「バラエティ番組は人工知能でより面白くなる」 メディアアーティスト落合陽一が語るテレビの未来

2016.12.17 13:00

52年目を迎えた『Inter BEE』国際放送機器展が、新しいメディア、ライブエンターテイメントの可能性をさぐるべくSENSORSも協力し実施された 『Inter BEE IGNITION』。 そのイベント内のメディアセッションに落合陽一氏が登壇。 メディアアーティストであり筑波大学の助教である落合陽一氏に、 テクノロジー、教育、そして『テレビの未来について』掘下げた。 当記事では、セッションにて落合氏が語った発言を中心に紹介していく。

※当記事で紹介している内容は、12/18(日)2:05~放送SENSORS OA『現代の魔法使い 落合陽一が語る「テレビ放送の未来」』でも紹介する。

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今年初開催の『Inter BEE IGNITION』のSENSORSセッション枠でメディアアーティスト落合陽一氏にテレビの未来を語ってもらった。

Inter BEEは放送機器展という性格上、4K、8Kなどの未来の放送フォーマット関連機器やソリューションが多く展示されている。放送業界の外の人間から見ると自分に関係無い技術やソリューションばかりが展示されていると思いがちだが、このような技術やソリューション企業から落合氏率いる筑波大学デジタルネイチャーグループに共同開発の依頼が来る事が多いという。

■企業技術とメディアアート作品

--CGの国際会議『シーグラフ』や世界最大級のメディアアートの祭典『アルスエレクトロニカ』など、落合さんの筑波大デジタルネイチャーグループは積極的に国内外でメディアアート作品を展示されていますが、その作品づくりに企業が関わることがあるのでしょうか?

落合:
企業から共同研究を持ちかけられるケースは多いです。我々のデジタルネイチャーグループでは企業との共同研究に重きをおいており、なるべく実世界のプロジェクトをメディアアート作品に組み込み、対応性を増やすことを目指しています。

私自身が大学に所属していてリサーチやプロトタイプづくりが得意なのと、個人としてはスタートアップやアーティスト活動もしていてマーケットに近い。アカデミアとマーケットを理解しているからこそ企業のニーズにも答えやすく、企業の技術をメディアアートとして顕在化させることもあれば、論文として学会に発表することもあります。

しかも非常に早いサイクルでアウトプットを出すので、そのスピード感も特徴かもしれません。

--Inter BEEの会場内で魅力を感じた放送関連技術はありましたか?

落合:
4K、8Kディスプレイとドローンです。 8Kディスプレイはもっと使い道があると考えており興味があります。

具体的に言うと"窓"として使えるのではないか?と考えています。 今年9月の『アルスエレクトロニカ』にて8Kディスプレイの特集展示があったのですが、ある作品がベトナムの風景を8K映像で映し出していたんです。その風景が完全に"窓"で。窓の外からベトナムを見ている錯覚に陥ったんです。その時の感覚がすごくて、8Kディスプレイがあれば窓が無い部屋でも暮らせるかもしれないと感じました。そして、8Kを窓として考えると、リモートに居る人間を映し出すだけで臨場感あるコミュニケーションが出来るようになります。

いままで我々は何かを集中して見る際に、足りない解像度を補って見てきたんですが、8Kだと高精細なので集中しなくても見ることができ、ディスプレイ内の人を認識する意味が変わります。
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『Inter BEE』放送機器展の最新放送技術をセッション登壇前に見てまわる落合陽一氏

■テレビの未来:バラエティ番組は人工知能でより面白くなる

--落合さんはバラエティから情報番組まで、様々なテレビ出演に出演していますし、メディアの研究もされている。その双方の立場から見て今後のテレビはどうなるとお考えですか?

