10周年「Yahoo! JAPAN インターネット クリエイティブアワード」に見る、"ネット×クリエイティブ"のトレンド

2016.01.29 12:30

2006年よりスタートし、2015年で10回目を迎えた「Yahoo! JAPAN インターネット クリエイティブアワード」。昨年12月には贈賞式が実施され、一般の部 グランプリには「DANCING PAPER」、企業の部 グランプリには「サンリオピューロランド夏の集客プロモーション『ちゃんりおメーカー』」が選ばれた。

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「Yahoo! JAPAN インターネット クリエイティブアワード」贈賞式の模様 写真提供:Yahoo! JAPAN

主催者であるYahoo! JAPANによると、今回は募集作品を「スマートデバイス」から「マルチデバイス」に広げたことにより、スマートデバイスにとどまらない作品が多く集まり、特に「イノベーション部門」の応募数が飛躍的に伸びたという。また、制作した作品を(ソーシャルでの拡散など)どのように世の中に広めていくか、ということまでを設計した作品が評価されているのも今回の特徴だという。

「Yahoo! JAPAN インターネット クリエイティブアワード」はスタート(2006年)した当初はPCの作品のみが対象。2010年にはスマートフォン部門を追加、2012年にはスマートデバイスに特化したアワードとして生まれ変わり、さらにウェアラブル端末やIoTの作品に対応すべく、今回(2015年)はマルチデバイスでの作品募集となったという歴史を重ねている。実際にここ数年は、インターネットを使用した作品以外に、インターネットを通して広がった作品やソーシャルを使用した作品なども多くみられるようだ。

今回は、一般の部 グランプリ「DANCING PAPER」、企業の部 グランプリ「サンリオピューロランド夏の集客プロモーション『ちゃんりおメーカー』」、そして審査チームの一員 株式会社ワンパク 阿部淳也氏よりそれぞれ振り返りを頂き、2015〜2016年の"インターネット×クリエイティブ"動向を探っていく。

■"インターネットの集合知"に頼りながら、完成することが出来た作品

まずは一般の部 グランプリに輝いた「DANCING PAPER」を手がけた「動いた。」のプログラム担当・ましま氏にコメントを頂いた。

--受賞にあたっての感想を教えて頂けますか?

ましま:
授賞式での審査員の方のコメントでもありましたように、そもそも「DANCING PAPER」はインターネットクリエイティブなのかという疑問が「動いた。」のチーム内でもあったので、グランプリは正直ビックリしました。
そもそも「動いた。」という電子工作チームは、「動くものをつくってみたい」と思ったサラリーマンが集まって週末に電子工作に挑戦し、なんとか動いたものだけを世に発表している集団です。「動いた。」というチーム名ですが、作ってみたけど動かなかった作品や作りたいけど技術力や知識が圧倒的に不足しているせいで作れる気がしない(諦めた)作品の方が多く、しかしその分、動いた時の感動はかなり大きく嬉しいものだったのでそれをそのままチーム名にしました。

そんな僕らなので、本当に動く折り紙なんて作れるのかどうか全く検討がつきませんでしたが、インターネットの電子工作指南動画や掲示板などで知識をつけたり質問したりと、ほぼインターネットの集合知のようなものに頼りながら、なんとかできたわけです。インターネットがなかったら「動いた。」も「DANCING PAPER」が生まれていなかっただろうなと思っています。そういったバックグラウンドも含めて、インターネットの持つ可能性を感じさせる作品だった、というところで評価して頂いたものだと思います。

今回のアワードで「DANCING PAPER」がグランプリを受賞したことが、これから電子工作をはじめる人たちにとって、インターネットの今後にとって、意味のあるものになってくれたら僕たちも嬉しいです。
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「DANCING PAPER」

--制作にあたって、2015年のどのようなトレンドなどを意識しましたか?

