話題の【フリー素材アイドル】に会ってみた!直撃インタで見えた、ファンキーOLヒップホップ魂が「自分自身をサンプリングソース化」した奇策への道のり

2015.02.10 12:11

昨年末、肖像権・著作権を放棄し、自分達の写真や映像を【フリー素材】としてWEB上に公開する2人組が現れた。彼女たちの名は「MIKA☆RIKA」。この試みはネット上で大きな話題を呼び、すでに彼女たちを素材に用いた広告も数多く出現。そんな「【フリー素材】サービスで自己プロモーションを」という斬新な戦略がどんな経緯で生まれたのか?「SENSORS」はMIKA☆RIKA本人たちに直接インタビュー取材を試みた。

MIKA☆RIKAは一卵性双生児の姉妹で構成されるヒップホップユニットだ。写真左が姉のMIKAさん。右がRIKAさん。OLとしての経験からか、動作の一つ一つから落ち着きと上品さを感じ取ることができた。しかし彼女たちはすでに2枚のシングルをリリース、単なるアイドルではなく、ヒップホップに真剣に取り組んでいるアーティストなのだ。加えて、さらに活動の幅をひろげるため、【クラウドファウンディング】まで駆使して、今回の【フリー素材】宣言を行った。そこまでに至る顛末を、我々は深くうかがってみた。

■普通のOLからヒップホップユニットへの転身。伝説のユニット・餓鬼レンジャーからリリック提供を受け、本格デビューへ。

MIKA:
もともと私達2人はデビューする前までOLとして会社で働いていました。学生時代に女優の活動をしていたのですが、その時知り合ったレコード会社の方とイベントで再会、なんと「ヒップホップのユニットをやってみないか」と誘われたのです。最初は本当に軽い気持ちで、CD作って雑貨屋さんに置かれたらいいな、というくらいのつもりだったのですが、活動しているうちに段々と楽しくなってしまって。さらにライブを見に行くようになってからは、本気でヒップホップをやりたいと思うようになりました。
RIKA:
餓鬼レンジャーのポチョムキンさんと出会ったことも大きかったです。ヒップホップユニットとして活動したいこと、自分達が今OLとして働いていることなどをお話したら、「現役のOLが『仕事したくないよ』って歌ったら面白いじゃん!ラップってそういうモンだよ」というアドバイスをもらって。ヒップホップは毒がある歌詞が受け入れられる。自分達は仕事をしているのに「仕事をしたくない」と歌うことが面白い。それがファーストシングル「FUNKY OL ~仕事したくないよ~」につながりました。ポチョムキンさんや様々な方が協力してくれたおかげでMIKA☆RIKAとしてCDデビューが果たせました。

こうして自分達の活動の広がりを肌で感じて、「今しかできないことをやりたい」という気持ちが強くなったんです。だから、会社を辞めてMIKA☆RIKAとしての活動に専念する決意もできました。
餓鬼レンジャーは、日本のストリート・ラップの先駆とも言える伝説的グループのひとつ。すでに結成20年の大ベテランだ。ポチョムキン氏は、グループのフロントマンで音楽的中枢。そんな出会いが積み重なって、OLだった彼女たちは、本格的な音楽活動にのめり込んでいったのだ。

MIKAさん(左)の応答に、RIKAさん(右)が補足を入れ、掛け合いのようにインタビューは進行された。

■知名度をあげるため【クラウドファウンディング】と【フリー素材】に注目。ネット世界のサービスやニーズを駆使した「ヒップホップ的戦略」が出来上がる。

RIKA:
ゆくゆくはヒップホップのユニットとして大成したいと思っているのですが、その時は、具体的には勝算や戦略はなくて...。
MIKA:
セカンドシングルを出した去年の夏には、ヒップホップに偏らないで、もっと活動の幅を広げたほうがいいのではと、考えていました。まずは、MIKA☆RIKAの知名度を上げることが目標。そこで【クラウドファンディング】を活用しては?【クラウドファンディング】でプロジェクトを立てて、そのプロジェクトを宣伝していくことが、結果的にはMIKA☆RIKAの宣伝になる。でも、クラウドファンディングで具体的に何をやるかは、実はとても迷ってました。
RIKA:
そんな時、私達が使おうとしていたサービス「GREEN FUNDING」(運営:株式会社ワンモア)の縁でテレビ埼玉の番組「アイドルMAKER'S」に出演させていただく機会を頂けました。その番組で「MIKA☆RIKAの知名度を上げたい」という相談をしたところ、【フリー素材アイドル】というアイデアをご提案いただいたのです。
MIKA:
私達が写ってるセカンドシングルのジャケット写真が人形っぽいという指摘を受けたことがアイデアのきっかけでした。まずはMIKA☆RIKAがキャラクターみたいな形で、世間を飛び出していったらどうか。会社のプレゼン資料や企業広告に私達の写真を無料で使ってもらうことによってMIKA☆RIKAをいろいろな場所に出現させる。それが【フリー素材アイドル】という形にまとまりました。そして、【クラウドファンディング】を使って素材写真を撮影するためのお金を調達したんです。

セカンドシングル「下っ端」のジャケット写真。これがきっかけで思わぬ奇策が生まれる。
出展:MIKA☆RIKA Official Websiteより( http://mika-rika.com/ )

ヒップホップという音楽は、元来、既存の音源をサンプル素材として再構成することで楽曲を作ることが最大の特徴。しかしゲリラ的なサンプル引用は権利上可能な状況にない。一方で、ヒップホップを志すMIKA☆RIKAは、結果的に「自分たちの存在そのものを権利フリーのサンプル素材」にしてしまった。「ヒップホップで大成したい」という夢へのステップに、実に「ヒップホップ的な戦略」を採用したのだ。しかも、それを【クラウドファウンディング】と【フリー素材】というネット・サービスを利用して達成。今日のメディア状況と彼女たちの志が、このユニークネスを生み出したのだ。

