若き女性起業家「撮影女子会」仕掛け人・中村朝紗子氏が語る"女子離れ"から脱却するソーシャル戦略

2015.02.19 17:35

2013年のサービス開始以来、流行に敏感な女子たちの間で支持を集める「撮影女子会」。そのプロデューサーで、昨年には株式会社Morning Laboを設立し、今勢いに乗る23歳の若き起業家・中村朝紗子氏に学生起業に至った決断の背景やソーシャルメディアを活用したプロモーションのポイント、今後の事業計画を伺った。拡散性の高いシェアラブルな体験のヒントは"パンケーキ"にあった?

(2016年1月追記)
2015年人気記事10選」入りを受け、最新コメントを頂きました!

中村:
2015年は、かわいい写真を通じたモノ・コト・バショのリブランディング手法「フォトジェニックマーケティング」の成功事例をたくさんつくれた1年でした(JOYSOUNDさんやJRAさんなど)。支えてくれたみなさんには常に感謝をしながら、2016年も頑張りたいと思います。 よろしくお願いします!

株式会社 Morning Labo 代表、撮影女子会プロデューサー 中村朝紗子氏

■女の化けの皮が剥がれる場ではなく、女子が輝く"体験型女子会"を

--改めて「撮影女子会」のサービス内容についてお聞かせいただけますか。

中村:
サービスを一言でいうと、「ドレスアップ、メイクアップ、写真撮影によって一日ヒロイン気分が味わえる女子会」です。

--いわゆる女子がオシャレなお店でご飯を食べて、おしゃべりする会と何が違うんでしょうか。

中村:
私自身もよく女子会をする方だったのですが、その度に人の噂話や愚痴を言ったり、弱音の吐き溜めをする場のように感じていたんです。「女子会」でネット検索しても媒体はぐるなびやホットペッパーばかりで、お店も基本的に居酒屋が多かった。男性がいないので、可愛くある必要はなくて、みんなが持ってる本性をそれぞれ吐露できるのが快感だとは思います。 ただ、2010年に"女子会"が流行語大賞を獲得してから定番ワードになり、マンネリ化してきたというか。最近では、緩和剤として女子会に"女子会男子"と呼ばれる男性が現れたり、女子会そのものが変化しつつあります。

【撮影女子会での「ティータイム」の様子】ドレス姿での会話には、ネガティブな話題は出てこない

--提供されているサービスのなかで、マンネリ化しないためのポイントはどこにありますか。

中村:
リムジン女子会やホテル女子会など、より"体験型"の女子会が求められていると感じていました。というのも私は元々、編集の仕事をしていたので、ネタ帳の一つに「女子会のマンネリ化」というキーワードがありました。
加えてもう一つ別の軸として、SNSのプロフィール写真でキレイな写真を載せている子ってサロンモデルや読者モデル、もしくはタレント活動をしている女の子がほとんどだと気付きました。とはいえ、素人の自分がきっかけもなく自撮りの写真を上げるのはやっぱり抵抗がある。そこで思い出してみると、自分が被写体としてプロカメラマンにキレイに撮ってもらった最後の写真って成人式なんですね。その前は七五三で、次は結婚式。

「20代って自分が一番オシャレを楽しめたり、社会人でお金をかける余裕があるタイミングなのに、キレイを残せるタイミングってあとは結婚式だけか」と。でも女の子って中高校生のときにすごくプリクラを撮っていたり、今も自撮りブームで自分の撮影する角度にこだわったり、セルフプロデュース術への関心も高まっている。20代はそういう欲求が一番高まっている時期なのに撮影してもらう場所がないと思ったんです。なので、「ドレスアップして自分の一番キレイを更新して、写真を撮ってもらう」というキレイになるための軸と女子会を掛け合わせたら面白い体験型女子会ができるのではないかと思ってサービスを作りました。

■ネットとソーシャルを駆使して、学生起業にいたるまで

--立ち上げ時のメンバーや経緯はどういったものだったのでしょうか。

中村:
「やったら面白い、絶対にウケる」とは思っていましたが、仲間もいなければ、就職活動が始まるタイミングでもあったので、社会人を数年経験した25、26歳のときにできればいいと思っていました。こんなことを呟いたり、ブログに書いたりしていたら、それを読んだという知らない女の子から「ランチでもしませんか」というDMが届きました。
もともとその子は服飾関係の仕事をしていた同年代の子で、撮影女子会のアイデアの話になったときに「じゃあドレスがいいよ」とか「こういうコンセプトはどう?」とかすごく盛り上がって、翌日には合宿が始まって(笑)化学反応というか、ビビッときて、そこから一ヶ月寝食を共にして、企画書を練り上げました。

