ディズニーCEOボブ・アイガーが本気で取り組むスタートアップとの協業!ディズニー・アクセラレーターとエンターテインメントの未来~Scrum Ventures宮田氏インタビュー【後編】

2015.03.09 14:00

大企業のアセットとスタートアップの技術力や情熱を掛け算し、イノベーションを創出することを目的とした【コーポレート・アクセラレーター】がシリコンバレーを中心に、世界的に実施されている。ディズニーもアクセラレーターを実施する1社だ。ディズニーがスタートアップと接近するのはなぜか?そして、コーポレート・アクセラレーターを成功させるために必要なことは?昨年秋開催されたDemoDayに実際に足を運んだScrum Ventures代表の宮田拓弥氏に訪ねた。


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宮田氏は日米両方で起業経験を持ち、Googleへの事業売却に成功したり、mixi AmericaのCEOを担った実績もある。


ディズニー・アクセラレーターは、メディア・エンターテインメント分野のスタートアップを対象に約13週間に渡って開催される。参加スタートアップは最大で$120Kの投資を得られる他に、ピクサーやABCといったディズニー関連企業にもアクセスを持つことができる。「あれは正直すごかった!」。宮田氏が好評価をする理由の一つに、CEOのボブ・アイガーの存在があった。


■CEOボブ・アイガーのアクセラレーターへの圧倒的なコミットメント。スタートアップの価値を経営トップが理解することの必要性。


宮田:ディズニー・アクセラレーターは正直すごいです。理由はいくつかあるのですが、まず、ディズニーのCEOであるボブ・アイガーが圧倒的にコミットメントしているんです。彼は、アクセラレーターの初日に3時間、会場に来て参加スタートアップのメンタリングをしたのですが、事前に、参加スタートアップを1社1社を入念に調べてから来ているんです。だから話が早く進む。「君たちのことは調べて来たよ。それで、君たちはディズニーのどの会社と絡みたいんだ?」とヒアリングをする。そして、スタートアップの希望に沿って、ディズニーの各グループのトップ・エグゼクティブを直接アサインするんです。そうすることで、ディズニーが持つアセットにアクセスが容易になり、具体的な提携がどんどん生まれている。


宮田:ディズニーにとってアクセラレーターは、一部門でなく全社が一体となって取り組んでいるプロジェクトです。彼らは危機感をものすごく持っています。これはすごく重要なことで、ディズニーの取締役を調べてみると、Twitterの創業者であるジャック・ドーシーがいて、FacebookのCOO シェリル・サンドバーグがいます。つまり、インターネットのことを軽視していない。スタートアップの価値と、自分たちの事業がスタートアップにディスラプトされる可能性をCEOのアイガー自身がしっかりと理解しているのです。DemoDayで、彼が「ぼくらはマジです。本気でスタートアップと向き合っている。」と語る姿はとても印象的でした。現場のメンバーも「社長のプロジェクトだから蔑ろにできない。」と、ディズニー全体でスタートアップと本気で向き合う空気感が生まれています。


ディズニー・アクセラレーターについて語るボブ・アイガー氏 (引用:CNBC http://cnb.cx/11tL16u)


日本においてスタートアップとの協業の窓口となるのは、新規事業開発部や経営企画部や、R&D室、社長室と呼ばれる部署になることが多い。しかし、経営のトップが直々にコミットを果たした事例を聞くことは少ない。コーポレート・アクセラレーターを成功させるためには、その会社のトップをいかにしてコミットさせるかがキーワードになりそうだ。


■コーポレート・アクセラレーターに誂え向きなのは「レイター・ステージ」。


しかし、コーポレート・アクセラレーターを成功させるためには、アセットへのアクセス、トップのコミットメント以外にも、採択スタートアップの相性もあると宮田氏は言う。


宮田:ディズニー・アクセラレーターの面白いのは、レイターステージ(≒ある程度の規模を持つ)のスタートアップを採択しているということです。これはパートナーシップを結ぶことを前提にして、提携の仕方を探るという目的もあります。このステージのスタートアップにとっては、投資はそれほど魅力的なものではありません。シードやアーリーステージの段階では、コーポレート・アクセラレーターを活用しても上手くいかないでしょう。1000億円企業が、これから1億円を生み出す人たちを取り込んでも大きな意味はありませんから。


