クリエイターの"新しいチームワーク"の行方 第4回SENSORS SALON トップクリエイターが語るクリエイティブの今と未来への挑戦(7/7)

2015.02.16 18:30

バスキュール・朴正義、チームラボ・猪子寿之、PARTY・伊藤直樹、電通・菅野薫、広告やアート、エンターテイメントを牽引するトップランナー4氏が2014年のクリエイティブを振り返りつつ、2015年、そして未来を展望する。
第4回SENSORS SALON #7/7


■トップクリエイターたちが2015年に仕掛けるプロジェクト


--猪子さん、プロジェクトが色々動いているかと思われますが、その中でも特に今年イチオシというものはありますか。


猪子:いまお台場で「チームラボ 踊る!アート展と、学ぶ!未来の遊園地」という大きい展覧会をやっているので、人がたくさん来てくれたらいいなと思っていて、日本科学未来館の最多入場者記録を塗り替えたいと思っています。


IMG_0150_.jpg


--お台場以外で今年、注力したいプロジェクトってありますか?


猪子:"メゾン・エ・オブジェ"というパリで行われるデザインのトレードショーのようなもの、ファッションでいうところのパリコレみたいなものがあって、世界中の新作が一挙に発表される場があるんですよ。

それが2015年で20周年ということで、チームラボで何かをやることになって、エントランスの100坪を使って新作を発表する予定です。

それが直近であるので、ちょっと失敗とかすると殺されるんじゃないかと思ってて...(笑)あとは、万博もやらせていただくので、それも頑張ろうかと。


--朴さんは今年はいかがですか。


:昨年一回目のBAPAをPARTYさんとやらせていただいて、今年も二回目をやるので、そちらを。(BAPAの詳細に関しては「クリエイターを育てる『BAPA』が目指す、「越境できる」人材育成とは?を参照)

もともとあるモノをテクノロジーの力を使ってより価値あるものにしていくという意味では、未知の領域に越境できる人材を輩出することが必要で、そういう人をたくさん作ることがムーブメントというかプロジェクトを作っていくと思うので、今年はぜひそれを進めて行きたいと思っています。

(今回のSALONでBAPAとSENSORSのコラボが決定!


■プログラミングとデザイン両方のスキルはなくていい。まずは出会うことから。


--それはやはりデザインとプログラミングの両方のスキルを持つことが新しい時代へ対応していくことになるんでしょうか。


:将来的にはそういう人材もどんどん出てくると思うんですけど、今この瞬間に「二つのスキルを持て」と言っても、なかなか難しいので、両方のスキルを持つというよりは、二つの世界をちゃんと理解していれば良いと思うんです。

特にそれぞれのエンジニアとかデザイナーが「これをやりたいんだ!」っていうお互いの心の琴線の相互理解があれば遠慮なく意見が言えるというか、「こういったことができるといいよね」とか自信を持って提案できるようになって、反応し合えるような関係になるので。

まずは僕がその現場をPARTYさんと協同して作り、そこで作ったチームで一つのモノを作っていく機会を提供して、キッカケを与えることができれば一番良いかなと思っています。


伊藤:今って人材の取り合いですよね。チームラボに行ってるかもしれないし、カヤックに行ってるかもしれない。


菅野:チームラボにすごい流れてますよね!


猪子:いやいや、僕個人としては採用に関わってないんですよ(笑)
ウチの会社って元々カルトのようなものだったんですよね。

創業期にテクノロジストって名刺にも入ってたけど、当時の社会構造って手を動かす人の地位がすごく低くて...。

でも実際はすごい知的な労働をする人で、本来は人類の頂点だと思うんです。

当時は最も差別されていた領域だったので、ある種被差別組織が立ち上がったような感じでした。
だからホワイトカラー禁止みたいな。

たとえば、経理禁止、法務禁止、人事禁止とか。

創業当時は、エンジニアのように手の動く人以外は全員禁止みたいなカルト的な組織だったんです。

今でこそ時代は変わりましたけど、当時は本当にプログラマーとかCGアニメーターとかの地位って社会の底辺だったんですよね。


--伊藤さんはテクノロジーとデザインは、やはり両方できる人材がいた方が良いとお考えですか?


