3D空間を操る映像作家たちが世界初VR劇場に挑む『VRDG+H』レポート

2016.04.07 09:30

3DCGを宙に浮くように上映。その解像度の高さで存在しないものが存在するかのように錯覚してしまう、ホログラフィック映像を上映できる世界唯一の劇場「DMM VR THEATER」で、国内の映像作家とミュージシャンのコラボレーションイベント『VRDG+H』が好評を博した。国内の映像作家によって開拓された、VRによる映像表現の多様な可能性をイベントを通してレポートする。

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ステージの手前に映像が投影され、今までにない演出が可能な場である

VRDG+H#1 (short version) from BRDG on Vimeo.

『VRDG+H』のアフタームービー(Short Version)。動画を観ても当日の興奮を味わえる。

会場となる横浜駅からすぐにある「DMM VR THEATER」は、「VR THEATER(仮想現実劇場)」と銘打ち、3DCGを立体のように投影できる設備の整った、世界初の常設劇場。立ち見のライヴハウスなどと違って、映画館のように着座して映像作品を楽しむ鑑賞方法で、映画館で使われる3D用のサングラスを掛けずに、映像が立体的に見られる手軽な体験が可能な施設だ。以前にSENSORSで紹介したのを記憶している人もいるだろう。
2015年8月掲載:世界最高峰の演出による"CG映像のみ"の公演 『DMM VR THEATER』が目指すもの

「DMM VR THEATER」では、以前に初回公演コンテンツとして、X JAPANのカリスマミュージシャン、hideのライヴ映像を上映したイベントが行われた。もうこの世にいないhideがVR映像を通してステージ上にいるかのように動きまわる特殊な作品。その表現力を下記の動画で体験して欲しい。ちなみに海外では、ラッパーの2パック、シンガーのマイケル・ジャクソンなどの亡くなったポップスターがホログラフィック映像での復活ライヴを行うスペシャルイベントが過去に行われている。

この劇場がホロフォグラフィックと呼ばれているのは、レーザーで作られたホログラムとは違って「ペッパーズ・ゴースト」という視覚トリックで、ホログラム風に成り立っているから。この劇場の肝であるペッパーズ・ゴーストの仕組みを要約すると、ステージ前方の床から上方に向けて映像を投影。ステージ前に設置された透過ボードに反射した映像を、観客は鑑賞する仕組み。透過ボードに反射した映像がステージ前方の宙に存在するかのように、我々の視覚は認識してしまうというトリックなのだ。

この「ペッパーズ・ゴースト」が生まれたのは、19世紀後半。イギリスの王立科学技術会館の講師であったジョン・ペッパーに由来する。照明と反射させる板ガラスを用いて作られたシンプルなトリックだ。ディズニーランドのアトラクション、ホーンテッド・マンションの幽霊が有名だろう。発案から約150年が経過し、現在の「DMM VR THEATER」では、サイネージ技術の進歩によって解像度など映像のクオリティも格段に上がり、あたかもそこにあるように見えてしまう出来栄えになっている。

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出演者の転換中に表示されて回転する『VRDG+H』のロゴ

さて、今回行われる『VRDG+H』は、映像と音楽による新しい表現を追求したイベント。 サカナクションなどが所属する事務所兼レーベルであるHIP LAND MUSICのクリエーターをプロデュースする新事業と、オーディオビジュアル表現のためのプラットフォームBRDGとのコラボレーションとして行われた。BRDGは、都内で映像中心のイベントを定期的に行い、過去に培ったスキルがVR劇場で発揮されることとなった。

巷ではVRが騒がれているが、ここまで表現にこだわったイベントは他にないゆえ、当日は満席。観客が食い入るように見入ったパフォーマンスを出演順に紹介したい。

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そこにあるかのような彫刻にエフェクトが絡む映像はKeijiro Takahashi作

Keijiro Takahashi x DUB-Russell

二体の女神のギリシャ彫刻が、ステージ上の演奏者の前に浮かび上がる。ヘヴィな電子音と同期しながら、映像のエフェクトが掛かり、音とエフェクトが徐々に過剰になっていく。ありえない角度で女神像が歪むのは、3DCGならではの面白み。終演とともに拍手が自然に湧いた。
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Akihiko Taniguchiの作ったアバターが本人を見つめるワンシーン

Akihiko Taniguchi

3Dスキャンした本人のアバターが、ヴァーチャル空間を散策。ステージ上の本人は、アバターを操作しながら詩の朗読をする、一風変わった演目。日用品やノートパソコンなどリアリティのある3DCGのオブジェクトが、不自然な大きさやシチュエーションでヴァーチャル空間に配置されるシュールな内容。
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wk[es]のクールなテクノに合わせてナンセンスな映像が連発されるDAIMAOU

DAIMAOU x wk[es]

マンガ調のキャラクターや、大仏などの実写の写真、マンガの効果音のタイポグラフィなど、散らかったオブジェクトが音とともに宇宙空間に出ては現れ、その統一感のなさがナンセンスの極みとも言える映像。ソリッドなBGMがスペイシーさを惹き立てた。
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Daihei Shibataが作り上げた精密な世界観がダンス・デュオを演出

Daihei Shibata x FEMM

マネキン・ダンス・デュオFEMMの女性二人組のヴォーカルを映像が演出。映像のテーマもゲーム的な背景や赤一色に統一された設定など曲ごとに変更され、EDMやエレクトロ・ハウスなどアッパーなサウンドが彼女たちのダンスを惹き立ててくれる。演者の手前に歌詞が浮かび上がる演出などを観て、未来のエンターテイメントを感じた。
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HEXPIXELSによる映像によって、音楽機材がリアルタイムで手前に投影

HEXPIXELS x KEIZOmachine!

スクラッチなど即興演奏を中心にしたヒップホップ的な楽曲に、360度カメラRICOH THETAやGoProの映像がリアルタイムで盛り込まれる。CGによる演出と混ざり合い、情報量の多さに圧倒。中盤からゲームのコントローラーを使用して、映像と音がサンプラーのように再生されるパフォーマンスも披露し、拍手とともに終演。
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出演したアーティストごとにコンセプトが異なり、多様な表現を堪能できる数時間であった。CGの表現では、業界の規模感の大きい映画やゲームの見せ方やエフェクトの影響が大きい。今まではディスプレイの枠組みにあったCGが、VR劇場というかつてない場で、新たな視覚表現を創作してくれる可能性を目の当たりにした。次回も期待したい。

取材・文:髙岡謙太郎

ライター / オンラインや雑誌で音楽,カルチャー関連の記事を執筆。共著に『Designing Tumblr』『ダブステップ・ディスクガイド』『ベース・ミュージック ディスクガイド』など。

写真:Satoru Fueki

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