宇宙・家電・エンタメ・体験 ものづくり日本のIoT進化論

2015.03.11 10:00

モノがネットと繋がるIoT(Internet of Things)。最近様々なメディアで取り上げられ、ものづくりの一つの潮流になっているが、株式会社マクロミルが今年行った調査では、日本におけるIoT の認知率は9%。まだまだ普及はしていない。いま、世界のIoTの潮流はどうなっているのか?数年後、生活にIoTが普及した時、日本の製品はそこにあるのだろうか?
3月6日に開催されたSENSORS初のリアルイベント「SENSORS IGNITION 2015」では、岩佐 琢磨氏 (株式会社Cerevo) 、高萩 昭範氏(株式会社Moff)、青木 俊介氏(ユカイ工学株式会社)、袴田 武史氏(株式会社ispace)、西村 真里子氏(株式会社HEART CATCH)の5人によるトークセッションが行われ、「日本のものづくりが世界を変える、IoTの未来」が語られた。


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SENSORS IGNITION2015 トークセッション 

左から 西村氏、岩佐氏、高萩氏、青木氏、袴田氏


■ 4つの領域に分かれ始めたIoT


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IoTの潮流について語る、岩佐氏と高萩氏


前半はIoTの世界的な潮流について岩佐氏と高萩氏によって語られた。
現在、IoTはカテゴリによって潮流が変わってきているという高萩氏。そのカテゴリを「connected car(車)」、「connected home(家)」、「connected place(公共の場)」、「connected human(人)」の4つに分け説明した。


「connected car(車)」は、ネットに繋ぐことにより渋滞を避けてイライラさせないなど、乗車体験をより"快適"で"楽しい"ものに強化していくことを目指す姿勢が各社強いという。しかしIoTとはいっても、実際に車自体がネットに繋がっているものはまだ少ない。人の命に関わってしまう車は、どうしても慎重にならざるを得ないからだ。そのため、配車サービス・UBERのように、「アクセサリーのように今ある車に搭載し、コネクテッドすることによるイノベーションが大切になってくる。」と、高萩氏は語った。


また「connected home(家)」の領域では、スマートロックやスマート電球など、"家電単体の製品"がネットに繋がる事例はすでに多くなってきている。そこで次のフェーズとして出てくるのは、家電の"automation (自動化)"や"相互連携"だ。昨年Googleが買収したNest Labsが手がける「Nest Learning Thermostat」は、その流れを体現しているという。「Z-WaveやNestが各家電メーカーとアライアンス組み、家電同士の相互連携を試みているように、今後そのようなメーカー同士が協力をして商品開発を行うことが益々増えていくだろう。」と、岩佐氏は語った。


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Nest Labsによる、「Nest Learning Thermostat」。
エアコンのなどの空調設備の温度調整を、住人の行動や嗜好を学習しながら快適な温度を保ち、また節電のために自動で電源もオフにしてくれる。現在では様々なメーカーとアライアンスを組み、他の家電との連携も試みている。iPodの産みの親とされるTony FadellとMatt Rogersにより開発された。


「connected human(人)」の領域、特に"health care(健康管理)"のウェアラブルデバイスの分野では数が増えすぎ、既に淘汰が始まってきているという。FitbitやFuelBandなどは日本でも持っている人が多いのではないだろうか。そもそも何故それほどまでに数が増えているのか。その一つに、アメリカの医療費の高さ、社会福祉コストの高さがあげられるという。そのため、個人で健康管理をさせ、将来的に社会福祉や保険のコストを下げることを目標としたサービスが増えている。



■ ものづくり大国 日本が遅れをとるIoT。勝機はどこにあるのか


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ユカイ工学 青木氏


「日本は"ものづくりの国"だったのに、なぜIoTの分野において名前が出てこないのか。」、海外の人に頻繁に尋ねられると語る、高萩氏。各分野で世界に挑戦する5人は、IoTの分野でいかに勝つか、日本のものづくりの強みについて語られた。

BOCCONecomimiを海外の人に見せると、"ベリー ジャパニーズ"って言われる。」と話す青木氏は、日本の誇るユニークな点は"デザイン"だと言う。SONYのAIBOや、無印良品、日産のGPRも例にあげ、海外のデザイントレンドとは一線を画し、別軸での競争に持ち込むことが可能だと語った。

また袴田氏は、民間の会社が月面探査ロボットの開発を競い合う『Gogle Lunar XPRIZE』において自社の「HAKUTO」が中間賞に選ばれた事例を用い、日本は"小型化"と"性能"に関して、非常に優れていることを実感したという。古い例でいえば、SONY発のウォークマンもその一つであろう。

しかし、IoTの分野では、ウォークマンのように人々のライフスタイルを変えてしまうような革新的な事例はまだ少ない。
「フェスにしても、ただ "作ってみました!" ていう感じのモノが多く、ライフスタイルをどう変えていくかみたいなところまでは詰めて考えられていない。今後そういったことまで考えることが重要になってくるのではないか。」と西村・高萩 両氏は語った。



■ 世界的リーダーにならなくてもいい?日本にとっての成功とは


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勝利の定義と日本にとっての成功をスライドと共に話す岩佐氏


日本がIoTの分野でいかに世界に勝つか?という議論の中で、岩佐氏は変わった見方をしていた。

「"いかに勝つか"は、勝利の定義による。IoTの分野でスタートアップが沢山出てくるということに関しては、人口や工場が身近に多くある点から見ても中国には勝てない。Googleのような世界的巨大企業が生まれることに関しても、国民性や投資の規模感から見てアメリカには敵わない。」

