PARTY・伊藤直樹が見据える集団創作(=プロジェクト)の時代 第4回SENSORS SALON トップクリエイターが語るクリエイティブの今と未来への挑戦(2/7)

2015.01.10 16:13

バスキュール・朴正義、チームラボ・猪子寿之、PARTY・伊藤直樹、電通・菅野薫、広告やアート、エンターテイメントを牽引するトップランナー4氏が2014年のクリエイティブを振り返りつつ、2015年、そして未来を展望する。
第4回SENSORS SALON #2/7


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PARTY 伊藤氏


■ディズニーのシナリオ製作法にみる真の"集団創作"


--伊藤さん、2014年印象深かったクリエイティブや作品があれば教えて下さい。
伊藤:11月にNHKで放送された『魔法の映画はこうして生まれる~ジョン・ラセターとディズニー・アニメーション~』が非常に面白かったです。

ディズニーの製作の裏側って基本的にブラックボックスじゃないですか。僕らもお互いどうやって作るのかってすごく興味のあるところで。

というのも、「PARTY」ってそもそも集団を表す名前ですよね。政党も、ドラクエの"パーティー"もそうですよね。なので僕らも集団創作の心得を学んで、ノウハウを作りたいと思っているんです。言ってみれば、ディズニーってその権化じゃないですか。超スーパー集団創作集団。


猪子:たしか、ピクサー側が製作のプロセスに突っ込んだんですよね。


伊藤:そう。

ディズニーが一度傾いていたときに、このジョン・ラセターさんが入ったことで、立て直した。それで『アナ雪』が生まれた。だからそういうところって、観る人は映画しか観ないけど、僕らとしては何でこの『アナ雪』が、このディズニーから生まれたんだろうとか、そういう裏側を知りたいんですよね。

この放送を観たところ、わりと製作の方法は近かった。ただ、例えばシナリオにしても集団製作で、何十人でビルドアップしていく。


猪子:11人か12人の分業ですよね。


伊藤:そうそう。

完全に分業で、巨大なポストイットのような紙を全て壁にブァーっと張り付けていく。「これはいらない」「これはちょっと持って行こう」と完全にシステマティックにシナリオを組んでいく。

昔のように一人がホテルに缶詰めになって、脚本を書いているみたいな世界では全くない。こうした現実が実際に『アナ雪』を生んでいるというわけで、これは見習うべきだなということがいっぱいありました。


--そうすると、これからは"個人創造"ではなく、"集団創造"にこそ境地があるというようなお考えですか?
伊藤:僕はもともとワイデン・アンド・ケネディ(Wieden+Kennedy)というナイキのコマーシャルで有名な会社にいたので、集団で創造していく方法については勉強させられていたんです。

勉強というか、まざまざと見せられたというか。「ワイデン・アンド・ケネディ」というのは、ワイデンさんとケネディさんが作った会社なのですけれども、世界中の優秀な人をヘッドハンティングで連れてきて今の会社があるわけで。ワイデンさんに関しては、ほぼ引退されてて。

でもワイデン・アンド・ケネディ自体は、すごく実力のある人が出入りすることで保たれるので、いつまで経ってもナイキのコマーシャルは面白いんですよね。ワイデン・アンド・ケネディという会社も集団創作の権化みたいなところがあって、一つのプロジェクトでコピーライターだけで5人、ヘタすると10人投入したり。アートディレクターも同様に5人、10人とブァーっと寄って集るわけですよ。完全にディズニーと同じで、超細かい分業制。

僕なんか本当は一人でやりたい方なんですよ。でも多分それじゃこの人達には勝てないんですね。PARTYを作った背景にはそういう事情もあるんですね。分業でどこまで勝負できるのか、ここをやっていきたい。


■孤高の天才ではなく、集団による「プロジェクトの時代」


--菅野さんは、この点についてどうお考えですか?
菅野:感覚的に孤高の天才のような個人がのし上げるみたいな時代ではないと思っていて、2015年のキーワードとして、「プロジェクトの時代」と考えていました。


伊藤:一緒!


