クリエーティブ・テクノロジスト 電通・菅野氏が語る"データ"がクリエイティブにもたらす変化とは 第4回SENSORS SALON トップクリエイターが語るクリエイティブの今と未来への挑戦(5/7)

2015.02.06 23:21

バスキュール・朴正義、チームラボ・猪子寿之、PARTY・伊藤直樹、電通・菅野薫、広告やアート、エンターテイメントを牽引するトップランナー4氏が2014年のクリエイティブを振り返りつつ、2015年、そして未来を展望する。
第4回SENSORS SALON #5/7


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■今年のキーワードに菅野氏が挙げたのは"データ"と"機械学習"


--「◯◯元年」など、2015年のキーワードとして注目しているものがあれば教えて下さい。


菅野:「◯◯元年」とか意識したことないし、あまり興味もないのですが、今好きなモノは"データ"ですね。

あとは機械学習のプロジェクトもたくさんやっているので、そのへんに興味があります。


猪子:機械学習ってどんなプロジェクトやってるんですか?


菅野:たとえば、フェンシングの太田雄貴選手とオリンピック招致のプロジェクトを一番最初にやって映像を作ったのですが、そこから継続的にプロジェクトを続けています。

今は「フェンシング・ヴィジュアライズド」というフェンシングを可視化していくプロジェクトをやっていて、フェンシングって動きが速すぎて、何の技が繰り広げられていて、どちらが勝ったか分かりにくいので、その中で技を同定していきます。

他にもモーションキャプチャを使って、軌跡を描いていくというのをやったのですが、今は選手のフォームの動きを機械学習して、この動きのときはこの技が繰り広げられるっていうのを大量のデータで自動認識できるように集めています。


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伊藤:なぜフェンシングをやることになったんですか?


菅野:元々は、太田選手が「一緒にやろう」と。

軌跡を取るっていうことから、更に進化させて、足の荷重がどれだけかかっているのか、筋肉にかかっている電流"筋電"がどれだけかかっているのかをビジュアライズしました。

あとは、心拍がリアルタイムで分かるようにしたのと、瞳孔をみて、どこに焦点が合っているのかっていうのを両側にカメラを付けて同定しました。
流れとしては2013年の招致活動が9月に終わった後もプロジェクトを継続させ、2014年の6月のカンヌでプレゼンを行い、先日のイベントでは技を同定させるもののデモを行いました。

これはデータ量が集まれば集まるほど精確になっていくので、太田選手はじめ、様々な選手の身体データを集めて、より精度を高めることに努めています。


--リアルタイムのデータ収集の技術そのものが向上しているから可能となっているプロジェクトなのでしょうか。


菅野:というよりも、データがあればあるほど精度は上がってくので、プロジェクトとして育てていくために、やり続けているという感じですね。
フェンシングって当たったら「ピコン」と光るとか色々なテクノロジーが入っているのですが、最終的に太田選手はこれをオリンピックで正式に使いたいみたいなので、成長させるために継続的にプロジェクトを行っています。


--ビッグデータのようなデータが集積されていくと、エンターテイメントや広告にどのような変化がもたらされるとお考えですか。


■"ビッグデータ"の扱いでクリエイティブの真価が問われる


:まさに今テレビが取り組んでいるのは、これまで単純にテレビをみて「面白い」と思っていた気持ちをスマホで参加させたり、ビジュアライズしているんですよね。

今はコンピュータがそこらじゅうにあるので、そこから溢れ出てくるデータをいかに取って、エンターテイメントにするのか。

どのデータを選んで、何をどうするのかのせめぎ合いになっていくんだろうなとは思います。
LINEとかがなかった時代は、存在しなかった気持ちのデータが今は世の中に溢れてて、それをどう集積して、使っていくのかが問われていると思います。
今すでに起こっていることをビジュアライズして面白くするのか、自分達の力でそういう新しいデータを発生させるようなネタを投入するのか、選択肢は色々あると思うんですけど、このあたりにどう仕掛けていくのかがまさにクリエイティブのしどころというか、まさにテクノロジー×クリエイティブなんだと思います。