落合:
よくテレビとTwitterの連動番組などありますが、テレビの伝播力とTwitterのコミュニケーション能力は釣り合っていません。例えば100万人が見ているテレビで100万人がツイートし、テレビが100万人にリプライを返すとします。そうすると、Twitterのタイムライン上はテレビ側のリプライ100万件で埋まってしまい、コミュニケーションとして成立しません。リプライを返す側が機械で自動化した場合、ミリ秒で返すことができますが、視聴者(Twitterユーザー)からすると100万個遡るのには時間がかかり、面倒になります。人間としては100万回しゃべるものが同じレイヤーにいると凄く不利益を被るんですよ。発言が見えなくなってしまうので。

そこが今後、個別のコミュニケーションに変わっていくこととか、人工知能のレイヤーがもっとテレビ制作側に入ることで進歩するんではないかと考えています。

現在のSNSはテレビみたいに一対他のコミュニケーションを前提とした場ではないんですよね。YouTubeのコメントをみても一対一のコミュニケーションで僕らがテレビの制作者と会話するものではなくて井戸端会議をするためのコミュニケーションだというのがわかります。つまりTwitterもYouTubeもテレビで利用できるメディアではなく、新たなコミュニケーションツールが必要になります。

キーは人工知能だと思っていて、100万人の意見を瞬時にサマリーして返しモニターに表示し、番組内容に組み込むようにすれば良いのではないか?と。
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『Inter BEE IGNITION』メディアセッションでテレビについて語る落合陽一氏(右)

--テレビの未来はよりインタラクティブになるべきだ、というお考えなんですね。

落合:
テレビはインタラクティブであった方が絶対に面白いです。人工知能が100万人の視聴者の意見を瞬時に判断し、ひな壇芸人に視聴者の声を届け、その声に対してリアルタイムに突っ込む、ボケる、など。初音ミクのような存在が視聴者の意見を集約して、演者として他の出演者にコメントをする、という形式でも良いと思います。

私自身がひな壇芸人となる立場でもあるのでいいますと、現在では演者の意見が偏らないような役割分担を脚本家が考え、演者もあらかじめ"事前合意した上"でリアルタイムに番組を進行していますが、時代が進むとお茶の間で何が起こっているのか人工知能がリアルタイムに判断し、スタジオに返す番組が出来ると考えています。そういう、状況を拾いとるために一個の番組から1,000万人の人たちの接続パスを作っていくのが大事になるのではないでしょうか?
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「バラエティ番組は人工知能でより面白くなる」と語る落合陽一氏

--バラエティ番組以外にも、技術の進歩により面白くなる番組はありますか?

落合:
映像技術とかが入っていくことで、スポーツ中継とか世界遺産の番組が面白くなると思います。希少価値の高いものを紹介する番組はVRや自由視点カメラが入っていくことで変わっていくのではないでしょうか?フォーカスしたいポイントを視聴者/ユーザーが選択できたり、インターネット放送が解禁になると追加コンテンツをVRでダウンロードしてそこを収益源にする方法もあるだろうし、オフショットで撮りためたものも収益化できそうですよね。

■演者の一部を集合知(=人工知能)とする

--そういう時代に向けてテレビ業界、ネット業界の方はどういうスキルを養うべきなんでしょうか?

落合:
人工知能について熟知している人間を番組編成会議に入れて、演者二人分ぐらいのシナリオを作らせてしまうことはいまからでも出来ますよね。一人の人間が考えて作っていたところを一つだけ集合知に任せてみるとか。

そして徐々にリアルタイムのお茶の間や世の中の状況を番組内に取り込める仕組みを作っていくのが良いと思います。 インタラクティブ性が増すとテレビはどんどん面白くなると思います。

--落合さんのお話を聞いていると集合知を貯めるために積極的に番組に参加したくなります。本日はどうもありがとうございました。

落合氏の話を聞いているとテレビ業界に対するテクノロジーの浸透はハードウェアだけではなく、ソフトウェア側にも必要であると感じる。来年の Inter BEE IGNITIONではテレビのソフトウェアである脚本を作る上での人工知能やテクノロジーの利用方法についてセッションが増えるのも面白いと考える。そのディスカッションが大きなテレビとネットの融合ビジネスにも貢献していくことだろう。

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ライター:西村真里子

SENSORS.jp 編集長 国際基督教大学(ICU)卒。エンジニアとしてキャリアをスタートし、その後外資系企業のフィールドマーケティングマネージャー、デジタルクリエイティブ会社のプロデューサーを経て2014年株式会社HEART CATCH設立。 テクノロジー×デザイン×マーケティングを強みにプロデュース業や編集、ベンチャー向けのメンターを行う。Mistletoe株式会社フェロー。

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