--それはいつ頃ですか。

中村:
大学三年生の冬です。企画書やビジネスメールを書いたこともなければ、営業やテレアポの経験もない。だけど今は何をやるにもGoogleで検索すればどうにかなります。最初は怖いもの知らずで、シャネルやグッチに電話をかけて門前払いされたり(笑)だけど100件くらいかけてると、2,3件話を聞いてくれるところがあったり。ドレスもメイク道具、スタジオもないので物品協賛や業務提携を一つずつ集めていきました。

サービスを始めるときは、女性誌やテレビに取り上げられるような一種のムーブメントにしようという野望があったので、サービスを開始する前から公式アカウントを作って「こういうのが叶ったら嬉しくないですか」とか「食べて話すだけの女子会は卒業しませんか」とSNSに流したら、「なにこれ、やってみたい」とポジティブなリアクションが多くあって、サービスの事前申し込みが何件かすでにある状態でした。

【実際の撮影女子会の様子】SNSでは、「スマホで切り取りたくなる」、「視覚的にワクワクするシーン」を発信し続けた

■中学生の頃から無謀な目標達成を支えてきた"ミラクルノート"とは

--学生起業というのは苦労も多いと思うのですが、今までどのような道を歩まれてこられたのでしょうか。

中村:
自分のこれまでを振り返ったときに、中学・高校時代に無謀なことにチャレンジして達成できた経験が大きかったのではないかと思います。中学校のときは行きたい学校に偏差値が20も足りなくて、「これはヤバイ」と一年前から大慌てで猛勉強を始めました。どんなに目標と今の自分がかけ離れていても、目標から逆算して、「一回できなかった問題を次はできるようにコツコツつぶしていくだけだ」っていうふうに当時の塾の先生が教えてくれて、"ミラクルノート"っていうのを作ったんですよ(笑)

左ページにできなかった問題を書いて、右ページにできるようにして二度と間違えないっていうだけのノートなんですけど、それを各分野で作りました。そのおかげもあって無事入りたかった高校に入ることができました。

高校に入学してからは少林寺拳法を始めました。中学生のとき、痴漢に遭ったときに怖くて声が出せなかったことがあったんです。だから、「自分の身は自分で守れる女になろう」と。またミラクルノートを作って、練習メニューや先輩のアドバイスを書きながら、全国一位を目標に朝練から深夜練まで少林寺拳法に明け暮れました。その頃は毎日すっぴんにジャージで「うりゃー!」とか気合を出して、男と戦うような三年間だったので、今撮影女子会をやっているのを知ると高校時代の同級生は「なにやってるの!?反動だね」とかってネタにされます(笑)当時は本当に道着で鼻水垂らして、汚い格好だったので(笑)

結果として高校二年生のとき全国大会で二位になることができました。このときの「初心者でも着実に一歩一歩やっていけばできるんだ」っていうのがあったので、撮影女子会をやろうと思ったときも、「もう一回あのときと同じタイミングで来たんだ」と思いました。

■起業を恋愛に喩えてみたら、踏ん切りがついた

中村:
就職をやめるのはすごく怖かったですが、自分のなかで勇気付けられた言葉として「100年後はみんな灰になってる」というのがあって(笑)100年後、今目の前にいる人たちはみんな死んでるって考えたら、何かの教えを請う小さい恥を短期間の行動で考えるよりも、やりきってから死にたいって思えるようになりました。

就職活動を辞退しようとしたときには、みんな「手持ちの内定を増やしてから考えたら?」とか「まず就職して、経験を積んでから」とかって色々なアドバイスをもらって、悩んだのですが、恋愛に喩えてみたら腹落ちしたというか。
すっごい大好きな人が見つかったのに、どうでもいい男の人にぶりっ子してLINEとかで自己PRして、デートを重ねて、付き合えるようになって「よしこの人OK」って数を増やしていっても、大好きな人がいるのにそれってカッコ悪いことだと思って。だったら振られるかどうか分からないけれど、中途半端なことはやめ、「この人たちみんなを斬り捨てて、本命の人のために本気で自分を磨いていこう」と考えました。

--学生時代はライターとして活動されていたそうですが、その経験はどのような形で生かされていますか?

