ご当地施策からリハビリまで、「ゆるスポーツ」が持つコンテンツとしての可能性〜代表・澤田智洋に聞く

2016.02.15 08:30

2015年の「世界ゆるスポーツ協会」設立以来、そのキャッチーなネーミングやテクノロジーを利用した競技性、老若男女誰もが楽しめるという幅広いターゲット設定が話題を集め、今や日本スポーツ界の"新たな一ジャンル"としてのポジションを確立しつつある「ゆるスポーツ」。2020年のオリンピック・パラリンピック開催を間近に控えた今、「ゆるスポーツ」は日々いかに人々のスポーツ観を変化させ、スポーツを通じてどんな社会を描いていくのか。発起人であり、世界ゆるスポーツ協会代表を務める澤田智洋氏に話を聞いた。

前回記事:テクノロジーで"パワーダウン"させ、スポーツの新たな楽しみ方を訴求「ゆるスポーツ」〜代表・澤田智洋に聞くでは、ゆるスポーツ誕生の背景、そしてテクノロジーによって実現する老若男女がプレイヤーとなるゆるスポーツの仕組みと魅力に迫った。

今回フォーカスするのは澤田氏の描く、ゆるスポーツの未来像。着々と認知を広め、大きな話題を生んでいるゆるスポーツ。スポーツ界の転換期となる2020年に向け、彼らが目論むこととは。

■「スポーツ」の固定概念を捨て、社会の課題解決を助けたい

「ゆるスポーツは、何かを終わらせるためのもの」と語る澤田氏。様々な分野が技術発展などにより、日々何かを生み出すことに注力している中で、澤田氏は生み出したその結果として、どんな問題が解決したか・終わったかを重要視しているという。

--ゆるスポーツの開発を通して挑戦していきたいことは何ですか?

澤田:
スポーツの概念の解体です。例えばお年寄りの方のためのスポーツを、3つの症状に効く「薬」として捉えようという考えがあります。1つがフィジカルな症状で、腰が痛いとか身体が固いとか。2つがメンタルな症状で、少し鬱っぽいとか。3つ目がソーシャルな症状で、社会から孤立しているとか。スポーツをこの3つの症状を解決できる「薬」だと捉え直して、スポーツを処方し、リハビリの代わりに使ってもらう。その結果、リハビリと思わずに楽しくやれるので、結果的には身体が元気になりますよね。
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--高齢者の方に向けたスポーツとは具体的にどんなものですか?

澤田:
例えば「打ち投げ花火」というものを開発しています。これは風船を天井に向かって投げ天井の的に当てるもので、うまく当たるとデジタルな花火が上がるという仕組みです。リハビリなどで腕を上下に振る動きがあるんですが、この動きを知らず知らずのうちにスポーツで楽しく出来るものにしました。また、「花火」というのもお年寄りの方の原体験として濃く残っているもので、ただ今は今施設などにいて、花火会場は混んでいるし、なかなか行けない。そんなニーズも組んで「打ち投げ花火」というものを開発しました。

澤田氏が解決できるという課題の視野は実に広い。例えば、この高齢者問題を解決すると同時に、「介護士不足問題」をも解決できると語る。高齢者がゆるスポーツでリハビリを行うことで、現在介護士がリハビリ補助に充てている時間を削減できるというのだ。

--ご高齢の方向けの他には、どういった"解体"の方法がありますか?

澤田:
例えば企業目線で言うと、企業の課題を解決するようなマーケティングツールとして、スポーツを活用しています。日本企業は、優れた技術を持ってはいるものの、上手くマーケティングやPRがされず、グローバル市場で苦戦しているケースが散見されます。そこで企業のそういった技術を活かして、僕らがスポーツを作ることで、子どもからお年寄りまでがその技術を体感できる機会をつくれるんです。現在既に10社程と話を進めています。

■「温泉卓球に続け」温泉地のコンテンツとなるスポーツの可能性

--他にはどういった解体に挑戦をしていこうと思われますか?

澤田:
現在協会側に、地方自治体や地方メディアの方などからも地元の良さを活かした、ご当地ゆるスポーツの作成依頼が来ています。その地元にしかないものを使った、地元でしかできないものだと地域のPRにもなるし、そのスポーツ目的でそこに行く人が出るかもしれない。スポーツが観光資源になっていって、観光情報誌とかで見開きとかに"ご当地ゆるスポーツ特集"みたいなものが組まれたらいいですよね。

--現在取り組まれているものはありますか?