■社内文化の変革装置としてのコーポレート・アクセラレーターの可能性。


アセットのアクセス、トップのコミット、レイターステージの採択がコーポレート・アクセラレーター成功の鍵であると宮田氏と言う。日本においてコーポレート・アクセラレーターを成功させるためには、優先的にトップのコミットメント引き出す必要があるのではないかと筆者は考えている。そこで見えてくる可能性として、大企業の経営幹部に、スタートアップの価値や勢いを感じてもらうことを目的に、コーポレート・アクセラレーターを実施するということだ。その可能性についても訪ねてみた。


宮田:その可能性はある。ディズニーの例からは離れるが、R/GAの場合、「全社スタートアップ化」という目的を掲げている。これからは、イノベーションがあまりにも早く起きる。スマートフォンが出て、タブレットが出て、ウェアラブルになって...。もう1年単位でデバイスが変わるくらいの勢いでできていて、いろんなスタートアップが出てきては、潰れていく。でも、スタートアップは失敗することが前提にあるが、大企業が潰れたらみんなが困る。しかし大企業もスタートアップのマインドを持ち続けなければ生きていけないのは分かっているので、全社員がスタートアップと仕事ができるようになりたいとはどの企業も思っている。そう言う意味でアクセラレーターは、経営陣だけなく、社員のマインドを変えるためにも機能すると思う。


■メディア・エンターテインメントの注目分野は「データ・アナリティクス」や「ヴァーチャル・リアリティ」。


ディズニー・アクセラレーターは、メディア・エンターテインメント分野でのイノベーション創出を担う役割もある。実際にDemoDayに参加して採択スタートアップのピッチを観覧し、ベンチャーキャピタリストとして日々多くのアントレプレナーと接する宮田氏にとって、エンターテインメントの未来はどのように映っているのだろうか。


宮田:日本とアメリカでは事情は違うと思うが、データとアナリティクスはキーワードです。今までのメディアは、クリエイターが独自の発想とクリエイティビティでコンテンツを作ってきた。しかし、今までは見えていなかった、人類70億人の知恵を可視化するツールとしてデータがとれるようになっている。有名な例だが、Netflixの独自ドラマであるハウス・オブ・カードは、過去の視聴データから、出演者(ケビン・スペイシー)、テーマ(政治、セックス)などの要素の組合せからヒットを予測し、100億もの予算をかけて制作された。データを活用することで、作り手も受け手もハッピーになるような仕組みがつくれると思います。


宮田:あとはライブ。Windows10のHoloLensやOculusなどに見られるVRは、ライブというものを劇的に変えると思います。自分は東京にいるけど、パリで開催されているライブに3000円くらい払えばVRで参加できるなど、いままでにはありえなかったライブの開催の可能性がある。そうなれば、従来、数万人しか参加できなかったものが、数千万、数億人が参加するものになる。マスメディアのさらにマスという概念が生まれるかもしれませんね。


シリコンバレーの第一線で活躍するベンチャーキャピタリストの宮田氏に、日本でも注目されているコーポレート・アクセラレーターについてディズニーの事例を用いながら解説いただき、エンターテインメント・ビジネスの未来について語っていただいた。 SENSORSでは、引き続きエンターテインメント分野のイノベーション活性化を目指して、日本の大企業とスタートアップの協業の事例を取り上げていく。


(協力:Creww株式会社 取材:石塚たけろう)

石塚たけろう:ベンチャーキャピタルやデジタルマーケティング企業複数社での業務を経験後、広告会社にてスタートアップと大企業の共同事業開発モデルであるコーポレート・アクセラレーターの運営に携わる。フロントエンドエンジニア。@takerou_ishi


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