広告/エンタメのコンテンツで進行する"フィクションの二極化"第4回SENSORS SALON トップクリエイターが語るクリエイティブの今と未来への挑戦(4/7)

2015.01.29 11:06

バスキュール・朴正義、チームラボ・猪子寿之、PARTY・伊藤直樹、電通・菅野薫、広告やアート、エンターテイメントを牽引するトップランナー4氏が2014年のクリエイティブを振り返りつつ、2015年、そして未来を展望する。
第4回SENSORS SALON #4/7


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■カンヌライオンズ2014・チタニウム部門でグランプリを受賞、国内外で115の賞を獲得した「Sound of Honda」の製作の裏にあった想いとは

--2014年の広告といえば、なんといっても菅野さんが「Sound of HONDA」で、カンヌライオンズ 国際クリエイティブフェスティバルのチタニウム部門のグランプリを獲得したことが大きなニュースでしたね。


:たくさんのトロフィーが全て机に乗っている写真を見ましたが、あれは壮観でした。


菅野:「Sound of HONDA」のプロジェクトで総計115の賞を頂きました。うちグランプリは20個です。


一同:すごいなー!


--このプロジェクトがどのように動いていったのか、"集合知"と"個人技"の観点も織り交ぜながらお話うかがえますか。


菅野:広告賞にはある種の特殊なルールがあります。

スポーツのようなもので、ある選手権大会のようなものなのですが、全ての素晴らしいものを褒めている訳ではないと思うんです。

このプロジェクトでいうと、カンヌでグランプリを獲ろうとは考えていませんでした。

さきほどの中村勇吾さんが手がけられた「UTme!」も、賞を獲得することよりも、みんなが毎日楽しんで使い続けられたり、一瞬の小ネタよりも永続的なサービスを作りたいという想いで作られたと思うんですよ。
「Sound of HONDA」も大きな課題に対してスマートに解決しますみたいな狙いはなくて、純朴にアイルトン・セナの走りを再現したくてやったものなので、それほど戦略性はないというか、ポツッと置いてみたいな感じでしょうか(笑)


■シェアの起点は"フィクション"から"ファクト"へ


--海外の広告賞といえば朴さんも数多く受賞されてるかと思います。

昨今、受け手側の広告に対する受け取り方の変化などは感じますか。


:やはりフィクションよりも、自分に関係の近いファクトに関心が移ってるように感じます。

SALONの第一回で猪子さんがおっしゃられていたように(「広告はダサいすよ」-- チームラボ猪子寿之 テレビと広告の未来とは?)、多くのリアルな情報が溢れすぎて、フィクションの広告の世界はちょっとどうなんだろうと。
最近で言うと、コピーライターの賞を獲ったSHARPの中の人がツイッターのアカウントも持ってて...。

なんというか、作り手のマインドとかも伝わるファクトベースにしたものが、もちろんそれでクオリティも高く保ってというのは大変だとは思うのですが、そういったものの方が受けやすいというか、話題にしやすいと思います。

ベタな話かもしれませんが、今はスマホの時代ということで、シェアされるのはテキストベースなので、たとえばニュース記事になったときに、シェアのしやすさを考えると、フィクションベースの広告はニュースの広告にはなりませんよね。

あの芸能人とこの芸能人がこうしました、みたいな。

それよりも、菅野さんの"Sound of HONDA"含めて「どうやってコレ作ったの?」ってなるようなものの方がニュースとして価値がある気がします。

それがシェアされたものをみることで、広告の送り手とは別のところで、「ああ、これは良いものなんだ」って説得されるというか。
デジタルの場合、最初の接点がどこかを考えたときに、そこに乗っかりやすいのはファクトベースなんだと思います。

たとえフィクションだとしても、「やべえ、こんなところまでやったんだ」みたいなファクトが分かるフィクションの方がいいんじゃないかという気がしますね。


菅野:会社の先輩の高崎卓馬さんが、「Sound of HONDA」を出したときに「映像っていうのは本来、嘘をつくもので、壮大な嘘をつくことによって、本当の話をするっていうふうに思ってずっとやってきたのに、本当の話をやってどうする」ってすごくビックリされてました。

あの工程を全部CGでやったって困らないわけですし、あとでMAでいくら調整してもいいのに、わざわざ6機置いて、鳴らしたのを映像で撮って発表するっていう行為自体にショックを受けたようでした。

またその時に「現場にいた方が良いモノは映像だと劣化するから、映像として成立させるためには嘘をついた方が良いと思っていたのに裏切られた」とおっしゃられていたのをちょっと思い出しました。本当の話をして、映像作品を出すってなかなか厄介なところで...。


(SENSORSでの高崎卓馬氏へのインタビューはコチラ:「クリエイター 高崎卓馬氏が語る未来の広告とエンターテイメント」)

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■人間は本能的に"リアル"求める


--このあたり、猪子さんはどう思われますか?


猪子:フィクションに誰も興味がなくなっちゃったので、リアリティがないと...。

もともと人間はリアルなものに興味があるわけですよ。

でも20世紀はリアルなものがメディアに一つもなかったので、クオリティの高いフィクションにみんな興味があった。

選択肢がそれしかなかったから。

でも気づいたらリアルなものに囲まれていて、「昨日、田中くんソバ食った」とか。


伊藤:どういうこと?(笑)


猪子:いや分かんないけど(笑)

友達の田中くんがソバ食ったっていう情報はリアルじゃないですか。

そのリアルな情報が溢れている中で、本来人間はリアルな方が興味があるわけですよ。

それは本能的にそうなんですね。

そのリアルな情報よりもフィクションに興味があったら、生存できない。

一日中洞窟でおとぎ話ばっかり聞いてたら、狼が来ても、「おとぎ話の方がいいな」みたいになってたら死ぬじゃないですか(笑)

