大阪弁トランスレーターに聞くバズ動画の作り方

2015.03.27 19:15

Appleの新製品が発表されるたびに、製品ムービーを爆速で大阪弁に翻訳し紹介し続けてきたYouTuber"うっくん"こと三浦博行氏。iPhone4S大阪弁バージョンはソフトバンク孫正義社長にもTwitterで取り上げられるなど、Apple新製品が発表されるたびに、「待ってました!」と大阪弁の解説を待望している人も多い。YouTuber専門のプロダクションuuumにも所属するという氏に、大阪弁トランスレートを始めたキッカケ、爆速で仕事をする極意、YouTuber事情について伺った。

■大阪弁トランスレーターとは

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大阪弁トランスレーター・三浦博行氏。ITベンチャーでデザイナーをやっているという。


AppleはWWDCでの新製品発表の直後、新製品について解説した動画をWEB上で公開することが通例となっている。動画内では、インダストリアルデザイングループ担当上級副社長のジョナサン・アイブやハードウェアエンジニアリング担当上級副社長のダン・リッキオといったAppleの顔とも言うべき面々が、新製品の革新性について熱弁を振るう。この動画を日本人でも理解できるように大阪弁に翻訳した動画をYouTubeで公開しているのが三浦氏だ。iPhone4Sの大阪弁バージョンはソフトバンク孫社長にもTwitterで取り上げられ、約50万回再生された。


三浦氏が初めてApple大阪弁を始めたのは三年前に遡る。それまでは自身のバンドの音源や映像を載せるためにYouTubeを使っていたという。アカウント名の「megalopolis4」とはその当時のバンド名の名残だとか。ちなみに、このアカウントはYouTubeがGoogleに買収される前から使っていたアカウントで、本人曰くGoogleアカウントに統合されていない、YouTube独立のレアなアカウントとのこと。


大阪弁の動画を始めたキッカケとなったのは、元祖方言トランスレーションをやっていたApple製品の「広島弁」をみたことで、自身も大阪出身であることから、「大阪弁でやってみたい」と思い、始めたという。


--公開当初からすぐにバズったということですが、本家の広島弁の方には怒られなかったのでしょうか。


三浦:広島本家の方からツイッターで連絡がありました。「いいですね!盛り上げていきましょう!」と良い人だったんです(笑)


一つ目の動画を作った際も、特に何に告知するでもなく、Gizmodoが勝手に取り上げてくれ、自然と拡散したといい、今では必ず取り上げてくれるお約束になっているそう。 今まで作ったApple大阪弁動画は約10作に及ぶ。PVは毎回伸びていくというよりも、プロダクト次第ということで、最もウケがいいのはやはりiPhone関連とのこと。


■大阪人に迎合するのか、一般大衆に面白さを伝えるのか

--一つの動画を作るのにどれくらいの時間がかかるのでしょうか。また、どういった手順で作業されてるんですか。


三浦:作業にかかる時間は大体2〜3時間といったところです。原文のスクリプトは存在しないので、自分で動画を観ながら訳していきます。当初は、まず標準語に訳してから大阪弁に訳していたのですが、それだと余計に時間がかかるので、最近はそのまま大阪弁に翻訳するようにしています。


--コメント欄を見ると「待ってました!」、「仕事早い!」など称賛の声もある一方で、「エセ大阪弁。大阪出身じゃない」などの声も見られますが、どういったスタンスでやられているのですか。


三浦:まず初めに言っておきたいのですが、生粋の大阪人です(笑)そういった批判の声は自分自身が大阪人なので、よく分かります。結局は誇張しているので。しかも台本を読んでいるので、どうしてもナチュラルさは欠けてしまいます。そこはもう少し改善の余地があると思っていますが。


--そのさじ加減は非常に難しいですよね。


三浦:そうですね。若い人が「ごっつい」とか「せやさかい」とか今はまず言わないので(笑)でも、標準語の人たちからしたら言ってほしかったりするんですよね。


--公開する「速さ」が大事ということですが、大阪弁で競合となるライバルはいないと思うのですが。


三浦:ライバルはApple日本語版の公式ですね。


--え、そこがライバルなんですか!?(笑)


三浦:昔までは英語版がまずはじめに公開されてから、日本語版がリリースされるまでラグがあったんです。最近では日本のマーケットも広がったので、同時リリースが増えてますが、当初は間隔がありました。なので、日本語版がこの世に存在しない段階で、大阪弁が出ていたという(笑)
でも日本語版の公式とはいえ、音声は英語のままで下に字幕があるだけなんですね。とはいえ一度見た動画をもう一度見返そうとはなかなかならないので、なるべく早く見てもらえるようにスピードは重視しています。


--スピードを追求する中で、訳も正確かつ面白くしないといけないというのがあると思うのですが、ここの折り合いはどうつけているのでしょうか。


三浦:訳の正確さは気をつけています。分からないところは一個一個潰しながら、ネイティブの友人に聞いたりすることもあります。ただAppleの製品は全世界で発売されることが前提なので、それもあってか比較的聞き取りやすい英語なので、それほど苦労することはないですね。とはいえ、時々専門用語で難しいものと出くわすことがあります。例えばディスプレイ系で、「デュアル・ドメイン」とか(笑)これって日本語訳も「デュアル・ドメイン」なんですけどね。


■面白さよりも、コンテクストレベルを合わせること

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--ある動画で、「ええ仕事しよるやろ。川藤みたいんもんや」みたいな説明があったのですが、こういったツッコミポイントは意識的にいくつか入れるようにしてるんですか?