ましま:
そもそも「DANCING PAPER」は特にインターネット通信はしていないのでAPIとかVRとかそういった技術トレンドなどは基本的には意識していませんでした。ただ、冬に、上海で作品を展示するということだけが決まっていましたので、どうせ海外で作品展示するなら日本らしいものをつくろうとみんなで決めて、日本の文化と電子工作をかけあわせて「動く折り紙」を作ることになりました。

つくっていく上で意識したことがあるとしたら、とことんアナログにするということです。2000年代初期はなんでもかんでもデジタル化しちゃえ!という波があったかと思いますが、最近はデジタルをアナログっぽくするという、すこし逆行したトレンドを感じています。デジタルの便利さが当たり前になった今、その便利さを継承しつつアナログの安心感に回帰してきているのかなぁと思っています。

「DANCING PAPER」も実はあくまでパッと見はただの折り鶴ですが、仕掛けも何もない折り紙に見せたい、デジタル感をあまり臭わせたくない、ということは常に意識していました。そういった意味では、実はデザインも頑張っている作品なんです。

--今年の構想についても伺えますか?

ましま:
基本的には、自分たちが作りたいものを作る!というスタンスは変わらないと思います。もし、それ以外でチャレンジしてみたいことがあるとすれば、他の電子工作チームや何かの集団など、別の分野のアーティストとかと一緒に何かをつくることで「動いた。」単体では作れないような面白いものを作れたりしたら新鮮で楽しいかも、と思っています。サラリーマンをしながら暇な時間を使って制作をするので牛歩の歩みで成長していく電子工作集団ですが、温かい目で今後の活動も見守って頂ければ幸いです。

■「何があれば利用・拡散するか?」考えた3つのこと

続いて「サンリオピューロランド夏の集客プロモーション『ちゃんりおメーカー』」で企業の部 グランプリを受賞した博報堂 アクティベーション企画局 プロモーションプラニング3部 部長 大久保重伸氏のコメントをお届けする。

--受賞にあたり、評価されたと感じているポイントを教えて頂けますか?

大久保:
このコンテンツは、サンリオのような"カワイイ"ものが好きな多くの女性の間で広まって欲しいと思い開発したのですが、実際に自分そっくりの「ちゃんりお」を作った方々がLINEやFacebookのアイコンに利用し、それを見た友達もどんどんと利用し始め...と、ソーシャルメディアでの話題の拡散を肌で実感しました。このような、インターネット上での目に見える"話題化"があった事、そして、この「ちゃんりお」がピューロランドに行けば踊ったりグッズになるというO2Oの仕組みを備えていた事も、評価していただいたポイントだと思います。

--制作にあたって、2015年のどのようなトレンドなどを意識しましたか?

大久保:
20代・30代女性をターゲットにしていたので、スマートフォンでの利用、そしてソーシャルメディアで拡散される事を念頭に設計しました。なので、従来のTVCMを利用したマス広告という手もありましたが、今回はデジタルメディアとコンテンツ開発に特化しました。特に2015年は、LINEなどのメッセージングアプリが主流になっていたので、FacebookやTwitter含めて何があれば利用・拡散するか?を意識しました。

その中でさらに意識したことは3つあります。
①【アイコン化】:各ソーシャルメディアに共通するのは、各投稿やツイートには必ず自分のアイコンが付いてくる事。このアイコンを拡散のベースに出来ないか?という事です。
②【自分ごと化】:しかし、自分のアイコンを企業宣伝用に変えてくれることはまず無い。その上ソーシャル上で色々な情報・コンテンツが増える中、なかなかきちんと利用・拡散してくれること自体が希少になっています。そこで「自分がキャラクターに変身できる」というジェネレーター機能により自分ごと化を促進し、人に見せたくなる(評価してもらいたくなる)アウトプットで拡散に繋げました。
③【ソーシャルネタ化】:このジェネレーターがあれば、自分以外の有名人やタレントを変身させる事が可能です。なので、ネットで話題になりやすい「○○をサンリオキャラにしてみた」というネタが発生できるようにし、バズ化・まとめ化も狙っていました。

--今後の展開については、どのようにお考えでしょうか?