■"孤高の天才"よりも、チームで超えること


伊藤:美大で教えてるんですけど、みんな絵を描いているんですよね。つまり、プログラミングはやらないんですよ。

そうやって細分化しちゃってるのでしょうがないんですが、「プログラマーっていう人種もいるよ」ってことは分かった方が良いのかなと。

でも僕が教えている美大ではプログラマーの人達は歩いていないので、彼らの生活圏内では出会わないんですね。

だからBAPAでは、彼らを一堂に会してチームにしてあげることで、「いるよ」っていうことを分からせると、少しは興味を持つじゃないですか。

それを通して、美大の子たちはプログラムをかじるかもしれないけど、「出来ない」って音を上げるんですよ。

でもそれでもいいんですよね。そうすると違う作風になってきたりして。本当は両方できる天才が欲しいけど、それは理想で掲げておけばよくて、実際は興味を持つくらいの話なんじゃないですか。


猪子:僕も天才否定派なんですよ。

天才による組織を作りたいとか思っていなくて、専門職が一緒に考えることで、一人の天才を超えれるはずだと思ってる。

天才はいるんだろうけど、そうじゃない方に興味があるので。

普通の人が何かの分野ですごい努力をして、積み上げたもの同士がお互いを尊重し合って、共に働くことによって良い物ができるはずだと思っていたりします。


伊藤:すごい賛成ですね。

でも、ほとんどの学生は一人で作りたいんですよ。

一人で簡単に何かをシェアできる時代で、他者なんかに関与してほしくないんですよね。


:僕なんかは作った作品をアップできるのがキッカケでネットを始めたんですが、今は逆にすぐに出せないとヤダみたいな感じに焦っちゃってるような気がします。

だから、わざわざチームでやるってことに抵抗があるような...。


■日本の個人主義は学校教育に起因するのではないか


猪子:たぶん孤高の天才に憧れているのか、伊藤さんが言うように一人で作ることに慣れすぎているのか、どちらかなんでしょうね。

ただ思うのは、なんやかんやで学校で徹底的に個人主義に教育されているような気がするんですよ。

今の学校って、宿題も個人でやるし、助けたらいけないじゃないですか。

テストも助けを求めたら犯罪者みたいになるし(笑)

それは昔からそうなのかもしれないけど、昔はそれでも外はもうちょっと共同的な遊びとかがあったんだけど、今はスマホとかが面白すぎるので、学校終わった後もずっとスマホいじり続けるんですよ。

挙句の果てには、スマホを使って自分で表現もできるから、より個人主義が強くなっているような気がします。


菅野:マスコミも取り上げるときは、わりと一人の仕事に見せようとしますしね。


猪子:将来的にマスコミはする!すっごいする。


菅野:チームワークの話とかをしても、とりあえずは猪子さんの話をみたいな。


猪子:マスコミはそうかもね。でも海外だとちょっと違うんだよね。

海外だと僕の名前は一切出ない。全部「チームラボ」。

僕らが「チームで創っている」っていうことは明らかに宣言してて、アーティストはチームだと。

世界の中でそれは一応新しくて、逆にそこにすごいフォーカスを当てるんですよ。

日本はたしかに徹底的に個人が天才みたいな構図が好きかもしれないです。


伊藤:僕の言いたいのもそこで、日本は絶対に個人を賞賛するというパラダイムなんですよ。


猪子:さっきも言ったけど、やっぱり教育が個人にすごいフォーカスを当ててるから。


伊藤:だって社会の暗記とかって全部個人の名前じゃないですか。

井伊直弼がどうとか、千利休がどうとか。組織単位で出てくるのって「東インド会社」くらいじゃないですか。


猪子:そうそう。

たしかに本当は明治維新だって、たとえば産業革命が起こるみたいなことが歴史的な事実として...まあそんなことはどうでもいいんだけど(笑)