これが来年のキーワードと捉えています。


■クリエイターが"企業創生"を担う時代


--伊藤さんは来年のキーワードとして捉えられていることなどありますか。


伊藤:先日、商工会議所に呼ばれて北海道に行ったんですよ。

商工会議所の人に「札幌はさすがに元気ですよね?」って聞いたら、超暗い顔して、「全然ダメですよ」みたいな感じで。

商工会議所の会長さんが言ってるくらいなので、地方はアベノミクスの実感がなくて、自民党の地方再生も及んでないっていうことだと思うんですよ。

大企業がこのまま弱っていくのはマズイじゃないですか。

なので、地方創成もやるべきなんですが、僕らのような会社が外から入って、一緒に商品開発を行うっていうニーズも今ものすごくある気がするんですよ。


--企業価値を新しく定義し直してあげるというか、再価値化のような?


伊藤:そこまで言うと図々しい言い方になってしまいますが、そういうことに近いですね。

アメリカの西海岸なんかはスタートアップとかが、Kickstarterでボンボンお金をかけて出るので、そのスピード感に完全に負けています。

このまま僕らが知らん顔して、さっきのフィクションの広告ばかり作り続けていたら、もう態度が紳士じゃないんですよ。

お金をもらって「ウハウハ」言っていられるかもしれませんけど、その行為は嘘なんですよ。

この間もかなり小さい"ウェアラブル・ドローン"の開発にKickstarterで資金集めをしていましたが、そんなのが実装されたら夢のような話で...。


猪子:"ウェアラブル・ドローン"って?


伊藤:腕時計みたいに、シャーッと飛ばす小型の。


猪子:え、飛んで戻ってくるの?


伊藤:そう。


猪子:半端ねえ!(笑)むちゃくちゃ好きなんだけど、どういうシーンで使えるんだろう。


伊藤:デモでやってたのは、山の頂上に登って、上から写真は撮れないわけじゃないですか。これがあれば記念写真が撮れるんですよ。


猪子:たしかに棒より腕時計の方がいいよね。

みんな棒持ってるアレって、あの行為自体はすごくいいんだけど、棒を持ってお出かけするほどテンションは高くないから(笑)

なんかそれがまわり回って、「棒なんて持ってきやがって」みたいな歪んだ人間になってたから、棒自体は良いけど、自分が持ってこれないタイプの人間だから、腕時計だったら救われるね。

ハンパないね。


伊藤:こういうのがKickstarterに集まって、ガンガン出資も得ちゃって、実装されていくと勝てないんですよね。


猪子:ちょっとしたことでも新しいエンターテイメントととして付加価値が上がるっていうことですよね。


■広告の本質的な役割は企業のありのままをクリエイティブで表現すること


--話を少し戻すと、企業をより良くするというか、再価値化みたいなことってある種、広告の課題解決としてありますよね。このあたり、菅野さんはどうお考えですか?


菅野:広告って本来、CM作ったり、ポスター作ったり、そういうものだという長い間に思い込まれたバイアスのようなものがあります。

究極的には伊藤さんがおっしゃられたような企業創生じゃないですけど、企業全体が世の中に出て行くのにあたって、よりよい姿でコミュニケーションができるようにクリエイティブだったりアイデアで手助けできればそれが一番いいわけですよね。

それは別に嘘をつくことでもないし、本質な話として、この人はこういう人だっていう話を正々堂々することなので。
その作り物は何でもいいんですよ。

クライアントにはどういう社会的意義があるのかとか、社会的にどういう存在なのかとかっていう本質的な部分をいじるというか、そこに関わっていきたいと思っています。

クライアントが持っているものをまんま使い、なるべく企業の意志をそのまま自分の能力でエクスパンドできないかと考えているので。

本質的な部分で広告に求められているのってそういうことだと思います。


第4回SENSORS SALONトップクリエイターが語るクリエイティブの今と未来への挑戦(5/7)動画でもご覧いただけます
【メンバー】朴正義(バスキュール)、伊藤直樹(PARTY)、猪子寿之(チームラボ)、菅野薫(電通)



日本の若者の間に兆しが見える"新しい動画コミュニケーション"とは(6/7)に続く


(文・構成 長谷川リョー)
長谷川リョー:
フリーライター。
東京大学大学院学際情報学府在籍。


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