だからリアリティの方が興味あるんですよ。

今までのメディアにはリアリティが一つもなかったから、フィクションの中でも最もクオリティの高いものには興味があったんだけど、今はたまたまリアルなものが溢れちゃったので、相対的にすべてのフィクションは相対的価値が下がったんじゃないですか。


■フィクションは少数の良質なモノとの二極化が起きている


--伊藤さんはどう思われますか。


伊藤:「アナ雪」面白いですよね。

あれフィクションじゃないですか。

だから、ほとんどのフィクションがダメで、良質なフィクションだけが残るっていう極になってて、ほとんどの映画に関しては「二時間返せ」ってなるわけじゃないですか。

でも「アナ雪」までいくと、日本語と字幕版両方観たいと思う。
だから、例えば広告で言うと、"枠"っていうものがすごくクリエイティビティを落としちゃっているところがあるので、そういう中でフィクションをやらなければいけないという舞台が用意されちゃっていますよね。

菅野さんの「Sound of HONDA」なんかは、その枠ではないところでやっているし、課題がないっておっしゃられているけど、まさにそういうところからやられているから、広告の中でもそういうものは羽を生やして飛べているんですよね。


--そうすると、既存の枠組みの中で課題を解決しなければいけない広告だと、その先に飛んでいけないような時代になりつつあるということでしょうか。


伊藤:「私、広告でございます」って言った瞬間、「ああ、ウチは結構です」みたいに(笑)ゴミ扱いされてしまうので、コチラとしても一生懸命そうじゃないっていうことを言おうとして、ご挨拶しますよね。


菅野:本当の話が強いのはやっぱりそういうところですよね。


伊藤:「Sound of HONDA」は広告としてはどのように捉えているんですか。


菅野:わりと広告として考えています。

あまり喩え話にせず、ホンダが持っている資産をホンダのように使いたいというふうに思って。

広告って比較的与えられたお題とかに対して、クライアントを喩えたりとか、違うものをくっつけたりとかしがちなところが多かったりするんですけど、堂々とホンダが持っているデータとか、ホンダの持っている事実とか、ホンダの持っているテクノロジーみたいなものを一番そのままかっこよくストレートにストーリーに見せた方が、嘘じゃなくなるというか。

だからそこは逃げずに一回堂々と向き合うというスタンスで臨みました。

データや事実は使うんですが、本来の使い方と間違えるというか、誤用するやり方を狙っているということですね。


伊藤:人って"ストーリー"っていうと起承転結があってとか、序破急があってとか、映画で言うと三幕構成があってとかになるんだけど、今「ストーリー」っておっしゃられたように、まさに見ている人はそれを感じるわけじゃないですか。

もしかしたら、"ストーリー"というモノの概念が変わってきてるのかもしれませんね。
やっつけの安い小芝居のストーリーを提供されると、「うげっ」ってなるというか、「こんなのいらねえよ」っていう。

そこがフィクションって言ってるところだと思うんですけど、そこに関して飽食の時代というか、お腹いっぱいな感じがしますよね。


■「アナ雪」や「ワンピース」まで突き抜けたフィクションは、"ファンタジー"になる


猪子:さっき伊藤さんが「アナ雪」面白いっていいましたよね。

僕は恥ずかしながらまだ観てないんだけど、観たすぎて買ったけど、まだ観てなくて(笑)

さっき僕が言ってたフィクションって、本物っぽく見せたフィクションのことだと思って、ファンタジーはやっぱり永遠っていう気がして。

僕『ジャンプ』は好きなんですけど、『マガジン』はあんまり好きじゃなくて(笑)


菅野:微妙なところ突きましたね(笑)


猪子:いやいや、『ワンピース』ってもうファンタジーじゃないですか。

だから逆にちゃんとその世界には入り込めるんだけど、たとえば昔の『マガジン』って学校の先生とかが、生徒のために命を張ってたりして、「そんな先生いねえよ」みたいな。

でも、ルフィとかはナミが死んだら、自分も船も沈没しちゃうから、命を張るっていうのはすごいリアリティがある。

設定は現実世界なのにリアリティがないというか、そういう意味でさっき"フィクション"って言いました。
広告って装ってますよね。

たとえば、芸能人が何か持ってて、「いや、お前それ普段持ってないだろ」とか、ちょっと大げさな話なんだけど、「お前、いつもは桃太郎の格好してないだろ」とか(笑)
それが「アナ雪」とかだと完全なファンタジーだから、その世界観に素直に入れるというか。

たとえばアートも同じじゃないですか。アーティストのファンタジーの世界に頭の中だったら入っていけるけど、よくある典型的な広告ってあたかも本当かのように嘘を言うから...。


菅野:さっきの高崎さんの話で言うと、「嘘をつくなら徹底的に嘘をつけ」っていうことですよね。


猪子:いや、なんだろう...。

嘘じゃないんじゃないですか。

おとぎ話というか、ファンタジーというか、その作家の架空の世界じゃないですか。

完全なる架空。アートも一緒。

アーティストの頭の中の架空の世界だし、本当のように嘘をついているのがすごいフィクションっていう。
とりあえず、早く「アナ雪」は観たいですね。



第4回SENSORS SALONトップクリエイターが語るクリエイティブの今と未来への挑戦(4/7)
動画でもご覧いただけます
【メンバー】朴正義(バスキュール)、伊藤直樹(PARTY)、猪子寿之(チームラボ)、菅野薫(電通)



クリエーティブ・テクノロジスト 電通・菅野氏が語る"データ"がクリエイティブにもたらす変化とは(5/7)に続く


(文・構成 長谷川リョー)
長谷川リョー:
フリーライター。
東京大学大学院学際情報学府在籍。


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