「楽器は弾きたいけど、練習はしたくない」 触れずに誰でも簡単に音楽を奏でられる 次世代楽器"KAGURA"とは

2015.01.29 12:56

インテル主催の「Intel® Perceptual Computing Challenge 2013」で全世界16カ国約2,800の作品の中でグランプリを獲得した、しくみデザインの「KAGURA」。RealSense 3Dカメラに対応した全く新しいUIの楽器アプリケーションで、何にも触れずに思い思いの音を奏でることができる。SENSORSブルー岩本乃蒼が実際に「KAGURA」を体験し、代表の中村俊介氏に開発背景を伺った。

「KAGURA」のデモンストレーションをするしくみデザイン代表取締役・中村俊介氏

福岡に拠点を置く「しくみデザイン」はこれまで数多くのインタラクティブ・コンテンツやデジタルサイネージを手がけてきた。
今回取り上げる同社開発の「KAGURA」は2013年にインテルが次世代のUI開発を目的に開催した「Intel® Perceptual Computing Challenge 2013」でグランプリを獲得したものだ。

「KAGURA」のデモムービー

この動画を見て分かるように、演奏者は物理的に何にも触れていない。直感的に身体の動きだけで音楽を奏でている。つまり、老若男女の楽器未経験者が簡単な操作で思いのままに演奏できるということだ。
これを可能にしているのはRealSense Technologyで、カメラは奥行き認識機能を持つためジェスチャーを同定して音が鳴る。

「KAGURA」を実際に体験するSENSORSブルー岩本乃蒼

さらにこのアプリケーションでユニークな点は画面から50cm以内に手を近づけると、手を水の中に入れているかのようなエフェクトが表出することだ。
ここから自分の声や音を取り込んで楽器のパーツに追加したり、テンポの調節を行うことも出来る。

■「楽器は弾きたいけど、練習はしたくない」10年前からあった構想がついに実現したのが"KAGURA"

(左)SENSORSブルー岩本乃蒼 (右)しくみデザイン代表取締役・中村氏

--そもそも「KAGURA」はどうして作ろうと思ったのですか。

中村:
もともと僕は楽器を弾けないんですけど、自分で弾ける楽器で、しかも練習しなくてもいい楽器が欲しかったんです。
こういった思いがあり、「神楽(かぐら)」という作品自体を創り始めたのは10年前でした。ですが当時は技術が追いついていないこともあり、アート作品にとどまっていました。こういった経緯があり、インテルの新しいカメラを用いたコンテストが開催されると聞き、「昔できなかったことが、今だったら実現できるんじゃないか」と思い、最新の技術を使ってもう一度作り直したのが「KAGURA」なんです。

--「KAGURA」という名前の由来はどういったものなのでしょうか。

中村:
お神楽様という、日本各地である神話の天照大御神が隠れてしまったときに、「出てきてよ」っていうふうにした"大騒ぎ"が「神楽」なんですね。それは神話の中では日本で一番古いお祭りであり、音楽であり、踊りでありっていう言い伝えがあって、そういうところから、新しいテクノロジーを使いながら、身体を動かして演奏するっていうことから始めますっていう意味を込めて「KAGURA」という名前にしました。

--「しくみデザイン」では普段どういったものを作られているんでしょうか。

中村:
一番多いのは、街中にある大きい画面にカメラを付けて、前を通りがかった人が何かに変身してたりとか、身体から何かが出たりとかっていう参加するタイプの広告や色んなアトラクションだったり、体感型のゲームですね。カメラを使ったり、距離センサーを使って、身体を動かすゲームを作っています。あとは、SMAPとかTRFのライブツアーに一緒に付いて行って、スクリーンに映す映像を会場にあるカメラを使いながら演出としてやっていて、お客さんを巻き込んだりするので、リアルタイムに映像を処理することによってライブとかコンサートとかを盛り上げるようなことをしています。

■テクノロジーが変わっても、人は変わらない。いかに"楽しい"を引き出すか

--中村さんにとって「テクノロジー」とは?

中村:
道具ですね。何かをしたいときに、テクノロジーがあるからできるという手段です。ただし、人間の感情自体はすごくアナログなものですよね。やった日によって楽しいときもあれば、つまらないときもあるわけで。そういう中で、最も幸福度が高まる方向性でアシストできるものをテクノロジーでやれる範囲でやるというふうに考えています。完結させないことによって、人間側が上手に補完してくれるんですよね。それをうまく引き出すことによって、参加することの楽しさと、何回やっても気持ち良いというのを演出できると良い。ここまでは技術で何とかなるけど、ここからは何ともならないから人間でどうにかする。それが「参加型」ということに集約されています。

僕らがどういう技術を使っているかなんて、参加者(=お客さん)からしたらどうでもいいですよね。技術的に楽しくても、体感的に楽しくないと意味ないと考えているんです。ということは、技術とか表現はそれを一番上手なやり方でアシストするべきで、なのでどちらに偏るでもなく、最適な形でミックスさせること。テクノロジーとアナログを混ぜることによって、最適な体験が作れれば良い。なので、100%テクノロジーこだわることはないですね。

「KAGURA」にしても、人間が音楽をやりたいというのは太古からある根源的な欲求ですよね。それを体現する手段として、何年か前だとギターとかピアノとかが出てきてってことだと思うので、そのうちの流れの一つとして「KAGURA」というものがあって、テクノロジーができたから実現した方法ではあるけど、単なる方法であって、思いとしては気持ちよく音を演奏して、みんなで楽しくなりたいということは変わらないんですよ。

しくみデザイン社内でミーティングをする中村氏とスタッフ

インタラクティブ・コンテンツのパイオニア的存在でもある中村氏がモノづくりを行う上で、常に心がけているのは「簡単で、分かりやすく、楽しいもの」だという。
最先端のテクノロジーを駆使しつつも、技術に傾注することなく、人が楽しむポイントの普遍性を見つめる氏の思いが開発の裏にはあった。

取材・文:長谷川リョー

1990年生まれ。フリーライター。これまで『週刊プレイボーイ』『GQ JAPAN』WEBなどで執筆。「BOSCA」編集長。東京大学大学院学際情報学府在籍。@_ryh

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