しかも、【クラウドファンディング】では見事に目標額の150%の調達を達成。33人の出資者から、約30万円が集まった。ここから作られる素材数は1000点。彼女たちの声を音声ファイルとして収録までしたのだ。

MIKA:
当初は集まるかどうか本当に不安。でも、予想以上に面白がっていただく方が多くて。支援者の方々に「こんな面白い企画に支援できてよかった!」と言っていただいてとてもうれしかったです。写真素材提供サービス・アマナイメージズさんもこの【フリー素材アイドル】プロジェクトに興味を持ってくださって、スタジオを貸してくれたり、特設サイトを作ってくれたりしました。クラウドファンディングをはじめたことをきっかけに、有志で支援してくれる方々もたくさん集まってくださって、いつのまにか一大プロジェクトに...。

いざ写真素材撮影に臨む段階においても、彼女たちは入念な準備をしていた。ヒップホップにおてサンプリングは元ネタへのリスペクト表明だが、MIKA☆RIKAは、サンプルソース側として、使ってくれるユーザーへの繊細なニーズ対応とリスペクトを発信している。

RIKA:
広告に使われるためには、どんな素材がふさわしいのか?素材写真を撮影する前に、企業のCMや広告を自分達で調べて、ものすごく分析しました。白い衣装を着ている素材が多いのも、その分析の結果だったりします。例えば、時計の広告に使ってもらいやすいように、手首を強調したポーズをしている写真もあります。

時計の広告を意識して白い衣装で左手首を強調している写真

こちらの写真では、両手を上にして広げ、字幕や別の素材と組み合わせやすいポーズとなっている。

ちなみに、MIKA☆RIKAのオフィシャルサイトは、RIKAさんがOL時代の経験を生かして自分で作成。彼女たちは仕掛けられたアイドルではない。自力で道を切り開くアーティストなのだ。

■【フリー素材】宣言の反響と、【軽い広告】という領域の発見。そしてフォロワー「フリー素材インド人」の登場!

RIKA:
素材を公開したら、私達のことを知ってくれている圧倒的に人が増えましたね。これまでは、ライブから音楽を通じて知ってもらえるという順序が、「フリー素材のMIKA☆RIKAだよね?」って名前から音楽を聞いてもらうことが多くなりました。あと、前の職場の方からも連絡がきたりしましたね(笑)。
MIKA:
ネット上でも大きな変化が起きました。TwitterでMIKA☆RIKAのことを書いてくれる人が何十倍にも増えました。今は毎日のようにMIKA☆RIKAのことが書かれています。「あの広告で使われているぞ!」。

画像編集アプリやソフトはたくさんあるけど、無料で使える写真ってほとんどないじゃないですか。そこに乗っかれたのは大きかったなって思います。あと、フリー素材をやってみて、多くの企業がTwitterをやっていることを知りました。企業アカウントは基本毎日投稿していて、そこで投稿する画像やバナーに使ってもらえることが多いんです。こんなところに需要があったんですね。
RIKA:
ソーシャルメディアに投稿する【軽い広告】というのが存在することを発見しました。井村屋さんや山芳製菓(「わさビーフ」)さんなど大きな会社の方々に使ってもらえたことも後押ししたと思います。

一般企業のソーシャルアカウントには、巨額の予算がついているわけではない...【軽い広告】でも担当者の負担は重い。そんなアカウントのつぶやき主に、彼女たちは大きなインスピレーションを与えたようだ。ソーシャルの【軽い広告】は予算の軽さだけでなく、センスと機動力の軽やかさ。そこにMIKA☆RIKAはフィットした。

さらには、彼女たちの【フリー素材アイドル】宣言の直後に、【フリー素材インド人】なるパクリフォロワーまでが登場。ポーズまでソックリな素材公開でこれまた話題となった。これにさらに乗っかる形で、彼女たちもインド風衣装を着た素材を公開。お互いに相乗効果を得ることに成功。新しい企画アイディアも。

フリー素材インド人に"乗った"MIKA☆RIKA

MIKA:
あの時は、インド人の素材使っている企業の方にMIKA☆RIKAも使ってくださいってTwitterでメッセージを送ったんです。そしたら、本当に使ってもらえました(笑)。そういう相乗効果があったりしてとても面白いですね。

世界中の人にも使われるようになりたいんです。【フリー素材インド人】を見た時に、MIKA☆RIKAもインドの民族衣装を着てみたら、インドで使われるんじゃないかって。いろんな国の衣装を着て素材を撮影してみたら、国境を越えて私達が使われるかも。今は国内で使わることがほとんどですが、日本以外の人が驚くようなアイデアを考えています。

【フリー素材アイドル】としての最終目標は、「武道館フリー素材ライブ」です。グリーンバックのステージでファンのみなさんが撮影した写真がそのままフリー素材になるんです。
RIKA:
今後は3D素材とかにもチャレンジしてみたいですね!

しかし、ユニットとしての目標は、あくまでヒップホップアーティストとしての成功。

RIKA:
アイドル業界よりも、ヒップホップ業界で注目される存在になりたいんです。ラップに乗せられる歌詞の世界観が独特で、ヒップホップは本当に面白いです。私達もこれからもっと練習して、上手くなって、私達のことをフリー素材で知ってくれた人達を驚かせるパフォーマンスができればなと思います。直近の目標としては全国ツアーの開催です。

取材:石塚たけろう

ベンチャーキャピタルやデジタルマーケティング企業複数社での業務を経験後、EIR(=客員起業家)として複数の大手企業、スタートアップの新規プロジェクトに参画。Webデベロッパー。@takerou_ishi

おすすめ記事

最新記事