三浦:そうですね。一つの動画に1つか2つは入れるようにしています。それは単純に面白いからやっているっていうのもあるんですが、「セントラルパーク」って言われるよりも、「大阪城公園」の方が分かりやすいし、「ルーズベルトホテル」っていうよりも、「都ホテル」の方が分かりやすいですよね。加えて、それを入れる箇所も、日本語が先に終わってしまい余白ができてしまうようなシーンに、違和感なく入るよう選んでいます。


■果たして、大阪弁動画は儲かるのか?

--これまでに大阪弁関連動画を約10個公開し、総再生回数はゆうに100万回を超えていると思うのですが、収益は出ているのですか。


三浦:結論からいうと、ゼロです(笑)YouTubeの仕組みとして、コンテンツのオリジナル・オーナーは二次利用したコンテンツに対して削除するか、オリジナルのコンテンツホルダーとしてライセンス徴収するかを選択できるという制度があります。それでAppleに広告収入が入ってるかどうかは分かりませんが、僕個人には全く収入は入っていません。
ただ、大阪弁関連でお仕事をいただいたことはあります。これもGizmodoさんなのですが、アメリカの映画『パシフィック・リム』が日本で公開される際に、タイアップ企画を行いました。


■YouTuber専門プロダクション「uuum」とは

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--YouTuber専門のマネジメント・プロダクション「uuum」に所属されているということですが、そもそもuuumに入るとどういった利点があるんでしょうか。


三浦:審査の後、「YouTuber」として公認されると、広告収入の何%かをuuumに渡すということになります。その代わりに、動画編集で必要となる無料音源・素材集ソフト等が利用できるポータルが使えるようになります。他にも商品PR動画制作やメディア出演等の案件の橋渡しも行ってくれます。でもまだ入ったばかりなので、実はよくは分かっていないです。


--そもそもなぜuuumに入ろうと思われたんですか。


三浦:ちゃんとは見ていないので分からないのですが、YouTubeの方で規約が変わり、広告収入の割合が一気に減額されたそうなんです。元々が高すぎたので、それを平準化したんだと思います。所属したらちょっとでも仕事が回ってくるのではないか、入るだけなら損はないと思い所属させていただきました。 広告収入の一部が引き抜かれますが、それ以外に縛りもないし、好きに脱会できるので素晴らしいと思います。


--YouTubeで注目しているコンテンツやYouTuberなどいますか。


三浦:やっぱりゲーム実況はいいですよね。最近注目してるのは、海外版のゲーム実況専門プラットフォーム「Twitch」。Ustreamに似ていなくもないのですが、完全にゲームに特化した動画プラットフォームなんですね。昨年、Amazonに約10億ドルで買収されてました。個人的に「ストリートファイター」が大好きなのですが、世界大会は毎回「Twitch」で放映されてたりします。 YouTuberで尊敬しているのはビロガーのアリさん。この人は超早口で時事ニュースを言うっていうだけのことをやっている人なんですが、毎日コンスタントにやっているのがすごいですね。


昨今、YouTuberとして着目を集める人が増えつつある。三浦氏の場合は方言である大阪弁を使い、需要の高いAppleの動画を翻訳し直し注目を得た。いかに自分をコンテンツ化させるのか。海外ではYouTuberで5000万円〜1億円、またはそれ以上を稼いでいる人が何人もいるという。やはりリーチする層が英語圏というのは大きいだろう。YouTubeというグローバルなプラットフォーム上で、爆発的なPV数を獲得するためには、必然的に英語でコンテンツを作るか、それとも非言語かつローコンテクトなコンテンツを作ることが必須となるのではないか。例えば、可愛らしい猫の動画は訳もなくPV数を集めるのはその好例だ。今後も活躍するYouTuberの自分をコンテンツ化する術に迫っていきたい。


取材・文:長谷川リョー

SENSORS Senior Editor
1990年生まれ。編集者/ライター。これまで『週刊プレイボーイ』『GQ JAPAN』WEBなどで執筆。東京大学大学院学際情報学府にてメディア論を研究。最近は「人工知能」にアンテナを張っています。将来の夢は馬主になることです。
Twitter:@_ryh

写真:時田コージ

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