澤田:
「エレクトリック温泉」という、温泉に浸かりながらするスポーツの開発を進めています。100年以上も前に温泉卓球が生まれて以来、温泉地は慢性的なコンテンツ不足に陥っているんです。「なにもないのがいい」という声もありますが、施設によってはその旅館・温泉地ならではのコンテンツを作りたいというオファーがあって。なので、温泉に入りながらやるスポーツはどうかなということで着手しています。

--具体的に温泉に入りながら、どんなことをするんですか?

澤田:
ソフトは色々ありますが、例えばデジタルエアホッケーみたいなもの。どんどんホッケーの球みたいなものが水面に浮いてきて、それを相手のゴールにいれていくものです。
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--癒されに行くのか・スポーツをしに行くのか、温泉の概念さえも変わりそうですね。

澤田:
「温泉=ほっこりする場所」という認識もありながら、むしろそこで汗をかくという矛盾したようなチャレンジをすることによって、温泉の価値をまた再発見したいなと思っています。

--それが地方創生につながっていくとなると、展望がありますよね。

澤田:
日本の地方には、優れたモノ・コトがまだまだ潜んでいるので、それをどんどんスポーツ化していって、「ゆるスポーツグランプリ」として年1回スポーツを披露し合ったり出来ると、日本もすごく健康になるし、いいんじゃないかなと思います。

スポーツの固定概念を捨て、「スポーツ=地域資源」という構図を作る。一見ハードルの高い意味転換に見えるが、テクノロジーそして澤田氏率いるスポーツクリエイターのクリエイティビティが最大限に組み込まれることで、スポーツの再定義を可能にしているのだ。

■2020年、"マイゆるスポーツ"が日本のスポーツ観を変える

前回の記事で、ゆるスポーツが生まれた背景として、2020年東京でのオリンピック・パラリンピック開催も大きな要素だと語った澤田氏。世界がスポーツそして日本へ意識を高める年に、澤田氏が描くゆるスポーツの未来像とは。

--ゆるスポーツの認知が広まっている中で、オリンピック・パラリンピック開催の2020年に向けて、どんな想いがありますか?

澤田:
僕みたいなスポーツ弱者も含めて、スポーツをなかなか自分事化できていない人が日本にはいっぱいいます。ただ2020年に向けては、みんなが自分事化していって、全体的な「チーム・ジャパン」として日本の良さを打ちだしていった方がいいですよね。なので、今後は「スポーツは自分のものだ」と思ってもらう活動をしたいです。無謀かもしれませんが、スポーツを1億個作れないかと考えています。1人1個スポーツを作る時代、自分のスポーツを持つ時代です。そうなると自分が作ったスポーツをみんなでやることで、自分事化されるかなと。
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世界ゆるスポーツ協会代表 澤田智洋氏

--みんなが"マイゆるスポーツ"みたいなものを持っている日が来るかもしれませんね。

澤田:
みんながスポーツプレイヤーになる、みんながスポーツクリエイターになる、という2つの目線を多くの人に付与できないかなと奮闘しているところです。

--最後に、ゆるスポーツにとって「テクノロジー」とは?

澤田:
スポーツの可能性を広げるものです。例えばお年寄り向けのスポーツで言うと、仮に全身動かなかったとしても音声認識みたいなものを使って、声を発したり表情筋を使ってスポーツやることもできますし。スポーツを諦める人がどんどんいなくなってくるんじゃないかと思います。ただテクノロジーもあくまで手段のひとつなので、本当にテクノロジーが必要か自問自答して、1つのツールとして使っていきたいです。

以上2回に渡って、ゆるスポーツの魅力とその可能性について特集した。テクノロジーとクリエイティビティをスポーツに組み込むことで、より多くの人へスポーツの入り口を広げるだけでなく、「スポーツ」の固定概念を取っ払うことで社会課題をも解決するゆるスポーツ。

今後その"ゆるさ"を武器に、いかにしてプレイヤー、スポーツそして社会を変化させていくのか、目が離せない。

文:長谷川輝波

フリーライター、慶應義塾大学法学部4年在籍。高校時代はファッションデザイナーを志し、大学入学後はサロンモデルやファッションライターとしての活動を経験。現在は複数企業・協会でのライター・マーケティングに携わる。大学ではサービスプランニングを専攻。https://www.facebook.com/kinami.hasegawa

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