「でも、世界的リーダー企業にはなれなくても、手堅くTop10の有名企業には入っているという戦い方はできるんじゃないか。というか、現状そうじゃないですか。SONYやPanasonicも世界的に有名なブランドではありますよね。IoTの分野ってとても広いので、日本の強みを活かしながら世界とは違ったジャンルで良さを出していくのが大切だと思う。」


日本独自の価値で、競争の土俵を変える。もしかしたら、海の向こうを意識する必要もないのかもしれない。



■ 宇宙と繋ぐ


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ispace 袴田氏


後半は、IoTが生活やメディアをどう変えていくのか、について議論がされた。
生活に身近なイノベーションが語られる中で、袴田氏の事業領域は「宇宙」。莫大な資金が必要であり、基本的に政府が事業を担っているイメージの強い宇宙領域。しかし袴田氏は、近年の技術革新とコスト低下により、以前と比べ非常に安価に宇宙に耐えられる製品を作れるようになってきたと話す。
「アメリカでは、Planet Labsというスタートアップが5年前に立ち上がり、170億円の資金調達をしています。非常に小さな衛星を何百機も軌道上に打ち上げ、Google mapを1時間おきに更新しようというのが彼らの考えていること。民生品を活用して、最短9日で1機を作れるくらいになっている。」Googleは、現在ネットに接続することができない50億人のために安価なネット環境を提供する「Project Loon」を進めており、昨年には宇宙開発企業Skybox Imagingの買収や、今年はSpaceXに1兆円ほどの出資を行った。
宇宙を通して身近な生活を変えていく。
昨年、NASAが宇宙開発事業を民間に委託したことも話題になり、今後、宇宙の領域でスタートアップが増え、IoTの分野でも宇宙に関する事業が増えていくのだろう。


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スクリーンはPlanet Labs



■ スクリーンはもういらない? メディアの未来は、ディスプレイを超えた体験に。


IoTはメディアをどう変えていくのか。
「個人を拡張するモノは、スマホにはもう勝てない。空間にいる人たちと共有するモノがキーになってくる。BOCCOやPepperもそうだが、ロボットは場にいる人たちと共有して使うメディアになると思う。」と、青木氏はconnected place(公共の場)におけるIoTが鍵になってくると話した。
「ディスプレイは要らないというか、もうこれ以上増えて欲しくない。」と高萩氏。
「これからはスクリーンの上に映像を流すだけでなく、他のモノとネットで繋いで"体験を拡張していく"ことが増えていくと思う。例えば、リビングでホラー映画を観ていて、怖そうなシーンになると家の電気がいきなり消えたり。朝起きて窓に光が差して眩しそうなシーンが出てきたら家の照明もるくなるみたいな。個人的には "映画と連動した扇風機" をすごい作りたいんです!シアターでもあるじゃないですか、風が吹いてくるやつ。コネクテッドエンターテイナーみたいに、コンテンツに対応している製品をつくる。コンテンツ作る人とハード作る人が連携してものつくりをすることが今後一番重要なんじゃないですか。」と岩佐氏。

IoTは、「製品単体をネットに繋いで、どのように進化させるか」という視点で考えがちだった。しかし、今回のトークセッションで見えてきた IoTの価値は、「相互連携」による「空間の拡張」である。「どんな体験を与えたいか」を考え、それによる課題解決としてIoTを用いることが、もしかしたら "ライフスタイルを大きく変える" ことに繋がるのかもしれないと感じた。
想像していたよりも、IoTは複合的で複雑な思考法を求められるのかもしれない。だからこそ、IoTが将来生み出すであろう新たな価値の期待感に、ワクワクするしかしない。


[登壇者プロフィール]


岩佐 琢磨(いわさ・たくま)
株式会社Cerevo 代表取締役。センサー搭載スノーボード・バインディング「SNOW-1」が2015年のTop Tech of CESを受賞。世界初となるインターネットライブ配信機能付きデジタルカメラ『CEREVO CAM live!』に始まり、ネット接続型家電を次々と生み出す。


高萩 昭範(たかはぎ・あきのり)
株式会社Moff 代表取締役。ウェアラブルスマートトイMoff Bandが日米Amazon電子玩具カテゴリーで2位にランクイン。人間の動作・行動・姿勢の認識をベースとしたIoTプラットフォームを提供する。


青木 俊介(あおき・しゅんすけ)
ユカイ工学株式会社 CEO。チームラボCTO、ピクシブCTOを務めたのち、ロボティクスベンチャー「ユカイ工学」を設立。ソーシャルロボット「ココナッチ」や、家族をつなぐコミュニケーションロボット「BOCCO」など、IoTデバイスの製品化を数多く手掛ける。


袴田 武史(はかまだ・たけし)
株式会社ispace Founder & CEO。コンサルティング会社を経て、株式会社ispaceを創業。人類が宇宙で生活圏を築き宇宙と地球が共存する世界を構築するため、宇宙ロボット技術を活用し民間宇宙事業を推進。民間月面ロボット探査レース『Gogle Lunar XPRIZE』に日本唯一のチーム『HAKUTO』を率い参戦中。


西村 真里子(にしむら・まりこ)(モデレーター)
HEART CATCH 代表取締役。国際基督教大学( ICU )卒。IBMでエンジニアとしてWebソリューションスキルを蓄え(特許取得)、Adobeで FlashなどのWeb製品マーケティングマネージャー、デジタルクリエイティブカンパニーバスキュールにてプロデューサー従事後、2014年に HEART CATCH を設立。代表作「BLOODY TUBE」はカンヌ国際クリエイティビティ・フェスティバル2014にて 金賞受賞。最新作はYahoo! JAPANトップで世界初タケコプター試乗体験をPC、スマホ連携 ダブルスクリーンで実施。Web / インターネットのインタラクティビティと変革を起こし続けるテクノロジーの進化に魅了され続けている。


(SENSORS編集部 取材・文:小林智久)



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