中村:
もともと大学に入って、二年生くらいのときから三年間女性誌の編集部でアシスタントのアルバイトをやっていました。そこで色んな現場に行ってるうちに撮影のエネルギーとか、プロの力が結集して最高の一瞬が作られる表紙の撮影現場とかをみてて、これもおそらく撮影女子会をやりたいと思った一つのフックにはなってると思います。

■女子離れを防ぐには"パンケーキ"にならなければならない

--サービスが認知度を獲得していくにつれ、企業とのコラボもなされています。今までで印象的なコラボはありますか。

中村:
一番最初に大きかったのはトヨタ・MEGAWEBさんなんですけど、最近だとJOYSOUNDさんともコラボしました。コラボレーションの形態として、これまではBtCでずっとやってきたんですが、「これって企業とコラボしたら面白いんじゃないの?」というアドバイスを頂くことがあって。クルマって全然可愛くないもの、女子離れ、若者離れしているものっていうイメージがありますよね。だからクライアントさんには「クルマをパンケーキみたいな存在にしてください」って言ったんです(笑)パンケーキって別にあれが食べたいわけじゃなくて、あれを食べている自分が可愛いんですよ。写真を撮って、写真をSNSに投稿するまでが パンケーキ。「燃費が良くなる」とか会社として自分が言いたいことだけを言っていても、女の子には何も響かない。自分が主役としてそこにはいれて、なおかつ可愛いシーンというのを作ってあげて、口コミやマーケティングを自発的に起こすことが重要。

【トヨタ・MEGAWEBとのコラボ撮影女子会の様子】

中村:
TOYOTAさんが運営するクルマのテーマパーク「MEGA WEB」にヒストリーガレージという車の展示場があって、映画のワンシーンのような街並みがフロア全体に広がっているんです。ここで『Retro × Girly Photoshooting』をテーマに、ドレスコードを決めて、車に装飾を施したフォトブースを出展しました。

当日は数時間のイベントだったのですが、始まったときから行列ができて100名くらい集まって、クライアントさんも「なるほど、こういう切り口で女の子が集まるんだね」と大喜びでした。 根本的に女の子って「この商品を買った」とか「あのネイルが良いよ」とかおしゃべりじゃないですか。口コミがすごいパワーを持っているんですが、女子向けの商品でも実際に開発している人の8割が男性社員だったり、管理職や裁量権を持っている人って圧倒的に男性が多いので、「とりあえずピンクにしておこう」とかありがちですよね(笑)なんでこうなっちゃったんだろうっていう商品が多くて...。

私はまだ若くてビジネス経験も浅いですが、「これは可愛い」とか「これは欲しい」とか自分の等身大のモノサシで今までにない、自分たちが本当にほしい作っていうというスタンスでやってきて、昨年10月に「撮影女子会」というサービスを会社にしました。

■"絵になるシーンと体験"はコストを要せず、自然拡散する

--実際に始めてみてからユーザーの反響はいかがだったのでしょうか。

中村:
サービス開始から約二年になりますが、「こんな女子会が欲しかった!」とか「ディズニーランドより楽しい!夢みたいでした」って言ってくれるお客さんが多いです。

面白いと思ったのが、サービス開始時、私はまだ学生だったのでお金がなかったんですよ(笑)どうやって広めていくか考えたときに、やっぱり「こんなのが欲しかった」という共感を起点にムーブメントを起こすしかないと思いました。今ってSNSを使っている女の子たちは可愛いシーンや自分がよく撮れたシーンを自発的にシェアします。 そこで、撮影女子会で撮った写真をSNSでシェアしてくれたお客さんには、お渡し枚数を一枚プラスしますというキャンペーンを始めたところ、ものすごい勢いでサービスの認知度が広がっていきました。

ドレスを着た非日常のシーンが一枚ドスッとフィード上に現れると、たちまち「これなに?どこでやったの?」「撮影女子会っていうサービスだよ」ってバイラルのように口コミが広がっていきました。そのうちNAVERまとめやMERY[メリー]など女の子がよく見ているガールズまとめに取り上げられ始めて、テレビ取材が決まり、女性誌に出てと好循環が回りました。基本的には、自分がキレイに写ったという"絵になるシーンと体験"は自然拡散していくということです。

■そのネイティブアドは、ライフスタイルに取り入れたいものか?