それは置いておいて、日本のマスコミは"個人の成果"みたいにしすぎですよね。


伊藤:21世紀の教科書ってたとえばSONYが出てきたり、任天堂とかも絶対出てくるじゃないですか。

それを暗記する時代になるんじゃないですか。

今の小学生は個人の名前を覚えさせられるから、その刷り込みがあって個人の偉業が偉いみたいな、僕らだってそうですよね。

だから俺も偉くなりたいみたいな個人の欲求がどうしても出ちゃうからね。


猪子:うん、やっぱり学校も相当変えていかないと、評価が絶対に個人ベースになっちゃうんですよ。

チームのアウトプットをもっと評価したほうが良いですよね。


伊藤:絶対そう。


■新しいチームワークに議論はいらない


猪子:そりゃチームメンバーに依っちゃうから初めは不公平になるかもしれないけど、良いんですよ。

世の中不公平なんだから。
評価を取らすために教育があるんじゃなくて、みんながより良くなるために教育があるわけだから、公平か不公平かより、みんなをどれだけ上げれるかにフォーカスを当てた方がいいわけで。

絶対もっと大幅にチームの最終的なアウトプットに評価を取り入れた方がいい。


伊藤:たとえばプログラマーとかって、議論せずにシェアしてる。

普通チームワークってディスカッションして、コンセンサスを取って、決まったものでみんな動くみたいなのがあるけど、プログラマーは議論せずにチャットやってるでしょ。

「お前ここやるなら、俺はこっちやる」みたいな感じじゃないですか。


猪子:誰が何やっているっていうのは公開されてて、みんな見れるしね。


伊藤:僕はまだ旧世代だから議論しちゃうんだけど、新しいチームワークとかって、議論とかじゃなくて、そっこうでどんどん黙ってチームで分けてやって、バァっと出していかないと、そこのスピード勝負で勝てないから。


猪子:まさにそう!
でも今だとちゃんと議論して、話し合って、一回相互理解して、コンセンサス取って、手を動かしましょう、みたいな空気なんですよ。

アレってめちゃめちゃ良くないんですよね。
議論をどれだけやっても分からないもんね(笑)


菅野:言葉で説明つく企画が通りがちなんですよ。


猪子:そう!よく言うんだけど、「言葉で理解した瞬間それは面白くない」って。

「言葉で面白いと思うものは、絶対に良くないからやめよう」と。

だから本当に言葉で議論して、結果出しちゃいけないんですよね。
違うプロセスを模索していかないといけないですね。


第4回SENSORS SALONトップクリエイターが語るクリエイティブの今と未来への 挑戦(4/7) 動画でもご覧いただけます

【メンバー】朴正義(バスキュール)、伊藤直樹(PARTY)、猪子寿之(チー ムラボ)、菅野薫(電通)


(文・構成 長谷川リョー)
長谷川リョー:
フリーライター。
東京大学大学院学際情報学府在籍。


<関連記事>


■第4回 SENSORS Salon(全7回)


日本の若者の間に兆しが見える"新しい動画コミュニケーション"とは 第4回SENSORS SALON トップクリエイターが語るクリエイティブの今と未来への挑戦(6/7)


クリエーティブ・テクノロジスト 電通・菅野氏が語る"データ"がクリエイティブにもたらす変化とは 第4回SENSORS SALON トップクリエイターが語るクリエイティブの今と未来への挑戦(5/7)


広告/エンタメのコンテンツで進行する"フィクションの二極化" 第4回SENSORS SALON トップクリエイターが語るクリエイティブの今と未来への挑戦(4/7) 


バスキュール・朴正義が予期する次世代の広告コミュニケーション 第4回SENSORS SALON トップクリエイターが語るクリエイティブの今と未来への挑戦(3/7) 

PARTY・伊藤直樹が見据える集団創作(=プロジェクト)の時代 第4回SENSORS SALON トップクリエイターが語るクリエイティブの今と未来への挑戦(2/7)


2014年 チームラボ・猪子寿之、電通・菅野薫が「やられた!」クリエイティブとは? 第4回SENSORS SALON トップクリエイターが語るクリエイティブの今と未来への挑戦(1/7)


■第3回 SENSORS Salon(全5回)


西村真里子&森永真弓&灰色ハイジ&池澤あやか&及川紀子『私がハマった!2014年のデジタルアイテム』《第3回#1》


■第2回 SENSORS Salon(全7回)


ピースオブケイク加藤貞顕が語る「コンテンツビジネスの未来」とは?《第2回#1》


■第1回 SENSORS Salon(全4回)


「広告はダサいすよ」--チームラボ猪子寿之 テレビと広告の未来とは?《第1回#1》

おすすめ記事

最新記事