『ゲーム実況』の魂と未来 ~変わり始めた実況者とゲームメーカーの関係~

2015.02.06 20:38

好きなゲームをプレイヤー自身で実況を加えながら遊んでいる動画をインターネット上に投稿する【ゲーム実況】が人気を集めている。Youtubeやニコニコ動画ではゲーム実況の分野での「人気者」が誕生したり、それを生業にするプロも出現してきている。なぜ彼らはゲーム実況にハマるのか。「闘会議2015」会場で、マックスむらい、セピア、コジマ店員にSENSORSレッド畑下由佳がゲーム実況の魅力と今後を訪ねた。


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コジマ店員(左)氏とセピア(右)氏の指導のもとゲーム実況を体験する畑下由佳。


■マックスむらいが考えるゲーム実況ブームの背景。「おさがりスマホ」がキーワード。


なぜ今「ゲーム実況」なのか。実況動画の視聴者の観点をマックスむらい氏に訪ねてみた。マックスむらい氏は、主にスマホゲームの実況動画をインターネット上に公開している。パズル&ドラゴンの攻略動画やテレビCMなどで目にした読者も多いのではないだろうか。ゲーム実況動画が活況を浴びている背景には「おさがりスマホ」という現象があるという。


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「闘会議2015」の合間でのインタビュー。実況し過ぎで声が枯れていたマックスむらい氏。


マックスむらい:ゲーム実況という言葉自体は、おそらく2008年くらいかな、かなり昔からあります。一般化したのは、2014年だと思っています。大きな出来事として、「おさがりスマホ」という現象がありました。親や兄弟が使っていた、古い機種のスマートフォンを、子どもや弟にあげるようになった。それが、一人一台スマホを持つという状況を作りしだしています。昔は、ゲーム機を持っていなくてはゲームができませんでしたが、今はスマホさえ持っていれば、誰でも簡単にゲームができるようになりました。


マックスむらい: 自分で一人で、好きな時間にゲームをするシーンが増えています。みんながみんな同じゲームをしているわけでない。趣味嗜好が多様化しています。そんな中、動画サイトを見れば、他の誰かが自分と同じゲームをやっていることに気づきます。自分だけが、このゲームをやっているわけでない。ゲーム実況動画の視聴は、まさに友達と一緒にゲームをプレイしている感覚になります。


好きなゲームを好きな時にプレイして、同じものを好きな人と繋がる。スマートフォンの普及によって生まれたこのような現象が「ゲーム実況」を加速させている。そして、いつしか一人の視聴者でいる状態から、自分から実況してみたいという気持ちが湧いてくる。実況をする側の魅力としては、動画視聴者とのコミュニケーションがある。マックスむらい氏は、視聴者から反応を得るにはどうすれば良いか、視聴者のコメントにどう応えていくのか面白いともは語る。


■セピア、コジマ店員の想い。若い実況者は小さくまとまるな。自分の特技をフル活用して見たことがない実況をしてみせよ!


人気実況者であるセピア、コジマ店員の両氏も、かつて実況動画を視聴してた側から実況する側になった経緯がある。二人ともすでに5年ほどの実況歴があるベテラン。セピア氏は視聴者に配慮した丁寧な実況解説に定評があり、コジマ店員氏は主にホラーゲームをスポーツ実況を彷彿させる高速実況を交えながらプレイするスタイルがウケている。今となっては、ある種の文化といえるまでに拡大した「ゲーム実況」であるが、二人は、最近ゲーム実況をはじめたばかりの若者に言いたいことがあるようだ。


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丁寧な返答が印象的なセピア(左)氏と、開口一番「プレイボール!」とマシンガントーク炸裂のコジマ店員(右)氏。


コジマ店員:若い実況者たちは自分のもっと「特技」を最大限に使った実況していくユーザーになってほしい!新しい実況者がバンバン誕生してきているのですが、どこかこじんまりとしていると思います。個人の個性をもっと出していく。若い人達の特技で、僕らが見たことがない実況をしてほしい。そうすれば、ゲーム実況はもっと盛り上がる!


セピア:「あの人はこうやっているから」とか、「これをしてはいけない」って今の若い実況者達はありもしないルールに縛れている。


彼らも簡単に今の人気まで登りつめたわけでない。実況をはじめた当初は、まったくコメントがつかなかったり、「つまらない!やめろ!」とまで言われたことがあるそうだ。裏では実況の「練習」もしており、試行錯誤の上で現在のスタイルを築きあげた。また、若い実況者が多数登場しているように「ゲーム実況」というムーブメントが大きくなったが故のある変化をセピア氏は感じていた。


セピア:このゲーム実況っていう文化が一大マーケットに成長しているなという実感はある。当初ゲームを実況する人というのは、ゲームをやっている人だった。そのゲームをやっている人が、同じ畑の人の実況を見ていた。でも、最近は「ゲーム実況」が面白そうだということから、実況をはじめたり、動画を視聴する人が多いです。


■ゲームメーカーとゲーム実況者の距離はもっと近くなる。


この点には企業も目をつけている。任天堂は「Nintendo Creators Program」というYouTube に投稿された「任天堂の著作物が含まれる動画」からの広告収益を投稿者に分配する仕組みを築いたり、あのマリッサ・メイヤーも投資しているモバイルゲーム動画共有プラットフォームであるKamcordはDeNAやコロプラなどが既に導入している。マックスむらい氏は次のように指摘している。


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「闘会議2015」には約3万5000人が来場。各ゲーム会社もブースを出展している。


マックスむらい:ゲーム実況はまだまだ個々人でやっていることが多いけれど、実はゲームメーカーと一緒にあると思う。ゲームメーカーと配信する個人が一緒になってゲーム実況が成立する。まだ、実況者とゲ―ムメーカーとは遠いけれど、今後はメーカーと配信する実況者のつながりがもっと深くなる。そうなってきたら、いろんなイベントや、ゲームの企画にまで実況を組み込むことができるだろう。今後は、ゲーム実況があることで栄えるような構成だったり、実況があることを前提にしてゲームが作られるのではないか。


■ゲーム実況の開拓者が持つ「魂」への敬意。


メーカーとゲーム実況者の距離は確かに歩み寄る傾向がみられている。しかし、メーカーも、これから実況をはじめようとする若者も、これまでの実況者達への敬意を忘れてはならない。


セピア:ゲーム実況の今後について、僕は今の形がずっと続いてほしいと思ってます。ネガティブなことになるかもしれないけれど、マーケットが広がってくると、なにかしら今とは違う方向になっていく可能性もあると思う。でも、かつてのゲーム実況の開拓者達の想いというか、若い人には「ゲームのやっていることの魅力や楽しさを人に伝えたい」という「魂」を忘れないようにしてほしいです。


(SENSORS編集部 構成・文:石塚たけろう)

石塚たけろう:ベンチャーキャピタルやデジタルマーケティング企業複数社での業務を経験後、広告会社にてスタートアップと大企業の共同事業開発モデルであるコーポレート・アクセラレーターの運営に携わる。フロントエンドエンジニア。


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