スタートアップのコングロマリットを目指す『青二才』集団、電通ブルーとは?

2014.12.12 10:11

最先端の技術を駆使した事業を行う会社が六本木のロアビルに設立された。

その名も「電通ブルー」。従来の電通グループの会社とは違い、自らがスタートアップのように事業を開発していく点が特徴的だ。同社は既にスマートフォンで施錠管理を行うことができるIoT南京錠「246」(ニーヨンロック)をリリースしている。電通グループの中でもある意味"異質"な才覚を持つ代表 吉羽一高(よしば いっこう)氏にブルー設立の経緯や狙いを尋ねてきた。

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電通ブルーが入居している六本木ロアビル

■プロダクトを世の中にアジャストさせるために電通の力を使う

-- 電通ブルーはどのような経緯で設立されたのでしょうか?

吉羽:デジタルの浸透の影響も大きく、クライアントニーズの多角化への対応という電通の課題があり、電通自体にも従来のビジネスモデルからの転換が求められています。そこで必要になったのは、最先端のテクノロジーに精通していて、かつ自分達でも事業を実践し、技術面・事業面双方のノウハウを獲得できるような場所の設立です。それが電通サイドから見たときの電通ブルーの設立理由かもしれません。

吉羽:電通ブルーは実は事業領域を定めていません。僕たちは新しいことにチャレンジするイノベーターで有り続けたいと思っています。僕たちのつくる事業は初期段階から売却もひとつの選択肢として開発を進めていて、常に可能性のあるビジネスを追い続けたいと思っています。

電通ブルーの「ブルー」には、自分達が青二才でありがなら、ブルーオーシャンに向かいコミットするという意味も込められています。

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インタビューアーの花田(左)と吉羽氏(右)

吉羽: 会社を設立する際に、社名に「電通」をつけた理由を聞かれます。昨今はベンチャー投資が活性化していますので、しっかりとしたビジネスモデルと力あるメンバーアサインができれば、資金調達について困ることはほとんど無いと考えています。それでも電通の中で起業させていただいたからには、自分達のサービスや製品を世の中にアジャストさせていくために電通の力を最大限活用する必要があると思っているからで、「電通」という名を冠している理由もそのひとつです。

吉羽:僕はイノベーションには「人々の考え方や概念をねじ曲げること」が必要だと思います。世の中の多くの人々の考え方をポジティブに変えるのに、電通グループが持つクリエイティブやネットワークなどのリソースは魅力的でした。


■リアルの世界をデジタルで管理をする

-- なぜIoT南京錠「246」を開発したのですか?

吉羽: 前提としてIoTは僕たちがやりたい分野の一つでしかないです。ここでやりたいのは「リアル世界をデジタルで管理する」ということです。それをわかりやすぐ体現するために、246という南京錠型の端末を開発しました。

吉羽:本当に世の中で使われるものをつくるには、ユーザーのリテラシーに合わせて段階を踏まなくてはいけません。例えば、昔の人にスマートフォンの魅力を説明したところで理解してもらえないでしょう。プロダクトや市場の成長に合わせてユーザーのリテラシーを向上させていくことが大事です。246は僕たちが作りだす世界をユーザーに伝える意味も持っています。

吉羽: 将来的には「鍵のネットワーク」を構築したいと思っています。この246上で展開できるビジネスの可能性は極めて広いものと考えています。

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手のひらほどの大きさがある246


■電通ブルーはスタートアップのコングロマリットである

-- 電通グループでありながらスタートアップを名乗っている意図はなんでしょうか?

吉羽: 企業内起業はとても難しいです。起業家の持つ素養は大企業のルールに反することが大半です。そもそも大企業はビジネスがすでに回っている状態であることが多く、既存のビジネスサイクルを回すということに注力しているのが効率的であり、自社のビジネスサイクルを毀損するモデルは採択しにくいですし、まったく無関連領域のモデルだと鼻が利かない。サイクルを回すという視点に立つとできるだけ画一的なルール内でガバナンスできるのが管理しやすく、そういった背景などもあって企業内起業っていうものはハードルが上がります。

吉羽:子会社にすることで、遊びの幅は持たせることは可能になりますが、それでも親会社のルールに従わなくてはならない部分はでてきます。自由度が削られるなど、不自由な側面もゼロではないですが、恩恵もありますし、何よりも、色々とチャレンジできなくて燻っている子たちに、やり方次第だよということを教えてあげたいという気持ちもあります。

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エントランスでの吉羽氏

吉羽: そのために電通ブルーは、自分たちでやれることは自分たちでやるということを大切にしています。多くの大企業がCVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)を作って様々なスタートアップに投資をしていますが、僕は自分たちで実際に事業を行うところにこそ面白みがあると思います。新しい領域に先陣をきって自分たちで挑戦していく。IoTに限らず、あらゆる選択肢も認める風土を作ることで、新しいものに柔軟に対応できるようにする。まさに電通ブルーは、スタートアップでありながら複数の事業体持つコングロマリットを目指す組織と言えます。

スタートアップは持てる全勢力を既存の事業に投じているのが常だ。電通ブルーのように複数の事業体を持つスタートアップは、良く言えば変化に柔軟に対応できるが、見方を変えれば1つの事業を運用する馬力が不足する懸念もある。246を機に、電通ブルーからにどのようなプロダクトやビジネスが創出されるか、吉羽氏の手腕に注目したい。

(SENSORS編集部 文:石塚たけろう)

石塚たけろう:

ベンチャーキャピタルやデジタルマーケティング企業複数社での業務を経験後、現在は広告会社にてスタートアップと大企業の共同事業開発モデルであるコーポレート・アクセラレーターの運営に携わる。Webディレクター。早稲田大学在学中。

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