大久保:
インバウンドによる観光客が増大する日本では、サンリオのような"KAWAII"文化も注目されています。「ちゃんりお」も、このような"KAWAII"文化発信の一つとして、さらに活躍の舞台を広げたいと思います。そして、世の中の女性(そして男性も)が、"KAWAII"を実感し行動してくれるような、新たなデジタルアクティベーション企画を生み出していきたいと思います。

■20年の間にインターネットは"コミュニケーションのためのインフラ"に

さらに、審査員の一人である株式会社ワンパク 阿部淳也氏に、一般の部・企業の部各グランプリ選定の理由について伺うことが出来た。

阿部:
審査の前提として、昨年は「Yahoo! JAPAN インターネット クリエイティブアワード」が10度目の開催、インターネットが普及するきっかけとなったWindows95が発売されてちょうど20年でした。その間にインターネットは電気やガス、水道などと同様にコミュニケーションのためのインフラとなり、Webを使ってのコミュニケーションもコモディティ化しつつあるという背景がありました。

一般の部 グランプリ「DANCING PAPER」は、実はこの作品の中では何一つインターネットは使用していないんですよね(笑)。そのため、審査員一同の中でもこれをグランプリにすることにかなり悩みました。最終的には、作品の中で登場する足の付いた折り鶴がインターネットの文脈の中で生まれたこと、作品自体がインターネットの中で評価されたことを理由にグランプリとしました。そして何よりクリエイターの皆さんに、このようなクオリティの作品をつくり続けて欲しい、個人でも頑張れば、アワードが取れるんだ!という勇気になってもらえればという想いもありました。

企業の部 グランプリ「サンリオピューロランド夏の集客プロモーション『ちゃんりおメーカー』」に関してですが、もちろんサンリオのキャラクターの強さというものもありましたが、公開から1週間で350万体、贈賞式の段階で2,000万体の"ちゃんりお"が作成され、マスメディアにも劣らない、圧倒的なSNSの波及力を実感できた点(前述したインターネットが社会インフラとなったことを実感できた)、作成した"ちゃんりお"はサンリオピューロランド内でのアトラクションやグッズに登場するなど、リアルな体験につながっていた点が大きかったと思います。
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「Yahoo! JAPAN インターネット クリエイティブアワード」での株式会社ワンパク 阿部淳也氏 写真提供:Yahoo! JAPAN

グランプリ受賞作はインターネットの文脈の中で生まれた作品(「DANCING PAPER」)、インターネットを通してマスメディアにも劣らない波及力を持った事例(「ちゃんりおメーカー」)と、いわば画面上でのクリエイティブに留まらない、うまく"インターネットが普及した環境を活用した"事例と言えそうだ。最後に、阿部氏に伺った昨年の動向〜今年の展望をお届けする。

阿部:
2015年はやはり、インターネットが様々なモノ(車・家・家電製品など)とつながり、ブラウザやアプリの世界だけでは、もはや語れなくなってきたということが、これまで以上に実感できた年だったと思います。この流れは今後も加速していくでしょうし、IoTという言葉自体も、もはや当たり前になっていきます。そうなると、インターネットに関わるクリエイター達のデザイニングやエンジニアリングの領域が広がり、ますます活躍できる場も増えていくのではないでしょうか。その分、大変にもなっていきますが(笑)。そんなワクワクする時代が到来した訳ですから、クリエイターの皆さんはどんどんチャレンジし、日本のクリエイティブを世界に発信していきましょう!

構成:市來孝人

SENSORS Managing Editor
PR会社勤務ののち、かねてより旅行でよく訪れていたロサンゼルスに在住。帰国後、福岡やシンガポールのラジオDJ、東京でのMC・ナレーター、ライターとして等の活動を経てメディアプランナーとして活動中。また、タレント・企業トップなど個人に特化したPR・ブランディングにも携わっている。

Twitter:@takato_ichiki
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