菅野:一人の天才が作ったポッと出の何かではなくて、何か大きなプロジェクトの上で生まれていくっていう構造なので、"集団創造"のような言い方では捉えていなかったですけど、"チームビルディング"というか、チームの作り方にはすごいテクニックがいると思うし、そこはすごく意識しています。僕も一人でやることは絶対にないです。

広告はそもそもチームでやるものですし、クライアントありきなので、相当チームワークであったり、チームでどうやって、いかにタームを分けて、クオリティを上げるのかということは意識します。


--それでいうと、「チーム」という名前がついているチームラボの猪子さんはいかがでしょうか?
猪子:そうですね(笑)自分としてもそっちの方が良いと思っているし、楽しいんじゃないかなと思うんですよね。

究極的には実験が好きなので、色んな実験をしたいんだけど、自分の知らないような実験を隣の人がしていて、それは自分の知的発見にもなるし、それがグチャグチャしている、ある種チームでありカオスのような、そういう中で文化とか新しいものが生まれてくるようなモノづくりがしたかったんですね。
だから、チームでモノを創る研究所「チームラボ」っていう名前に。


--朴さんはどうですか。
朴:テクノロジーの進化が背景にあるとは思うんですが、やっぱりこれまでは異質なもので存在していたのものが、テクノロジーの力で結合できるというか、コネクトさせて新しいものを生み出すみたいなことができる時代だと思います。

猪子さんがおっしゃっていたシンガポールの「Gardens by the Bay」(1/7を参照)もきっとその裏にはすごいテクノロジーがあると思うんですけど、別物と別物を繋げて一つのすごいモノを創るっていうのが今ならではですよね。


■個人クリエイターに勝つための"集団創造"とは


--伊藤さんご自身がおやりになりたかったようなことが、ある種最高の形で実現できているのがピクサー、ディズニー・アニメーションになるのでしょうか?
伊藤:素人というと失礼なんですが、個人の作り手がすごすぎるので、それはそれの深度があって、それと同じことをやろうと思うと逆に負けるんですよね。

だから個人対個人でやると僕らが勝つこともあるけど、負けることもあって、集団でやったほうが勝率が高いと考えています。
たとえば「360-Grad-Video mit 6 GoPro-Kameras」。

これはドイツの個人が6台のGoProを使って360°撮り続けたもので。ようは地球が球体に見えるという。でも、これって二年間かかったらしいんですね。つまり二年間何をやっていたかというと、色々試しながら、GoProで絵の結合の仕方を編み出したんですよ。たった一人が二年間やってるんですよね。

僕らはそのタームで仕事できないし、一つのことを突き詰められないじゃないですか。だからこういう個人に負けるんですよね。


猪子:カメラで地平線が見えるってことか。ハンパないな...。


伊藤:画がハンパないよね。

でも多分、企画書上でヴィジュアルのイメージがあったわけではなくて、2年間かけて到達したモノだと思うんですよ。
たぶん僕らが夢見るようなマンガで描くような地球を描いて、そこにビルがいっぱいくっついているみたいな夢見る絵とかってあるじゃないですか。

アレがどこかにイメージとしてあったんでしょうけど、それがずっと実現しなかったんでしょうね。それをやってるうちに実装できたということだから、僕らが三ヶ月でやるのは難しいですよね。

"1億総クリエイター"と言われる中にあって、相当な危機感を抱いています。


菅野:そうですね。

個人のクリエイターの1円にもならないのにマジで頑張るみたいな才能の使い方って、すごいクリエイティブなんですよね。

本当に純朴にやりたくて、見たい画があって、やっているので、それとは明らかに違うやり方を創っていかなければと思いつつなかなか...。

いきなりオリエン受けたり、チャンスを頂いて、即アイデアを出さなければいけないケースがわりと多くて、ヘタすると一週間以内に企画書になってないとダメだとか、明日プレゼンだ、みたいなことが多いと、思いついてもアレどうやってやるんだろうとか、自分の中のシミュレーションの範囲を超えているので、本来はアイデアを溜めていきたいんですよね。
やっぱり日常的にテストしたり、思いついたことをやってみたり、プライベート枠でもやってみたりしてるんですけど、そういうR&Dというか、研究活動みたいなものは、個人技としてではなく恒常的にちゃんとやりたいと思っていて。

PARTYはきっとそういうものを意識的にやるために、組織としてチーム化している部分も多分にあると思うんですけど...。


伊藤:そうですね。


菅野:なので一人ひとりがさっきのドイツの方みたいに深く掘っておいて、あるタイミングが来たら、みんなでカチンと一気に仕掛けていくみたいな。
一人ひとりはずっと筋トレしておいて。


伊藤:みんな現業があって、一人ひとりが他の時間に使われちゃって、なかなかできないけど、それができたら理想ですかね。


第4回SENSORS SALONトップクリエイターが語るクリエイティブの今と未来への挑戦(2/7)
動画でもご覧いただけます。



バスキュール・朴正義が予期する次世代の広告コミュニケーション(3/7) に続く


(文・構成 長谷川リョー)
長谷川リョー:
フリーライター。東京大学大学院学際情報学府在籍。


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