中村:
テレビのPRやネイティブアドって受け手側はもうみんなすぐに気づくようになってると思うんです。聞きたくないことを聞かされるのはすごくストレスなので、企業が自分の言いたいことをいうのはまず止めたほうがいいと思います。撮影女子会の姿勢としてメインモデルやイメージモデルは絶対に使わないと決めています。なんでかというと、可愛い人が可愛いことをやっても「はいはい、そういう感じね」と受け取られてしまうので。あとは男性ファンからのPVを上げるような美女コンテンツにもしたくないと思っています。あくまで女の子が本当にその世界に入って、自分が主役になって新しい自分に会えるっていうことがテーマなので。

なので当たり前のことですが、ネイティブアドを作るときでも自分がそこに入れるのかとか、自分がそれを使うことで可愛くなれるのかとか、最終的にその子にとってメリットのあるようなことを考えてあげないと動かないと思います。 先ほども言ったように、それがパンケーキのように自分のライフスタイルに取り入れたいものだったら自然と受け取ってくれるので。私のSNSのイメージは、自分のMAXなところを切り取っていって、貼り付けたものが線になっている。すっぴんジャージだったり、半目の画像を上げる人はいませんよね。むくんでいる日などダメダメな日って日常に必ずあるわけで、その中でも二の腕をめっちゃ浮かして細く見えた写真とか良かったものを寄せ集めたものがSNSブランディングと言われるところだと思うのですが、意識しているのはその子が自分のライフスタイルの一部として上げたときに可愛くて、素敵と思われるフックを作ることが口コミをしてくれる鍵だと思います。

■一過性のブームにとどめないために、コミュニティを作っていきたい

--今後こういうところとコラボしたいとか、こういうふうに事業拡大したいという展望をお聞かせください。



中村:

可愛いものが可愛くなるというよりは、そうじゃなかった人が動くというのがやってみたいことなのでギャップがあるものがいいですね。例えば女の子があまり共感しないような...ビールとか。ホッピー社長が女性になられたからイメージが変わったように、「撮影女子会」を通じてモノ・コト・バショのリブランディングに携われたら面白いなとは思います。
口コミが広がっていき、多くのメディアにも取り上げていただいたのですが、これを一過性のブームにはしたくない。今後はセルカ棒のようなセルフィーアイテムだったり、「商品×女の子」の撮影で欲しいアイテムや機能など今までなかったものを作っていけるコミュニティチームを数百人単位で作っていって、新しいサービスに生かしていきたいと考えています。 その次は大阪など地方への横展開。さらにのちにはフィリピンをはじめとしたセルフィー熱がアツいアジア諸国に事業拡大を図っていきたいです。
私個人の目標としては、女性起業家の方って20代後半だったり、30代の人が多かったので、ロールモデルとなる人がいなかったんです。だから、なんとか会社をつぶさずに頑張り続けて、いつか起業を目指す女子大生の子とかが相談に来てくれる日がきたら嬉しいですね。それと、おこがましいですがいつか『情熱大陸』に出演したいです(笑)

「女子会」という現象を定義し直し、「撮影女子会」として新たなムーブメントを巻き起こした若き起業家・中村朝紗子氏。「"パンケーキ"の味ではなく体験に口コミを仕掛けるの鍵がある」と言う彼女のソーシャル戦略は、若者離れが叫ばれる様々な業界にとっても示唆深いものだ。 本取材の後、撮影女子会の名古屋進出を発表するなどすでに計画は実行に移されているようである。10年後彼女の"ミラクルノート"には何が記されているのだろうか。

取材・文:長谷川リョー

SENSORS Senior Editor
1990年生まれ。フリーライター。これまで『週刊プレイボーイ』『GQ JAPAN』WEBなどで執筆。「BOSCA」編集長。東京大学大学院学際情報学府在籍。最近は「人工知能」にアンテナを張っています。将来の夢は馬主になることです。
Twitter:@_ryh

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