得ているとも言えるかもしれません。
佐々木:
15年前には漫画・アニメ好き、と人前で言うのが恥ずかしかったですが、今では大人でも深夜アニメを見るのが当たり前です。かつての漫画・アニメを大人が見ることは恥ずかしい、という認識は薄れて来ていると思います。
奈良:
「アニメが一般的になってきている」 と思います。アニメの舞台に惹かれ、実際に訪れてアニメの余韻に浸るという「聖地巡礼」も一般的になってより多くの方が参加する流れになるとよいなと思っています。

--ありがとうございました!

聖地巡礼することによりアニメをいつでも自分が好きな時に楽しめるのは今の時代にあったアニメの楽しみ方かもしれない。 アニメはもちろんDVD/ブルーレイそして原作漫画で世界観を学習した後に、青森県弘前市に足を運ぶのはいかがだろうか?

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(C)石塚千尋・講談社/「ふらいんぐうぃっち」製作委員会

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ライター:西村真里子

SENSORS.jp 編集長
国際基督教大学(ICU)卒。IBMでエンジニア、Adobeにてマーケティングマネージャー、デジタルクリエイティブカンパニー(株)バスキュールにてプロデューサー従事後、2014年に株式会社HEART CATCH設立。 テクノロジー×クリエイティブ×マーケティングを強みにプロデュース業や執筆活動を行う。スタートアップ向けのデザイン&マーケティングアクセラレーションプログラム「HEART CATCH 2015」総合プロデューサー。 http://events.heartcatch.me/

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